デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

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タイトル通り、今回は筋肉マシマシ、というより筋肉しかありません。

あと今回ちょっと短いです!



筋肉を、信じろ。

雄英体育祭第二種目は騎馬戦だった、1000万ポイントのハチマキを守り抜くため、他の騎馬を蹴散らして逃げ延びた。最後にハチマキを奪われそうになり、それに対抗するため全力のオクラホマ・ミキサーを炸裂させた。その結果騎馬は全滅、ハチマキを身に付けている人が居なくなってしまった。この場合、勝者は誰になるんだ!?

 

 

 

「〝なんとハチマキを持ってる奴がひとりとして居なくなったーー!!これは全員敗退になっちまうのか!?どうなんだい、主審のミッドナイト!!〟」

 

「まさかこんなことになるなんて思ってもみなかったわ……」

「なんか、すみません……」

困惑するミッドナイトに謝る僕。僕もこんなことになるとは思ってなかったよ…

 

「いてて、どうなったんだァ?」

「かっちゃん!」

倒れていたかっちゃんが起き上がってくる、みんなまだ起き上がれてないってのに流石のタフネスだ!

 

「デクてめぇ!やりすぎだろおい!―――ん?てめえもハチマキを掴んでて俺も掴んでる……ってことはまだこれを奪えば俺の勝ちじゃねぇか!!」

「――ハッ!それよ!!―――1,2,3…………14っと人数も丁度いいわ~!」

「どういうことです、ミッドナイト?」

騒ぐかっちゃんとなにか閃いたように人数を数え出すミッドナイト、何に気が付き、なにがどうなるんだ!?

 

「最後までハチマキを掴んでた14名と緑谷チームの3名を最終種目の出場選手とします!!」

「えっ!?」

ハチマキを持ってるから得点総分けってことか?よく分からない……最後までハチマキを掴んでいたのは―――

 

爆豪チーム 爆豪、切島、瀬呂、芦戸

轟チーム 轟、上鳴、飯田、八百万

峰田チーム 峰田、障子、常闇

B組 鉄哲、塩崎、拳藤

緑谷チーム 緑谷、麗日、発目

 

―――以上の17名が最終種目出場になるのか。

 

倒れていたみんながぞろぞろと立ち上がってくる、軽い怪我はしてても、動けないレベルにやられた人はいなかったみたいだ。ふぅ…少し安心したよ…!

 

 

「〝つまり、力が強くて根性があるやつが勝ち抜けってことか?ちょっと雑すぎねぇか!?〟」

「〝そうじゃねえな、勝ち残った奴等をよく見てみろ、マイク〟」

「〝みんなハチマキ掴んでるだけじゃ?ってなにー!?ハチマキに対して、爆豪チームは手がテープでぐるぐる巻きになってるし、轟チームは氷で固定されてる!?〟」

「〝そうだ、ただ根性があって力や運が強いだけじゃねえ、勝ち残ったのはチームや個人で個性をうまく使うことのできた奴等だ。あの緑谷のパワーによって極限状態に置かれても、状況判断をしっかりできている、優秀な生徒ってことだな〟」

「〝なるほどぉ!そりゃ確かに勝ち残るに相応しいって訳だぁ!!〟」

相澤先生がプレゼントマイクに解説をしていく、なるほど確かに合理的な判断だ!

 

かっちゃんチームは瀬呂君の個性、轟チームは轟君の個性、他の人達も個性を上手に使ってハチマキをガッチリ掴んでいたんだな。―――ん?峰田君は身体が軽いし飛ばされにくかったんだろう、彼のモギモギは自身にはくっつかないし。つまり根性があって運が良かっただけ……?いや、彼も必死だったに違いない!

 

「〝そうすると緑谷チームはどうなんだ?緑谷は当然としてもその他の二人は掴まってただけなんじゃ?〟」

「〝おいマイク……あの騎馬戦のルールで緑谷と組もうっていう勇気と判断力を評価しないでどうする…?〟」

「〝おおっと!そりゃそうだ、失礼したぜ!!さあ最終種目出場者も決まったところで、午前の部は終了だ!一時間の昼休憩挟んで午後の部だぜ!!じゃあな!!〟」

プレゼントマイクの言葉で午前の部は終了となった。無事に勝ち抜くことができて良かった、まあやり過ぎた感はあるけど……

 

「いやぁ疲れたぁー、お疲れー」「悔しいけど、最終種目も頑張ってねみんな!」「頼むぞーB組の代表たちー!」「オイラ勝ち残ったぞー!!」「混む前に飯いこうぜ」「緑谷ぱねぇな……やっぱつれえわ…」「そりゃつれえっしょ……」「言えたじゃねぇか」「聞けて良かった」

 

競技を終えてみんな思い思いにざわつきながら休憩へと向かう、そんな中僕の前に立ちはだかる人が現れる。

 

「ああやって力でなんでも捩じ伏せて、満足かよ……ラスボス!」

そんな言葉を投げ掛けてきたのは、紫の癖毛に、目の下の隈が特徴的な生徒、普通科の心操君だ。

 

「んだてめぇ!負け犬の遠吠えなら他所でやれよ、モブがっ!!」

「かっちゃん!いいんだ、僕はこの人と話があるから先に行ってて……」

心操君に噛みつくかっちゃんを抑えて、肩を強めに叩いて先にいくように促す。僕も心操君と話をしたいと思っていたところだ。前世では最終種目の時に話をしたが、今は彼に伝えたいことがある。

 

会場から人が捌けていき、人が疎らになる。僕と心操君はその端の方で話を始めた。

 

「なかなか話がわかるじゃないか、ラスボス。さっきまであんだけ個性でド派手にやってたやつとは思えないな!」

「ちょっとまって、ラスボスって僕のこ―――」

心操君の言葉が引っ掛かり、そこに突っ込もうとした瞬間頭にモヤがかかったように身体が動かなくなる。心操君の個性の“洗脳”だ。

 

「ほらな、どんなに強力な個性を持ってても俺の個性にかかればこうさ!でも俺はこんな個性だからスタートから遅れちまったよ、恵まれた人間にはわかんないだろ!?」

「―――わかるよ」

「っ!?ラスボス…なんでしゃべれる、動ける!?なんで俺の個性が通用しないんだ!?」

「それはね――――ッ!!ちょっと話しにく―――ッ!いから、個性止めてもらっていい?」

僕が洗脳から解けたことに驚く心操君、洗脳を度々解除しながら、その種明かしをするため個性の発動をやめてもらう。てかやっぱりラスボスって僕のことかよ!薄々勘づいてはいたけどさっ!認めたくなかった……

 

「なんなんだよ!お誂え向きの“個性”持って生まれた奴ってのはなんでもできんのかよ!望む場所へ行ける奴等ってのはどこまでも恵まれてんな!!」

「それは違うよ、これは個性のおかげじゃない」

「なんだと!?じゃあなんだってんだよ!」

「それはね―――」

心操君の悲痛な怒りの叫びが響く、だからこそ彼に伝えなければいけない。この力は―――

 

 

 

「―――筋肉だよ」

「はぁ!?ふざけんのか?お前がどんだけマッチョだからってそんなの俺の個性にはなんの関係も―――」

「あるよ!関係あるんだ。まず君の洗脳から抜け出した方法、あれはジャーキングだ!」

「……?ジャーキング…?」

心操君はイラつきながら聞いてくる、まあ聞きなれない言葉だろう。

 

「ジャーキングってのは不随意の筋肉痙攣のことさ、寝るときにビクッとなることがあるだろう?それと同じ理屈だよ」

「それが俺の個性が効かないのとなんの関係があるんだよ…!」

「僕が洗脳状態に陥った瞬間に、無意識で身体を痙攣させて洗脳を解除してくれるんだよ。僕の筋肉が僕を助けるためにね」

「はあ!?筋肉に意思があるってのか!?馬鹿馬鹿しい!」

「ある…鍛え続けた筋肉には意思が宿る、僕はそう信じているよ!」

僕は洗脳の解除の種明かしをして、さらに筋肉について説く。

 

「筋肉に意思は宿る。筋肉を鍛えること、それは筋肉と向き合うってこと、筋肉の声を聞くってことだ。そうしてじっくりと筋肉と向き合い続ければ、筋肉に自分の()()が伝わり、そして筋肉の()()がわかるようになるんだ!」

「さっきから何いってんのかわかんねぇよ!!それでもお前が恵まれた人間ってことに変わりないだろ…?」

心操君は僕の話を理解しようとせず喚く、もうそこに怒りはなく、哀しみを含んだ声色で僕に尋ねる。

 

「確かに僕は個性に……いや、人に恵まれた…」

「やっぱりそうじゃないか…生まれときから人の生き方は決まってて、所詮夢は夢でしかなくなる……」

「僕もずっと昔、おんなじこと思ってたよ。でも人に恵まれた、けどそれでも足りなかったんだ!恵まれただけじゃ望んだところになんていけないんだよ!!」

僕は段々と意気消沈していく心操君へ叫ぶ。

 

そう、オールマイトに個性をもらっても、それだけじゃなにも出来なかった。救えないし救われない、僕の望んだ結末なんかにはたどり着けない、それを僕は知っている!だからこそ必要なのは―――

 

「だからこそ、筋肉が必要だったんだ!筋肉を鍛えなければ僕は今の十分の一も強くなってないだろう。そしていまも望む場所へ向かいたいから、僕は鍛え続けている。君はどうなんだ?向かいたい場所があるんじゃないのか?」

「俺だって…俺だって向かいたいとこくらいある…!俺もお前みたいな個性持って……くっそ!―――諦めたくなくて、雄英入って、体育祭でも勝ちのこって、ヒーロー科入ってやろうって!そう思ってたけど……やっぱりダメだった、諦めるほかなかったんだ」

心操君は悲しげな顔でみずからの思いを語る。まだだ、僕は彼を助けたい!諦めてほしくない!

 

「なんでそこで諦めるんだ!昔から憧れて、夢見てきて、そのためにここまで来たんだろう!?―――“ヒーロー”に成りたいって!―――君もそうだったんだろう!?」

「――!それは……でも…」

「だったらそれは終わってない、まだ始まってすらいないじゃないか!ちょっと長いだけのプロローグで絶望してんじゃないよ!!諦めなきゃ届くんだ!だからいい加減鍛えようよ!筋肉を!!」

僕は心操君を鼓舞する、まだ終わりになんてさせない!そんな幻想は筋肉でぶち殺してやる!!彼は昔の、オールマイトに合う前の僕だ。絶対に変われるはずだ!僕と同じで筋肉で!!

 

「筋肉を…俺が……?無理だ、お前みたいには―――」

「筋肉は逃げない、逃げるのはいつも自分だ」

「――!?」

「どこかの誰かが言った言葉だ、けど僕はその言葉をずっと裏切れずにいる。この言葉の意味、わかるよね?逃げる理由をつくって、諦めちゃダメなんだよ!こんな僕だって変われたんだ、君だって!いや…ここまでこれたんだ!諦めなければ―――」

僕は心操君に諦めてはいけないと、必死に説きつづける。そして僕が言われたかった言葉を彼に伝えよう、きっと彼も誰かにそう言ってもらいたい筈だ!

 

 

「―――君はヒーローになれる」

「――っ!!……緑谷……なんでそれを、お前が言ってくれんだよ…」

「言ったろ?君は昔の僕に似てるって、僕が言われたかったことを本心から言っただけだよ、嘘じゃない」

僕は心操君に笑顔で答える、彼はきっといいヒーローになれる。

 

あのとき僕はオールマイトのその言葉に勇気を貰った、今度は僕が誰かに勇気を託す番。そうですよね?オールマイト。

 

「……信じていいのか?お前を、俺自身を?」

「信じていいとも!それでもなにも信じられなくなったのなら、ただひとつ――――筋肉を信じろ…!」

「筋肉を…!」

「そうさ、筋肉は裏切らない!それに周りを見てみなよ!」

「周り?」

僕は心操君に観客席を見るように促す。

 

「かっこよかったぞ心操!」「ラスボスに一人で挑むとかすげえよ!」「俺ら普通科の星だな!」

そこには普通科の生徒たちが僕らを見守っていた、いや心操君を見守っていたのだろう。

 

「お前ら……」

「わかるかい?君を応援してくれる人がいるってことが。答えは聞かない、僕は必ずヒーローになる、その時君が―――」

「俺はヒーローになるぞ、もう絶対に諦めない。筋肉を鍛え上げて絶対になってやるからな!そんときは足下掬われないようにな?」

心操君は僕の言葉の続きを待たずに、不敵な顔で笑って見せる。

 

「ハハハ!言うね心操君!いいよ、そのときは僕の筋肉と君の筋肉、二人で競おうじゃないか!―――それじゃあ僕はそろそろいくよ、また会おう心操君!」

僕はそう言ってその場をあとにする、これ以上は不粋ってもんだろう。

心操君は諦めないと誓った、彼が筋肉を信じ続ける限り、絶対にヒーローに成れる。

 

 

―――筋肉には無限の可能性があるのだから!

 

 

 

 

―――心操君は将来、マッスルメンタリストヒーローとして名を馳せることとなる。それはまた、別の物語だ。

 

 




心操、筋肉始めるってよ。


今回はちょっと落ち着いた回になりました。次回からまたデクさんがぶっ飛び始めますので、よろしくお願いします。

UAが遂に15万を超えました、皆さまいつも読んでいただき、本当にありがとうございます!

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