デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】 作:くろわっさん
アンチヘイトではないはず…!
世界の総人口の約八割はなんらかの超常能力"個性"を持ち……ってこんなことみんな知ってるよね。
いまでは僕もその一人だ、本来の僕は無個性だったのだけれども。
オールマイトとオールフォーワンの決戦のあの日、僕はオールフォーワンに殺された。
気がつくと僕は、四歳の頃に戻っていた、オールマイトに託された個性"ワンフォーオール"をこの身に宿したまま…
それから10年間、オールマイトと出会うためにいろんなところを駆け回った。
あるときはオールマイトが解決した事件現場に向かったり…
「おーるまいとー!どこー!?」
「ぼく!オールマイトならついさっき「次の現場に向かわねば!」って言って飛んでいったよ」
「おーるまいとはやい!」
また、あるときは出待ちをしてみたり…
「オールマイトまだかなぁ…まだ出てこないかなぁ」
「君!オールマイトならさっき裏口から出ていったよ」
「まさかの裏口からー!?」
あるときは町中を探し回ってみたり…
「オールマイト!ここですか!?」
「君!いくら常識はずれのオールマイトとはいえ、流石にゴミ箱のなかに隠れたりはしないと思うぞ!」
「ですよねー、オールマイトどこなんだ…」
あるときは…
「オールマイト!オールマイトォオオオオ!!」ガンッガン
「こら出久!オールマイトが映ってるからってテレビの中に入ろうとしないの!壊れちゃうでしょ!!」
「…はっ!僕はいったい何を…」
そんなこんなで一度もオールマイトには会えていない。
オールマイト、もうあの怪我をしてしまって活動制限もでてしまっているんだろうなぁ…
はぁ、これじゃあ
変わったことといえば、家にあるオールマイトグッズに前世で手に入れられなかった限定品らが増えていること、それと僕が―――
「全員席ついてるかー、ホームルーム始めるぞー」
そんなことを考えているとすでにホームルームが始まっていた。
「これから進路希望の紙を配るけどー、まあ皆だいたいヒーロー科志望だよねー」
そんな担任の言葉にクラス中が騒ぎ出す。
「先生ェ!皆とかいっしょくたにすんなよ!」
それに割って入る声がする、かっちゃんの声だ。
「
「爆豪は確か…雄英高校志望だったな」
かっちゃんと先生の言葉に周りがさらにざわつく。
かっちゃんこと、爆豪勝己。前世から変わらず口が悪いなぁ、そして相も変わらず―――
「
みみっちいのである。高額納税者って…それでいいのか、かっちゃん!
「なあ!デク?」
うわぁ…巻き込まれたよ…
「かっちゃん、オールマイトを越えるなんて簡単なことじゃあない、そう軽々しく口にするもんじゃないよ」
かっちゃんと僕の関係は前世と比べて結構変わっていた。
「確かに…デクの言うとおりだな!オールマイトって壁は低くねぇ!でも俺らふたりなら必ずいつか越えられるぜ!」
そう、かっちゃんは僕のことを自分と同等の存在だと認めてくれているんだ。
というのも、四歳の頃からことあるごとにかっちゃんは僕に勝負を挑んできた。僕はそれらすべてを悉く返り討ちにしてやったのだ。
それも当然で、いくらかっちゃんがいろんなセンスが冴えている才能マンであっても、前世から15年分の経験と個性を引き継いでいる僕が子供に遅れをとることなどないのだから。
「まあデクさんの頭脳とがたいのよさなら雄英もトップヒーローも余裕だよな」
クラスメイトが前世の僕には決してかけられなかったような言葉を言ってくれた。
なぜならいまの僕は―――
「身長 178cm!体重 88kg!体脂肪率は驚異の5%!!鍛え上げられたその肉体はトップアスリートにもひけをとらねぇ!!とても同い年の中三には見えないぜ!!筋骨隆々とはデクのためにあるような言葉だぜ!!!」
かっちゃんテンションおかしくない!?そんなキャラだったけ!?
「あはは、ありがとうかっちゃん」
かっちゃんの説明通り、僕はこの10年でかなりムキムキになったのだ、きっと幼い頃から続けてきた鍛練と健康的な生活習慣、それに母さんに作ってもらっている栄養満点の食事のおかけだろう。詳細は企業秘密だ!
「じゃあ週明けには進路希望表提出だからなー、ホームルーム終わりー」
先生がホームルームの終わりを告げる。
「デクのすごさは肉体だけじゃあねぇぜ!なんとな―――」
かっちゃんはまだ僕の話を続けていた。あのクソ下水煮込みとまでいわれた性格が丸くなったのはすごくいいことなんだけど、やっぱりなんだか違和感があって気持ち悪い。
ああなるとかっちゃんは長くなるから今のうちにさっさと帰ってしまおう。
「しかしいったいどうすればオールマイトに会えるんだろうか…」
僕は帰り道でこの10年の最大の悩みに宛のない答えを探していた。
長々と考え込みながら、帰り道にある小さなトンネルにさしかかっていた。
「XXLサイズの…隠れミノ…!」
目の前のマンホールからドロッとしたヘドロが吹き出し、僕を勝手に品定めして、いきなり襲いかかってた。
僕は咄嗟に横へと転がりヘドロを避ける。べちゃりと音を立てて地面に落ちるヘドロ。
「………」
「………」
ヘドロと目が合う、お互いに無言で見つめあい、僕とヘドロの間になんとも言えない空気が漂った。
「XXLサイズの…隠れミノ…!」
そう呟きながら、再びヘドロが僕に襲いかかる。
「それ毎回言わないとダメなのかなぁ!!」
ツッコミながらも僕も負けじと再び横へと避ける
「………」
「………」
「避けるんじゃねぇよ…なに苦しいのは45秒ほどだ…すぐに楽になる」
「知ってるよ!その45秒が滅茶苦茶苦しいから避けてるんでしょうが!!」
沈黙を破ったのちに、ヘドロと僕は言い合う。
ん、知ってる?そうだ僕はこのヘドロを知っている。それに包まれると息ができなくて、死ぬほど怖くて苦しいことを、僕は知っている…なんで知ってるんだっけ?
その答えが出るまもなく、ヘドロの後ろでマンホールが真上へと吹き飛んだ。
「くそがっ…もう来やがった…!」
僕の求めていた答えが―――
「もう大丈夫だ、少年!」
この10年求め続けていたその答えは―――
「私が来た!」
向こうからやってきた―――
「オール…マイト…?」
10年前のことなんてパッと出てこないと思います(強気)