デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

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体育祭編も後半へと入りました、11月中には五章を完結させたいとおもいます。


では本編をどうぞ!


僕だけがいないトーナメント

どたばたの昼休みに、楽しかったレクリエーションも終わり。遂にトーナメントがやって来た、僕は決勝からなんだけど…みんながどんな戦いを繰り広げるのか、さあ始まりだ!

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

「オッケー、もうほぼ完成だよ」

セメントス先生が会場の設営の終了を告げる。いよいよ始まるんだな…!

 

「ありがとう、セメントス。第一試合のやつらは準備しとけよ」

相澤先生はセメントス先生に声をかけたあと、峰田君と障子君に声をかける。あれ?なんで相澤先生が会場に?

 

「相澤先生!なんで会場の方にいるんですか?」

「ああ、もしもの時に備えて俺も副審として入るからだ。緑谷、お前は代わりに解説席にいけ、というかさっきもそう言っただろ、ちゃんと話聞いとけ。」

相澤先生はぶっきらぼうに答える、そういえばそんなことも言われてたな…トーナメント表が衝撃的過ぎて忘れていた。

 

「ぼさっとすんな、早くいけ緑谷。もうすぐ試合開始だぞ」

 

―――僕は相澤先生に急かされるように、会場から追い出されしぶしぶ解説席へと向かうことにした、そしてその道中ひとりの大男が現れる。

 

「オールマイトの弟子…また会ったな」

「また会ったなっていうか、ここで待ち構えてたんでしょう、エンデヴァー?」

ヒーローランキングNo.2、フレイムヒーローエンデヴァーが僕に声をかけてきた。この人が通る道は何故か火災報知器が鳴らない、という都市伝説の持ち主でもある。

 

「待ち構えてなどいない!たまたまだ、勘違いするなよ…!」

「わかりましたよ、じゃあそういうことにしときます。それでなにかお話でも?」

エンデヴァーは少しイラつきながら僕に言う、ホントかっちゃんによく似てるなこの人…つまりめんどくさいツンデレってことだ!

 

「首尾の確認に来たのだ、貴様の草案に乗ったんだ、上手く行ってもらわないと困るからな」

「うーん、上手くいくかどうかは、僕じゃなくて貴方次第ですよ、エンデヴァー。そっちの用意は出来てますか?」

「問題ない、あと1時間程で着くだろう。」

「ふむ、じゃああとは彼次第ってとこですね、上手くいくことを祈りましょう!」

僕はエンデヴァーと計画の進行を確認して、最後におどけてみせる。

 

「貴様!……結局はあいつ次第ということだな。わかった、ではいけ!」

「自分から呼び止めといて、ぞんざいな扱いですね。まあそういうことで、失礼しますよ」

僕はそう告げて、その場を後にする―――

 

 

―――僕は解説席につき、会場の準備も終わり、いよいよ第一試合が始まる。

 

「〝さあさあ、いよいよ始まるぜ!結局これだろ!?ガチバトル!実況は引き続きこの俺プレゼントマイクとぉ!〟」

「〝相澤先生より解説を引き継ぎました、1-A緑谷出久でお送りします!〟」

僕とプレゼントマイクが並んで、実況と解説を務める。まさかプレゼントマイクと並んで仕事をする日が来るとは…人生わかんないな!

 

「〝選手の入場だぁ!まずはこいつ!今大会最大の体格を持つ男!そのやたらと多い腕で勝利も掴めるか!?1-A障子目蔵だーー!!〟」

「〝お次は同じく1-A!この男の躍進を誰が予想できたのか!ミスター予想外、今大会最小の男!峰田実ぅぅ!!!〟」

プレゼントマイクの実況と共に二人が入場してくる、僕もなんか言わなきゃ!

 

「〝今大会、最大と最小の二人。この90cmもある身長差が戦いにどう影響するのか、今後の展開が楽しみですね〟」

こんな感じでいいんだろうか…?

 

「〝おお、解説サンキュー緑谷!確かに気になるところだぜ、さあそしてついに!ついにいぃ!!―――〟」

プレゼントマイクが僕に礼を言う、どうやら正解だったらしい。よし、こんな感じでやっていこう!

 

「〝一回戦、第一試合!レディィイイイ!スターーーート!!〟」

プレゼントマイクの合図で戦いの火蓋が切られた。

 

「クラスメイトだろうと、容赦はしない…いくぞ!」

「オイラはモテモテになるために、ここで躓いてらんねーんだ!」

障子君が真っ直ぐ距離を詰めるも、峰田君は個性のモギモギを撒き散らしながら後退する。

 

「〝さあ峰田!早速個性全開で逃げ回るぅ!だが障子も負けじと峰田を追い詰めていくぞ!〟」

「〝体格差が大きい分、峰田君は接近戦を避けたいでしょうね。無難に個性で動きを止めて封殺狙い、といったところでしょうか〟」

 

それからも二人の追いかけっこは続き、気が付けばフィールドは峰田君のモギモギで足の踏み場も少ない状態になっていた。

 

「さあ、もう逃げるのは終わりだぜ!障子、覚悟しな!」

峰田君が障子君に宣戦布告する。かなり有利な状態を上手く作り上げたな。

 

「〝なんと、峰田の個性がフィールドを埋め尽くし、そこを峰田が縦横無尽に跳ね回っているー!一方、障子は身動きがとれなくなっているぞぉ!!〟」

「〝峰田君のモギモギは彼自身にはくっつかないですから、それで高速移動を可能にしてるのでしょう。しかしこれほどのモギモギを生み出せるとは、峰田君の個性のスタミナには驚きです〟」

 

「そんなに出せばもう打ち止めだろう?そろそろ決着をつけさせてもらう…!」

「だからどうした!?オイラのトラップに一歩でも引っ掛かればお前はおしまいなんだぞ!!」

障子君は不利な状態ながら峰田君を挑発する、峰田君はそれにのって叫びだした。冷静さを奪ったのか、さあどうするんだ?

 

「それはっ!どうかな!」

障子君はそう言いながら、峰田君へと飛びかかる、そんなことをすれば―――

 

「〝あーっと!障子特攻ー!!しかしあと一歩届かず、峰田の個性に足をとられた!〟」

「〝いや。まだです!障子君は止まっていない!〟」

障子君はそのまま勢いを殺さず、峰田君へ更に一歩踏み込んだ。くっついたはずの足は――

 

「〝うわお!障子、なんと足を引きちぎって前進ー!なんつー覚悟だ!てかこれ放送事故になんねーか?!〟」

 

「なにいいぃぃ!?」

「油断したな、峰田!捕らえたぞ……」

障子君が峰田君の胸ぐらを一本の腕で掴み、持ち上げた。

 

「〝ちぎれたのは彼の個性で腕から複製した足です!峰田君の油断を誘って、自らの間合いに捉えたんですよ!!〟」

 

「さらばだっ!!」

そして障子君はその筋肉を存分に使い、峰田君を勢いよくぶん投げる。峰田君は地面に着くことなく、自らの個性によってピンボールの様に縦横無尽に跳ねながら場外へと飛ばされていった。

 

「峰田君、場外!よって障子君二回戦進出!」

ミッドナイトの勝利宣告が響き、試合は障子君の勝利で幕を納めた。

 

「〝一回戦から逆転勝利がでるとは!今年はほんと盛り上がるねぇ!!さあ今の一戦のポイント、どうみる解説の緑谷ぁ!?〟」

「〝お互いの個性を存分に使った試合展開でしたね、ですが障子君の作戦勝ちと言えるでしょう。

この最終種目は開けた空間での一対一の戦いですから、個性の長所を上手に押し付けられると、勝利がグッと近づくんですよね。

隠された長所を持っていた障子君が一枚上手だったんでしょう、もちろんその逆も充分にありえましたが……雄英らしい良い試合でしたね!〟」

僕は息をつくことなく、一気に今の試合の印象を語っていく。ほんと個性の押し付けあいって感じだったな!

 

「〝なっげぇ解説サンキュー緑谷!さあお次は第二試合が始まるぞぉ!―――〟」

 

―――その後の試合は前世と同じ組み合わせでは大体同じ試合展開だった。

 

轟君 対 瀬呂君、轟君が特大の氷壁で瀬呂君を凍りつかせて勝利。相変わらず会場中からドンマイコールが巻き起こった。ドンマイ!

 

上鳴君 対 塩崎さん、塩崎のツルの個性で上鳴君を瞬☆殺。別に殺したわけではないけど……個性の相性は大事だ。

 

飯田君 対 発目さん、発目さんのセールスタイムが開催されて、その後自ら場外へ。そういえば騎馬戦のときは発目さん自身が目立っていて、ベイビーたちは目立ってなかったな、このための伏線だったのかもしれない。

 

芦戸さん 対 拳藤さん、これは前世にはない戦いだったが、あっさりとした決着だった。

芦戸さんの酸を拳藤さんが巨大な掌で仰ぎ飛ばして接近戦へ、酸による火傷もいとわず気合いで押し切り、そのまま場外へと弾き飛ばした。運動神経抜群の芦戸さんといえど、近接格闘を得意とする拳藤さんには敵わなかったみたいだ。

 

常闇君 対 八百万さん、常闇君の黒影が速攻を仕掛けて、八百万さんの創造物を使わせず勝利した。この形式の一対一だと相性次第では黒影は無敵に近いな…!

 

鉄哲君 対 切島君の個性駄々かぶり対決は相変わらずドローだ、あとで腕相撲で勝敗を決することとなる。

 

 

 

―――そして麗日さんとかっちゃんの対決の時が来た、僕の友達二人による勝負、どっちも応援しているが、丸くなったかっちゃんがどんな戦いをするのか……!

 

「〝騎馬戦では小動物のように緑谷の肩に乗っていた、注目度抜群の筋肉使い!1-A、麗日お茶子ぉ!!〟」

「〝同じく1-A!騎馬戦で悪魔のごとき追い討ちをかけまくっていた男!驚異の悪人面、爆豪勝己だー!!、〟」

プレゼントマイクが二人の入場アナウンスをする、筋肉使いって…言い得て妙だな!

 

「痛えじゃすまねえからな、丸顔。棄権すんなら早くしとけ」

「爆豪君……私は勝ちに来たんだ!始めっから諦めるなんてありえないよ」

「そうかよ……じゃあ精々覚悟しとけよ」

かっちゃんと麗日さんが短いやり取りを交わす。麗日さんは気合い充分、かっちゃんも相手を軽視する様子はない、互いに臨戦態勢だ。

 

「〝スターートッ!〟」

そして、試合が始まった。合図と共に麗日さんが距離を詰め、速攻の奇襲を仕掛ける。しかしそれはかっちゃんの超反応によって失敗してしまう。

その後も麗日さんは低姿勢で突撃を繰り返し、かっちゃんの爆破による容赦ない反撃を受け続ける。

そして、爆破で散った会場の破片を個性で上空へと集め、瓦礫の流星群を降り注がせた。

しかしかっちゃんは特大の爆破でそれを一蹴した。

 

ここまで前世とまったく同じ展開だ……それは秘策を破られた麗日さんがキャパオーバーでぶっ倒れて負けるってことだ。

 

「それでも!!―――私は勝ちたい!デクさんの側に少しでも居られるようなヒーローになりたいから!!!」

麗日さんは僕の記憶を裏切り、また立ち上がった。麗日さん……君は―――

 

「〝麗日ぁ!ここで再び立ち上がるぅ!!なんつーガッツだ!頑張れ麗日!!〟」

プレゼントマイクも驚愕の声を上げる、しっかし私情丸出しだな!

 

「そういうことなら尚更負けてやれねぇ…こっから本番だっ!!」

かっちゃんが口角を引き上げながら麗日さんへ駆け出す、迎え撃つ麗日さんに怯えはなくその目は死んでいない。

 

「デクのいっちゃん側に居んのは、相棒(サイドキック)たるこの俺だぁ!!」BOOM!!!

かっちゃんは走りながら至近距離で爆破を放ち、麗日さんを吹き飛ば―――

 

「なにぃ!?」

―――せなかった。麗日さんはかっちゃんの腕をガッチリと掴み、爆破でボロボロになりながらも踏ん張っていた。

 

「〝なんと麗日、爆豪の近距離からの爆破に耐えたぁ!!根性はいってんぞおい!!〟」

「〝これで麗日さんの個性が――――〟」

耐えきった麗日さんの個性がかっちゃんを浮かす、そう思ったとき、麗日さんは力なく地面に倒れ伏した。そしてミッドナイトが二人の間に割って入る。

 

「うぅ……まだ……」

「麗日さん行動不能!爆豪君、二回戦進出!!」

麗日さんが地面でまだ(もが)くも、ミッドナイトが戦闘継続不可能と判断し、かっちゃんの勝利を言い渡す。

 

「おい……」

かっちゃんが倒れる麗日さんへつかつかと歩いて近づく。

かっちゃん、一体なにをする気なんだ…?

 

「なかなか根性あるじゃねえか、デクと俺のしたっぱくらいには、してやってもいいぜ……()()

かっちゃんはニヤリと笑いながらそう言って、ジャージの上着をボロボロの麗日さんに投げて被せた。やっぱかっちゃんって口調は荒いけど丸くなったなぁ。

 

そうして、麗日さんを載せた担架が退場し、かっちゃんも別方向へと退場した。

 

「〝ああ、麗日……よく頑張ったよ。あ、あとバクゴー二回戦進出ー〟」

「〝私情すごいですね!?〟」

僕は感情丸出しのプレゼントマイクに突っ込む。

 

「〝私情と言えば、終盤二人ともお前の名前出しながら戦ってたな!そこんとこドーナノ緑谷ぁ!?〟」

「〝めっちゃ恥ずかしかったんだから、掘り返さないでくださいよ……けど、それと同じくらい、いやそれ以上に誇らしく思いますよ。彼らの思いに応えられるよう、立派なヒーローに成らなくちゃ、って感じです〟」

「〝もっと恥ずかしがるのかと思ってたのに、こいつぁ熱いな!!―――しっかし、会場ボッコボコッ!会場の修繕と切島鉄哲の回復もあるし、一回戦も終わったことだし、ここらで小休憩だな!それが終わればいよいよ第二回戦の始まりだ、んじゃそゆことで!〟」

プレゼントマイクが小休憩を告げて、マイクを切ってだらけ始める。

 

「僕、ちょっとトイレ行ってきます!」

「おう、いってらー。漏らすなよー」

僕はプレゼントマイクにそれだけ告げて、解説席を後にした―――――

 

 

 

――― 麗日 side in ―――

 

「はぁ、完膚なきまでに負けてしまった……」

私はリカバリーガールの治療を受けたあと、誰もいない保健室で独り言を呟きながら、ベッドに腰掛け、ぼーっと考え事をしていた。

 

『デクと俺のしたっぱくらいにはしてやってもいいぜ……麗日』

先程の爆豪君の言葉を思い出す。したっぱって、普通に相棒(サイドキック)でええやん!……そういえば爆豪君が名前呼んでくれたの、初めてな気がするなぁ…

 

そんなことを考えていると、ドアをノックする音が部屋に響いた。

 

「はい、どうぞー」

「麗日さん!怪我大丈夫!?」

「デクさん!?」

そこに現れたのは解説席にいたはずのデクさんだった。忙しいはずなのにわざわざ心配できてくれたんやろか?なんか申し訳ないけど……嬉しいな。

 

「リカバリーガールの治癒で大体治ったよ、体力の関係で小さな傷は残ってるけど、大丈夫!」

私は笑顔で大丈夫なことをアピールする、来てくれたんやしもう心配かけれん!

 

「いやぁ爆豪君強いねぇ、完膚なきまでにやられたよ!まさかあの作戦を一撃で破られるとは思ってなかったぁ!」

「…麗日さん……」

私は出来るだけ明るく振る舞う、しかしデクさんは心配そうな顔をやめない。あかん、もっと明るく元気にいかないと、デクさんに心配かけちゃう…!

 

「最後も気合い入れて耐えてみたは良いものの、結局力尽きちゃったし!もっと頑張らんといかんなぁ私!」

「大丈夫……?」

「よっと!ほら大丈夫!意外と大丈夫!」

私はベッドから少し跳ねて立ち上がり、弱気を晒さないよう、さらに明るくおどけてみせる。大丈夫だよデクさん、私迷惑かけないからね。

 

「デクさんに対して恥ずかしくないヒーローになるために、まだまだ負けてられんよ!だから―――」

「麗日さんっ!!」

私の言葉を遮ってデクさんが大きな声で私の名前を呼ぶ。

 

「どうしたん?おっきな声やね!流石デクさ―――」

「もういいんだ麗日さん!―――悔しかったよね…今は悔しがってもいいんだ」

「えっと、その……大丈夫…やから……」

デクさんがそんな言葉をくれる。ダメだよデクさん、今そんな言葉もらったら私、私は……

 

「よく頑張ったね、だから…いまは泣いてもいいんだよ、麗日さん」

「…デクさん……」

デクさんは私に優しく語りかける。ダメダメ、堪えろ私。泣いたらあかん…これ以上は甘えたらあかん…!

 

「麗日さん……負けても転んでも、また…立ち上がればいいよ。きっと君にはそれが出来る!」

「―――デクさんっ!!」

デクさんがそう言いながら私に手を差し伸べる、彼には私の痩せ我慢なんてお見通しみたいだ、ホントにデクさんはすごい。

私はもう涙が堪えられず、衝動に任せてデクさんの胸へと飛び込んだ。

 

それから私はデクさんの胸で声を押し殺しながら泣き続けた。デクさんは時折大丈夫と言いながら、私の頭を優しく撫で続けてくれた―――

 

 

 

 

 

―――暫くして私は泣き止んだ。なにか言わなきゃって思ってそのままの体勢でデクさんを見上げる、けど言葉が出てこない。ああ、顔あっつい!はずい!あかん…どうしよ!?

 

永遠にも感じられるような短い沈黙、その時だった。

 

「おい、生きてっかぁ丸顔。そろそろ上着かえ―――」

「「あっ」」

爆豪君が上着を取り戻しに保健室へとやってきた。互いに目が合い、私とデクさんの声が重なる。

 

「……」「……」「……」

誰もこの状況を言葉に出来ず、沈黙が流れる。

 

「―――あー、あれだ……邪魔したな。上着は後で返しにこい」

そして爆豪君がそれを断ち切り、踵を返して立ち去ろうとする。

 

「ちょ!ちょっと待って爆豪君!!違うから、いや違わんけど、そういうんじゃないから!!」

「そ、そうだよ、かっちゃん!僕と麗日さんがそういうのとか、そうじゃないからね!ねっ?」

私とデクさんはあたふたしながら、爆豪君によく分からない言い訳をかます。

 

「いや別に俺は気にしな―――」

「とにかく!!そういうんじゃないの、わかった?今見たことは忘れて、いいね…?」

「お、おう……」

私は爆豪君の肩を掴んで、有無を言わせず納得させた。

 

「〝さあ、会場の準備も出来て、切島と鉄哲も準備が整いそうだ!あと、緑谷クソ長くね!?早く戻ってこーい!〟」

「やばっ!じゃあ僕そろそろいかなきゃ!またね、二人とも!!」

プレゼントマイクの放送が入り、デクさんはそう言うと駆け足で去って行ってしまった。やっぱり抜け出して来てくれてたんだ…!

 

「上着は――っと!じゃあ俺もいくからな、あんまデクに迷惑かけんじゃねえぞ、丸顔」

自分の上着を取り戻した爆豪君は、私にややトゲのある言葉を残して保健室から出ていった。

 

そして私は保健室に取り残され、また一人になった。

 

はあ、デクさんはやっぱりすごいなぁ、私のヒーローだよ、もう!

そういえば―――なんで私はあんなに必死に爆豪君の誤解を解こうとしたんだろ……うーん、よくわからんね!

 

そのあと、父ちゃんたちから電話がかかってきて、私はまたそこでもちょっとだけ泣いたのだった―――

 

 

――― 麗日 side out ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 飯田 side in ―――

 

 

第一試合も一通り終わり、小休憩に差し掛かった。そのとき僕のポケットの中身が震えた。マナーモードに設定しておいたスマホに電話がかかってきたようだ。

 

「ん?母さんから……?いったいなんだろう?」

僕は応援席から外れ、電話に出るため移動する。

 

「もしもし、母さん?どうしたんだい?いま競技の間なんだが―――」

「天哉……落ち着いて聞いて!天晴が―――兄さんがヴィランに……!!」

「――は?」

僕は母さんの言っていることがよく理解できなかった。兄さんが……なんだって!?

 

 

そんな…あり得るわけがない。兄さんが……僕の憧れのヒーロー“インゲニウム”が―――

 

 

 

――――ヴィランなんかにやられるわけがない……!!!

 

 

――― 飯田 side out ―――

 

 

 




唐突に飯田君を押し出していくスタイル―――


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