デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

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毎度のことながら、若干のキャラ改変があるので、ご了承下さい!




戦いは止まらないからススメ!

遂に始まったトーナメント戦、第一回戦は順調に進み、最終試合で麗日さんとかっちゃんの戦いがあった。前世の時よりひどい怪我を負った麗日さんが心配になった僕は、解説席を抜けて保健室へと向かう。

悔しさを押し殺して無理をしていた麗日さん、僕は救けたいと思って彼女を慰めた。その現場をかっちゃんに目撃されるっていうハプニングがあったけど、少しでも助けになれたかな…?

 

 

 

「〝さて、緑谷もよーやく戻ってきたところで、早速切島と鉄哲の腕相撲対決だぁ!〟」

「〝大変お待たせしてすいません!〟」

僕は解説席に戻り、プレゼントマイクと会場のみんなに謝罪する。

 

「〝―――じゃあ、カッチカチアームレスリングゥ!スターート!!〟」

プレゼントマイクの合図で勝負が始まる、その結果は前世と同じで切島君の勝ちとなり、二回戦進出の切符を掴んだのだった。カチカチと勝ちを掛けていたんだろうか?

 

 

―――そして二回戦が始まった、第一試合は障子君 対 轟君、一回戦と同じように轟君が氷壁で障子君を凍らせて終わりだろう。そう思っていたのだか、それは僕の思い違いだった。

 

「〝轟!一回戦とは違い、ピンポイントで障子の手足だけを凍りつかせたぁ!!〟」

「〝かなり精密な個性の使い方ですよこれは!すごいです!!〟」

轟君は巨大な氷壁を作らず、障子君の足元と背後に氷壁を作り、その手足を拘束した。消耗も抑えて相手も抑える、まさに妙技、理想的な個性の使い方だろう。

 

「降参しとけ、障子。踠くと痛えぞ…」

「ぐっ……まだだ、これくらいで参るわけにはいかない……!」

轟君が降参勧告をするも、障子君はまだ諦めていない。

 

「筋肉同盟の…砂藤と緑谷……友と鍛えたこの筋肉は伊達ではっ!ないっ!!!」

障子君は6本の腕と2本の足の筋肉を滾らせ、氷の拘束を破壊して抜け出した。

 

「〝なんとぉ!障子!拘束を筋肉でぶっ壊して脱出ぅ!パワーで力押しだー!!〟」

「〝筋肉と個性を活用した、この場での最善策でしょう。しかしその代償として障子君の手足はボロボロです、一方轟君はほとんど消耗もなく依然として有利な状態ですね!〟」

 

 

 

 

「…どいつもこいつも、緑谷緑谷、筋肉筋肉って……うるせぇんだよ…」

轟君の纏う雰囲気が変わる。そして見たものを凍り付かせるような、とても冷たい視線を障子君へ向ける。あの視線に籠められているのは―――

 

「……クソ親父…緑谷―――」

「〝ダメだ!!轟君っ!!!〟」

 

―――重く冷たい……殺気そのものだ!!!

 

「―――見てろっ!!」

「――!!参った!」

障子君がそれを感じとり降参をする。しかし轟君の右足はすでに地面を踏み抜いていた。

 

―――しかし、その足から絶対零度の一撃は出なかった。

 

「そこまでだ、轟。障子の降参が早かったからいいものの…次やったら退場にするからな」

相澤先生が鋭い眼光で轟君を居抜き、その個性を消していた。だが会場の空気は凍りついていた……

 

「轟、相手の力量に見合う攻撃を出来るようにしろ、ヒーローがヴィランをウッカリ殺してしまいましたじゃやってけねえぞ。実力あんだからそういうのもこれから学んでいけ」

「――っ!すいません…熱くなってました……」

相澤先生は轟君を諭し、轟君も謝る。まるで教師みたいだ…!

 

「障子、お前は良い判断だった。安全な状況が確保出来るなら無理せず退く、それもプロとしてやってく重要なポイントだ。もちろん退けないときもあるがな、今は地力を上げて対応出来るようになればいい」

相澤先生はさらに障子君にも評価をしていく。

 

「主審、ジャッジは?」

「え、ええ。障子君降参により、轟君が準々決勝進出よ!」

相澤先生がミッドナイトを促し、決着がついた。

 

「わりい、熱くなりすぎた…」

「真剣勝負の場だ、気にするな。いい試合だった」

轟君が障子君に謝り、二人は握手を交わす。

 

「〝クールッ!まるで教師みたいだったぜ、イレイザー!!〟」

「俺は教師だぞ、マイク」

「〝ときどき忘れんだよな!そういや俺も教師だったぜ!―――さあて決着がついて、ノーサイドになったところで、どんどん次にいこうぜ!アーユーレディ!?〟」

プレゼントマイクが相澤先生を弄り、その場の空気を和ませる。そして会場を煽り、再び熱気が戻ってきた。

 

やっぱり雄英の教師陣はスゴい、この状況をあっという間に丸く納めてくれた!

 

―――そして、プレゼントマイクの言葉の通り、第二回戦もどんどんと進んでいった。

 

塩崎さん 対 飯田君、飯田君が開幕レシプロバーストで首根っこ掴んでそのまま場外へ、“速さは強さ”を地で行く戦闘スタイルだった。なんか飯田君のテンションがやたらと高かったが、なにかいいことでもあったんだろうか?

 

拳藤さん 対 常闇君、常闇君が無敵の黒影(ダークシャドウ)でオラオラして、一方的な試合展開で勝利。近接格闘型の拳藤さんでは中距離操作型のスタ……個性を持つ常闇君には触れられなかった。

 

切島君 対 かっちゃん、かっちゃんが容赦ない絨毯爆撃で、切島君の硬化を突き破り勝利。ラッシュを決めるかっちゃんの顔はとても悪魔的で、尚且つ楽しそうだった……

 

また小休憩を挟んだのちに、準々決勝が始まる。一試合目は轟君 対 飯田君、登り調子の飯田君が強個性の持ち主の轟君にどのような戦いを挑むのか―――――

 

 

 

 

 

――― 飯田 side in ―――

 

遂に準々決勝までコマを進めることが出来たぞ!確かに轟君の個性は強力だが、付け入る隙が全くないわけではない!!

僕には少しの隙でも充分だ、速さでその少しを最大限に活かして、勝利を掴むのさ!!

 

「〝トーナメントもいよいよ終盤!準々決勝第一試合は轟 対 飯田の対決だぁ!お互いここまで相手を速攻で仕留めてきた同士、スピード決着が予想されるぜっ!!〟」

 

「さあ、ゆくぞ!轟君!!スピードと言われては、尚更負けられない!!」

「やたらとテンションたけえな…飯田」

「ハッハ!個人的な事情だ!気にしないでくれたまえ!!」

「そうか、なら俺も個人的な事情で機嫌が悪い……先に謝っておく、やりすぎたらわりいな」

僕と轟君はそんなやり取りを交わす、互いに事情があるとは奇遇だな!だが負けられない!

 

僕のテンションがこんなに高いのにはモチロン、理由があるのだ。

 

「〝それではレディィイイイ!スターート!!!〟」

 

 

―――それは、第一回戦終了後の小休憩の時だった。

 

「―――兄さんがヴィランに……!!」

「――は?」

母さんからかかってきた、兄さんがヴィランにやられたという知らせ。僕は理解に時間がかかる、信じたくなかったからだ。

 

「兄さんは!無事なのか!?生きてるんだよな、母さん!!」

「天晴は怪我してるわ…!全然無事じゃないわよ!こんなことならヒーローになんて―――」

「どういうことだ!?と、とにかく、僕も直ぐに病院にいく!いまどこの病院にいるんだ!?」

僕は母さんに兄さんの安否を訪ねるが、わかったのは怪我をしてることと、母さんがとても動揺していることだけだった。こうしてはいられない、直ぐにでも兄さんの元に向かわねば!!

 

「なにいってんだ天哉!お前まだ競技の最中だろ!」

電話口から母さんではない声が聞こえて、僕を叱る。なんでだ…!この声は―――

 

「兄さん!?天晴兄さんなのか!?どういうことなんだ……兄さんがヴィランにやられたのにその兄さんが電話に!?」

「落ち着け、天哉!俺は死んじゃいない、母さんが大袈裟過ぎるだけだ」

「大袈裟なもんですか!大事な息子が大怪我したのよ?心配するじゃない!!」

「わかったよ、心配かけてごめんよ母さん。でもこの通り、大した怪我じゃないから!」

動揺している僕を尻目に、母さんと兄さんは電話口で言い合いをする。兄さん、思ったより元気そうだ……良かった…!

 

「兄さん、説明してもらってもいいかな?」

「ああ、どこから話すかな―――よし、最初から順序立てて話そう」

「ならそれで、よろしく兄さん」

僕は兄さん説明を求め、兄さんがそれに答える。さあ聞かせてもらおう、なにがどうなったのかを…

 

「ことのきっかけは、今から1週間くらい前、うちの事務所に一本の電話が入ってきたんだ。相手先はなんとあのオールマイト事務所!

内容としては俺らの活動拠点のうちのひとつ、保須市に凶悪なヴィラン、ヒーロー殺しが出没する可能性が高いから警戒するように、ってものだったんだ。

それに出没するのは路地裏なんかの人目につかない場所だとか、個性の特徴だとか、具体的な出没の日にちとか、詳しく教えてくれたんだ。超一流ヒーロー事務所ともなると、調査力も凄いんだなって思い知らされたよ。

それで、そのアドバイスに従って四人一組(フォーマンセル)の警戒態勢で巡回をしていたんだか、ホントに現れたんだよ、ヒーロー殺しが!

発見した途端に戦闘になってな、ホントにイカれたヴィランだったよ。直ぐに警戒中だった他の相棒連中(仲間たち)にも連絡して、チーム韋駄天の総勢60名近くの数で迎え撃ったんだ。

だが非常に凶悪かつ強力なヴィランでな、特にスピードが半端なかった、囲まれないように立ち回りながら、一人ひとり負傷させられたよ、その時に相棒を庇って俺もやられちまってな。結局、数の利があったから負けはしなかったんだが、逃げられたよ……」

兄さんはホントに最初から話してくれた。そんなことが起きていたなんて……

 

「でも兄さん、怪我したんだろ!?大丈夫なのか!?」

「ああ、医者が言うには特に後遺症とかも残らず、ひと月くらいで治るとのことだ」

「ああ、良かった…!兄さんが再起不能になっていたらと思うと、ゾッとするよ」

「警戒してなかったら確かに危なかったな……だが、怪我が治ったら次こそはヒーロー殺しを捕らえてやるさ!」

兄さんはそこまで重症ではないようで、再起とリベンジに燃えていた。

 

「ああ、兄さんならきっと出来るよ!なにせ兄さんは()()()()()()だからね!」

「ありがとうな、天哉。お前もこのあと試合あるんだろ?病院のベッドからテレビで応援してるぞ!頑張れよ!」

「ありがとう、兄さん!兄さんに恥ずかしくないように頑張るよ!!―――」

「おう―――」

 

 

―――というのが僕がテンションが高い理由だ、兄さんが見ているんだ、やる気が出ない訳がない!!

 

 

 

「飯田君、行動不能!よって轟君、準決勝進出!」

 

―――と思ってたのに、僕は負けてしまった……レシプロで短期決戦を仕掛けたが、カウンターでマフラーを詰まらされて、そのまま凍り付けにされてしまった。

 

試合後、僕は落ち込みながらとぼとぼと控え室に戻った。そして荷物をまとめて部屋を出ようとしたとき、スマホに着信が入った。

 

「もしもし……?」

「天哉、お疲れさん。惜しかったなぁ、さっきの試合」

「兄さん…!」

電話をかけてきたのは兄さんだった、しっかりと見ていてくれたらしい……

 

「すいません、兄さん。負けてしまいました…」

「気にするな、ワルくない試合内容だったぞ。あと一歩で場外に押し出せたんだからな」

「でも、轟君の…彼のほうが一枚上手でした。完敗だよ…」

僕は兄さんの励ましに、なおのこと落ち込んでしまう。

 

「そうかも知れないな、でもお前にはまだ来年も再来年もあるじゃないか!こんなとこで落ち込んで立ち止まってられないだろ?」

「兄さん…!」

「俺もお前も一度負けて、倒すべき目標が出来た。ならあとはそれに一直線に最速で向かうだけ、それが飯田家男子ってもんだろ!なあ、天哉?―――」

「うん…うん!そうだね、兄さん!僕、頑張りますよ、そして来年こそは轟君にリベンジを果たす!!―――」

 

僕も兄さんも確かに負けてしまったけれど、決して諦めはしない、僕らは進む、進み続ける。

 

立ち止まらず、進み続ければ……必ず道が開ける。僕らはそう信じているから――――

 

 

――― 飯田 side out ―――

 

 

 

―――飯田君と轟君の対決も終わり、次は常闇君とかっちゃんの準々決勝が始まった。

試合は終始かっちゃんのペースで進んだ、かっちゃんは黒影に爆破を浴びせ続けて、その光で黒影はどんどんと萎縮していく。

そしてそのことに気がついたかっちゃんは止めに閃光弾(スタングレネード)を放ち、強烈な光で黒影を完全に鎮圧、そのまま勝利を掴んだ。

 

しっかしかっちゃん、このトーナメント入ってからイキイキしてるなぁ…相手に向かって存分に個性をぶちかませるのが楽しくて仕方ないんだろうか…?まあ幼い頃から僕がとめてきたからなぁ、真っ直ぐ育ってくれてホントによかった。

 

そして休憩を終えて、遂に準決勝が始まる!

 

「〝きたぜきたぜぇ!トーナメントを勝ち上がってきた二人の猛者!王者緑谷に挑むのはいったいどちらになるのかぁ!!選手入場ーーー!!〟」

「〝ここまで相手を開幕で瞬殺!試合時間の合計がまだ1分にもなってねぇぞ!!ヒーロー科A組!轟焦凍ォォ!!〟」

「〝うってかわってこちらは全試合で相手を爆破し続け、爆発的に観客(オーディエンス)を盛り上げまくって、勝利を掴んできたエンターティナー!同じくヒーロー科A組!爆豪勝己ィィイ!!〟」

プレゼントマイクのアナウンスでふたりが入場してくる、轟君は冷静で無表情に、かっちゃんは悪魔的な笑顔で大胆に、対極的な表情で入ってきた。

 

「〝まともな戦いはおそらくここまで!プロヒーローたちはスカウトの用意しとけよっ!!〟」

「〝どういう意味ですかそれ……〟」

僕はプレゼントマイクに突っ込む、理由はわかるが納得は出来ない!

 

「〝じゃあ始めるぜ!準決勝!レディィイイイ!!!スタァァートッ!!!〟」

プレゼントマイクの合図で試合が始まる、先に仕掛けたのは轟君だ。彼の右足から氷が走り、そのままかっちゃんを呑み込んだ。

 

「〝はっや!これは早速終了かぁ!?〟」

「〝――!!いや、まだです!〟」

 

「―――ッオラァ!!終わんねえつーの、俺が勝つまではなぁ!!」

かっちゃんは氷を爆破で土竜のように掘り進み、派手に突き抜けてきた。荒々しいがあれがかっちゃんのスタイルだろう…

 

「単純なんだよ、半分野郎!開幕ぶっぱなんてお見通しだァ!!」

「今ので終わってくれりゃ、楽だったんだけどな…」

「残念だったな、てめえが終われやっ!!」

かっちゃんと轟君は短いやり取りをしたあと、今度はかっちゃんが仕掛ける。それからは結構一方的な攻撃だった、かっちゃんは轟君の左側に回りながら爆破を浴びせまくる、轟君は氷壁でガードしたり、吹き飛ばされるのを防いだりしていたが、かっちゃんに攻撃を当てられないでいた。

 

「〝開幕からうってかわって爆豪、流れるような連続爆撃で轟を圧倒!!しかも段々速くなってねぇか!?〟」

「〝かっちゃ……爆豪君はスロースターターですからね、後半になればなるほど爆破の威力と連射速度が上がるみたいです〟」

 

「どうしたよ、半分野郎!使わねえのか左側(炎の方)!?まあ、てめえがナメプのまま終わろうと知ったこっちゃねえがな!!」BOOM!!

「――ぐっ!()は戦闘においてぜってえ使わねえ!!」

かっちゃんは爆破で執拗に左側を狙う、左を使わない轟君は()で凪ぎ払うも、それに対応しきれない。

 

「そうかよ!ならヒーローなんて目指すの辞めて、コンビニ店員でもやってなァ!!―――」BOOM!

かっちゃんは爆破の勢いで超加速して、轟君への距離を一気に詰める。

 

「―――こちら暖めますか?ってよおッ!!!」BOOOOM!!!

かっちゃんは勢いに乗ったまま大きめの爆破を放つ、轟君は咄嗟に氷壁を張るもそれを破壊されてそのまま場外へと吹き飛ばされそうなるが、自ら作った氷壁に激突し場外を免れた。

 

「お前もういいわ、本気でやんねえならそっから降りろ。俺が決勝に上がって本気の戦いをやるからよ―――()()とな!!」

かっちゃんは吐き捨てるように轟君に降伏勧告をする。しかし氷壁にもたれかかっていた轟君はその言葉を聞いた瞬間、雰囲気が豹変する。

 

「てめえもか…てめえも()()なのか…!…いや、お前はそういうヤツだったな……」

轟君はゆらりと立ち上がり、怒りのオーラを纏いながら威圧感を放つ。

 

「ああ、そうだよ……俺は奴を見返さなきゃなんねぇ……お前も…緑谷も……右側の力(クソ親父の個性)なんて使わずに一番になって……奴を完全否定する…!」

そして障子君との戦いでもみせた冷たい殺気をかっちゃんへと……いやその向こうにいる()()()()()()()()へと向ける。

 

「ようやくやる気出したのかよ…!ならそれを上から叩き潰すまでだぁ!!」

かっちゃんが轟君へと駆け出す、それに呼応するように轟君もかっちゃんへと駆け出していき、互いの距離が詰まっていく。

 

「ッシャア!!―――空中にあげちまえばなんも凍らすもんねえだろ!」

かっちゃんは下から巻き上げるように爆破を起こし、轟君を土煙と共に舞い上げる。そして反対の掌から爆破を放ち自身も宙へと舞う。

 

「―――そうくると思ってたぜ…」

一瞬で土煙が晴れ轟君の姿が見える、轟君は氷の柱に掴まり迎撃態勢をとっていた。轟君はかっちゃんの爆破で舞い上げられたのではなく、氷柱を伸ばして自ら上に昇っていたのだ。

 

「――ッチ!それごと吹き飛ばしちまえば、関係ねえだろっ!!!」BOOOOOM!!!

「―――ッ!引かねえのかよっ!!」

かっちゃんの爆破が轟君を言葉通り氷柱ごと吹き飛ばし、それと同時に轟君は氷柱を枝分かれさせてかっちゃんの腹へ伸ばして、かっちゃん身体を吹き飛ばした。互いの攻撃で宙で真逆に吹き飛んでいく二人、そしてそのまま―――

 

「両者共に場外!よってこの試合は引き分け!!」

―――場外へとぶっとんでいってしまった。主審のミッドナイトが引き分けを言い渡す。

 

「〝なんと爆豪、轟相討ちでダブル場外だぁ!!ってことはまた簡単な勝負で勝ち負け決めるわけ?〟」

「んーちょっと面白くないけど……そうなるわね」

そして勝敗は簡潔なものへと託されることなったが……

 

「はぁ!?ふっざけんなよ!腕相撲なんざやってられっか!!再戦だ!再戦させろよ!!!」

すぐさま立ち上がったかっちゃんが先生たちに噛みつく。

 

「落ち着け爆豪、まだ腕相撲とは言ってないだろ」

相澤先生がかっちゃんを諭す、しかしかっちゃんは止まりそうもない。

 

「まあ、俺はなんでも良い……勝ち上がるのは俺だからな」

「なめてんのか半分野郎!ぶっ殺してやるからかかってこいや!!」

「だから落ち着け爆豪!あんまり暴れるようなら退場にするぞ?あと轟も煽んな」

轟君とかっちゃんは互いに煽り合い今にも戦いだしそうだ、相澤先生もそれを止めようとするが、二人はまだ落ち着かない。

 

まずいぞ…このままだと二人ともマジで退場にされそうだ。そうなると、自動的に僕が優勝になるのか…?――そんな締まりのない優勝があってたまるか!

 

「こっちは緑谷以外に…用はねえんだ……!」

「俺のセリフじゃ、ボケカス!その半分白髪、全面真っ赤に染めてやんよ!!」

「おい……」

轟君は冷気を漂わせ、かっちゃんは爆破を掌で迸らせる、まさに一発触発の状態だ!間に入った相澤先生のギラついた視線も目に入ってないみたいだ。まずい!マジでヤバイって!!

 

「……それなら合理的に処理しよう、爆豪!轟!二人ともまとめて退じょ―――」

「〝ちょっと待ったーーー!!!〟」

しびれを切らせた相澤先生が二人に退場を言い渡そうとした瞬間、僕はその言葉を遮り、待ったをかける。

 

そして、僕は解説席の窓を開けて、外へと飛び出した。

 

「―――っんん!!ちょっと待って下さい!!」

僕はそのまま会場へと片ひざと拳をついて降り立つ、スーパーヒーロー着地だ!やってみたかったんだよね!

 

「〝ここで緑谷、解説席を飛び出して乱入だぁ!!〟」

「なにしに来た?お前も暴れるようなら……わかってるな?」

楽しそうなプレゼントマイクといまにもぶちギレそうな相澤先生が僕に注目する。

 

「…緑谷ぁ……!」

「デク!後にしろ、半分野郎やったら次はお前との戦いだからな!」

轟君は怒りの籠った視線を僕にぶつけてくる。僕がなにをしたというのか…!かっちゃんは話を聞かないモードに入ってるな、Plus Ultra的な幼なじみの僕にはわかる。

 

よし、言うぞ…!気合い入れろ、心のオールマイトを呼び覚ますんだ!!

 

「どっちが決勝に…なんて決める必要ないですよ!だから―――」

「なに!?まさか―――」

僕は不機嫌な顔の相澤先生に告げる、その顔が驚愕へと変わり、なにかを察する。

 

 

 

「―――二人まとめてかかってこい!!ハンデはそれくらいで丁度いい…!」

 

―――僕は轟君とかっちゃんに宣戦布告する。

 

 

 

「フフフ!いいわ!青臭くって……スゴくイイ!―――緑谷君 対 爆豪君&轟君の変則マッチの決勝戦を認めます!!」

僕の提案がミッドナイトの好みにはまり、主審からの許可が出た。

 

 

 

―――僕ひとり 対 轟君とかっちゃんのふたり。

 

 

 

 

―――決勝直行の特別シードがあった超変則トーナメントは2対1の超変則マッチによって決着の時を迎えようとしている。

 

 

 

 




轟君の闇が深くなっていてすまない―――


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