デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

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果たして11月中に五章が書き上がるのかわからなくなってまいりました…!

今回はあられもないキャラ改変の被害者その4、轟焦凍の話です。



轟焦凍:Fw:オリジン

雄英体育祭最終種目のトーナメントバトル、そのラストを飾るのは学年最強と名高い男、緑谷出久との対決となった。お前には勝つぞ緑谷……お母さんの左の氷だけでお前を超えて、俺はクソ親父を完全否定してやる…!

 

 

 

――― 轟 side in ―――

 

 

今更俺の過去に興味があるやつがいるとは思えないが、簡単に説明すると……ヒーローランキング万年二位のヒーロー“エンデヴァー”が、絶対王者で一位のオールマイトを超えるためにとった、倫理観の欠落したクソみてえな手段“個性婚”。それによって生まれた子供たちの唯一の完成品と称された“道具”、それが俺、轟 焦凍だ。

 

幼い頃からオールマイトを超えるため、俺は厳しい仕打ちを受け続けていた。記憶の中のお母さんはいつも泣いていた、まだ幼かった俺はお母さんがクソ親父のせいで悲しんでいるということしかわからなかった。

ある日、お母さんは俺に「お前の左側が憎い」と言って、俺に煮え湯を浴びせた。それ以来お母さんは俺から引き離され病院へ長期入院。

俺はお母さんを追い詰めたクソ親父を、お母さんの力だけで超えることを自分に誓い、強くなり続けた。

 

中学までの俺は他人から見て、一言で言うなら“特別な存在”だった。No.2ヒーローエンデヴァーの息子で、成績は優秀、運動神経は抜群、将来を期待される優秀なヒーローの卵。俺は周りの評価なんて気にしていなかった、全ては親父を超えるため、自ら積み上げたものだったからだ。

そんな浮いた存在の俺に同級生は褒め称えたり、媚びへつらったり、よそよそしかったりと様々な扱いだったが、積極的に近付きたがる奴はいなくて、おおよそ友達と言えるものもいなかった。まあ気にしたこともなかったんだけどな。

 

雄英高校に入ってからはその環境は変わっていった、個性的で自己主張の塊みたいなクラスメイトたち、そのお陰で俺は特別浮くこともなくクラスに馴染んだ。

でもヒーローを目指すヒーロー科なだけあって、やっぱりここでも俺はエンデヴァーの息子としてしか見られていなかった。只ひとりを除いて……

 

緑谷出久―――入学初日の朝からクラスで騒ぎを起こしていた筋肉のすごいやつ。そいつは個性把握テストの準備の時間に俺の方へ歩いてきて。

 

「僕は緑谷出久、よろしくね。君は?」

そう話しかけてきた。自分からやってきたくせに俺の名前も知らなかったようだ。

 

「轟焦凍だ、エンデヴァーの息子って言えばわかるか?」

あとからバレて騒がれるのも面倒だし自分から言ってしまおうと、気まぐれにそう思って返事をした。しかし緑谷の反応は――

 

「そうなんだ、それじゃヒーロー目指して互いに頑張ろう、轟君!」

――それだけだった。No.2ヒーローの息子だということを、なんてことないように普通に挨拶をしてきた。

 

「なんか普通はあるんだけどな…驚いたり、エンデヴァーについて尋ねたりとかよ…」

俺はついつい思ったことを口に出してしまう、なにせ今までにない反応だったから。

 

「モチロン僕もエンデヴァーは知ってるし、ファンだよ!でも君は轟焦凍君でエンデヴァーじゃない、只の僕の同級生じゃないか!だから君に言うのはこれからよろしくねってことだけさ!」

そう言って俺に握手してきた。こいつは俺を特別視しない、エンデヴァーの息子として見ていない。なんだかそれが少し嬉しかった、こんなやつとなら友達になれるかもしれない。その時はそう思っていた……

 

そして行われた個性把握テスト、そこで俺が見たのは緑谷の圧倒的で規格外の力だった。「スマッシュ!」という特徴的な掛け声と相まって、俺には緑谷がオールマイトみたいに見えた。

あいつは俺を()()()特別視しなかったんじゃない、自分が規格外で特別を超えた“なにか”だから、俺を特別視する必要がなかっただけってわけだ……勝手に膨らませた希望が弾けていった。あいつとは友達になんてなれねえ…あれは超えるべき壁のひとつだ…!

 

それから様々な訓練があったが、俺は緑谷を超えることが出来なかった。そして緑谷の言動や行動の節々から見えるオールマイト染みたもの、俺はあいつがオールマイトの隠し子なんじゃないかと考えたが、緑谷の幼なじみだという爆豪によってそれは否定された。

だがあいつは俺と同じ、トップヒーローになにかを託されたものだということだけは間違いないだろうと思った…

 

USJにヴィランが襲撃してきた際に直に感じた、緑谷とオールマイトの本気の力。俺はそれに気圧された、親父はこんな化け物を超えるために抗い続けてきたのか……やっぱり親父はイカれてやがると、あらためて感じた……

 

クラスのやつらの話を聞くと、どうやら緑谷はオールマイトの弟子だという。関係性がはっきりしたところでやることは変わらねえ、俺は右の力(お母さんの氷)だけで緑谷を超えてトップになるだけだ。そう決意して雄英体育祭に挑む。

 

雄英体育祭の一週間前の夜、傷だらけの親父が話しかけてきた。内容は緑谷を知っているかというものだった、俺が「オールマイトの弟子であるということ以外知らない」とだけ伝えると、一言「そうか…」と言って去っていった。

意味がわからず俺はイラつく、何故親父の口から緑谷の名前が?オールマイト弟子の噂を聞いたのか…?

その次の日から親父は家を空けることが多くなった、でも理由は興味なかった……

 

開会式前に緑谷を意識してじっと見ていると、あいつは俺に話し掛けてきて、全力で頑張れと言ってきた。俺は「お前には勝つぞ」と言おうとしたが、USJでのあの威圧感を思いだして言えなかった。俺はあいつを畏れているのか…?

 

第一種目の障害物競争、俺は適度に周りの妨害をしつつ、堅実に一位を獲る走りをしていた。しかし最後の最後で緑谷が猛追してきて、地雷原に叩きつけられた。後で聞いた話だと、俺の妨害したやつらは悉く緑谷によって助けられたらしい…別に文句を言うわけじゃないが、緑谷の行動が妙にイラつく…

 

第二種目の騎馬戦、中盤で緑谷と対峙した俺は、直接向けられたあの威圧感に思わず、左を使いそうになった。それらしい理由をつけて、その場から離れたものの緑谷には勝てないかもしれないと少しでも思ってしまった自分が許せなかった。苛立ちが俺のなかで積もっていく……

そして最後のあの大暴れだ、すべてを呑み込む暴風、俺は氷でしがみついたものの成す術もなく、振り回されてしまった。

なんとか最終種目には勝ち残れたが、緑谷への畏れと苛立ちだけは消えないどころか増え続ける一方だった。

 

トーナメントの組み合わせが発表され、緑谷が決勝戦まで出てこないということに、俺は安心してしまった。そんな自分が情けなくなり、またも苛立つ。もうこのときの俺は冷静さを欠いていた……

 

 

試合直前、控え室から会場へ向かうまでの道にクソ親父が現れた。

 

「……邪魔だ」

ただ一言、必要なことだけを伝える、そこをどけと。

 

「ひどい醜態だな、焦凍。いい加減子供染みた反抗は辞めて、左の力を使え。そうすれば―――」

「戦いにおいててめえの力は使わねえ!!俺はお母さんの力だけで、勝ち抜いて見せる」

親父の言葉を遮って、俺の決意を叫ぶ。どこまでも人の神経を逆撫でするやつだ……

 

「それではオールマイトの弟子に……緑谷出久には敵わない。お前だってわかっているんだろう?」

「―――ッ!!!黙れ!俺は俺のやり方でてめえを超えてみせる、緑谷にだって勝ってみせる!!失せろ!!」

親父から突き付けられた客観的事実が俺の心を掻き乱す、感情のままに叫び散らし、その場を後にしようと歩き始める。

 

「ふぅ…耳も貸さないか―――頑張れよ、焦凍…」

当たり前のような親子の会話、それさえもいまの俺にはイラつく原因でしかなかった。その言葉を無視して俺はその場を去った。

 

感情に苛まれながら、ふと自分の姿の映る窓ガラスを見る。そこに映る怒りに満ちた自分の眼は、クソ親父のそれと全く同じものだった―――

 

「―――ああっ!!!」

叫びながら窓ガラスを右手で殴って、叩き割る。俺はあんな親父みたいになりたくなくて、お母さんの力だけで戦うと決めたのに……俺が成れたのは親父と同じものなのかよ……

 

俺はもう自分が何に成りたかったのかということすら、思い出せなくなっていた―――

 

そのまま苛立ちを抱えてトーナメントを戦い抜く、瀬呂は会場ごと凍らせてしまう、障子には本気の殺気をぶつけてしまう。相澤先生に叱られ、少し冷静さを取り戻して余計な被害もなく飯田を倒した。

だが準決勝の爆豪戦、爆豪が口にした緑谷の名前に俺はまた冷静さを失う、その結果がダブル場外での引き分け。試合が終わっても苛立ちは消えず、爆豪と言い合いになる……

相澤先生が俺たちになにかを告げようとしたとき、それは上から落ちてきた。

 

「…緑谷ぁ……!」

俺は解説席から飛び出して待ったをかけた緑谷を睨み付ける、この行き場のない感情を容赦なく視線に込めてぶつけた。

 

「二人まとめてかかってこい!!ハンデはそれくらいで丁度いい…!」

大胆不敵な緑谷の言葉、だが俺にはひとりだろうと二人だろうとどうでもよかった。お母さんの力で緑谷を倒し、親父を見返す、もうそれ以外のことは考えられないほど、俺の心は掻き乱れ、ぐちゃぐちゃになっていた―――

 

 

 

 

――――しかし、そんなことが夢物語だと思い知らされたのは試合開始からたった数分後だった。

 

「クソがぁ!!なんであたんねぇんだよ!!」BOOM!!

爆豪が吠えながら爆破を放つ、緑谷はそれを大回りで避けてそのまま爆豪の足を払って転がす。

 

速すぎる…!屋内戦闘訓練の時の比じゃないスピード。あのときはあれでも建物を壊さないようにセーブしていやがったのか…!化け物め……

 

「下がれ爆豪!邪魔だ!」

「俺に指図すんじゃねえ!半分野郎が!!」

邪魔な位置にいる爆豪を退かしてから、地面を凍らせて緑谷を包んでみても、あいつは俺の氷結をスナック感覚でポキポキとへし折り、何ごともないかのように動き出す。

 

くっそ!氷が、お母さんの力がまるで通用しねえ…!規模を大きくしても腕を振るわれて氷壁を破壊されちまうし…背後に氷壁を張ってなかったら何回場外になってるかわからねえ…!どうする?どうすればあの化け物を止められんだ…!!

 

「震えてるよ、轟君」

「―――ッ!!」

「君自身耐えられる冷気に限度があるんだろ…?でもそれって左の力を使えば解決できるんじゃないのか…?」

緑谷は片手で爆豪のラッシュを捌きながら、俺に話しかけてくる、俺の許容限界を見抜いているようだ。自分でもわかってんだよそんなことは!でも―――

 

「―――俺は戦闘において、左は使わねえ!!」

「……みんな全力で――ぶはっ!?」

俺が足から伸ばした氷壁を砕いている隙に、爆豪が緑谷の顔面に爆破を食らわせ、その言葉を遮った。しかし緑谷は怯むことなく爆豪の右手と右足を掴む。

 

「かっちゃんちょっと邪魔だ!また後でっ!!!」

「んな!?うおおおぉぉぉぉ―――――」

そして爆豪を上空高くへとぶん投げる、あっという間に爆豪の姿が見えなくなってしまった。馬鹿力ってレベルじゃねえぞ!というか爆豪のやつ、死ぬんじゃないだろうな…!

 

「どこみてるんだ…!」

「――うぐっ!?」

「半分の力で僕に勝つ!?僕はまだ君に傷ひとつ、つけられちゃいないぞっ!!」

「グッハァっ!!――」

気が付くと緑谷は目の前にいて、俺の腹に拳をいれていた。立て続けに左右のパンチが伸びてきて、俺はブッ飛ばされる。

 

「場外なんかでまだ終わらせやしないぞ!」

緑谷は吹き飛ぶ俺の足を掴んで、会場の真ん中へと投げ飛ばす。俺は地面を転がり、踞ってしまう。

 

俺はその痛みの中で……忘れていたお母さんの言葉が頭に響く。

 

『いいのよ、おまえは――――――』

その言葉の続きは思い出せない、いつの間にか忘れてしまった……

 

「俺は!お母さんの力でお前に勝つッ!!」

「ふんっ!―――みんな全力でやってんだよ!」

俺は倒れながらも地面に氷を走らせる、しかし緑谷は腕を軽く振るってそれを粉々に砕いた。

 

「勝って、将来の目標に近付くために!みんな全力で!!“ヒーロー”に成るために!!!」

「―――!!」

緑谷の言葉に俺はハッとして、眼を見開く。そうだ…俺は―――

 

 

『でも、ヒーローにはなりたいんでしょう?いいのよ、おまえは――――』

 

 

 

「いつだって全力で誰かを助けに行ける人を、ヒーローって呼ぶんだよ!半分の力で助けてやろうなんて、ふざけんな!ヴィランを倒せればヒーローだなんて思ってんじゃないだろうな!?君はなんに成りたいんだよ!!?」

「俺は―――」

緑谷の叫びが響く、忘れかけていた俺の成りたかったもの、お母さんとの思い出、少しずつ甦ってくる記憶。

 

そうだ、俺は成りたかったんだ―――

 

 

 

 

「だから()()でかかって来い!!使えよ!その()()()を!!」

―――左の力、その言葉を聞いた途端、俺の頭の中をクソ親父への怒りの炎が焼き尽くす。

 

俺からお母さんを奪ったあのクソ親父…!あんなやつの力なんかに俺は頼らねえ……俺はお母さんの力で……あいつを超えるんだ…!

 

「……クソ親父の差し金かなんかなのか……てめえは…!!!」

「―――!?」

俺は燃え盛る怒りの炎をその視線に込めて緑谷を睨み付ける、俺の発する冷気で周りの空気がパキパキと音を立て凍り付いていく。そして緑谷の顔が曇った…そんな顔が見たかったんだよ…!

 

「俺はお母さんの力だけでいい……クソ親父の力なんか―――」

「君の!力じゃないか!!右の氷も左の炎も、どっちも君の力だ!それに左の力がエンデヴァーのヘルフレイムだっていうなら――――僕が確かめてやる…!使ってこいよ…君の炎を…!!」

「――は?」

なにをいってるんだこいつは…左の力が俺の力?そんなはずない、これは親父の力だ。それを確かめる…?

 

「お前は親父の炎を知ってんのか!?あの炎を食らったことがあるっていってんのかよ?そんなはず――」

「あるよ、だから使ってこいよ。エンデヴァーの力は本物だ…君だってわかってるんだろ?エンデヴァーの本質が何なのかって」

「――!!やめろ!!」

緑谷は親父の炎をその身で味わったという、俺だって親父の力が本物で強力なことは理解してる……でもその先は認めたくない…!

 

「やめない、エンデヴァーはヒ―――」

「やめろっつてんだろぉお!!!」

話すのを止めない緑谷を黙らすために、俺は巨大な氷壁を作り出して、緑谷を覆う。くっそ、許容限界ギリギリまで力つかっちまった……身体が芯から震える、それでもその先を聞きたくなかったんだ…

 

「……確かにエンデヴァーは家庭ではダメな人だったかもしれない…君の味わった苦痛も苦悩も僕には計り知れない……簡単にわかるだなんていえないよ。でも人は変われるんだ!あの人はそのために歩き始めたんだよ!だから君も向き合わなきゃ駄目だ!!」

目の前の氷壁に亀裂が走り、そして砕け散る、中からはほとんど無傷の緑谷が出てきた。そして俺に語りかけてくる、後半はなにを言っているかわからねえ……

 

「…なんの話してんのか、わっかんねぇよ!!」

「君らの話さ!いい加減認めろよ、君のお父さんがなんなのか、君が何に成りたくてここに立っているのかをっ!」

俺は緑谷に喚くも、緑谷は反論しながらこちらへ走って近づいてくる。

 

「エンデヴァーは―――“ヒーロー”だっ!!!」

緑谷の拳が俺の左頬に刺さり、俺は数メートルぶっ飛び地面に倒れる。

 

わかってんだよ……あのクソ親父がヒーローだってことぐらい……だから俺はヒーローに成りたくなくて……それでも―――

 

 

『でも、ヒーローにはなりたいんでしょう?いいのよ、おまえは――強く想う将来(ビジョン)があるなら――――』

 

 

 

「立てェ!!焦凍ォォ!!!」

クソ親父の声が聞こえる、観客席から叫けんでんのか…!

 

うるせえよ…!言われなくても立つってんだ……俺は俺の力で立ち上がれる…!

 

 

『血に囚われることなんてない―――』

 

 

 

「―――!!!」

俺はよろよろと立ち上がり、喚く親父を睨み付けるため観客席に目をやる、しかしそこに見えた光景に言葉を失った。

 

「なんで……どうして…そこに……そんなとこにいんだよ―――」

 

 

 

 

 

 

 

「―――お母さん!!」

親父に寄り添うように立つお母さんの姿…その横には姉さんの姿も見える。

俺の理解を超える光景に頭の中がぐちゃぐちゃになる、いろんな感情がごちゃ混ぜになってなにも考えられない。

 

 

「……頑張って、焦凍」

本来なら会場の喧騒に呑まれて聞こえない筈の、お母さんのちいさな声、でも俺にはお母さん声援が確かに聞こえた…

 

 

『――――なりたい自分に、なっていいんだよ』

 

忘れていた、お母さんの言葉が甦った。

 

 

瞬間、頭の中が真っ白になり、俺の左側から炎が吹き出す。燃え盛る炎の熱で、身体の震えが止まった。

 

「緑谷……おまえがなにをしたのかも、これから俺はどうしていけばいいのかも、今はわからねえ……でも、お前を全力で倒す!―――俺だって、ヒーローに…!!」

俺は緑谷と再び対峙する、今度は親父とお母さんから授かった俺の力を携えて、俺の持ちうる全力で挑む…!

 

「来いよ!轟君!!……でもその前に―――」

緑谷は俺に言葉を投げながら、上を向く。なんで上なんかを…?

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!」

「――スマァァッシュッ!!!」

上空から爆豪が必殺技を放ちながら落ちてくる、緑谷はそれに対抗するため、アッパーを放ち暴風を生み出す。爆破と暴風、2つの衝撃が打ち消しあい、辺りには激しい風が巻き起こりすべてをふきとばさんとする。俺は吹き飛ばないように、姿勢を低くして耐えた。

 

「おかえり、かっちゃん」

「おかえりじゃねえわ!!殺す気か!!てか俺じゃなきゃ死んでただろあれ!!」

「かっちゃんなら大丈夫かと思って…!」

「まあいい、話は終わったか?まあもう待つ気なんてありゃしねえがな!」

緑谷と爆豪があんな衝突の直後だというのに、普通に会話をしている。なんなんだこいつら……

 

「爆豪、俺ひとりじゃ緑谷は倒しきれねえ、手を貸してくれ…」

「ああ!?勝手にしろ半分野郎!俺はひとりでも挑むけどよぉ!!」

「ふっ…じゃあ勝手にやるぜ。それと俺はもう―――半分野郎じゃねえ」

爆豪と協力して緑谷を倒す、そして俺は全力の証明に左の炎を燃え盛らせる。

 

「――!…そうかよ――んじゃ遅れんなよ、轟!!」

俺と爆豪は二人で全力で緑谷に挑む、俺の氷が足を奪い、爆破と炎がその身体を襲う。冷気と熱気と爆風の嵐の中、緑谷はそれら全てを正面から捩じ伏せた。二人がかりで全力でもまるで敵わないってのか…!

 

 

「爆豪!小技じゃ埒が開かねえ、大技で一気に決める…!合わせろ!!」

「てめえが俺に合わせろや!!」

「いくぞ…!!!」

俺は全力で氷の力を使い、会場を覆い尽くす巨大な氷塊を作り出して、緑谷を閉じ込める。これで封殺出きるような相手ではないのはわかっている。

 

「いいね……君らの全力…!なら僕も全力中の全力で答えなきゃいけないな!!」

氷の中から楽しそうな緑谷の声が聞こえる、この状況で笑っていやがるのか…!だが、俺も爆豪も気が付けば頬の端を吊り上げながら戦っていた。

氷がビキビキとひび割れていく、砕かれた瞬間が勝負の時―――

 

 

―――そして氷塊が内側から砕かれた。

 

「いまだッ!!!!」

左の力を全開で使って、砕けた氷を全て溶かし、さらに蒸発させる。冷えた空気が熱で膨張し、氷が水蒸気となりその体積を爆発的に増したことで、何者をも吹き飛ばす熱風が辺りに吹き荒れる。自爆同然の範囲攻撃、しかし今の俺はひとりじゃない――

 

 

「ぶっ飛べ、デクゥゥ!!!」

爆豪の全力の爆破が俺らに向かう熱風を相殺し、緑谷のだけがその熱風に呑み込まれ吹き飛ばされる――――

 

 

 

―――はずだった……炎を放つ瞬間氷の向こうから聞こえた声……

 

「―――()()()%()!…DETROIT・SMAASH!!!!」

 

俺らの放った熱風は、緑谷が放ったであろう超暴風に呑み込まれ、遥か上空へと霧散させられる、その余波ですら今までの暴風の比では無いほど強力で、叩きつられた空気の圧によって俺は背後の氷壁ごと吹き飛ばされ、爆豪もその暴風を相殺出来ず紙切れのように宙を舞う。

 

気がついた頃には…俺ら場外の観客席の壁に打ち付けられて、横たわっていた…

 

 

 

 

―――勝てなかったか……応援してくれてたのに、ごめんお母さん……これから謝るよ、今までの分まで。

 

 

 

 

―――だからこれからたくさん話をしよう……これまでの空白を埋めるように。

 

 

 

 

 

――――だって俺の、いや俺たち家族はやり直しのスタートラインに立てたんだから……また、一から始めよう、間違ってしまった道のり、そのやりなおしを…!

 

 

 

――― 轟 side out ―――

 

 

 

 




独白ってやっぱり難しい―――!!


今回で終わりの予定だったのに、書き上げてたら書きたいことが増える増える!

次回こそ五章最終回になります!よろしくお願いします!!

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