デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】 作:くろわっさん
サーナイトアイとか出しといて今更ですが、アニメ未登場のキャラが出てくるので、それだけご了承下さい!
雄英体育祭の振り替え休日も終わり、僕は再び学校が始まり最初の授業はヒーロー名の考案だった。みんな僕の前世の記憶通りの名前を名乗る中、飯田君のヒーロー名はインゲニウム2号だった。
そして僕はヒーロー名を発表する、“デク”ではない
―――記憶はオールマイトのあの衝撃の一言まで遡る。
「今日から家を出てこの街に住んでもらうから、そのつもりでよろしく!」
「えっ?……エエエエッーーー!!?」
オールマイトの衝撃の宣告に僕は驚きの声を大きく上げる。どういうことなんだ!?
「この街ってこのヒーローズマンションタウンにですか!?」
「そうだよ、ここなら修行に更に打ち込みやすいし、親元から離れることで君の精神的な成長も見込めるだろう!」
オールマイトは僕の驚きなんて気にせず、当たり前のように話をする。
ヒーローズマンションタウンってのは今僕らがいるこの街の愛称みたいなもんだ。
ここはヒーローの後援者達が共同出資で造り上げたマンションが中心の住宅街だ。プロヒーローの資格を持っている人なら格安でいい部屋が借りれるという、若手駆け出しヒーロー達に人気の物件なのだ。
そんなわけでヒーローが多く在住する土地なので治安が格段に良く、そのため一般の人が部屋を借りたり家を建てる時はかなり割高になっている、しかし後援者やその親族は大体お金持ちなので部屋も土地もバンバン売れていく。
ヒーローにも市民にも得があるまさにWin―Winの街なのである。
「勿論親御さんの許可は得てるからね!じゃあ手続きにいこうか!!」
「えっ!?あ、はい!」
オールマイトの根回しは完璧だったみたいだ、母さんも知ってたなら教えてくれてもいいのに……
その後トントン拍子で事が進んでいき、僕はヒーローズマンションタウンに住むことになった。その日は荷物をまとめるため自宅……いや、実家に帰り、そして衣服なのどの手荷物だけを持って僕は引っ越した。
次の日、昨日と同じ公園に来るようにとオールマイトに言われていたので、向かってみるとそこには四人の人影が、そのうちのひとりはサーナイトアイだ。
「遅いぞ、緑谷出久!ヒーロー足るものもっと迅速に行動しなければならないぞ!」
「すいません、お待たせしましたサーナイトアイ!」
会ってから早々にサーナイトアイに叱られてしまった……まだ待ち合わせの時間前なんだけど…!
「ところでそちらの方々は?」
僕はさっきから気になっていた後ろの三人について尋ねる。
ナイトアイの
「ああ、紹介しよう。彼らは雄英高校の二年生、そしてこれから雄英ビッグ3と呼ばれるであろう才能を持った子達だ、つまり雄英入学を目指す貴様の先輩にあたる。
そしてそれぞれプロヒーローの下でインターン中でな、今回はそれの合間をぬって来てもらったというわけだ」
「雄英高校の先輩!?しかもビッグ3…?」
なんと三人とも高校生だったとは!でもビッグ3ってなんだろう?あとインターンってなに!?
僕の知っているBIG3はベンチプレス、スクワット、デッドリフトの三種の神器とも言える筋肉トレーニングのことなんだけど…たぶん関係ないだろう!
「こっちの黒髪が天喰 環、ファットガム事務所にインターンしている」
「……よろしく…」
黒髪と尖った耳、そして俯きがちでもはっきりとわかる三白眼が特徴的な天喰先輩、よろしくとは言うもののなぜか頑なに目を合わせてくれないな…!僕が何かしただろうか…?
それにファットガムって言えばあのBMIヒーローのファットガムか!?江洲羽を中心に活躍している人気ヒーローじゃないか!
つまりインターンってのは、職場体験の延長みたいなものなのだろう…!
「この娘が波動ねじれ、インターン先はリューキュウ事務所だ」
「ねじれちゃんだよー、よろしくね!――ほら天喰くんも下ばっか向いてないで握手握手!わっ!君、手ぇおっきいね!!」
「波動さん…!わかった、わかったから…!」
波動先輩は名前の通りねじれた水色のロングヘアーが良く似合っていて、くりっとした大きな目が可愛らしい、まさに美少女って感じの人だな…!でもぐいぐい来るタイプの人みたいでちょっと苦手かも……僕も天喰先輩もたじたじだ!
「そして最後が―――」
「通形ミリオだよ!サーの下でインターンしてるよね!よろしく!!」
「よろしくお願いします!―――!!」
サーナイトアイが紹介する前に、つぶらすぎる瞳、金の短髪をソフトモヒカン風に立てている、そして笑顔の通形先輩が握手をするため、手を差し伸べてくる。僕は笑顔で返しながらその手をがっしりと掴んだ―――そのとき身体に衝撃が走る!!
この人…!とてつもない筋肉の持ち主だ…!!掌から筋肉へその力が伝わってきて、僕の筋肉が荒ぶっている!
「―――!……」
ちらりと通形先輩の顔を見ると先程までの笑顔はなく、真剣な表情へと変わっていた、僕の筋肉を彼も感じ取ったらしい…!
「すごいですね…通形先輩…!」
「君もやるじゃないか…!!」
僕らは握手をしながら不敵な笑みを浮かべて互いを評価する。
そしてその手がほどけたと同時に少しだけ距離をとる、更に通形先輩の上着がまるで身体をすり抜けたかのように地面に落ちた。
「!?」
僕はその光景に目を丸くする。いったいなにが起きたんだ!?
だがそれは始まりの合図に過ぎない―――
「POWERRRRR!!」
――“サイドチェスト”!!?なんてキレのある大胸筋なんだ…!無駄なものなどなにもない!それに上腕筋群もキレッキレだ!!これが雄英ビッグ3の実力…!
「――&……POWERRR!」
そのまま今度は“サイドトライセップス”に移行した!?くっ…!やはり大胸筋の魅せ方が上手い!!素晴らしいキレだ!!それにズボン越しにもハムストリングがキレているのがわかるかのようだ!!
―――僕も負けてはいられない…!
僕は着ていたTシャツを脱ぎ捨て筋肉に力を込める。
「スマァァッシュ!!」
力強い掛け声と共に僕は“フロントバイセップス”で対抗する。上腕二頭筋を中心に前面の筋肉を引き締める!!
「―――!!」
ポージングを決めたままの通形先輩の顔が少しだけ曇る。よし、もうひと押しだ!
「今日は上腕二頭筋のキレが最高潮さ!―――スマァァッシュ!!」
僕はそのままクルリと半回転して“バックダブルバイセップス”へと移行する、しかし目線だけは逸らさない。見よ!この上腕二頭筋と僧帽筋と広背筋の織り成す隆起を!!
僕と通形先輩の視線だけが火花を散らし、静寂が流れる……そして二人同時に動きだし、素早く手を差し出して固く握手する。
「素晴らしいよね!上腕二頭筋のキレも勿論だけど、広背筋がデカイのなんのって!!最高だよね!」
「通形先輩もとてつもない大胸筋のキレでしたよ!しかもただキレてるだけじゃない、適度なバルクの中に際立つそれは、まるで筋肉の山脈って感じでしたよ!!」
「ミリオって呼んでくれよ!後輩君!!」
「ミリオ先輩!僕は――――ハッ!?」
僕らは上半身裸で握手をしながら互いを誉めあう、筋肉が筋肉を認め僕らをそうさせたのだ。そしてミリオ先輩に名前を名乗ろうとした時―――背筋がゾクリとした。
「……気はすんだか…?」
サーナイトアイの重く静かな一言が僕らの耳を貫く、ギギギとぎこちなく二人してサーナイトアイの方を向くと、彼はこめかみに青筋を浮かべながら眼鏡の奥から鋭い眼光を覗かせていた。
「「サー、イエッサー!!」」
僕と通形先輩はビシッと敬礼をしてサーナイトアイに向き直る。
「……よろしい。最後に、この緑髪の筋肉が緑谷出久だ、三人よりふたつ年下…15歳だ。事前に話した通りだが…こんなのでも一応オールマイトの弟子をやっている…!」
「よ、よろしくお願いします… 」
苛立ったままサーナイトアイが三人に僕の紹介をする、僕は恐縮したまま、小さく挨拶をした。こんなのですいません…
「ミリオ、緑谷君、いきなり人前で裸になってはいけない…びっくりするだろう……それに今は波動さんもいるんだそ…?」
「スッゴい筋肉だねー、ねえねえそれって生まれつき?それとも筋トレの賜物?もしかしてプロテインの副作用!?」
「アッハハハ!悪かったよね!!でも波動は気にしてない感じだよね!」
三人がそれぞれ言いたいことを言っている、天喰先輩はかなり常識的なようだが、波動先輩もミリオ先輩も自由すぎる!……まあ今の僕が言えた立場ではないんだけども…
「無駄話はそこまでだ、今日貴様達に集まってもらったのは雑談をするためではない…」
「…そういえばなんのために僕らは顔合わせしたんですか?」
「それをこれから説明する、話の腰を折るな…!」
僕は疑問を口に出してしまい、またもサーナイトアイに睨まれる。
「貴様達にはこれから合同で訓練を行い、そして互いを高めあってもらう」
「はいはいー、訓練ってなにするの?もしかして筋トレ?通形とか緑谷君みたいにマッチョなるの?私やだなー」
サーナイトアイの言葉に波動先輩が挙手をして質問から感想まで一気に喋り抜ける。ホントに自由だなこのひと…!
「いや、そういう基礎的なものは各自でやってもらう、合同で行うのは戦闘訓練だ、まあ形式はその都度変える予定だがな」
「戦闘訓練ですか、分かりやすくていいですね!サー!」
サーナイトアイの説明にミリオ先輩が納得したように返事をする。戦闘訓練ってことは僕が先輩達と闘うのか…?
「お言葉ですが、サーナイトアイ。やめておいた方がいいんじゃないですか…?緑谷君がいくらマッチョでオールマイトの弟子だからとはいえ、まだ中学生です。加減を間違えれば大怪我することだってあり得るし、なにより彼の心が折れてしまうかもしれない……特にミリオは手加減が下手ですから……」
「くぅ~!言うねぇ環。バッサリだよね!!」
天喰先輩は俯きながらサーナイトアイに忠告する、ミリオ先輩は笑いながらも否定はしていないみたいだ。僕の身を案じての発言なんだろうか……先輩達の実力が未知数な以上、ないとは言い切れないけど…
「確かに年齢や実戦経験を考えればそうも言いたくなるか……よし、なら見て確かめるのが早いだろう。向こうにヒーロー用の訓練場がある、そこでミリオと緑谷出久で闘ってみろ」
サーナイトアイはそう言って歩き始める、僕達は少し戸惑いながらもついていった。
訓練場では既に何人かのプロヒーロー達が訓練をしていたが、サーナイトアイが話を通してその一画を借りる。そしてサーナイトアイの指示で僕とミリオ先輩が闘う準備が整った。
「サーナイトアイ、ホントにやるんですね…ミリオ、やり過ぎるなよ…!」
「通形は最近メキメキ強くなってるからねー、緑谷君これは辛いよー。ボコボコされて泣いちゃうかもよ?ねえ天喰くん?」
「ミリオは昔から強いよ……ただ最近目に見える形になっただけさ」
天喰先輩と波動先輩のそんな会話が聞こえてくる、二人とも僕がやられたあとのことしか心配していないみたいだ。
ミリオ先輩はそれほどまでの実力者なんだな……油断はしない、全力でいこう…そして僕の力を先輩達に認めてもらうんだ!
「加減かぁー!そーゆうの苦手なんだよね!でもまあ気を付けるよ!」
「ミリオ、先に言っておく。全力で行け、オールマイトの弟子を名乗るってのは甘くないぞ。緑谷、貴様も全力で行け、私の育てたミリオは……強い!」
ミリオ先輩とやり取りをしつつサーナイトアイは僕にも活を入れる。言われなくとも…ですよ!!
「それでは―――始め!!」
サーナイトアイの掛け声で闘いが始まる。
まずは速攻!先手をとって優位に立つ!!ワン・フォー・オール――フルカウル80%!!―――
「―――スマァァッシュ!!」
僕は跳躍して一気に距離を詰めて、拳がギリギリ届かない位置で腕を振り抜く。ワン・フォー・オールの超パワーで振るわれた腕はその衝撃を空気へと伝播させ、その結果激しい風が巻き起こる。
オールマイトのSMASH!!を見て、その余波である暴風を攻撃に転用した、僕が最近になって開発した必殺技――非殺傷牽制・遠距離攻撃用エアスマッシュ!……やっぱこの名前長いな、打つときはスマッシュだけしとこう、なんかこの先やたらといっぱいこの技を使うときが来る気がするし!
僕のスマッシュの暴風は猛烈な勢いでミリオ先輩の身体を吹き飛ばす―――
「――ツ!?いない!?」
―――吹き飛ばされたのはミリオ先輩が着ていた服だけだった、そこにミリオ先輩の姿はない。
「――いったぁ!!……後ろ!?」
疑問に思う間もなく、首の後ろに強い衝撃が襲い、身体のバランスを崩してコケる。
「あれ?今ので終わりだと思ったんだけど……んー、予想より全然頑丈だよね!!」
後ろを振り向くと、腕を手刀の形に構え、首を傾げてすっとぼけた様子のミリオ先輩がいた―――
思い出したぞ……どこかで見たことある顔だと思ったら去年の雄英体育祭で成績こそ振るわなかったもの、やたらとインパクトを残していった全裸の人だ!
こんなに強い個性だったのか?……いや、おそらく強い個性に仕上げたのだろう、今の一撃からは研鑽された鋭さを感じた。
「まだまた!こんな程度じゃやられませんよっ!―――」
僕はコケたままの姿勢から地を跳ねて、低い軌道で接近して一歩踏み込んで、そのままアッパーを放つ。
「―――すり抜けた!?」
僕の拳はミリオ先輩の身体になんの感触もなく沈んでいき、そして身体を突き抜ける、やはりすり抜ける個性か!攻撃無効とかありかよ!?
一見物理攻撃に対して無敵な感じだが……地面に立っている以上、足はすり抜けられないってことだろ?ならそこを狙う!!
「これでどうだっ!」
僕は地面を抉るように足払いを仕掛ける、ガリガリと地面が削れて、足がミリオ先輩の足に触れると思った瞬間―――
「狙いは悪くないけど、甘いよね!」
―――ミリオ先輩の身体が地面へ沈んだ。さっきまでミリオ先輩いた場所には僕の作った爪痕だけが残る。
消えるからくりはそういうことか!地面まですり抜けるとは……なら出てくる位置は恐らく――
「――死角だろ!?」
腕を後ろに振るいながら振り返る、そこには予想通り地面から飛び出たミリオがいた。そして僕の腕がミリオ先輩の顔面へと突き刺さる。
「うおっ!?予測してカウンターしてきたのか!やるね、でもそれを更にカウンターするよねっ!!」
突き刺さった腕は顔をすり抜け空を切る。ミリオ先輩は驚きながらも、しっかりとカウンターパンチを僕の腹にくらわせてくる、が…僕の鍛え上げた腹筋がそれを弾いた。
「くっ!!」
僕は咄嗟に手でミリオ先輩の胴を凪ぎ払うが、またも腕は身体をすり抜けた。ミリオ先輩はそのまま地面へと沈み、すぐに僕の正面5メートル程のところにワープでもしたかのように出現した。
ワープまで出来るのか!?……おそらく違うな。どういう理屈かはわからないが、地面に沈むと高速移動が可能に成るのだろう。
移動まで出来る攻撃無効のすり抜けの個性……ホントに強いぞこの人!―――待てよ?物理的干渉が不能なら、なぜ攻撃してこれる…?
「!?―――また後ろかっ!?」
考えこんでいると目の前のミリオ先輩の姿がまた消えた、僕は再び後ろに回り込まれたと思い振り返りながら回し蹴りを放つも、その蹴りは正真正銘空を切った。
「後ろの後ろは正面だよねっ!!」
僕の背中の方から声が聞こえると同時に背中に衝撃が走る、僕は軽くぶっ飛びながらも受け身をとって体勢を立て直す。
裏をかかれたか!でも予想通り、攻撃は出来るようだ。
そういえばさっきの腹へのパンチ…あれはどう見ても急所であるみぞおちを狙ったものだった、しかし実際に当たったのはそのやや下の腹直筋だ。
やはり攻撃の瞬間には実体化するんだ…それでその部分が僕の振るった腕の起こした風にあおられて、攻撃位置が少しだけずれたのだと思う。つまり勝機はある―――
「カウンター対決といきますか!根比べの時間ですよ、ミリオ先輩!!」
僕は全身に力を込めて構える、実体化した瞬間に一撃をお見舞いする、それしか攻略法がないだろ!!
―――それからはミリオ先輩が消える、僕が出現位置を予想してカウンターを放つ、ミリオ先輩がそれを躱しながらカウンターを入れてくる。
僕のカウンターで軸のぶれたミリオ先輩の攻撃は僕の筋肉に阻まれ、大きなダメージにはならない、しかし僕のカウンターもミリオ先輩に当たらない。
それの繰り返しだった。
しかし、僕のカウンターは段々とミリオ先輩を捉え始めて、ミリオ先輩のカウンターも少しずつ鋭さを増していった。
「――そこぉ!!」
僕とミリオ先輩はクロスカウンターで拳を出しあう、僕の拳はミリオ先輩の頬を掠めた、ミリオ先輩の攻撃は僕の顎へとヒットするも、腕だけの実体化だったので軽いパンチになっていた。
よし!掠めただけだが、攻撃を当てられるようになったぞ!!
でも今もらったのはヤバかったな、体重が乗ったパンチなら決定打になりかねない……!
「やるね、今の一発は危なかったよ!」
「先輩こそ流石ですね!僕の自慢のパワーがまるで当たらないですよ…!」
僕とミリオ先輩は会話をしながら息を整えつつ、攻撃のタイミングを見計らう。
次だ……次の一撃で完全に決める!それ以降は対応され始めてるし、もう当たらないかもしれない…!
かすり傷でも相手をダウンさせるんだ、僕の全力の一撃で!!
「そろそろケリをつけるよね!絶賛開発中の超必殺―――」
なんとミリオ先輩の方から仕掛けてきた、そうくるのか!?
だが僕も決めにいく!ワン・フォー・オール…80%―――
「ファントム・―――」
「デトロイトォ!!―――」
僕とミリオ先輩が互いに互いを仕留めるための必殺技を繰り出す―――
「そこまでだ!!」
そこに中断を告げる野太い声が響く、声の主はサーナイトアイじゃない……この力強い声は―――
「「オールマイト!!?」」
僕とミリオ先輩、そして離れたところにいる波動先輩と天喰先輩も驚きの声を上げる。
「いかにも!私が来た!」
「オールマイト、なんでここに?」
オールマイトは胸を張っていつもの決め台詞を言う、僕はその理由尋ねた。
「何故かって?弟子がこれからお世話になるからね、その挨拶のために来た!」
「ありがとうございます…!オールマイト!」
オールマイトの言葉に僕は感激する。わざわざそのために出向いてくれたとは…師匠としてもオールマイトは最高だ!
これからってことはまた先輩達と訓練することがあるってことかな?
「ねえねえ!天喰くん!オールマイトだよ!オールマイト!本物だよ、ねえったら!」
「見えてるよ波動さん、初めて生で見た……俺には眩しすぎる…!」
波動先輩が天喰先輩を引っ張りながらこちらに向かってきている、かなり興奮ぎみだ!でも気持ちはよく分かる、僕も初めて会ったときはヤバかったもんなぁ。
「は、はじめまして、オールマイト!サーの下でインターンをさせてもらってる通形ミリオです!」
「ああ、ナイトアイから話は良く聞いているよ、そして実際見ても強いな君は!これからも私の弟子、緑谷少年をよろしく頼むよ、先輩としてフォローしてやってくれると助かるかな!」
「はい!オールマイトにそう言ってもらえる日が来るなんて思ってなかったです!はい!
それに緑谷君もめっちゃ強いですね、流石オールマイトの弟子って感じで!!これからみんなで頑張って強くなりたいと思います!!」
いつの間にか服を着ていたミリオ先輩は緊張しつつも、とても嬉しそうにオールマイトと握手をする。オールマイトも笑顔でそれに答えた。
そのあと波動先輩と天喰先輩もオールマイトと少し話をして握手を交わしていた、波動先輩はオールマイトに対してもその自由さを発揮していて、それにはオールマイトも苦笑いだった。波動先輩、ぶれないなあ……
「さて、緑谷出久の実力もわかってもらえたようだし、オールマイトも来た。そろそろいきますか?」
「そうだねナイトアイ、じゃあみんないこうか!」
サーナイトアイとオールマイトは僕らを引き連れて訓練場を後にする、そのとき周りにいたプロヒーローたちはみんな直立不動でめちゃくちゃ恐縮してたな…若手の訓練場にナンバーワンヒーローが来ればそうなるよね!
そして、ついた先は20階はありそうな高層マンションだ。ここに今日から僕が住むことになるのか…?てかなんで先輩達もここまで来たんだろ?ついでかな?
「はい、ついたよ!ここが今回借りた部屋だ!!」
エレベーターに乗って到着したのは最上階、そしてまさかの角部屋だ。
「ここメチャクチャいい部屋なんじゃないですか?」
「この街の組合長も一緒に不動産屋に行ったのだが…弟子が住むからって話して物件探しを頼んだら、この部屋を格安で貸してくれるってことになったのさ!ありがたい話だ!!」
「そりゃ、偉い人と凄い人が一緒に訪ねればそうなりますよ……」
オールマイトから経緯を聞くと不動産屋が可哀想になってきた……たぶん震え上がってたんじゃないか…?
「部屋は家具家電付きのとこにしてもらったから今日から住めるぞ!さあみんな中に入って荷物を置こうか!」
オールマイトはそう言って部屋の中へと入っていく、僕らもそれに続いてゾロゾロと中に入る。
ん?ちょっと待て、みんなって言わなかったか今!?
「オールマイト!みんなってなんですか?」
「みんなってそりゃ、君たち四人のことだよ。これから四人で共同生活を送ってもらうんだよ!あれ、ナイトアイ?言ってなかったのかい?」
「聞かれてなかったので言いませんでしたね。それに本人達も親御さんも家を引っ越すことに同意してくれてたので、問題ないかと」
オールマイトとサーナイトアイはそれぞれ納得したように頷いている。いやいや、あるでしょ!!
「ミリオだけじゃなく、他人との共同生活なんて……俺に出来るだろうか……いや無理だ…迷惑をかけてしまう…」
「そうネガティブになるなよ環!大丈夫さ、なんとかなるって!四人もいるんだしなんでも解決できるよね!!」
「みんな一緒って楽しそう!天喰くんは楽しみじゃないの?なんで?ねえねえ?」
天喰先輩はなんかジャンルの違う心配してるし、ミリオ先輩はやたらと前向きだ…!波動先輩は……うん、自由すぎて僕の手にはおえないな!!
「オールマイト、なんで僕らに共同生活をさせようと?」
「それは私から説明しよう、まずこの共同生活の基本は貴様らのチームワークの向上だ。今後プロに成れば他のヒーローや自らの相棒などと連携して事件解決に挑むことになるだろう、そこで必要なのがチームワークだ。その基礎をここで育もうというわけだ。
次に緑谷出久、貴様には一ヶ月後にあるヒーロー資格の仮免試験を受験してもらう。BIG3の三人は既に仮免を取得済みだ、対策などを教えてもらうといい。
次からは四人で戦闘訓練を行ってもらう、そのために四人まとまっている方がこちらで予定が管理しやすい。あとミリオ、次からはコスチュームを着ろ、毎回全裸で訓練するわけにはいかないからな!
以上三点がこの共同生活を送る理由だ」
サーナイトアイは駆け足で説明を行っていく、僕は口を挟むことも出来ず納得するしかなかった。
共同生活、チームワーク、仮免、全裸……情報が多過ぎて展開についていけない!
まあ、なんでも唐突なのが、オールマイトとサーナイトアイとの修行なんだけどさ……慣れてきた自分がいるぞ…!
「部屋がいっぱいありますねオールマイト!どの部屋がいいかなぁー?うーん……」
「HAHAHA!!3LDKの部屋だからね!まあ部屋割りは後で決めるとして―――まずはお隣さんにご挨拶にいこうか!これから騒がしくなることもあるだろうしね!」
部屋のドアを開けて回る波動先輩にオールマイトが返事をしつつ、挨拶回りを提案する。
「まだお昼過ぎですよ?お隣さん部屋にいるんですかね?」
「いなかったらまた伺えばいいさ!それにこれもあるしね!」
僕はオールマイトに尋ねると、オールマイトは乾麺の蕎麦を片手に笑顔でサムズアップをしてくる。まあ挨拶は早い方がいいんだろうな。
僕らはまたゾロゾロと部屋を出て隣の部屋の前に行く。オールマイトが代表として先頭に立ち、インターフォンを押した。
暫くの静寂が流れる……やはり不在なのだろうか?
「“――はぁい?どちらさまですか?”」
インターフォンから眠そうな女性の声が聞こえてきた、どうやら寝ているところに来てしまったらしい…
「お休みのところすいませんね!隣に越してきた者なのですが、引っ越しのご挨拶に参りました!」
「“ふぁ~、そうですか。ご丁寧にどうも……今出まーす”」
オールマイトが元気良く挨拶をするも、お隣さんはどうにも気だるげだ、まだ寝起きでボヤッとしてるようだ。
というか、玄関開けたらオールマイト!ってどんなドッキリだよ!……絶対驚くでしょう…ごめんなさい、お隣さん…!
「はーい―――ってオールマイトォ!!?」
ドアが開いてお隣さんが出てきた、そして案の定オールマイトに驚いていた、僕からはオールマイトの背中でその姿は見えないけど、さぞ驚いた顔をしているだろう。
―――あれ?今の声って…どこかで聞いたことあるような……?誰だっけな……つい最近に聞いた声だ。
「――こんにちは!」
僕は疑問の答えを求めてオールマイトの背中から、挨拶をしながらひょっこりと顔を出す。そこにいたのは―――
「えっ!?―――デクくん!!?」
―――更に驚きながら僕のあだ名を呼ぶ、寝癖をつけた金髪のロングヘアーの女性……
――――Mt.レディこと、岳山優さんがそこにいた。
デクさんとMt.レディ、24時間も経たないうちに再会―――
先に言っておくと、ヒーローズマンションタウンの元ネタは○ンパンマンのあれです。
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