デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

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サブタイトルに深い意味はありません!深読みしないでくださいね!




ルーム・イン・コミュニティライフ with クラブ

サーナイトアイの紹介で通形ミリオ、天喰環、波動ねじれ、未来の雄英ビッグ3と出会った僕は、ミリオ先輩との戦闘訓練でその実力を知り、そして僕の実力を認めてもらえた――とおもったらその三人と一緒に暮らすことに。

そして挨拶に出向いたお隣さんは、なんとMt.レディこと、岳山優さんだった!

 

 

 

 

 

「えっ!?―――デクくん!!?」

「岳や……優さん!?なんでここに!?」

「なんでって…それはこっちのセリフよ!なんでデクくんがここに!?それにオールマイトと一緒に……」

僕と優さんは互いに驚く、そして優さんは僕の質問に当然の質問を投げかけてくる。そりゃそうだよな…えっとどこから説明すればいいんだ?

 

「ああ、昨日の女性か!確かMt.レディだったね!」

「え?そうですけど……オールマイトとお会いしたことありましたか?それに昨日…?」

「あっ…!」

オールマイトが昨日のことを思い出すも、あのときはトゥルーフォームだったので、優さんには認識されてない、完全に失言だったようで額に冷や汗が滲んでいる。

 

ヤバい!オールマイトの弱体化がバレてるのはこの場では僕とサーナイトアイだけだ!なんとかフォローしないと!!

 

「実は僕はオールマイトの弟子をやってまして、昨日会ったことをちょっと話しちゃったんですよ!ごめんなさい!!」

「えっ!?オールマイトの!?しかも昨日のって……あれ話しちゃったの!!?」

「そ、そう!何を隠そう緑谷少年は私の弟子なんだ!昨日会ったって話だけしか聞いてないんだがな!!HAHAHA!!!」

「そ、そうだったんですね……オールマイトが現れたと思ったらデクくんまでいて、その上弟子って……もうなにがなんだか…!」

優さんは情報の多さにやや混乱しているようだが、なんとか納得してくれたようだ。サーナイトアイ流、情報量で強引に納得させる作戦は有用だな!!

 

「Mt.レディ……最近人気急上昇中の若手だったな、隣人が知り合いの上にヒーローとは都合がいい」

「へ!?サーナイトアイまで!?それによく見たら他にも三人いるし……えっと、皆さんで隣に越してきたんですか?」

「いや違う、ここに住むのは四人の子供達だけだ。私とオールマイトはその指導者といったところだな」

サーナイトアイが横から入ってきて、更に驚く優さんに説明をしていく。オールマイトのインパクトが強すぎて霞んでいたが、僕達は引っ越しの挨拶にきたんだったな…

 

「その三人とデクくんが隣に…?」

優さんはアゴに手を当ててなにやら考え込んでいる。

 

「ねえねえ、デクくんってなに?緑谷君の名前は出久だよね?木偶の坊みたいだね!でも緑谷君そんなに無能だったの?」

「えっと波動先輩、デクってのは僕のあだ名です。出久って文字がそう読めるでしょ?でも僕は頑張れっ!って感じで好きなあだ名なんですよ!」

僕は不思議そうな顔をした波動先輩にあだ名の説明をする。

 

「そっか、じゃあ私もそう呼ぶねデクくん!私はねじれちゃんでいいよー!」

「ええ?先輩に対してそれは……ダメでしょ、波動せ――ひゃい!?」

「ねじれちゃんだよ!ねえデクくん?私がいいって言うならいいんじゃない?どうして駄目なの?ねじれちゃんって呼んでみてよ、ほらほら!」

デクというあだ名が気に入ったようで、自分もあだ名で呼ぶように言ってくる波動先輩、僕が断りを入れると両頬を掴まれてぐいぐいと引っ張られる。近い!距離感が近すぎるよ波動先輩!

 

「ねえなんでー?オールマイトやサーナイトアイはそう呼んでるのに!」

「ひょれはヒーローめえでふひ……(それはヒーロー名ですし……)」

「私のヒーロー名もねじれちゃんなんだよ!じゃあオッケーだよね!ほら言ってみよー!」

「そういうことならまあ……じゃあ、ねじれちゃん?」

「はいはいー!」

そして僕の頬はようやく解放される、ていうかヒーロー名だったのかねじれちゃんって。ホントに自由すぎるよねじれちゃん!!

 

「波動、後輩が出来て嬉しそうだよね!」

「今は興味の対象が緑谷君なんだろう……頑張れ…」

ミリオ先輩と天喰先輩は止める気が無いようだ、つまり僕は為す術なく弄られ倒すのだろうか…!?

 

「ふふ、楽しそうね、デクくん…?」

そこに優さんが笑顔で僕に話しかける、だがなんだこの背筋の凍るような悪寒は……!?まさかプレッシャーを感じているのか!?というかこの状況のどこが楽しそうに見えるんだ…!

 

「こんな可愛い子とこれからひとつ屋根の下で暮らすんですって…?そりゃ楽しみよねぇ?」

「Mt.レディにかわいいーって言われちゃった!」

「その、これは修行の一環なので、それが楽しみってわけじゃ―――」

「えー、デクくんはみんなで暮らすの楽しみじゃ無いの?なんで??嫌だった…?」

「別にイヤって訳じゃあ―――」

「ふぅん、嫌なわけじゃないんだ?」

「ひっ…!」

プレッシャーを放ち続けながら僕にニコニコと語りかける優さん、割って入ってきて話を掻き乱していくねじれちゃん、縮こまる冷や汗まみれの僕。なんだこの状況…!僕が悪いのかこれ…!?

 

「さあ、挨拶も済んだところで、そろそろお暇しようか!それじゃあMt.レディ、失礼す―――」

「ダメです、オールマイト」

「エッ?」

「この娘も交えた同居なんて許可できませんよ?」

オールマイトが助け船と言わんばかりに帰ろうとしたが、Mt.レディが笑顔のままそれを止める、なおプレッシャーは無くなっていない…それどころか少しずつ増している気がする…!

 

「貴様にそれを決める筋合いはないだろう…?」

サーナイトアイが横から入ってきてMt.レディに苦言を呈する。

 

「筋合いも何もないでしょ!こんな年頃の女の子が男たちとおんなじ部屋で暮らすって…なにかあったらどうするんですか!?」

「こいつらは遊びに来てるわけではない、それにそんなことを犯すような奴はヒーロー失格だ。それくらい弁えるだろう…」

「そういう問題じゃないでしょ!常識的に考えてダメです!!私はヒーローとして、女としてこんなことは認められませんっ!!」

優さんは笑顔から一転してすごい剣幕でサーナイトアイを捲し立てる。なんて常識的な正論なんだ…!僕も変にオールマイトたちに慣れすぎてたんだ、確かにねじれちゃんと同じ部屋で共同生活ってまずいだろ……

 

「ならどうするつもりだ?我々はそんなことしたくはないが…波動だけ追い出すか?」

「えぇ…私だけ仲間はずれ?……むぅ…嫌!」

「―――ッ!なら最低限寝るとことかだけでも別にしないと!!」

「そのために部屋を借りろと?その用意を貴様がしてくれるのか?」

「――じゃあ、この娘は私の部屋で寝泊まりしてもらいます!それでいいでしょ!?」

言い合う二人だが、最終的に優さんはサーナイトアイに自分の部屋にねじれちゃんを住まわせる提案をする。ねじれちゃんは「Mt.レディと一緒に寝るのかぁ、楽しそう!」とか言ってるしオッケーみたいだが…

 

「ふむ……よし、いいだろう、オールマイトはどう思いますか?」

「ああ、いいんじゃないか?女性の問題は私たちも配慮が足りてなかったようだし、まあ恋に落ちるくらい別にいいと思ってたんだがね!」

「わかりました。それにしても女性の問題か……ふむ……」

サーナイトアイはオールマイトに確認をとると考え込む。ていうか恋に落ちるのはいいのか…?オールマイトはそういうの疎いのかと思ってたよ。

 

「Mt.レディ、貴様には子供達の生活指導をしてもらおう、私もオールマイトも常にここに来られるわけではないからな。貴様の言うところの()()、とやらが起こらないように監督してくれたまえ」

「はあ!?そりゃこの娘――「ねじれちゃんです!」――ねじれちゃんを寝泊まりさせる責任は持ちますよ!でも、そこまで面倒と責任は持てませんから!

―――それに私だって仕事して稼がなきゃヤバいんですよ…あぁ事務所があんなことにならなければ……

サーナイトアイは僕らの生活の監視を優さんにやらせようとする、優さんは横からひょこっと出てきたねじれちゃんの頭を撫でながら反論し、最終的にぶつぶつと呟いて落ち込んでしまった。

 

「ほう、稼ぐためか……確かに我々も大人だ、責任には金が付いて回る。なら―――」

サーナイトアイは鞄からペンと小切手をとりだして、さらさらと書き込んでいく。よく見えないけどゼロがいっぱい並んでないか!?大人ってそういうもんなのか…?

 

「―――ひとまず一ヶ月、この額でど――」

「やります!」

優さんはくいぎみに即答して、サーナイトアイが提示した小切手を奪い去った。いったいどれだけの額が書かれていたんだ…!?

 

 

 

―――こうして僕と三人の先輩達、そしてその監督役の優さん、五人の共同生活が始まったのだった。

 

 

それからは僕らの部屋では、なにをするにも賑やかで、騒がしくて、でも楽しかった。

 

 

 

―――食事の時も。

 

「環の個性を最大限に使える食事ってなんだろうね!」

「得意なのはタコだ…」

「じゃあ海鮮料理だね!天喰くん、いっぱい食べよう!」

「天喰先輩!絶対蟹ですよ!硬い甲殻に、鋭く力強いハサミ、正に最強じゃないですか!!」

「蟹ー!Mt.レディー、蟹食べようよ蟹!」

「蟹なんて高いじゃない!カニかまにしときなさい、サラダに乗せといてあげるわっ!」

「カニかまは蟹じゃない…昔食べたら見たこともない魚が生えてきて……」

「あー、あれはビビったよね!見ちゃいけないものを見たぜ…!」

 

 

 

 

―――買い物の時も。

 

「もうっ!好き勝手買い物のかごに商品入れるんじゃないわよ!ねじれちゃんはお菓子戻してきて、せめてひとつにしときなさい。デクくんもミリオ君もササミばっかり持ってこないで、もっといろんな種類のお肉食べなさいよ…!」

「ササミは低脂質で高たんぱくで筋肉にいいんですけどねぇ…」

「はーい……Mt.レディってなんだかお母さんみたい!」

「おかっ!―――ガフッ!!……」

「優さーん!!!」

「Mt.レディが死んじゃった!」「このひとでなし!」

「俺がトイレに行ってる間になにが……?!」

 

 

 

 

―――朝起きたときも。

 

「おはよー、三人とも起きてるー?私、今日早いからもう行くわね―――ってなんで裸なのよミリオ君!!」

「おはようございます!――なんでって朝なので?……まさかいきなりドアが開くとは思わなかったよね!」

「ミリオは昔から寝起きは全裸だ…」

「冷静に言ってないで早く服を着なさい!」

「どうしたんですか朝から―――ってミリオ先輩また全裸でぶらついてたんですか…」

「おはようー!ねえねえ、早くご飯食べようよー!」

「ちょっ!ねじれちゃん来ちゃダメよ!!ミリオ君がまだ裸なの!」

「通形の裸?もう見慣れたよ!いっつも裸だし。それよりもご飯作ろー!」

「私がおかしいのかしら……」

 

 

勿論楽しく過ごしていただけではない、昼はそれぞれ学校や仕事に行き、夜には仮免取得のための対策などを練っていた。そしてオールマイトやサーナイトアイの都合のつく日は必ず戦闘訓練を行っていたのだ。

 

「――POWERRR!!!」

「――なんのぉ!」

ミリオ先輩の奇襲に僕はきっちりとカウンターを入れる、しかし透過で透かされてしまう。

 

「いまだ環!!」

「任せろミリオ!!」

その隙に天喰先輩が“個性”の蛸足で僕の全身を拘束する、流石全身筋肉の蛸足っ!とんでもないパワーだ……!!

 

「ぐっ…フルカウル―――」

ねじれる波動(グリングウェイブ)!!」

蛸足を剥がそうとワン・フォー・オールの出力を上昇させようとした瞬間、上から見えない衝撃に押し潰される。ねじれちゃんの“個性”波動だ!!

 

「よし!いいね波動、環!そのまま拘束するよね!!」

「……んんっ!負けるかぁ!!―――82%!!スマァァッシュッ!!」

ワン・フォー・オールを今使えるフルパワーで全身に纏う、そして突き上げるようにスマッシュを放ち、蛸足を引きちぎって波動を打ち消した。

 

「そこまで!」

訓練の中断を告げるオールマイトの声、僕は戦闘態勢を解いて環先輩へと駆け寄る。

 

「大丈夫ですか、環先輩!!すいません、やりすぎました…」

「いてて……大丈夫だデク、個性の足は千切れても痛いだけだから…」

僕は倒れた環先輩に手を貸して起こす、環先輩は僕を気遣ってか、少し苦笑いでそう言った。

 

「私の波動もぶっ飛ばされちゃったの!デクくんやりすぎ!」

「波動少女の言うとおり!なんでも強引に力だけでやればいいってもんじゃあないぞ、緑谷少年!」

更にねじれちゃんと、オールマイトからも叱られてしまう、ホントすいません…!

 

「緑谷少年の課題は相手に応じて如何に力を調整できるかだ、もしこれが千切れると本人にダメージがいくタイプのヴィランだとしたら確実にやりすぎだろう?」

「はい…すいませんオールマイト……」

「素直でよろしい!因みに今みたいに全身を拘束されたときの抜け出し方はね、こう、自分の手足をプロペラだとおもって大きく振り回して――――OKLAHOMA・SMASH!!――っとこんな感じで相手を自重で吹っ飛ばすように抜け出せば余分な力が要らなくなって、致命傷も避けられるぞ!」

「はい!ありがとうございます!」

オールマイトは僕に駄目なところを指摘しながら、改善法まで授けてくれる、流石は師匠って感じだ!

 

「三人はいい連携だったぞ!でも相手の力量が自分達より上の時は、撹乱→拘束よりも撹乱→消耗→拘束の方がいいだろう。時には相手を弱らせることも重要だ、誰でも一撃で倒せるわけではないからね!!」

「「「はい、オールマイト!」」」

「よし!いい返事だ!!じゃあ今度は組み合わせを変えて通形少年を捕らえてみようか!―――」

「ええ……無理なんじゃ―――」

「なんでもトライするべきさ!―――」

 

こうして仮免試験までの時間はあっという間に過ぎ去っていく、他にも語りきれないほどの出来事があったけど、全部話すと長くなるから割愛する。

 

 

 

―――そうして試験前日の夜を迎えた。

 

「いよいよ明日か……」

僕はリビングで座布団に座りながら、明日のことを考えていた。準備や出来る限りのことはしてきたし、あとはもう寝て待つくらいしかないかな……

 

「デクくん、いよいよ明日は―――ってあれ、ねじれちゃん寝ちゃったの?」

「優さん。ええ、ちょっと前までテレビ見てたんですけど…」

そこに優さんがビール片手に入ってきた、そして優さんの言った通りねじれちゃんはカーペットの上で寝ていた――()()太ももを枕がわりにして。

 

この一ヶ月でねじれちゃんの距離感にもかなり慣れた。始めは戸惑うことも多かったが、冷静に考えたら僕は精神年齢26才でねじれちゃんよりかなり年上ということになる。

そのことに気がついてからはその子供っぽい性格も相まって、ねじれちゃんのことが妹のように思えてきていた。だからこんな風に甘えてくることにも動揺することが無くなったのさ!

 

フフフ!もう女性にどぎまぎすることも無くなるんじゃないか、これは?

 

「まあ今日の訓練張り切ってましたからね、僕との最後の訓練だから超本気出すー!とか言ってて……最後の最後で負けちゃいましたよ!」

「そうだったのね――よいしょっ!…頑張りすぎね、送り出すのに打ち負かしてどうすんのよ、この娘は…」

優さんは僕のすぐ隣に座り、言葉とは裏腹に優しそうな表情でねじれちゃんの頭を撫でる―――前言撤回…!めっちゃドキドキする!!

 

お風呂上がりで頬はほんのり赤くて、髪からは良い香りが漂って鼻を(くすぐ)る。いつもはキリッとした目付きも今は優しいものになっていてそのギャップがまた……なんかいい!

一ヶ月経っても全く慣れないな…!優さんだって精神年齢的には年下のはずなんだけど、明らかに大人の女性だからか!?だからドキドキするんだろうか…?まあ言うほど僕も大人じゃないのはわかってるんだけど―――

 

「何、デクくん?お風呂上がりでスッピンだからそんなに見られると恥ずかしいんだけど…」

「あ!その…いやなんでもないです…すいません」

優さんが頬を赤くしながら恥じらう、僕はどぎまぎしてまったくうまく返せなかった。そんなにガン見してたのか…うわっ顔が熱い!――たぶん今、僕の顔は真っ赤だろう。

 

「そういえばデクくん、ヒーロー名ってなにするか決まってるの?聞いたことないんだけど」

「えっと、そのまま“デク”でいこうかなぁと思ってますよ」

「えっ!?なにそれダッサ!!」

「ひっ、ひどい……」

優さんにヒーロー名伝えると、バッサリと切られてしまった。ダサいかなぁ…やっぱり…

 

「ゴメンネ!いやあだ名としては悪くないんだけど……こう、オールマイトの弟子としてはちょっと箔がないっていうか、ぶっちゃけショボいわ!」

「ぶっちゃけましたね……じゃあどんなのがいいですかね?」

「うーん、そうね……私が考えといてあげる!」

優さんはぶっちゃけた後に僕の疑問に答えるために考えるが、すぐにやめてしまった。そんなにダメかなぁデクって名前、オールマイトには見劣りするのはわかってるんだけど、他の名前なんて思い付かない……

 

「デク!いよいよ明日だよね―――ってみんないるね!」

「波動さんはまたデクの膝で寝てるのか…」

風呂上がりのミリオ先輩と部屋から出てきた環先輩がそれぞれ飲み物を持ちながらリビングに入ってくる。

 

「こんなとこで寝たら冷えるだろうに……」

「起こすか?それとも毛布でも持ってくるかい?」

「いやいい、さっき唐揚げ食べたから……ふっ!―――っとこれでいいと思う」

環先輩はねじれちゃんに苦言を呈すも、ミリオ先輩の提案を断って自らの背中から鶏の翼を出してねじれちゃんの身体を包む。何だかんだでねじれちゃんに一番甘いのは環先輩だろう、ねじれちゃんもそれをわかってて環先輩にお願いするのをよく見かけた。

 

「環君はねじれちゃんに甘いわね、その調子じゃ確実に将来尻に敷かれるわよ」

「いや……尻に敷かれるとかそういう関係じゃ……」

僕が思ってたことをズバッと環先輩に言う優さん、そして追い討ちの一言に環先輩は顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

「ハハハ!それはそれとして、デク!いよいよ明日だよね!」

「ええ、明日の試験で仮免取って……そしたらこの共同生活も終わりですね」

「そうだよね…いつの間にか五人で暮らすのが当たり前になってた。明日で終わりなんだ…」

ミリオ先輩が助け船として話題を変えるが、二人してこの生活の終わりを感じてなんだかしんみりしてしまう。

 

「なーに暗い顔してんのよ!そのために今日まで頑張ってきたんでしょ?だったら笑顔で終わりなさいな!」

「優さん…!」

優さんが沈みがちだった空気を払拭するするよに笑顔で僕らに話しかける。そうだよな、そのための共同生活だったな!

 

「じゃあデクくんが合格してきたらお祝いとして、明日の晩は蟹にしましょう!!」

「――!蟹ー!!」

蟹という単語に反応したのか、寝ていたねじれちゃんがカッと目を見開いて起きる。食べたかったんだな、蟹。

 

「蟹かぁ!いいね!」

「デク、絶対合格してくるんだ……蟹が待っている…!」

「かーに!かーに!」

「僕の合格より蟹がメインになってません!?」

「蟹だもの、しょうがないわ…!私も食べたいし!!」

 

―――こうして前日の夜は蟹ムード一色で終わった、まあ変にしんみりしてるより僕達らしいかな!

 

 

 

 

 

 

―――そして試験当日、僕は四人に見送られて、ひとり会場へと電車で向かう。会場に着いて説明も坦々と進み、ついに一次試験の開始の時間だ。

 

一次試験はボール当て。手持ちの6つのボールを使って相手の身体にある3つのターゲットに当てて、()()脱落させれば合格の簡単な試験だった。まあ合格率五割の試験の一次試験なんてこんなもんだろう……来年は厳しくなってたりしてそうだな、なんとなくそう思う。

 

僕は一人での参加だったので、集団に囲まれてしまったが、一斉に投げられたボールをスマッシュの暴風で跳ね返したら、見事に何人かのターゲットに当たって余裕の通過だった。

 

 

二次試験は救助演習。ヴィランによって引き起こされた大規模災害で要救助者が大量に出てしまい、仮免保有者としてどのように対処するかというものだ。

 

僕はそこで全力を出して、オールマイトの弟子としての真価を発揮する――――

 

 

 

「見えるか!!?」

「もう100人は救い出してる!!やべえって!!まだ10分も経ってねーーーって!!やべえって!!!」

「HAHAHAHA!!!」

「めちゃ笑ってんよ!!」

「もう大丈夫!何故って?―――僕が来た!!」

 

 

 

 

―――僕はその試験でオールマイトのヒーローデビューの再来を果たし、要救助者を救いまくって、見事に仮免試験に合格した。

 

後で聞いた話によると、その時の二次試験の八割の受験者が補講送りになるという、前代未聞の試験となり僕の所業は伝説に成ったらしい……なんかごめんなさい…

 

 

 

 

出来たてホヤホヤの仮免を貰って、僕は帰り道や電車の中で何度もそれを見返す。こうした正式な免許を貰うのは初めてだったし、なにより憧れのヒーローの仮免だ!嬉しくないはずがない!!

おかげで最寄り駅に着くまで合格の連絡をするのを忘れてしまったが……

電車から降りると早速僕は歩きながら優さんに合格報告の連絡をする。

 

「もしもし、デクくん?どうだった?」

「優さん!合格して来ましたよ!!みんなのお陰ですよ、ホント!!」

「良かったじゃない!おめでとう、デクくん!」

僕が興奮ぎみに合格を伝えると、優さんは嬉しそうな声で僕を祝ってくれる。

 

「まあそうだと思って、実はもう買い物に来てるのよね!」

「まさか……」

「ええ、そのまさかよ―――蟹を買いに来ています!!」

「ひゃっほー!行動が早いですね、優さん!!」

優さんの蟹買います宣言におもわずテンションが上がる僕、蟹の魔力は美味し……恐ろしい!!

 

「じゃあ僕も合流しますよ、いま駅なんで!いつものスーパーですか?」

「いえ、今日は奮発して商店街の鮮魚店に行くわ!」

「品は良いけど高いからって滅多に行かなかったあの商店街ですね、わかりました!すぐに行きます!!」

優さんはスーパーの安物ではなく商店街の高級食材の蟹を調達するつもりらしい…!節約家の優さんがそこまでやるとは…本気の手料理が炸裂する気がする!

 

「待ってるわ、じゃあ―――きゃーー!誰か助けてぇ! ヴィランだ、逃げろ!

「悲鳴!?どうしたんですか優さん!」

「ヴィランが出たみたいね!私は行くわ!!デクくんまた後で!!」

優さんがそれだけ告げると通話が切れた。

くっそ!ヴィランだと!?このヒーローズマンションタウンで?よっぽど腕に自信がある強力なヴィランなのだろう…!ってことは―――優さんが危ないっ!

 

 

 

―――そう思ったときには僕は考えるよりも先に身体が動いていた。

 

 

 

 

――――僕は商店街に向かって全力疾走で駆けていく、ヴィランからみんなを…そして優さんを(たす)けるために!!

 

 

 




Mt.レディの命運は!そして蟹はどうなってしまうのか!?――――


熱烈な蟹プッシュに深い意味はありません、僕が食べたいだけです。


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