デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

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お待たせしました、第七章開始です。


インフルエンザになってにしまい更新がなかなか遅れてしまいました!




第七章 ヒーロー×ヴィラン×ヒーロー殺し 保須SOS
おじいちゃんの家は独特の匂いがする


Mt.レディこと岳山優さんにつけてもらった僕の新しいヒーロー名は大丈夫って意味の“オールライト” だ、それとなかなか決まらなかったかっちゃんのヒーロー名も“ダイナマイト”で決まった。

近い将来……僕、かっちゃん、麗日さんの三人でヒーロー活動していけたらいいな!

 

 

 

 

 

黒かびとヒビの入り乱れた外壁の古びたビル……入口に立つ僕はその独特な雰囲気に呑まれ息を飲む。

 

「すいません、雄英高校から来た緑谷ですけど。いらっしゃいますか?」

意を決してドアをノックしてみる、ドアは軋みながらガタガタと音を立てるが、返事はなく中から人の気配はしない……

 

「出掛けてるのかな…?」

独り言を呟きながら何の気なしにドアノブに手をかけると、ドアは床と擦れながらギギギと鈍く音を上げて少しだけ開いた。鍵がかかっていない…?

 

 

 

そしてその隙間から僕の目に飛び込んできたのは、床に伝う“赤”……

 

僕は驚いて勢いよくドアを開ける、古ぼけたドアからは割れたような音が聞こえてくるが、目の前の光景に比べれば大したことではなかった。

 

僕の眼前に広がる床一面の“赤”……その中心には、ひとりの老人が倒れ伏していた……

 

 

なぜこんなことになってしまったのだろう……ことの発端はおよそ1週間前に遡る――――

 

 

 

 

 

 

――――かっちゃんのヒーローネームを決めた翌日、相澤先生の発表によって僕らのクラスはざわめいていた。

 

「ようやくプロからのドラフト指名の集計が終わった、指名の有無に関わらず職場体験にはいってもらうから渡した資料確認しとけとよ。そんで結果はこんな感じだ」

相澤先生は黒板に写し出された映像を指差しながら、みんなへ説明と忠告を行う。それで集計結果は……

 

爆豪 3,840

轟 3,840

常闇 360

飯田 301

上鳴 272

八百万 108

切島 68

麗日 40

障子 29

峰田 18

瀬呂 14

緑谷 2

 

 

「だー、白黒ついたー!」

「ずば抜けてっけど爆豪と轟はここでも同着かよ、とことんだな!」

「てか緑谷すっくな!2票って!?」

「当たり前だろ?オールマイトの公式の弟子、緑谷にオファーだすってことは、自分の事務所はオールマイトのとこより有意義ですよっていってるようなもんだぜ?」

「そんな恐れ知らずいんのかよ……二人も……」

クラスメイトはそれぞれ言いたいことを言っていく、大方その通りなので反論とかはないけどさ。

 

この2票、おそらく一人はMt.レディだろう、そしてもう一人は()()()だな。優さんには悪いがその人のとこにいかせてもらう、でもまだこっちじゃ会ってないんだよね……どうなるだろうか…?

 

「―――じゃあ今週末までに決めて出せよ、以上」

そうこう考えている間に相澤先生の話は終わったようで退室を始めていた、クラスメイトがどこの事務所に行くか悩みながら騒いでいる中、僕は手渡された資料をみて自分の予想が間違ってないことを確認していた。

 

やっぱり優さんとあの人だったか……よし、さっさと書いてオールマイトと話し合わないとな!

 

「デクさん!もう決めたの!?」

「やあ麗日さん、まあ二件だけだし……行きたいところから指名が来てたからね」

「それってMt.レディのとこ…?」

麗日さんが僕に話しかけてくる、質問に僕が返すと麗日さんはジトーっとした目線でさらに質問を投げてくる、なんで睨まれてんだろ…?

 

「いや、違うよ、もうひとつの方。えーと…オールマイト関係って感じかな!」

「そっかそっかー!そうなんだ!まあデクさんはオールマイトのお弟子さんだもんね!そっかー!」

僕の答えになぜか表情をコロッと変えて満面の笑みになる麗日さん、いったいなんだったんだよさっきのは!?……女の子って難しいなぁ…

 

「ところで麗日さんはどこにする予定なの?」

「私はバトルヒーロー“ガンヘッド”のとこ!指名来てた!」

「武闘派の門を叩くんだね!僕に手伝えることがあったらいってね、力になるよ!」

「ありがとう!見聞を広げようと思ってね、それに強くならないとってこないだの試合で思い知ったから…だからやるんだ!」

「うんうん、いいね!その心がけは大切だよ、麗日さん!―――っとちょっとまってね……」

麗日さんの職場体験先とその理由を聞いて、僕は早速少しでも力になるためスマホを弄る、麗日さんはその様子を不思議そうに眺めていた。

 

……今度僕の友達が職場体験に行くので、ご指導よろしくお願いします―――っと、こんな感じでいいかな?

 

「――っと送信!」

「どうして急にスマホを?誰かに返信?」

「ああ、ガンヘッドにメッセ送ってたんだよ。麗日さんがお世話になるっていうからね!」

「ええ!?デクさんガンヘッドとも知り合いなの!!?」

「う、うん。昔にちょっと会う機会があって……そっからはトレーニング友達みたいな感じだよ」

僕がガンヘッドと知り合いだということに麗日さんが驚きながら一歩近寄ってくる……近い近い!髪の香りが漂うくらいだ!一歩下がってくれ麗日さん!!

 

「よおデクゥ!俺はNo.4ヒーローのジーニストのとこにいくぜ!相棒がいくからよろしくって連絡しといてくれよな!!」

「かっちゃん!?……ジーニストは知り合いじゃないからちょっと厳しいね…」

「爆豪君!そういった無茶ぶりはやめたまえよ!!」

「あぁ?んだ堅物メガネ!デクならやりかねねえだろうが!」

「む、確かに……!!」

かっちゃんが麗日さんを引き下げながら割って入ってきて僕に無茶ぶりする、飯田君はそれを止めに来たようだが逆に納得させられてふーむ…と唸っていた。納得しちゃうのかよ!僕だってなんでもありの人間じゃないぞ…

 

「飯田君はどこにするか決めたの?」

「モチロン、兄のインゲニウム所属のチーム韋駄天さ!」

「だよね!……でもインゲニウムの体調は大丈夫なの?」

「直ぐに復帰できると言っていた!それに優秀な相棒の先輩方もいる!学べることは多いさ!!」

飯田君はやはりインゲニウムの所に行くらしい、前世よりだいぶ軽い怪我らしいけど、流石にまだ動けないよな……

 

「んで、デクはどこいくんだよ?」

「ああ、僕はグラ―――」

「私が小急ぎで来た!やあ緑谷少年、ちょっといいかね!!?」

かっちゃんの質問に答えようとしたときに、教室のドアが開いてオールマイトが独特な姿勢で現れた。

 

オールマイトも弟子を公言して以来、結構オープンな形で学校内でも話しかけてくれるようになったなあ。

 

「はい、僕も伺おうと思ってたんですよ。それじゃみんなまた明日!じゃあね!!」

「おー、またなー緑谷ー!」

「いってらっしゃい!デクさん!」

「緑谷君、また明日だ!」

「明日ちゃんと教えろよ、デク!じゃあな!!」

みんなが挨拶を返してくれる、そして僕はオールマイトといつもの仮眠室へと向かった。しかし友達がいっぱいってのはホントに賑やかでいいな!

 

 

「時間を取らせてすまないね、緑谷少年」

「いえ、こちらこそ職場体験の相談をしようと思っていたので、ありがたいですよ!」

「そうか…私もその話をしようと思っていたのだ…」

仮眠室に着くとオールマイトは鍵を閉めてトゥルーフォームへと戻る、そして冷や汗を流しながら会話を始めた、この時期のオールマイトの焦燥顔はホントにレアものだ!

 

「それで緑谷少年、Mt.レディと……()()()から指名が来てたよね?どっちにいくか決めたのかい?」

「あの方って…ものものしいですね。Mt.レディには悪いですけど、やらなきゃいけないことがありますからね、だからグラン―――」

「ああ、わかった!皆まで言うな!やはり行くんだな……先生のところへ…」

「そうですけど……」

オールマイトは僕の言葉を遮りいっそうダラダラと冷や汗を流す、何回みてもビビりすぎだろう……オールマイトェ……

 

「前世で会っているということだったね……君なら大丈夫だとは思うがくれぐれも失礼のないように…!存分にしごかれてくるといい!」

「ええ、オールマイトの顔に泥を塗ることがないよう、全力で取り組んできますよ!!」

「いや全力はまずいよ!緑谷少年が全力を出すと何かしらぶっ壊れちゃうから…私が言えたことじゃあないんだが……」

「き、気を付けます……」

オールマイトが激励の後に忠告をしてくる、痛いとこ突かれたなぁ……確かに全力でやると体育祭みたいになっちゃうか?いや…職場体験はプロの現場だ、全力でやるに越したことはないだろう……それに奴と戦うには全力でやる以外ない…!!

 

「ホントくれぐれも、く・れ・ぐ・れ・も!よろしく頼むよ、緑谷少年!!」

オールマイトが武者震いをしながら肩を掴んで念を押してくる、よし……僕がオールマイトを安心させてあげなきゃな!弟子だもの!!

 

「任せてくださいオールマイト!貴方の最高の弟子として、僕もオールマイトも大丈夫ってことを伝えてきますよ!!」

僕はオールマイトに最高の笑顔でサムズアップで答えた。

 

 

 

―――それからの日々はあっという間に過ぎて、職場体験の出発の日になった、僕らはコスチュームを手にそれぞれの体験先へと向かう、新幹線に揺られること45分……そこから少し移動したあと……目的地に着いて今に至るわけだ。

 

 

とりあえず僕は床一面の赤の中に倒れる老人に声をかけることにした。

 

「ねえ、生きてるんでしょう、グラントリノ?」

「――生きとる!!」

「やっぱり…!」

倒れてたはずのグラントリノはガバッと起き上がり元気に返事をしてくれる、やっぱり生きてるよね「いやぁーやっちまったぁ」とかいってるし相変わらず元気なご老人だ。

 

「まさかケチャップを容器ごと潰しちまうとはなあ!――――ん?誰だ君は!!」

「雄英から来た緑谷出久です、オールマイトの弟子をやってます!」

「ほうほう、オールマイトの……」

グラントリノはとぼけたように名前を尋ねてきたので、僕は胸を張って返事をする、そうするとグラントリノは少し考え込んだあと―――突如、僕の目の前から消えた。

 

「―――っと!」

―――消えたわけではないな、高速で移動しただけだ。残像を目で追うと僕の真後ろの壁に張り付くグラントリノと目が合う。

 

「ほう、見えるか……オールマイトの弟子なんだろ?打ってきなさいよワン・フォー・オール。どの程度扱えるのか知っておきたい」

グラントリノは少しだけ驚いたあと僕に語りかける、なかなかギリギリだったけど見えててよかった…!

 

「いやこんなとこで打ったら、このビルぶっ壊しちゃいますって!それに口で説明すればいいんじゃないですかねそれ!?」

「グダグダ言ってないでかかってこいや、有精卵小僧!!」

僕がグラントリノに反論するも聞く耳持たずといった感じで、グラントリノはまたも高速で移動した。この話を聞かないところとかオールマイトそっくりだな…!

 

グラントリノは部屋中を縦横無尽に跳び跳ねながら、フェイントを織り交ぜつつ常に僕の死角に入ろうとする、僕は身体を少しだけ捻りながらその動きをしっかりと追う。やっぱり速い…ギリッギリだ!!

 

ワン・フォー・オールを全身の筋肉に滾らせ準備をする、そしてわざと目線をフェイントに釣られたように見せ掛ける、次の瞬間グラントリノが視界から消え去る。んでもって狙いは死角からの一撃だろう?ならそれを―――

 

「―――そこぉ!!」

「なにぃ!?」

―――グラントリノは死角から飛び蹴りを放ったが、僕は片手でそれを受け止め、グラントリノに驚愕の表情が浮かんだ。だがグラントリノは僕の掌を軽く蹴って軽やかに着地する。

 

結構重い!出力下げすぎたぁ!!でも止められたからセーフだろう……!

 

「死角からの一撃を軽くいなされた…こりゃ釣られたか―――今のでワン・フォー・オールはどんくらいだ?」

「えっと、今使ってたのは5割くらいです」

「ふむ、んでどこまで使えんだ?八割くらいか?」

「つい最近フルで90%まで使えるようになりました!」

「ふむふむ……」

グラントリノは少し呟いたあと僕に質問を次々投げかけてくる、僕はそれにトントンと答えるとグラントリノはそのまま考え込んでしまった。

 

ダメだっただろうか……?全力でいってボコボコにしないと認めてくれないのか?いやいや、そんなことしたらこのビルなくなっちゃうよな…!

 

「―――ごうかーーく!!やるじゃないの、緑谷出久!」

「えっ!?」

「まだまだ若いのによく鍛えてあるな!個性に振り回されてる感じもないし、動きも予測も考え方もいい。ったく俊典もこんないい弟子がいるならさっさと紹介しとけってんだよな…」

グラントリノは大声で僕に合格を告げると立て続けに喋りだす、認めてくれたってことでいいんだろうか?

 

「ありがとうございます!あとこれお土産のたい焼きです」

「おお、俺の好物まで持ってくるとは!俊典から聞いたのか?」

「え、ええ。オールマイトから聞いていたので、手土産として……」

「気が利くじゃねぇの!俊典は平和の象徴としてはうまくやってたが、教育者としてはずぶの素人だからなあ……心配してたんだが、ここまでしっかりとした弟子を育て上げられるたあ驚いたぜ!

……おっとこの話は俊典には言うなよ、あいつは誉めると直ぐに調子に乗るからな」

グラントリノはオールマイトを手放しで誉める、でも内緒なんだ……まあ僕から伝えることじゃないし、その内本人から言うんじゃないかな?

 

「さて、じゃあこのたい焼きでも食べながら話を聞かせてもらおうじゃねえの!オールマイトの弟子としてな!」

「はい、じゃあ暖めてきますね。電子レンジお借りします―――」

こうして僕はたい焼きを食べながらグラントリノとたくさんの話をした、主にオールマイトとの修行の日々の振り返りだ。

グラントリノはその話を聞くといっそう笑顔になり、僕をよく頑張ったと誉めてくれた、それからのグラントリノは僕を孫のように可愛がってくれたんだよね……ちょっと恥ずかしかったけどグラントリノが楽しそうで良かったよ。

 

職場体験の初日と二日目は僕の基礎能力の確認をしてもらい、手合わせをしたり高速移動のコツを教えてもらったりして過ごした、お陰で低出力の室内移動の速さが大分上がったぞ!やはりスピード関連の訓練をグラントリノに頼むのは大正解だったな!!

 

 

―――そして可愛がってもらいつつも修行に打ち込みながら職場体験の三日目の朝を迎えた。

 

「グラントリノ…!お願いがあります!」

「いつになく真剣な顔じゃねえか……決意した眼をしている…言ってみな…!」

僕の真剣な表情にグラントリノは僕の眼をしっかりと見ながらニヤリと笑いそう告げた、悪いがおふざけはなしだ…!

 

「今日、保須市に行きたいんです―――“ヒーロー”として…!」

「“ヒーロー”として…?それに保須市だと…?出久……その目的はまさか―――」

僕のお願いにグラントリノが鋭く眼を光らせ尋ねてくる、僕の目的も大方予想がついているに違いないだろう、だからこそ直接言うんだ…!

 

 

「―――()()()()()()…ステインを捕らえます…!!」

僕は真っ直ぐグラントリノの眼を見ながらその目的を告げた。

 

 

「……ダメだ、危険すぎる!」

「そんな!そこをなんとか――」

だが即答で却下されてしまう、僕はそれに食い下がろうとしたがグラントリノに手で遮られた。

 

「―――っと、普通ならそう言うところだが……実はお前が来ることになったときに俊典からも言われててなあ、「自分の弟子がもしかしたら突拍子もないことを言い出すかも知れません……ですが一度だけでもその話を真剣に聞いていただけないでしょうか」ってな!まったく弟子のことをよくわかってるよ俊典は…!」

「オールマイト…!」

グラントリノの口からまさかの事実が語られる、オールマイトは僕のことをよくわかってる…!きっと僕の前世の話を覚えててくれたのだろう。

 

「つーわけで、この一回だけ出久のわがままを聞いてやろうじゃねえか…!」

「グラントリノ…ありがとうございます!」

「但し!俺も一緒にやるからな!わかったか!?」

「はい!グラントリノ!!」

グラントリノは腕を組みながら不敵に笑い僕のお願いを承諾してくれた、僕はそれに笑顔で大きく返事をする。

 

 

 

 

―――僕とグラントリノの保須市への遠征パトロールが決定した。

 

 

 

 

 

 

―――――待っていろヒーロー殺し!今度は僕がこの手で捕らえてやる!!

 

 

 

 

 




ヒーロー殺し編ようやく始まる!!――――


Googleで「岳山優」で検索したら、このSSが1ページにあってめっちゃ驚きました!これでこのSSも立派なMt.レディものと言える…かもしれない。


今年一年ありがとうごさいました!来年もデクのヒーローアカデミア再履修!をよろしくお願いします!!


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