デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

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今回も取って付けたような自己解釈設定があるのでご了承下さい!




斜陽に燃ゆる街

ヒーロー殺しステインの狂気的英雄信仰、僕はそれを真っ向から否定する。互いに譲らぬ問答は闘いによって決着をつけることとなり、そして僕は勝利した。

飯田君とネイティブを救け、ステインを拘束して路地裏を抜けて大通りへと戻る。この事件ももう終わりだと思った時、僕らの目の前に現れたのはここにはいない筈の三人の脳無だった。

 

 

 

 

 

 

 

――― Dark side in ―――

 

ビルの屋上の貯水タンクの更に上、二人の男が双眼鏡を片手に騒乱に堕ちた保須市内を眺めている。

 

「そうだ、ぶっ壊せ!全部滅茶苦茶にしてやるんだ!!―――はぁ…やっぱいいなあ脳無」

掌を顔に着けた白髪の男、死柄木弔は自らが解き放った脳無が街を破壊しヒーローを倒してく姿に恍惚と見いる。

 

彼にとってこの惨状は只のゲームに過ぎない、自分が配置した三体のユニット“脳無”が街を壊せばスコア上昇、そしてヒーロー達は敵ユニットでそれを倒せばまたスコアになる。

この現実をそんな風にしか捉えていないのだ、だからこそ脳無の()()に無邪気にはしゃいでいた。

 

「……」

黒い霧状の身体にきっちりとしたスーツ姿が不思議なギャップを生み出しているもう一人の男、黒霧は物思いに耽りながら死柄木の背を静かに見つめていた。

 

―――USJの一件から大分成長しましたね…死柄木弔。自制が利かないものだと思っていましたが、先程までのヒーロー殺しとの交渉見事でした。

煽られてもキレなかったですし、目的と信念を伝えて頭の固そうなヒーロー殺しを納得させて、一時的にとはいえ仲間に引き入れるとは!

最近はオールマイトのニュースを見てもテレビを壊さなくなりましたしね、“先生”の仰る通り彼も成長を続けているんですね。

 

黒霧の心労も最近は減ってきていた、死柄木の拭いきれなかった小物感も払拭されたと、黒霧が安心していた時……脳無の侵攻に変化が起きる。

ビルの上空を飛んでいた翼の脳無が何者かによって叩き落とされたのだ、黒霧は事態の急転に驚きながら慌てて双眼鏡を構えた。

 

「あれは―――」

「……緑谷出久ぅううう!!!!」

脳無を地面へと落とした人物の姿を黒霧が確認する、その名前を死柄木が憎しみを込めた唸り声で呼んだ。

 

そう、あのときの出久の行動はビルの屋上にいた死柄木達から丸見えだったのである。

 

「黒霧!脳無を全部集めろ!今すぐにだっ!!」

「ええっ!?戦闘中の個体もいるんですよ、そんな無茶な…!」

「無茶でもなんでもいいから早くしろ!」

「えぇ……」

死柄木は怒鳴りながら黒霧へ指示を出す、黒霧は困惑しながらも戦闘中の脳無を確認しながら個性を発動させた。

 

激しい戦闘の隙を見ながらヒーローを巻き込まないように慎重に脳無を転移させていく黒霧、そして一体、また一体と脳無を回収することに成功した。

黒霧は3分ほどで翼の生えた個体、四つ目の個体、最後に顔無しの個体と三体すべての脳無を無事に自らのいる屋上へと転移させたのである。

戦場の乱戦の具合からすれば恐ろしく早い所業、黒霧も自身を誉めてあげたいくらいだった。

 

「おっせえぞ黒霧!なにやってんだ!!もう奴は路地裏に入っちまったよ…!」

「そんなぁ…私も結構頑張ったんですけれど……」

そんな黒霧の努力も死柄木には認められない、誉めるどころかさらに怒鳴る次第だ。まさにジャイアニズムの化身、大人子供の本領を余すことなく発揮する。

 

「まあいい、次はこいつらをあそこの路地裏前に飛ばせ、それでお前のポカはチャラにしてやるよ」

「…ふぅ、わかりましたよ、死柄木弔。それでどうするんですか?」

「決まってんだろ――――」

死柄木は自分本意なスタイルを維持しながら黒霧へ命令に近い指示を出す、黒霧も今更この程度で文句を口にするほどではない、彼は死柄木の無茶な注文を幾度となく受け続けているのだ。

そして黒霧が手際よく指定の場所にゲートを出現させた。

 

「―――殺すんだよ!あの正義面したクソガキをな!!脳無ども、出撃だ……緑谷出久を殺せぇええ!!!!」

死柄木が騒ぎながら脳無達に命令を下していく、脳無は返事をすることもなく一人ずつゲートへと入っていった。

 

 

「あなたは行かないので?」

「さっきも言ったろ?怪我してんだよ、それに脳無をまとめて送ったんだ。いくら化け物だといえど三人に勝てるわけがないだろ?」

黒霧が素朴な疑問を口にすると、死柄木が首をポリポリ掻きながら答える。

 

「それもそうですね、それじゃあここから見てましょう。緑谷出久(あの化け物)が死ぬところを……」

黒霧はそれに納得すると双眼鏡を構えて路地裏の入り口を覗き始めた。

 

殺せ、殺せと呟きながら双眼鏡を覗く死柄木、それを聞きながら黒霧は思った。

――なんだ、落ち着いた訳じゃなくて執着の対象が入れ替わっただけだったのか…

 

 

ヴィラン連合一番の苦労人、黒霧の受難はまだまだ続きそうだ―――

 

 

 

――― Dark side out ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネイティブを連れて逃げろ!飯田君!!」

僕は立ち上がりながら飯田君へ叫んで指示を出す、三人の脳無は既に行動を始めていた。

 

いち早く僕へと接近してきたのは四つ目で四足歩行の脳無だ、始めて見る奴でどんな個性を持っているかわからない。

 

「しかし緑谷君、君はどうするんだ!?」

「――スマッシュッ!……見ての通り、戦うのさ」

飯田君は動揺しながら僕に尋ねる、僕は四つ目に牽制の拳圧の大砲を飛ばしながら飯田君に返事をした。

四つ目に暴風の砲弾が直撃するが、その身体を吹き飛ばすようなことはなく、四つ目は足を止めてその場に留まる。

 

防御系の個性か!?牽制とはいえ、少しも効いてないのは予想外だな!

 

「しかし緑谷君、それでは君が…!」

「ここでこいつらを押さえられるのは僕しか居ない!それに―――ぐおっ!?」

「緑谷君ーーー!!!」

まだ飯田君はなにか言いたげだが、僕は一方的に説明を始めようとした時、暴風が僕の身体を直撃して吹き飛ばされる。

僕は先程の荷台を壊したトラックに再び突っ込み、その衝撃でトラックは大破し火の手を上げる。

 

今のは間違いなく僕の放った風の砲弾だ、ってことは四つ目の個性は反射?いやラグがあったな…吸収と放出とかそんなとこか?

てか煙が上がってる、燃えてんのかこのトラック!?

 

「――熱っ!!……ってくそっ!」

燃え盛るトラックの荷台から慌てて飛び出す、熱さにやられる暇もなく目の前には上顎から顔の無い黒い肌の脳無が迫っていた。

 

「ふんぬっ!―――なにしてんの飯田君!ネイティブ…気絶したその人を助けられるのは君だけだ!!」

「そうだが、戦う友を置いて逃げるなんて!」

腕を振り上げていた顔無し脳無と両手を使って取っ組み合いになる、僕はそのまま動かない飯田君へ檄を飛ばす。

 

力強い!負けることは無さそうだが全力じゃないと振り払え無さそうだ!飯田君早く行ってくれ…!

 

「今の君はヒーローだろ!救けるために走れ!!――うぐっ!?」

「緑谷君!!いまたすけ――」

「早く行け!!僕が足止めしてる間に応援のプロを呼ぶんだ、その足で直接!君の速さで僕を救けてくれ!!!」

腕に力を籠めながら飯田君へと叫ぶ、その間にも脳無達の攻勢は続き、四つ目が取っ組み合いをしている顔無しごと僕を多岐に割れた舌で拘束してくる。

飯田君がこちらに来ようとするがその一歩を踏み出す前に僕は大声で飯田君に応援を頼む、気持ちは嬉しいが今は余裕がない。

 

これだから多対一の戦いは嫌なんだ!くっそ気持ち悪いなこの舌…!

 

「くそぉ!すぐに戻る!!それまで無事でいてくれ、緑谷君!!!」

「大丈夫!任せたよ、インゲニウム2号!!」

飯田君はネイティブを背負って全力で戦場から離れていく、脳無達がその後を追う様子はなかった……むしろ僕を締め上げる舌の数と力が強くなっている。

 

そして三人目の翼の生えた脳無が空中から僕へ向かってその鋭い鉤爪を振り下ろそうと迫っていた。

 

僕だけが狙いって訳か…!なら好都合だ、飯田君も離脱したし―――全力で暴れさせてもらう、周りの環境はちょっと気遣ってられないな。

 

ワン・フォー・オール……フルカウル90%―――

 

「―――オクラホマ・スマッシュッッ!!!」

僕は全身の筋肉のバネをフルに活用し、全身をプロペラに見立てて回転する。身体に絡みついていた舌が引き剥がれて、その勢いで四つ目が壁にぶち当たり、顔無しはブッ飛んでいった先で翼の奴と衝突し絡まりながら地面に落ちた。

 

どうだ、これがオールマイト直伝の技だ!止めにはなってないが、少しは効いたろ?

 

スマッシュによって散らばった脳無達はすぐに立ち上がり僕へと向かって雄叫びを上げながら突撃してくる。

 

「やっぱり立つか…なら迎え撃つだけさ!――っとお前はあっちだ!」

僕も負けじと脳無に向かって突撃する、その時に縛られて地面に倒れたままのステインを路地裏の奥へとほうり投げておいた、これから起きる激しい戦闘に巻き込まないためのせめてもの配慮だ。

 

「キェエエエ!!」

まず最初に接近してきたのは一際足の速い四つ目だ、気味の悪い声を上げながらいくつもに裂けた舌を伸ばしてくる、僕はそれをサイドステップで躱して反撃の拳を構える。

 

「カンザス―――っうお!?」

今にも拳を振り抜こうとした時、僕の身体がまるで上から押し潰されてるかのように急に重くなる、十中八九敵の個性だろう。

 

この全身に重りがぶら下げられた様な感覚……重力操作か!?なら使用者は―――翼の脳無に違いないだろう…あの巨体をあの程度の翼、そして羽ばたきで浮かせられる筈がない!

 

その証拠と言わんばかりに翼の脳無は飛ぶのをやめて地へと足を着けてこちらを睨んでいた。

 

そんな推理をしている間にも脳無達の連携は終わっていなかった。左側から顔無しの黒い剛腕が襲い、右からいつの間にか肥大していた四つ目の巨腕が襲いかかってくる。

 

「――んがぁ!!!」

動きを封じられていた僕は剛腕と巨腕のクロスボンバーに挟まれる、両腕でそれを受け止めギリギリ耐え抜く。

だがそのまま二人は腕を押し付けてきて万力のような力で僕を押し潰そうとしてきた。

 

負けるかぁ!パワー勝負で僕に勝てると思うなよ!!唸れ僕の両腕筋群ッ!!!

 

僕は挟まれた状態からその腕を筋肉で少しずつ抉じ開けていく、そしてふと身体が軽くなった瞬間に一気に両腕を振るって二人の脳無を左右へブッ飛ばすことに成功した。

 

重力が消えた?効果時間切れか!?―――

 

身体が自由になったことに疑問を抱いていると、足元に大きな影が浮かんでいた。

慌てて見上げるとそこには今まさに鋭利な爪を僕に振り下ろそうと急降下してきている翼の脳無の姿があった。

 

僕の頭を切り裂くために迫る爪を上体を限界まで反らして躱す、翼の脳無の爪は僕の顔の数センチ上を通り抜け前髪を掠めていく。

 

ギリギリ避けられた!なら反撃といこう、逃がさないぞ!!

 

やられっぱなしではいられないと奮起し、通り過ぎ去ろうとした脳無の鳥のような足を左手でガッチリと掴む。

脳無の急降下の勢いに身体が持っていかれそうになるが、筋力と個性(ちから)で強引に引き寄せて、そのまま翼の脳無を振り回す。

 

このまま全力で地面に叩きつけてやる!……いやまてよ、こいつの個性は非常に厄介だった。

空を飛べる個性を持ったヒーローは少ない、かといってこいつに地上戦を仕掛けるのは難しいだろう、その上重力操作(こいつの個性)で飛べる人は叩き落とされてしまうだろう……“ザ・フライ”みたいなヒーローなら一撃でやられてしまうかも…!

つまり後続の応援の被害を減らすためにも、こいつはここで確実に行動不能にしなきゃいけないってことだ、翼のタフネスは高い…さっきも出会い頭に叩き落としてやったのにピンピンしてたもんな…!

 

 

 

僕の全力(90%)では足りない、ならば全力の全力で―――

 

 

 

 

 

―――100%!!MARYLAND・SMASH!!!

 

考えている間も振り回し続けていた翼の脳無をオールマイトの力で地面へと叩きつける、地面がクレーター状に沈みクモの巣の様なヒビが走る。

翼の脳無が痙攣しながらその中心にめり込んでおり、死なずに無力化出来たことを表していた。

その光景に安堵すると同時に僕の左腕に激痛が走る。

 

痛っつつ!!!なんだ!?前より反動が大きくなってる!??―――

 

 

―――そんなことを考える暇もなく僕の身体は何かに縛られながらビルの外壁へ押し付けられる。

 

「キェェェエエエ!!!」

痛みに気を取られていた僕は左から迫っていた四つ目の奇襲に反応できず、その多岐に割れた舌に絡まれて壁に叩きつけられたらしい。

 

「――くっそ…!」

全身を叩きつけられた衝撃と100%の反動による痛みと痺れから意識が朦朧として、僕の口からは思わず悪態が漏れてしまった。

 

流石に考えなしでリスクありきの技を使うもんじゃなかった……変なところで追い詰められて無茶するあたりあんまり前世と変わってないとは……笑えないな。

 

痛む身体を動かそうとしながら眼を細めて前を向く、そこには走りながら僕へとタックルを仕掛けようとする顔無しの脳無の巨体が迫りつつあった。

 

戦いは終わってなどいない、相手は三人も居たのだから。

 

その現実を僕に叩きつけんと言わんばかりに顔無しは速度を上げて迫ってきているが、ダメージがモロに響いている今は四つ目の舌を引き剥がすことも出来ない。

 

 

「あっ……やば―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、視界が燃え盛る炎で埋め尽くされ、その灼熱は顔無しの脳無を呑み込む。

 

「ゴオオオオンッッ!!?………………」

一瞬に全身を焼かれた顔無しは唸り声を上げたあとその場から動かなくなる、鼻には焦げ臭い臭いが漂ってきて顔がヒリヒリと熱いことに気がついた時に僕はようやく頭が回ってきた。

 

 

この全てを焼き付くす業火は、まさか―――

 

 

「来てくれたんだ!エン―――」

「てめえら…緑谷になにしてやがる……!」

「―――デヴァー…じゃない…?」

僕がその名を呼ぼうとした時、炎の中から聞き覚えのある声が耳に入る、しかし、それは僕の想像していた声よりもずっと若く、ずっと聞き慣れた声だった。

 

 

「緑谷、無事―――じゃなさそうだ……いま助けてやるからな…!!!」

彼は僕へ語りかけながら脳無の舌に捕らえられている姿を確認する、そしてその言葉の続きには…はっきりと怒気が籠っていた。

 

地面を炎上させていた炎が氷によって押し退けられて、そこから彼の姿が現れる。

燃えるような赤と凍てつくような白の髪を靡かせ、左に炎を右に氷を携える半冷半燃の少年。

 

「……轟…君…?」

僕は未だにやや混乱しながら、確かめるように彼の名前を呟いた。

 

 

 

 

 

―――燃え上がる炎と溶けた氷によって辺りが蒸し暑くなってくる、轟君は明確な怒りをその眼に宿しながら此方へ一歩を踏み出した。

 

 

 

 




デクさんのピンチに轟焦凍(その男)は呼んでもないのにやってくる!――――



UAが250,000を突破しました、そして全体ページビューか……なんと100万件を超えていました!
もしかしたらいくんじゃないかと思ってましたが、現実になるとは思いませんでした…!

たくさんのアクセス本当にありがとうございます、ここまで頑張って書いてきた甲斐がありました。

Plus ultraの精神でこれならも頑張ります!

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