デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

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ちょっと間が空いてすいません!お待たせしました。


今回ちょっと下ネタがあります、苦手な方はご注意下さい。オッケーって思ったら続きをどうぞ!!




林間合宿は青春の1ページ

死柄木捕縛電撃作戦、前世の記憶を元にフラっとショッピングモールに現れるであろう死柄木を取っ捕まえてやろうという警察と連携した作戦だったが、その作戦は死柄木が現れないという形で失敗に終わった。

そして決定してしまった林間合宿、僕は準備を万端にして望む。ヴィラン連合が襲撃してこようと僕がこの手で叩き潰してやるさ!!

 

 

 

 

 

林間合宿当日、僕たち雄英高校ヒーロー科一年一同はクラス毎にバスへと乗り込み、合宿所を目指す。

バスの最後部の五人掛け座席の窓際にはかっちゃんが不機嫌オーラを全開で座っており、誰にでも噛みつきそうな爆弾の隣には誰も座ろうとしない。

 

そんな中、僕は臆することなくかっちゃんの隣に座る、そして僕の隣には麗日さんと飯田君が座った。一見すればいつもの仲良し四人組が並んで座ってるようにしか見えないだろう。何度も言うがかっちゃんが滅茶苦茶不満げなオーラを放ってること以外は……

 

麗日さんや飯田君と軽く雑談をしながらバスに揺られる、かっちゃんはチラチラこちらを見てくるが話には入ってこない。そうして幾ばくかの時間が流れた。

 

「――そうだ、僕飴持ってきたんだよ。はい、かっちゃん、ハッカ好きだったよね?」

「おう、サンキュ―――って話しかけてんじゃねえよクソが!!いらねえよボケ!!」

しれっとかっちゃんに飴を渡すとかっちゃんはさらっと受け取りそうになるが、思い出したかのようにぶちギレ始めた。

そして最終的にそっぽを向いてふて寝をしてしまった。

 

やっぱりかっちゃんはわざと僕に対してキレる振りをしてるみたいだな…

 

「ねえ、デクさん大丈夫?爆豪君、デクさんにだけやたらと怒ってるけど……席変わろうか?」

麗日さんは顔を少し近づけて僕に耳打ちしてひそひそと話し掛けてきた。

 

耳に息がかかってこそばゆい!ってそうじゃない、麗日さんに心配をかけちゃってるな…とりあえず安心させるためにもこの状況を伝えておこう。

 

「大丈夫だよ麗日さん…かっちゃんは本気で怒ってるじゃなくてキレた振りをしてるみたいなんだ。反抗期みたいものだろうし、僕がなんとかするよ……だから心配しないで」

「そそ、そうなんや……わかった。わかったから…!」

僕は麗日さんの耳元まで口を寄せて囁いて返事をする。すると麗日さんは縮こまり顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

こそばゆかっただろうか?でも僕もやられたし、おあいこだろう?

 

 

その後バスが停車するまでかっちゃんはふて寝、麗日さんは俯きながら黙ったままだった。結局気まずい雰囲気になっちゃったよ…!!

 

バスが停まったのは何もない崖だった。 そこには僕らを待ち構える三人の人影……

 

「煌めく眼でロックオン!!」

「どこからともなくやってくる……」

「キュートにキャットにスティンガー!!」

「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」」(三人ver.)

 

ポージングと共に現れたのはマンダレイ、虎さん、ピクシーボブの三人だった。

 

「虎さん!お久しぶりです!皆さんもご無沙汰してます」

「久しいなオールライト、息災だったか?」

僕はひとりクラスから離れて虎さんと挨拶を交わす。短い間だったが相棒としてワイルド・ワイルド・プッシーキャッツに入ってたので多少の恩があるからね。

 

その間にも相澤先生はクラスメイトを集めてマンダレイとピクシーボブの紹介をしていた。

 

「お陰さまで。あれ、ラグドールと洸汰君は?」

「二人なら合宿所で留守番だ、元々我も待機の予定だったのだがお前が来ると聞いて会いに来たのだ」

「そうだったんですね、ありがとうございます!僕も会えて嬉しいですよ」

僕と虎さんは握手をしながら再会を喜んでいた。

 

会うのは七ヶ月振りくらいだろうか?あのときは虎さんの紹介でワイルド・ワイルド・プッシーキャッツの皆と訓練したり救助活動をしたりしてたんだよなぁ……思い返してもとても有意義な時間だった。

 

「悪いね諸君、合宿はもう、始まっている」

「「うおおおおっ!!!??」」

 

叫び声に反応して後ろを振り向けば、クラスの皆がピクシーボブの操作する土砂流に呑み込まれて崖下へと落ちていく様子が見えた。のだが……

 

「……あっぶねぇ!!?」BBBBBBBOO――

かっちゃんは只ひとり土砂流に反応しており空中に爆破で浮かんでいた。あれを避けきるとかマジかかっちゃん…!?

 

「いや、お前も行くんだよ」

「くそがあああぁぁぁぁ――――――」

相澤先生が睨みを効かすとかっちゃんの個性が消えてそのまま断末魔をあげて落下していった。

 

「僕は行かなくて良かったんですか、相澤先生?」

「お前が行っても訓練に成らんだろう、お前は今回の合宿では教師(こっち)側だ。合宿まで壊されちゃ堪らんからな」

「ええ?そんなことないと思いますけど……」

相澤先生のあきれたような視線にビミョーに納得いかないが、とりあえず深くは反抗しない。体育祭でのことをまだ根に持ってるみたいだ。

 

「さあてキティたちは魔獣の森を抜けられるか楽しみだねえ」

「ああ、あの土塊との戦闘訓練ですか。楽しいですよねえあれ、ぶっ壊し放題で」

「緑谷、そういうとこだぞ。ほんと」

素直な感想を述べたらまたも相澤先生に呆れられた。僕の力で壊しても壊しても再生するからストレス解消には持ってこいだと思うんだけどなぁ。

 

 

話もそこそこに僕と相澤先生、マンダレイと虎さんはバスへと乗り込み合宿所を目指す、そのなかで今回の合宿の流れを話し合っていく。因みにピクシーボブは皆の訓練に合わせて進んでくるそうだ。

 

「――というわけで、二日目と三日目は個性を伸ばす特訓でいきたいと思います。四日目は……」

「あの、ちょっと良いですか?」

「なんだ緑谷?まだ途中なんだが…」

僕は相澤先生の話を遮って話を仕掛ける。折角教師陣に混じってこの合宿を過ごせるんだ、ならそのことを最大限に活用していこうじゃないか。

 

「今回の合宿中にヴィランの襲撃があったらどうします?」

「はあ…それを避けるための今回の合宿構成だぞ?出発前の説明聞いてなかったのか?」

「もちろん聞いてましたよ。それでも万が一、ということがあるじゃないですか!だからお願いがあるんです、虎さん」

「我か!?」

僕の言葉に虎さんは驚くも僕は話を続けていく。

 

「万が一、今回の合宿中にヴィランが襲撃してくるようなことがあったら……生徒達に個性の使用許可を出してもらいたいんです…!マンダレイを通じて、全員に伝わるように!!」

「お前はなに言ってんだ!ヴィランが来るかもなんて前提で動くやつがあるか。 それにもし仮にもそんなことがあったとしてもそれは俺の管轄の仕事だ…!虎さんが考えることでも、ましてやお前が考えることでもない!」

「それでも僕はこの現状でそれを考えずにはいられません。勿論相澤先生が許可を出すのがベストなのでしょう。 でも!相澤先生がマンダレイの近くにいない状況なら?事態をすぐに把握出来ない立ち位置だったなら?それじゃあ間に合わないことだってあるかもしれない、皆を無防備に無責任に放って置くことなんて出来ないじゃないですか…!!

本当なら僕が皆に許可を出して全部、全部受け止めたい…!でもまだ今の僕にはその力も権限もない……だから虎さん、お願いします!僕を……僕らを助けてもらえないでしょうか!お願いします!お願いします!!」

僕は虎さんに向かって一心不乱に頭を下げ続ける。何もない僕にはそれしか出来ない、でもそれでも少しでも何かしたい。

 

「緑谷!いい加減に―――」

「よい、イレイザー。お前は我が拳を合わせて、短い間だが共に闘い、そして力を育んだ仲間だ。そして我が認めた漢だ! そんな漢が真剣な目で必死に頭を下げてまでした願いだ! 顔を上げろオールライト、我に任せておけ…!その時は漢として我が全ての責任を持とう、そして共に再び闘おう!」

「…虎さん!ありがとうございます!ありがとうございます…!!」

僕は虎さんに再び頭を下げ続ける、今度は感謝を伝えるために。

 

「ったく!!虎さんが認めるならそれは虎さんの問題ですね……でも俺がそんな事態に気が付いたならすぐに俺の管轄の権限にしますよ。緑谷もそれでいいな?」

「はいっ!お願いします相澤先生!」

「ハハハ、というわけだマンダレイよ。その時はよろしく頼む、勝手を言ってすまぬ」

「……ええ、その時は…」

 

僕はこうして虎さんと相澤先生に襲撃に備えてもらえるようになった、これで僕の手の届かない範囲も少しは安心できる。

 

その後マンダレイの顔が暗いままだったのが少し気になったが、僕らは合宿の計画を練りながら宿泊施設までバスに揺られていた。

 

「おかえりーみんな!それとあちき達の施設へようこそオールライト!」

「……」

施設に到着した僕らを迎えてくれたのはいつも通り元気なラグドールとこちらもいつも通り斜に構えた洸汰君だ。

 

「お久しぶりですラグドール。それと久しぶり、洸汰君」

「……」

僕はラグドールに挨拶をしつつしゃがみこんで洸汰君と目線を合わせる。

 

洸汰君は僕と目を合わせると目力を強めて―――股間を蹴りあげてきた。僕はそれを軽く掌で受け止める。 相変わらず容赦ないなこの子……

 

「そこはあんまり鍛えられないからダメだ……でも大胸筋なら大丈夫だ!」

「……うまいこと言ったつもりかマッチョメン」

僕は腰に手を当てて胸を張りながら話しかけるも洸汰君は更に不機嫌になって踵を反して去っていってしまった。

 

「こら洸汰!……ごめんねオールライト、あの子は……」

「大丈夫ですよマンダレイ、洸汰君の心境を考えれば僕らは認めがたい存在ですし。それにきっかけさえあれば彼も変われると思いますよ」

「そうね……きっかけか…」

僕とマンダレイは施設へひとりで向かう洸汰君の背を見つめながら彼の今後を憂う。

 

 

―――洸汰君、君だけは絶対に僕が救けてみせる…!

 

 

 

夕方になってクラスの皆が宿泊施設に到着するまでの間、僕は周囲の散策とマッピング、そして電波式火災報知器を設置して回った。

 

前世での襲撃では森林火災とガスの個性を持つヴィランがいたことが被害を拡大した原因らしい。らしいってのは僕も前世では襲撃への対処で大怪我をして入院してたし、クラスメイトから話を聞いたこととニュースの内容くらいしか情報がないのだ。

だからこうして煙を感知する火災報知器を森中に仕掛けておけば何処から敵が動くのかいち早く察知できると思う。因みにこれは経費で買った、何せ数が数だから僕のお小遣いではまったく足りないのだ……オールマイト、出世払いでお願いします!

 

 

皆が戻って来るなり直ぐに食事の時間になった、僕も仕込みは終わってたので合流だ。

クラスの皆と食事をとり、そして入浴の時間になったのだが――――

 

 

 

 

 

――― 峰田 side in ―――

 

 

土くれの魔獣に襲われながらの過酷な進軍、それを抜けてオイラを待っていったのは暖かな宿泊施設だった。 こんなきついなら合宿なんてくそ食らえと思いながら晩飯をかきこんでいたけど……本当のご褒美はそのあとにやってきた。

 

「―――求められているのはこの壁の向こうなんスよ…」

温泉にはしゃぐクラスのやつらを尻目にオイラは高い木製の壁を見上げる。そしてその壁の向こうからは女子達の声が聴こえてくる、間違いねえ。

 

そう!オイラが求める理想郷(ユートピア)はこの壁の向こう!女子達のいるヌードピアだ!!

 

「今日日男女の入浴時間をずらさないなんて、これはそう…事故。事故なんスよ……」

「峰田くんやめたまえ!君のしようとしていることは己も女性も貶める恥ずべき行為だ!!」

「やかましいんスよ……」

オイラを止める飯田の声が聞こえるが、すべてを超越して高鳴ったオイラはもう止められない。

 

はぁあああ!オイラのリトルミネタはもうスーパービッグミネタに変態(トランスフォーム)しようと準備を始めている!ならばあとはオイラに残された仕事はこの壁を……登りきるだけだ!いくぜ!!

 

「なにを騒いでいるのかな……峰田くん?」

「やっぱり止めにきたか……緑谷出久…!」

「なぜフルネーム!?」

オイラを次に止めにきたのはクラスの…いや雄英のラスボス緑谷出久だ。

 

だがいくら緑谷といえど今のオイラは止められない!これが乗り越えるべき最大の壁だと言うのなら……オイラは超える!プルスウルトラさ!!そしてオイラはヌードピアへ…!

 

「いくぜええええ!!」

「っ!いかせないよ!――――」

オイラが一歩を踏み出した瞬間、緑谷はそれよりも速く動き両腕を広げて立ち塞がる。

 

ここまでは予想通りだったが、予想外の出来事が起きた。 緑谷の腰に巻いてあったタオルが激しく動いたせいでスルリと落ちたのだ。

 

「な……いや、そんな……馬鹿な…?!」

そこに見えた光景にオイラはしどろもどろになり言葉がうまく紡げなくなった。

 

それは#自主規制#と呼ぶにはあまりにも大きすぎた。 大きく 分厚く 重く 大雑把過ぎた。 それはまさしく鉄塊だった。

 

なんだよそれ!ホントにオイラのミネタと同じ#自主規制#なのか!?…!個性か!?そういう個性なんだな!!体の一部を巨大化させる個性っては割りといるしな、Mt.レディだって巨大化の個性だし…!ハハハ……

 

緊急発進(スクランブル)寸前だったオイラのリトルミネタは緊急停止(エマージェンシー)してどんどんと萎縮していく。現実逃避をしても事実は変わらない、圧倒的な戦力差は多少の変身程度では埋まらない。

 

「……デクさん…」

オイラの後ろから悲しげな、男としての大切ななにかを打ち砕かれた、そんな呟きが聴こえてくる。

 

「えっ?なに?どうしたの、みんな?」

「いや……なんでもないですデクさん。俺、先に上がります」

「えっ、なんで敬語!?」

「俺も…じゃあ失礼しました……」

ひとり、またひとりと、風呂場から人が消えていく。虚ろで悲しげな表情を浮かべながら………そして最後にオイラも温泉を後にする。

 

 

 

―――完全敗北。 1-A男子14名のうち、緑谷のデクさんによって意識朦朧の重体4名、心の重・軽傷者8名。無傷だったのは当人と幼馴染みの爆豪の2名のみ。 その緑谷を残し…他の生徒は跡形もなく姿を消した。

オイラの楽しみにしていた入浴時間は、最悪の結果で幕を閉じた。

 

 

――― 峰田 side out ―――

 

 

 

 

 

 

 

峰田君を殴ってでも止めるつもりでお風呂にいったんだけど、何故か直ぐに引き下がってくれた。しかもクラスのみんなも沈んだ顔をしながら……もしかして皆覗きに…?……そんなわけないか。

 

入浴時間も終わり、あとは就寝を残すのみとなった初日。だがここに集まるは青春を謳歌する高校一年生、少ない空き時間も楽しむため各々集まり好きなことをギリギリまでしている。

そんな中僕はひとり宿泊施設を出ていく、「話がある。施設の裏手で待ってる、来てくれ」という簡潔なメッセをかっちゃんに送って。

 

おそらくかっちゃんは来る。 僕の呼び出しの理由を問うためか、はたまた僕に文句を言うためか、どちらにせよ来るだろう。

 

「よお……」

「やあ、かっちゃん。わざわざ呼び出して悪いね」

 

やっぱりかっちゃんは来た、苛つきとも落ち込みとも見える微妙な顔をしながら。

 

「……俺に関わんなって言わなかったか?」

「言ってたね。でもそれに対する僕の答えは、ノーだ。 君に突き放されようと僕は君に関わるし、必ず救ける…!」

「…んだよそれ。 気持ち悪ぃ……勝手にしろよ、じゃあ。俺は俺のやり方でいく」

かっちゃんは顔をしかめながら吐き捨てるように呟く。

そして踵を反して立ち去ろうとしたが、僕が肩を掴んで無理やり振り向かせる。

 

「勝手にするといいさ、でも僕も勝手にやる。 だからここに君を呼んだんだ、これを渡すためにね」

「は?…なんだよこれ?」

「これは超小型のGPS発信器だ。小指の先ほどの大きさだし電池駆動式だけど1週間は持つだろうね」

「……なんでこんなもんを渡すんだ?俺が本当にヤられると、そう思ってんのか…?」

かっちゃんは鋭い目付きで僕を睨みながら呟く。

 

「君が簡単にヤられるとも思ってないし、奴等に良いようにさせるつもりなんて微塵もないよ。 でも、それでも僕は最悪を考えずにはいられない、分かるだろう? だから僕は君にこいつを絶対に渡すんだ。 後悔したくないんだよ…!」

僕はかっちゃんに必死に思いの丈を伝える、思わず肩をつかむ力が強くなっていることにも気がつかないくらいに。

 

「痛えよ……放せ」

「ごめん…でも!―――」

「わかったよ、こいつは受け取っといてやる。 でも受けとるだけだ、これを身に付けるかどうかは俺が決める!それでいいな!?」

かっちゃんは僕の手から発信器をひったくるとそのまま歩きだした。

 

「ああ、僕はかっちゃんを信じるよ。 それと三日目の夜だ……全ての分け目はそこにある」

僕の最後の警告に一瞥だけして舌打ち混じりにかっちゃんはこの場を後にする。

 

今のかっちゃんが僕の言うことを素直に聞いてくれるとは思わないが、なにもしないなんてことは出来なかった。 襲撃なんてないに越したことはないが、ある前提で動く方が良いだろうな。

 

「よし、やるぞ!――――っ!誰だ!?」

気合いを入れた瞬間、誰もいない筈の雑木林から音がした。もしやヴィラン連合?!もう偵察に来ていたのか!?

 

なら牽制して、取っ捕まえてやろうじゃないか!唸れ筋肉!ワン・フォー・オール、フルカウル―――

 

「甘かったなヴィラン連合!くらえデトロイトォオオ!―――」

「ちょちょっ!ちょっと待って!私だよ!!」

僕が牽制のスマッシュを放とうとした時、雑木林に隠れていた人物が飛びだしてきた。

 

「麗日さん!?なんでここに…?」

「ごめん、二人とも居なかったし…様子が気になっちゃって……」

「話を聞いてたのか……うーん…」

「ホントにごめん、聞いてた…内容は理解できなかったけど。よく分からなくても、二人が喧嘩してるんだなってのは分かったんだ」

「そっか…」

麗日さんは僕らの会話を盗み聞きしていたようだが内容までは分からなかったらしい。

 

原因まで聞かれてなくて良かった。 でもまた麗日さんに心配をかけてしまったなぁ……出来れば僕とかっちゃんの中で終わらせたかったけど。

 

「それでデクさん!私、二人の仲直りを手伝いたい!爆豪君はいっつもツンケンしてるけど、デクさんがいれば楽しそうだった。 私はそんな二人と過ごすのが、その、す、す……好きだから……だから!すこしでも早く仲直りしてもらいたいって思ったの。 迷惑かもって思ったけどでも…なんだろう、考えるより先に身体が動いちゃったんだよ。 デクさん、お願い!私にもなにかさせて!!」

麗日さんは真剣な表情で僕の目を見つめながら、助けになろうと乞う。

 

そうか、これは僕とかっちゃんだけの問題じゃなかったんだ。逆の立場になってみれば…かっちゃんと麗日さんが喧嘩をしてたら僕は本気で間に入って仲直りさせようとするだろう。

麗日さんも同じだ、友達同士がいつまでも喧嘩をしてるから……

 

「麗日さん……ありがとう。 こんな僕なんかがこんなに人に恵まれてていいのかなって思うけど、かっちゃんも麗日さんも大切な友達だ。 だから僕の方からお願いするよ、僕らの仲直りを手伝ってくれないかな?」

「もちろん!私にやれることならなんでも任せてよ!」

麗日さんは僕へ明るい笑顔を向けてそう言ってくれた。やっぱり麗日さんは天使だな!

 

「じゃあそろそろ施設に戻ろうか、なんだかんだで結構長いこと経ってるし」

「そうだね、皆にバレる前に戻らなきゃね!」

僕らはそう言いながら施設に戻るために歩き始める。

 

「しっかし、麗日さんにはいつも助けてもらってばっかりだなぁ」

「デクさんってよくそれ言うけど、私が助けてもらってばっかりだと思うんだけど!私、いっつもデクさんを助けたいって思ってたんだから!!」

「こっちの話って感じかな。僕が助けられてるって思ってるんだ、それでいいんじゃない?」

「えー、なんか納得いかないようなー……うーん」

麗日さんは僕の発言の意味が分かりきらないようで唸っている。

 

本当に麗日さんには前世から助けられてばかりだから、この人生では出来る限り救けて、助けていきたいと思ってるんだ。まあ麗日さんからしてみればなんのことって感じなんだろうけど。

 

そのうち麗日さんには僕の秘密を打ち明けなきゃな……でもそれは僕があの日を越えてからにしよう。これ以上心配はかけられないし、何よりこの心優しい娘を巻き込みたくない。

 

 

僕が自分に心の中で誓ったとき、背筋が凍るような悪寒と鋭い視線を感じた。なんだこれは!!?

 

「これはこれは緑谷、こんな遅くに施設外で逢い引きとは……随分といいご身分じゃないか」

「あ、相澤先生…!」

「ち、違いま―――」

「――黙れ」

僕と麗日さんが言い訳をしようとするが相澤先生に目で殺される。

 

「俺はな生徒同士の交遊についてどうこう云うつもりはない、合理的ではないとはいえお前らも青春真っ只中の高校生だからな。 だがそれがルールを守らない理由にはならん!! よってお前ら二人とも補修組に混ざって反省文だ…書き終えるまで寝かせねえからな…!!」

相澤先生は目をギラギラと光らせ、謎の負のオーラを身に纏いながら僕らを引きずっていく。

 

 

 

「ご、誤解なんですーー!!」

 

 

―――――夜の森林に無慈悲に運ばれる僕の悲しき叫び声が木霊した。

 




緑谷出久、精神年齢28歳の青春とは――――


UA40万、総合評価6,000pt突破!本当にありがとうございます!

これからも頑張って書いていきたいと思います!読者の皆様にも楽しんでいただければ幸いです!!

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