デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

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大変お久しぶりでございます。エタりそうでしたが、帰って参りました。




マッチョと愉快な仲間達

ついに始まってしまった林間合宿。今回の僕は教師陣として参加になり、僕はヴィラン連合の襲撃に備えて出来うる限りのことをしていった。

喧嘩をしていたかっちゃんとも何とか会話をして、発信器を渡すことが出来た。だけどそのやり取りを麗日さんが見ており、僕らの仲直りを手伝ってくれることになった。 さあ合宿はこれからが本番だ!

 

 

 

 

 

「おい、聞いたか……緑谷と麗日の……」

「ああ……深夜に逢い引きしてたらしいな……」

クラスメイトが僕の方をチラチラと見ながら何やらこそこそと話している。 僕と麗日さんが相澤先生にしょっぴかれた話は既に噂になっているようだ。まだ消灯時間前だったと思うんだけど……噂には尾ひれがつくもんだなぁ。

 

「――や……おい、緑谷!聞いてんのか?」

「あ、はい!なんでしょうか相澤先生!」

「あ、はい。じゃねーだろ、だからお前の担当はお前が期末テスト前に集めてた……緑谷塾だったか?あのメンバーで、午後の訓練ではお前の担当だって話だよ」

少しボーッとしていたところを相澤先生に叱られる。 僕は教師陣なんだからしっかりしないとな。 てか緑谷塾って先生達の間でも広まってる名称なのか…

 

「というわけで午前中は個性を伸ばす訓練、そして午後は各自さらに細かく別れて訓練となる。じゃあ早速開始!」

相澤先生の号令でみんなが散らばり、各々の個性を伸ばすための訓練が始まる。

 

僕はその中を見て周りアドバイスを出していくって形になる。ちなみにこの担当は増強型の人たちだ。虎さんに混ざりつつ生徒達の攻撃を捌くこともあった。

 

そんな感じで滞りなく午前中の訓練は終了した。 生徒達が疲労困憊してる中、僕だけは元気に昼食の用意をしていた。

 

僕はほとんど見てるだけだし、あんまり疲れなかったな。 さあ本番は午後だな…!ここで皆に如何にしてヴィラン連合への対策を授けるかだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、どこから来るかな?」

時は正午過ぎ…僕はひとり、雑木林の中に立っていた。 いずれ襲い来る敵対者を迎えながら。

 

「……来た…」

僕は呟きながら拳を構える。 右にひとり、後ろにひとり、正面から二人か……なかなかうまく包囲してきたな。

 

「気配の消し方が甘い!スマッシュッ!!」

僕は正面の雑木林に拳圧の砲弾を飛ばす。 その圧は暴風を生み出し、木々の枝をへし折りながら僕の正面一帯に吹き荒れる。

 

「ぐあああっ!!?」「ばれてるぞ!!?」

正面の雑木林に隠れていた切島君と鉄哲君が風に煽られながら吹き飛んでいく。それと同時に右と後ろにいた人物も飛び出して来て僕へと襲い来る。

 

だが既に後ろからの気配を察知していた僕は振り向きながら身体を沈めるように踏み込み、後ろから飛びかかる砂藤君の足を掴んで右から来た者へと投げつけた。

 

「二重の―――うわぁっ!?」

「ぐおおおっ!!?」

投げられた砂藤君の巨体は拳を引いていた庄田君の腹に直撃し、二人まとめて雑木林の中に突っ込んでいく。

 

「いまだっ!くっらえええええ!!!!」

叫び声に反応して後ろを振り向くと、眼前に巨大な樹木の幹が迫っていた。

 

僕は守りを固めてその大木を受け止める。 だがその大木は大きさの割には軽い打撃にしかなっていなかった。 これはおそらく麗日さんの個性で浮かせた樹木を拳藤さんが振り回したのだろう。 相手の視界を塞ぐにはちょうどいいが打撃としては軽すぎる、樹木の重さが活かせてないな。

 

「それじゃパワー勝負になっちゃうよ、相手の力が強いと逆に振り回される……こんな風にねっ!!」

僕は受け止めた樹木を握り、力任せに凪ぎ払う。

 

「きゃあ!」「うわわっ!」

生い茂った枝葉に包まれながら麗日さんと拳藤さんが吹き飛ばされる。これで残りは……

 

「飯田くんっ!!」

「ぬおおっ!?避け切れな―――っう!!」

僕は再び大木を振り回して接近していた飯田君を幹で殴り飛ばす。麗日さんの個性はまだ消えていないから打撃自体は軽いが、その大きさに似合わぬ速さで振るわれた樹木を飯田君が避けることは叶わなかった。

 

「最後は司令塔だっ!!」

僕は叫びながら手にしていた大木を真後ろの雑木林へと投げる。

 

「ぐはぁっ!?……バレていたとは……」

そこに隠れていたのは最後のひとり障子君で、大木の直撃をくらいその場に倒れた。 やばっ!やりすぎちゃったか……?

 

「はい!じゃあ終了―――痛っ!」

訓練の終了を告げようと手を叩きながら歩き出すと、首筋に衝撃を感じて言葉が止まる。

 

「あー、気配が完全に消えててわからなかったよ。尾白君……」

「それは誉めてるのか貶してるのか―――「てい!」――かぺっ!」

僕の脛椎を狙った攻撃は尾白君の手刀だったが、僕の鍛え抜かれた僧帽筋には通用しない。 お返しに首筋にチョップを落とすと尾白君は立ちながら気絶してしまった。

 

「はい、じゃあ改めて終ーー了!集合してー」

僕が再び合図を出すと、やられたみんながフラフラと集まってくる。

 

良かった、行動不能になる怪我を負った人はいなかったようだな!手加減が上手くなったなぁ、僕。

 

 

なぜこのような状況になっているのか……それは僕が緑谷塾の皆に訓練を付けているからだ。

 

やることは実にシンプル。 ヴィラン役の僕がこの森のどこかに現れる、そして皆は連携を取りながら僕を叩く。という索敵と戦闘を兼ねた集団戦の訓練だ。

 

僕が皆に教えたかったのはとにかくヴィランは数で圧倒して袋叩きにするのが一番手っ取り早いということと、それに必要な連携の取り方を学んで欲しかったんだ。

 

この訓練がうまく機能すればヴィラン連合が襲撃してきた際にも、連携を取ってヴィランの各個撃破が容易になるだろう。勿論、僕が撃ち漏らした場合に限るが。

 

 

 

 

僕は今の訓練の総評を終え、再び皆を散らせ訓練を繰り返す。 その後三回ほど索敵と戦闘を繰り返し、その日の訓練終了時間となった。

 

前世と同じく食事は全て自分達の手で作る、僕は体力に余力があったので積極的に動き回る。 ここでもかっちゃんの意外な家庭的スキルがクラスのみんなに露呈し、才能マンとして大活躍をしていた。

 

夕食のカレーが完成し、僕は皆より早めに食事を終えて席を立つ。 そして一皿のカレーを持って食事場を後にした。 向かうのは―――

 

 

 

「やあ、洸汰君。 お腹すいたでしょ?カレー食べない?」

 

―――崖の上の秘密基地にひとりいる洸汰君のところだ。

 

「…!いらねえよ、俺のひみつきちから出ていけ!!」

「ハハハ!相変わらず手厳しいね…!まあまあそう言わず、ね?」

「何笑ってんだ!!お前と…いやヒーローになろうなんて奴とつるむつもりはねえ!」

洸汰君は僕の方を睨みながら叫ぶ。 以前プッシーキャッツの下へ来たときも仲良くなろうと頑張ってみたが、このとおり邪険にされてしまう。

 

洸汰君がこう成ってしまった原因。 それは前世と何一つ変わらない。両親である“ヒーロー”ウォーターホースの死だ。

 

前世でのことを覚えていた2年前の僕は…オールマイトにまだ出会う前の僕は、少しばかり力があるだけの中学生だった。 それでもなにかできないかとウォーターホースを探し続けたが、運命の流れに呑まれていた僕は彼らと出会うことはなかった。 そしてニュースに流れるウォーターホース殉職の報道を聞き、ただ無力さと後悔に苛まれながら拳を握ることしか出来なかったのだ。

 

だから僕は決めた。この合宿で洸汰君だけは必ず救ける、僕の手の届くところにいるのだから。 僕の手の届くところでは全てを救けると決めたのだから――――手の届く者は必ず救ける。

 

 

とはいっても肝心の洸汰君には嫌われっぱなしだ。 せめて笑顔だけは絶やさないように心がけているが、効果のほどは微妙だ。

 

「おーい、緑谷ー?」

思考に耽っていると僕を探す声が聞こえる。この声は……

 

「さ、砂藤君!?どうしてここに…?」

「いや、緑谷がさっさと飯食ってどっかいくのが見えたからな。 どーしたのかなーっと思って()けてみたんだわ」

「ああ、そうなんだ……ごめんね心配かけて。彼にカレーを持ってこうと思ってね」

僕は洸汰君を手で指しながら砂藤君へ説明をしていく。

 

「なるほどなぁ。でもよ、それ中辛だろ?その子にはまだ辛えんじゃねえかな?」

「はっ!そう言われてみれば……ごめん洸汰君!すぐ甘口のカレーを―――」

「いらねえって言ってるだろ!ゾロゾロ増えて俺のひみつきちに入って来やがって!出てけよ!!」

僕らのやり取りを聞いていた洸汰君は怒鳴り散らして僕らを敵視する。

 

「お!ここは秘密基地なのか!良い場所じゃんか、俺らも仲間に入れてくれよ~。なぁ!」

「ダメだ!ヒーローになりたいなんて奴らはこのひみつきちには入れてやんねー!」

「そう言わずにさ。 ほら、仲間に入れてくれるならこのお菓子を分けてやるぞ!」

「えっ!お菓子!!?」

砂藤君も僕のように邪険に扱っていた洸汰君だが、砂藤君がポケットから取り出したお菓子を見た瞬間目の色が変わった。 さっきまで敵視したのが嘘のように年相応、5歳児の顔に早変わりしたのだ。

 

「っ!……い、いらん!俺はヒーローなんかとはつるまねえ!」

「つるむって…なかなかませてんな。 まあそんな難しく考えるなよ、俺はただお前と一緒にこのお菓子を食べたいって思ってるだけだ」

「嘘だ!お前らはヒーローに成りたくてここにきてんだろ!だから僕にヒーローはすごいって…パパとママは偉いって…僕を置いていっちゃったのに……そう言いに来たんだろ!マンダレイ達みたいに!!」

諭すような砂藤君の言葉に洸汰君はまたも怒鳴ってしまう。 まるで僕らが……いやヒーローが、大人が、皆敵に見えてしまってるみたいだ。

 

「お前がヒーローをどういう風に捉えてる…えーと、思ってるかってのは俺にはわからねえけどさ。 俺はお腹を空かしてる子供がいたら一緒になってお菓子食べる、そんでもって一緒に笑顔になる。そんな人間に成りたくて頑張ってるだけさ。 今のお前みたいな子とな。 だからさ、難しいこと考えず一緒にこれ食べようぜ!」

「……」

砂藤君はしゃがみこんで少し微笑みながら洸汰君へとお菓子を差し出す、そして洸汰君はそれを無言でジーっと見つめていた。

 

「……べるだけ…」

「ん?」

「……うぅ!……お菓子を食べるだけだ!それだけならここにいてもいいっていってんだよ!」

洸汰君が顔背けながら言った言葉に、僕と砂藤君は思わず顔を見合せ……そして笑顔になった。

 

ヒーローそのものを認めてくれてはいないけど、今までより洸汰君が心を開いてくれた。 砂藤君はすごいな、やっぱり持つべきは友。 僕も洸汰君と友達に―――

 

「でもマッチョ、てめーはダメだ」

「あれぇ!?」

「お菓子マンは友達だけど、マッチョは違うからな」

「まあ居るだけなら緑谷もいいだろ?ほらこいつはマッチョだけど悪さはしねーからよ!」

「……お菓子マンが言うなら…居るだけな!」

 

―――たぶん友達に成れたと思う。うん、前よりは関係も良くなってるし、良しとしよう!

 

こうして僕らの合宿二日目が終わりを告げようとしていた。 僕らの中では……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― Dark side in ―――

 

 

夜も更け始めた頃、出久達のいる合宿施設を見下ろすように崖の上に立ち、禍々しき気配を漂わす四人の人影があった。

 

「早く始めようぜ、もうワクワクが止まらねえんだよ」

「黙ってろ、今回は偵察だって出る前からわかってたろ」

「わかってるぜ、でもよお…もう今から面白そうな祭りが楽しみで楽しみでしょうがねえんだよ」

至極愉しげな大男“血狂いマスキュラー”に窘めるように悪態をつくのは顔面継ぎ接ぎの優男“荼毘”だ。

 

「荼毘の言うとおり、今日の目的は偵察です。というかあなたは呼んでなかったのに来たんでしょう……今回必要なのは森を焼く荼毘と―――」

「毒のガスで奴らを煙に巻く役の僕でしょ?」

その隣にはヴィラン連合の苦労人“黒霧”と、マスキュラーに向けて自らを指差すジェスチャーをするガスマスクを被った小柄な少年“マスタード”だ。

 

「この作戦には慎重さと迅速さが求められているのです……なぜなら相手にはあの緑谷出久…オールマイトの弟子がいる」

「だーから、そいつをぶっ殺すのが俺の役目だろ?なら俺がいいならいいじゃんなあ!?」

 

黒霧は自信満々なマスキュラーを尻目に双眼鏡で合宿施設を観察しながら考えていた。

 

マスキュラーひとりなら呆気なく緑谷出久に敗北してしまうだろう。あの人物はそういう類いの怪物なのだから…だからこその策が、奥の手が必要なのだ。 マスキュラーが緑谷出久を相手に時間稼ぎが出来るようになるための……

 

「駄目ですよ、貴方()()持ってきてないじゃないですか」

「あー、死柄木から貰ったあの玩具な。そんなに大事かね()()

「当たり前じゃないですか、アレは緑谷出久に対抗するための切り札なので」

黒霧は呆れたようにマスキュラーへと語る。 筋肉を操る彼の頭の中は筋肉でできているのだろう、そうに違いないと思いながら。

 

「へいへい、じゃあ俺にも双眼鏡貸せよ偵察してやるよ」

「あっ!……まったく……」

マスキュラーは黒霧の手から双眼鏡を奪い取ると鼻唄まじりに偵察ごっこを始める。 黒霧はいつでも被害者体質、相手が勝手気ままなら誰に対してもそうなる運命なのかも知れない。

 

「―――ん?建物から誰か出てきた。あれ……緑谷出久じゃね?」

「なんですって!?ちょっと、返して下さい!」

「アイツが……楽しめそうだぜえ。はぁぁ…痛め付けて、嬲って、ぶっ殺してやりてえなぁ。今すぐにでも!!」

出久を見かけたマスキュラーは黒霧の焦燥を余所に、殺意を全身から迸らせながら狂喜の笑みを浮かべていた。

 

「あ?アイツ、なんかこっち見てね?」

「な!?いい加減返しなさい!―――っ!!!」

マスキュラーの言葉に本気で焦った黒霧はマスキュラーの手から双眼鏡を奪い返すと直ぐ様覗きこんだ。そしてレンズ越しに出久と目が合った。

 

そして出久は鋭い目付きになった後、黒霧達のいる崖の方向へと駆け出して来たのだ。

 

「こちらに向かって来たぁ!!?」

「はあ?何キロ離れてると思ってやがるいくらなんでも気付かれるわけが……」

「いいから撤収しますよ!早く!急いで!!ほらこのゲートに!!」

「流石に慎重過ぎるんじゃ―――うわっ?押さないでよ!」

 

黒霧はアジトへと繋がるゲートを作り出すと即座に真横にいたマスタードを押し込める、次いで荼毘の手を掴んで引っ張っていく。 小柄なマスタードと抵抗のなかった荼毘は直ぐに送れたがマスキュラーはそうはいかない。

 

「貴方を早くゲートへ!もう時間が無いですよ!!」

「ああ?命令すんなよ!来るわけねえだろ!てかヤツから来るならここで潰すまでだっ!!つーわけで俺は―――」

「黙りなさい!」

黒霧は頑なに動こうとしないマスキュラーの足元にゲートを作り出し、そのままアジトへと送り付けた。 後で文句を言われるだろうがこの場から逃げることの方が優先なのだ。

そして自らもゲートに飛び込みその場を後にした。

 

距離が有ろうと目視してなかろうと、間違いなく緑谷出久はマスキュラーのあの殺意を察知していた。あの化け物ならやりかねない。そう考え即座に行動に移ったのである。

 

四人が消えた崖の上、黒霧のゲートが消失したその三秒後のことだ。 大きな砂埃をたてながらひとりの男が舞い降りた。

 

―――緑谷出久である。

 

「あれ?誰もいない。確かにこの辺から殺気を感じたんだけどなぁ…」

直感が外れたことに納得がいかないように後頭部を掻きながら呟く出久。

 

その感は外れてないし、行動も迅速だった。しかし黒霧の危機回避能力が、出久に対する危険性の認知が一枚上手だっただけの話なのだ。

 

マスキュラーのせいで碌な偵察が出来なかったヴィラン連合だったが、その日の晩のうちに襲撃メンバーが集合した。

 

計画の実行は変わらず明日の夜。 出久とヴィラン連合の衝突はもうすぐだった。

 

 

――― Dark side out ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

林間合宿三日目、今日も朝早くから訓練が始まる。 僕の役目は変わらずみんなの教官だ。

やることも昨日と同じで午前中は個性を伸ばす訓練、午後は集団戦の訓練を行った。昨日より軽めに…

 

―――そうして遂にあの時間がやって来たのだ。

 

 

 

「次は――肝を試す時間だ!」

芦戸さんが元気よく叫ぶ。

 

肝試しの時間がやって来た、前世ではこのタイミングでヴィラン連合の襲撃があった。

だが今回は来るかどうかもわからない。死柄木のように来ない可能性もある。でも僕は奴らが来るだろうと思い、準備をしてきたんだ。それに昨日の夜に感じた殺気……あれのお陰で迷いはなくなった。

 

 

前世と変わらないA組とB組の対抗肝試し。補修組は既に相澤先生が引き摺っていった。 そしてある程度の仕込みを済ませた僕は振り分けのくじを引く。

 

A組生徒は20名、補修で三人抜けて二人一組のくじ引きを行うと……

 

「……やっぱりひとり余る」

組み合わせは前世と変わらず、余り物は僕だった。

 

なんでだよ!砂藤君と切島君が入ってるから結構確率変わると思ったのに!……まあいい、ひとりの方が警戒はしやすい。寂しくなんてないさ…!

 

 

一組目の障子君常闇君ペアが出発し、その後も3分おきに轟君とかっちゃん、葉隠さんと耳郎さん、八百万さんと青山君のペアが出発した。

 

「じゃあ次はケロケロキティとウララカキティ!GO!」

ピクシーボブが元気よく二人を送り出すが、ふたりはそれとは対称的で落ち着いている蛙吹さん、そして麗日さんは怯えていた。

 

ここまでは特に問題なく進んでいる……肝試しではなくこの合宿自体が。 昨日感じた様な殺気もないし、報知器にも反応がない。

 

「このまま何もなく終わればそれでいいよな」

僕は独り言を呟きながらスマホを見つめる。 用意してきたものは全て無駄になってしまうけど、平和に越したことはないよね。

 

 

僕がそんなことを考えていたその時、手に持っていたスマホがけたたましい警告音を鳴らす。 仕掛けていた火災報知器が作動したというサインだ。

 

瞬間、背筋にぞわったした感覚があり、かなり近い位置で殺気を放たれていると分かる。

 

「きゃあ!?」

「ピクシーボブ!!」

ピクシーボブの身体が近くの雑木林に吸い寄せられていきそうなところを、間一髪で腕を掴んで引き留める。 殺気はその先から放たれている。

 

「あら、飼い猫ちゃん取れなかったわ。噂通り力強いのね」

雑木林からサングラスをかけたロン毛の男が姿を見せていた。その口調は明らかなオカマだが……前世でも見かけたヴィラン連合の一員だ。

 

「渡すもんか…!!」

ピクシーボブはかなり強力な力で吸い寄せられているが、僕の筋肉よりかは強力ではないようだ。

徐々にフルカウルの出力を上げて引き返そうとするが、ピクシーボブの顔が苦悶に歪み、痛みで声を上げる。

 

このままではピクシーボブが持たない!

 

僕はピクシーボブの腕を放して、全力で駆け出す。 そして引き寄せられるピクシーボブを追い越して、ヴィランに向かった。

 

「速っ―――」

「イリノイ・スマッシュッ!!!」

オカマのヴィランが驚きの声を上げるより速く接近して、勢いの乗った前蹴りをその鳩尾に叩き込む。 オカマは吹き飛んでその真後ろにあった木へと激突し、僕は素早く振り返ると引き寄せられていたピクシーボブを両腕でしっかりと受け止めた。

 

「大丈夫ですか!?」

「え、ええ…ありがとう」

僕はピクシーボブを気遣いながらゆっくりと地面へと下ろす。 どうやら怪我などはしていなさそうだがヴィランの急襲に動揺しているみたいだ。

 

「もうひとり隠れているな?出てこい!」

「やはり気付いていたか……流石は彼が認めた本物」

僕が雑木林の方へ叫ぶと、オカマの気絶していた木の奥から爬虫類のような異形型のヴィランが満足げに現れる。

こいつは確か……ステインの信者だったか?

 

「緑谷出久、お前はステインの求めた本物。お前と争うつもりは――」

「……」

トカゲのヴィランが誇らしげに語る中、僕は無言でそいつへと駆け出す。

 

トカゲは慌てて、背負っていた刃物を束ねた剣のようなものを構えようとしたが、僕が放った回し蹴りがその刃を捉えバラバラに砕く。

 

「待て待て待てまっ―――」

「ウィスコンシン・スマッシュッ!!!!」

制止を求めるトカゲを無視し、僕はその顎に右フックを捩じ込んでブッ飛ばした。

 

もうコイツみたいなステイン信仰者とは話すことなんてない。 ステインと分かり合うことなどないと、僕は保須の一件で知っていたからだ。

 

 

 

 

 

僕は気絶した二人のヴィランを見下ろしながら、拳を握り締めて突き出す。

 

 

 

「―――死柄木から聞いてなかったか?……お前らヴィラン連合は僕が必ず潰すと…!!」

 

 




デクさん VS ヴィラン連合、開戦!―――――


ワールドカップにハマってたら1ヶ月も経ってました。

いい感じの執筆アプリを見つけたのでこれからは更新が早くなると……いいなと思ってます。

気長に続きを待っていただいた皆様には感謝しかありません。 これからもよろしくお願いします!

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