デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】 作:くろわっさん
時間を遡ってから10年間一度も会えなかったオールマイトに、1日で三回も会ってしまった。3年に一回とかにバラけてくれればよかったのに…
「君はいったい何者なんだ、少年?」
「僕は…僕は貴方のことを知っているんです、オールマイト」
尋ねてきたオールマイトに一言だけ返す。
「HAHAHA!それはそうだろうね、私は有名人だからね!」
オールマイトは豪快に笑う、そして言葉を続けた。
「でもね私も君のことを知っているんだよ、緑谷…出久君」
「…っつ!?」
オールマイトの予想外の言葉に僕は驚いた。
「驚いたって顔してるね、サプライズは成功みたいだな!」
オールマイトはイタズラに笑っている。
「まあ、さっき知り合いに電話で連絡をしてね、君のことを話してみたんだ。随分と前から私のことを追っかけてたみたいだね、君は。私が解決した事件の現場にいたり、事務所の前で出待ちしてたり、街中を探しまわってたりね。ああ、あと限定品グッズの販売会場でも見かけたとも言ってたなぁ。彼もまたなんでそんなところにいたのやら…私に直接会いに来ればいいのに、まぁそうもいかなかったか…」
オールマイトは、この10年間の僕の行動を次々と話していく。ドクドクと僕の心臓の鼓動が早くなってるのがわかる。
「―――っと話がずれたな。緑色の癖毛と歳にみあわない筋肉質な体つき、特徴的だったからよく目についたと言っていたよ。これ君のことだろう?」
「…はい」
オールマイトの質問に一言だけ返す、それ以上の言葉が今は出てこなかった。
「ここまでなら只の熱烈なファンってことで、サインをあげて、ハグして、一緒に記念撮影して、応援ありがとう!これからもよろしくね!…で済んだんだけどねぇ―――」
楽しげだったオールマイトの顔が一気に険しくなる。
「君、さっき個性を使っただろう?」
オールマイトから強烈な威圧感を浴びせられる
「そ、それは―――」
「いや、別に個性の無断使用を咎めたいんじゃないんだ。ただね、さっき使った君の個性…
オールマイトが僕に一歩だけ近付いてくる。
「本当に君は何者なんだろうな、君はいったい何を知っているんだ?君は―――ガフッ」
僕の正体を探ろうと質問を投げ掛けてくる最中にオールマイトは吐血した。次に彼の身体から煙がたちこめ、その姿が見えなくなる。
そして煙が晴れていく。
骨と皮だけの細々しい腕、やせぎすの身体とだぼついた服、垂れ下がった金色の髪、くぼんだ影のなかに力強く光る碧眼、そこにはトゥルーフォームになったオールマイトの姿があった。
「オールマイト!大丈夫ですか!?やっぱり身体がもう…」
僕はオールマイトに駆け寄る。
「この姿をみても驚かないばかりか、身体の心配をされとるはな。普通は、偽者!?とか聞いてくるんだが…さて、私はだいたい話したし、見せた。次は君の番だぞ、少年!」
オールマイトはほっそりとした指でゆっくりと僕を差した。
「オールマイト…僕は…」
久し振りに見た病的なオールマイトの姿に、僕は言い淀んでしまう。
「どうした、伝えたいことがあるんだろ?最初に会ったときに君は確かそういったはずだ。身体のことなら心配しなくてもいい、もうこの姿でいる時間の方が長いからな」
オールマイトは黙りそうになっていた僕を促す。
そうだ、伝えなきゃいけないことがあったんじゃないか!
そのために何年間もオールマイトを探し続けてきたんじゃないか!
なに躊躇っていたんだ!なにやってんだよ僕は!
『必ず…必ず
そうさ、救けるんだ!オールマイトを!今度こそ!!
「オールマイト、話があります。信じてもらえないかも知れない、ただ知っておいて欲しいんです。僕のこれまで話を―――」
それから僕はオールマイトにすべてを話した。
僕とオールマイトとのかつての出会い、努力を認められワンフォーオールを託されたこと、雄英で過ごした日々、グラントリノとの修行、ヒーロー殺しとの闘い、期末試験でオールマイトと闘ったこと…そしてオールフォーワンとの決戦の果てに命を落とし、時間を遡ってやってきたことを。
どれだけの時間話していたかわからない、30分くらいだった気もするし、3時間くらいだった気もする。その間オールマイトは様々な顔を浮かべながら、しっかりと話を聞いてくれた。
気がつけば僕の顔は涙と鼻水まみれになっていた。
「オ゛ール゛マイト゛…僕は゛…んぐっ……ぼくは…!」
鼻水をすすり、オールマイトの目を見据える。
「僕は、貴方を救けるために、ここまで来ました!!」
暫くの沈黙が流れる、そしてそれを破るようにオールマイトは言った。
「よく話してくれた、確かににわかには信じられない話ではあるが、君が物知りだったのにも納得がいく。それになによりも…頑張ったな少年!ありがとう!」
そうしてオールマイトは僕の頭を力強く撫でる。
「信じて…くれるんですか…?」
僕は顔を上げて、オールマイトを見つめる。
「信じる信じないは関係ないさ!君はとても頑張った、そう私が思ったからだよ、だからもう一度言おう!少年よ、よく頑張ったな!」
オールマイトは胸を叩いて、自信たっぷりに言う。
「う゛わぁあ゛あ゛ぁぁ、オ゛ール゛マイト゛ォォオ゛゛!!」
僕はオールマイトの胸に抱きつき泣き叫んだ、この10年間溜め込んできた後悔と行き場のない感情を吐き出すよう泣き続けた―――
『――その泣き虫は直さなければいけないなって言ったろう?――まあよく頑張ったようだし―――今回はいいか。』
心のなかでそんな声が聴こえた気がした―――
夕陽が沈みかけた頃に僕は泣き止んだ、眼は泣き腫れて声もがらがらだ。
まだまだ僕はダメダメなデクのままだ、これじゃあ駄目なんだ。今の、いやこれからの僕に必要なものを得るために、僕は顔を袖で拭ってからオールマイトに話しかける。
「オールマイト、お願いがあります」
「なんだい、少年?」
オールマイトが聞き返してくる。
「僕を…!僕を弟子にしてくださ「いいよ!」…い?」
オールマイトは僕が言いきるまえに即答する。
「えっ!?いいんですか?!僕はかなーり怪しげでそんでもってダメダメで、まだ貴方に認められるようなことを何も―――」
「えっ?君から言ってきたのに、弟子になりたくないの?」
「なりたいです!!」
僕の言葉を遮るオールマイトの問いに即答する。
「HAHAHA!冗談だよ、実は君の正体を聞き出すのは目的のうちのひとつでね、いやまあ私としてはあとでもよかったんだが"電話の彼"が聞けってうるさくってね」
「ひとつってそれはどういう―――」
「私がここに来たのは、後継者を求めていたからさ!…つまり君を勧誘にきたんだ!所謂スカウトってやつだ!」
あまりの展開の早さに僕はついていけない。
「君はまだ認められるようなことをしていないと言ってたが、さっきの事件を忘れたのかい?身を危険にさらし、自らの未来を捨ててでも、友達を救うために飛び込んで信念を貫き通すその姿を私は見ていた!だからこそ君の助けになりたいと思ったのさ!認めていないわけが無いだろう!!」
オールマイトの言葉尻が段々と強くなってくる。
「君ならば
オールマイトは額に手をあてながら笑っていた。これほどまでに見ていてくれたとは、こっちのほうが予想外だよ。
「それでだ…改めて聞こう少年!私の後継者にならないか?」
オールマイトは僕に手をさしのべながら聞いてくる。
「はい!なります!よろしくお願いします!!」
僕はその手をとって、大きく返事をする。
「ああ、これからよろしくな、緑谷少年!」
なんだかとても懐かしい響きだ…そう感じた。
「ねえオールマイト、僕は貴方を
僕はオールマイトに尋ねる。
「なれるさ、私だけじゃない。どんなに困ってる人でも笑顔で救ける、そんな…君はそんなヒーローになれる」
僕が言って欲しいことを、
「しかし弟子入りときたかぁ、個性を渡すだけのつもりだったから、そんなプランを考えていたのだが。弟子となるとこれは修行だな!」
「修行ですか!?」
「ああ、修行だ!私の修行は厳しいぞぉ!もしかしたら死ぬかもしれん―――」
「えっ!?死んじゃうんですか僕!?―――」
「HAHAHA!そうならないための修行さ―――」
「ちょっとオールマイト―――」
こうして僕がオールマイトを
ようやく第一章が終わりました。
まだ原作の1話と2話の頭の方ですよ!全然進んでねえ!
文章書くのってものすごく大変ですね、世の中の物書きを改めて尊敬しました。
第二章も現在、誠心誠意執筆中ですので、よかったらまた読んでやってください。ひとまずはここまで読んでくださりありがとうございました!