1
車に撥ね飛ばされた後、どうも体がおかしい、おかしいけれども、寧ろ大事なパーツがやっとはまった気がする。
体調が優れなかったりする訳じゃない、逆に調子が良すぎて制御が効きづらい。
体は思い通り以上に動き、力の制限が難しい、気合を入れて勉強に励もうとシャーペンを握りしめたら砕け、肩がぶつかった相手は吹っ飛ぶ、個人的にはちょっと当たったくらいの感覚だけれど、相手としては堪ったものではないらしい。
それに加えて、より顕著に体内のエネルギーの流れ、他人のエネルギーの認識といったことが以前よりも鋭くなった。。(気=体内の潜在エネルギー=生命エネルギーというネットでの記事を見かけたのでこれからそのエネルギーを"気"とよぶことにした。)
感じ取れるようになったとは言うが、ただ漠然としかわからない。
理由は余り思い当たらず、もし当て付けるのならば車に跳ねられて一線を超えかけ、かける前にようやく本質をつかんだ、理由としては当てはまるものがない。
それでも、得体の知れないものが急にわかると言うことほど気味が悪いものはない、正直自分でも恐ろしい
…当面の目標は気の把握、改め身体能力の向上
受験まで後しかない4ヶ月、やることは無限、時間は有限、これからは取捨選択が大事になってくる。
何かを長期間、成し遂げるためには考えや行動を一貫させる必要があると言うし…
何はともあれ新しい一歩を悠々と大きく踏み出した…だが、気の把握は思ったよりも簡単じゃなかった。
難しいのは今までずっと無意識でやってきたことの発展、無意識でやってきてたからこそわからない、スムーズにいったのは気を抑えること、抑えることというよりは消すこと。
何をすればいいのか全く分かんなかったのでそれっぽいことを書いてある創作物を読み漁り試行錯誤を重ねた結果、俺にはリラックスしたりするのが一番肌に合っているらしい。
お陰で元の学校生活を送れるようになった訳だけど、そこから次のステップに行くまでに1ヶ月費やしてしまった。(これでもネットの記事と比較すると大分早い、キャッチコピーが"無個性の君でもヒーローになれる"という胡散臭いものだったが…)
結果オーライ、胡散臭いものでも信用できる事実であること、今回得た教訓だ。
その副産物としてか、ただ気配を絶つだけではなく、動きの無駄を減らして移動速度が2段階程上がったのは大きかった、それに加えて気を漠然としか判別できなかったがだんだん、ちょっとずつではあるが正確にわかるようになってきた。
精神を研ぎ澄ませることで周囲の気が捉えやすくなったのだ。
自分の気を広げることで周囲の気を掴み、気を感じることができる、説明するならばこういった言葉が適切だ。
次に始めたのは気の操作、の応用で気を操作して使うときに使う場所に気を集中させるという技術。
気合を入れて叫びながらイメージすることによってようやく成功したが、近所のおばちゃんにヤバイ奴がいると通報され、警察に連行、警官の優しさがかえって痛く、恥ずかしさと虚しさで泣きそうになった。
社会的に大切ななにかを失ったが、引き換えに得たものは大きい、等価交換の法則を身をもって実感した瞬間でもあった。
それにより気を一点に集中することで威力を高めれることが判明。
けれど、大きな欠点が1つ、集中させるのには只でさえ時間がかかる、肉弾攻撃時の気の集中は、さらに難度が上がるだろう。
…とこれらが、2ヶ月間で得られた成果
既に受験まで2ヶ月を切った、まだまだ奥が深いけれど、これらのことを、特に気の集中をある程度までの物にしなければ雄英には合格できる望みがない、それに受験勉強の追い込みもだ。
受験までにやることはもう決まった、後は、今までどうり変わらずに"楽しむ"それだけだ。
そして今はやることが多すぎて最高に充実している、楽しい、心からそう思った。
2
雄英高校ヒーロー科
プロ必須の資格を習得を目的とする養成校
全国同科中最も人気で最も難しくその倍率は例年300を超える。
2月24日、バス、地下鉄乗り継ぎ6時間と少し、長時間の移動のため1日早く雄英高校付近のビジネスホテルに宿泊し雄英高校一般入試実技試験に挑む。
「はぁ~緊張するね」
麗日が前の座席からひょっこり顔を出して言った。
「まだ2日前で緊張していたら当日ヤバイんじゃないのか?まだ表情に出ていないだけましか」
「確かにマシだね…そういうトーヤ君だって緊張してたり…はないか」
「どういう意味だよ」
麗日はよくも悪くも裏表がない、言いたいことをすぐ言う、彼女の魅力の一部なのだが余りにも無さすぎるのは一周回って怖い。
「だってトーヤ君鈍感じゃん」
こういうところだ。
「鈍感っていうより、ずれている?変わっている?かな、私には到底真似できないものだね」
「誉めているのか貶しているのかわかんねぇよ」
「私もわからんもん」
じゃあ言うなよ、と突っ込みたかったが彼女とそこそこ長くいるので止めとこうと思った、ここで突っ込むと拗ねて面倒くさいからだ。
しばらくすると麗日は外を指差して3角形を描くように結露のついた窓ガラスに落書きをしていた。
「何やってんだ?」
「見えるかなって」
「冬の大三角?」
丁度窓から見える方位は南東、空を見上げる事で確認ができるはずだ。
「せいか~い、さすがトーヤ君!」
「お前受験生舐めてるだろ」
そうは言ったものの少し気になって気を手に集中、結露がついた窓ガラスはあっという間に、星が降るような夜空が目の前に広がった。
私のとこもやって、とせがませたので麗日の窓ガラスも気を集中させた。
「あれがおおいぬ座シリウス、こいぬ座プロキオン、オリオン座ベテルギウス」
麗日が描いていた三角を思い出しながら恒星の位置をたどった。
三角形の中を淡い天の川が縦断している。
「そしてふたご座ポルックス、ぎょしゃ座カペラ、おうし座アルデバラン、オリオン座リゲル、と麗日が言ったシリウス、プロキオンを合わせて冬のダイヤモンド」
「うわっ何でそんなとこまで覚えとるの?」
「興味あったんだよ」
「ふうん…それにしても、綺麗だね」
「そうだね」
バスに揺られながら麗日はそう呟く、透き通るように星が散らばる夜空に見とれていたので生返事しかしなかったが、時間はもうPM23:00、麗日は眠そうに船を漕いでいた。
体調を崩してもなんだしな、俺も頭上の電気を消して就寝体勢にはいる。
「おやすみ」
返事ではなくうめき声のようなのが聞こえた、お休みとでもいっているのだろうか?
俺もゆっくりと夢の中へ沈んでいった。
先日は、1日中個性の確認、と軽く観光(無理矢理連れていかれた)
雄英高校は国立なため既に筆記試験は終了していた、もしかすると倍率の関係もあるのかもしれないが…余談ではあるが俺の結果は何とかかんとか大丈夫だと信じたい。
そして受験当日朝6時、今日は実技試験
「お早う、トーヤ君」
「おう…おはよー、うららか…じゃねえな怖いぞ顔」
俺たちは朝、世界最大規模のファストフード店で味気のない朝食をとっていた。
同じ境遇のやつらが多いのか、制服を着た同年代くらいの生徒等の姿を多く見かける、乃ち、全員敵だ、これから僅か36席しかない雄英高校ヒーロー科の席を勝ち取らなければならない。
「トーヤ君は何でそんなに楽しそうなん?」
おっと頬が緩んでいたか、さっきからよく嫌な気をぶつけられると思っていたのさ。
麗日は案の定、俺の予想と同じくガッチガチに緊張しているらしく顔はうららかじゃない、もはや悪人面である。
同郷の者くらい手を貸していいだろう、それを建前として思い付いた。
「俺も心の中ではビビっているよ。麗日、緊張しているならちっとばかし手を出してくれ、いい解しかたがあるんだ」
やはり結構緊張しているのか、有無を言わず麗日は大きく深呼吸をしながら手を出した。
その手に俺の気を少しずつ送り、気の乱れの調節をしようと心音に合わせ拙いながらもゆっくりと乱れを修正していく。
「トーヤ君の手ってあったかいんだね、外こんなにも寒いのに」
「体質だよ、体温が高い方なんだ」
それはそうだ、気を手に集中させているんだから…このくらいでいいかな?
「それはそうと、落ち着いた?」
大丈夫とでも言うように親指を突き立てて応える
「うん!本当に解れた!何となくだけど力が湧いてくる!」
よし!何とかセーフ、危ない…正直始めてやったし、失敗しないでよかった、尊い犠牲にならなくてよかったよ本当に。
「トーヤ君、試験自信ある?」
「なけりゃ来ねぇよ、受かる自信しかない」
ここにいる奴等全員そうだと思う、その自信がなければ、そこから生まれる心の隙は倍率300の中では命取りになるだろう。
「麗日、いいこと教えてやる、自分が嫌がることは」
「人にしてはいけない、でしょ?」
甘い、甘すぎる、このマッ●マフィンのように甘い
そんな考えでは、生きていけないぜ、麗日だから俺の極意を教えるか
「…きっと相手も嫌がる筈だから効果的に使うといい」
「いや、そんなドヤ顔&悪人面で言われても!そんなん絶対やらんわ!」
まぁ、当然の反応だな
そして切れのいいツッコミ、さすが麗日だ。
けどな、お前が俺の道を邪魔しているなら、全力で叩き潰すつもりだぜ。
「そんじゃ、俺はもうそろそろ行くけどどうする?」
「私はもうちょっとゆっくりしとく」
女の子一人だと…ま、大丈夫か、周りはそれどころじゃない奴ばっかだし、さすがのヴィランでもヒーローの卵とプロヒーローが教師をやってる雄英の近くで騒ぎは起こさないだろう。
「そっか、また後でな」
「えっ、どこいくの?」
どこにいく、か。
全く考えていなかった、ただ試験始まるまでブラブラしようと思っていただけだし。
色々準備物が必用だからな、動けるようにエネルギーを補充しときたいから歩きながら行き先考えようと思っていたんだけど、最低限コーラが売っていればなんとかなるしなぁ。
「コンビニかな?」
7と11がモチーフのコンビニエンスストアが丁度目に入った。
道行く人は皆、手をポケットにいれたり、カイロを擦ったりと寒さが非常によく目立つ。
何事も準備が大切、まずは効率のいいエネルギーを確保しなければ、俺は凍るような寒さのなかに身を投げ込んだ。
4
『今日は俺のライブにようこそ!!! エヴィバディセイヘイ!!!』
「ょー…ぉ…ぉ!」
「お願いジン君!黙っといて!」
なぜだ、なぜ邪魔をする麗日
『こいつぁシヴィーーー!!! 受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?』
「ん~~~~!」
なぜだ、なぜ邪魔をする麗日!プレゼントマイクかわいそうじゃないか、困っている人を助けるのがヒーローなんだろ!?
「それはそれ、これはこれ!それに、ただ叫びたいだけでしょ」
さすがは麗日、見抜いていたか。
落ち着いて見渡すと周りはもう人だらけ、全校集会の比ではない確か今年は倍率323倍で36×323でえっと…約12000人か
そこら辺の町一つ分か、よく収容できたな…一体ここは何をする場所なんだ?
『入試要項通り!リスナーにはこの後、10分間の「模擬市街地演習」を行ってもらうぜ!!!
持ち込みは自由! プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!! O.K!?』
そう言われて、手元に置いてある受験番号の書かれている用紙を見る。もう返事を返すことがないだろうと踏んでいるのか麗日も用紙を見ている。
受験番号の下には自分達に分けられている試験会場の名前が記載されていた。
俺はF、麗日はDとなっている。
連番なのに会場が違うのは何を意味するのだろう?
同じ学校で協力させないため、が考えうる限り一番適当な回答か。
『演習場には〝
各々なりの〝個性〟で〝仮想敵〟を行動不能にし、ポイントを稼ぐのが君達リスナーの目的だ!! 勿論、他人への攻撃等、アンチヒーローな行為はご法度だぜ』
それにしても情報量が少ない、大事なはずの仮想敵の総数、ボーダーライン、その会場の地形や広さetc.
あまりにも説明に穴が空きすぎている、これも試験の一部って訳なのか。
考えようによっては偶々仮想敵を飛ばした先に偶然人がいて当たってしまっても他人に攻撃しているわけではないからいいということか。
『俺からは以上だ!!
最後にリスナーへ我が校の〝校訓〟をプレゼントしようっ!
かの英雄、ナポレオン=ボナパルトは言った!
「真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えていく者」と!!』
ナポレオン=ボナパルト、確かに英雄と言えばこの人と思い浮かべる人も多いだろう、俺とて彼の言葉には刺激をもらっている。
そしてそのナポレオンはこうも言っている。
『じっくり考えろ。しかし、行動する時が来たなら、
考えるのをやめて、進め』
俺はもう充分考えた、後はがむしゃらに突っ走るだけ…待てよ、もし俺の記憶が正しいのなら、変にこじつけすぎているかもしれないが、プレゼントマイクが敢えてナポレオンの名前を出したことで点と点が結ばれた、もしやと言う淡い光にしか繋がれていないけれど、もし正しければ2、3点のアドバンテージが得られる。
『〝
それでは皆、良い受難を!!』
その声でガヤガヤと約12000人の大移動、麗日には同郷のよしみ+実験台にしてしまった詫びにたらればのアドバイスを送る。
移動しながら炭酸を抜いたコーラを3本ほど飲み干し、気の流れと集中の確認を念に済ましておく。
やはりその時は唐突に、突然にやってくる。
かの、ナポレオンはこうも言っている
『勝利は、我が迅速な行動にあり』
詰まるところ先手必勝、と
…よくバトル漫画で、先に動いた方の負けというシーンがあるけれども実際のとこどうなのだろう?
そんなことを考えながらまだ呆然と立ち尽くす奴等を飛び越し、ポイントを1点でも2点でも多く稼ぐために稼ぎに走る。
『どうしたあ!? 実戦じゃカウントなんざねぇんだよ!! 走れ走れぇ!!賽は投げられてんぞ!!?』
そこでようやく気付いたのか、大きな気の溜まりがやっと動き出す、緊張、焦り、不安、そしてまれに落ち着きを持つ様々な気が感じ取れる。
うかうかしてらんねぇな
「標的補足、ブッ殺ス!」←1P
まずは、1P、お前には景気付けにいいものをくれてやるよやるよ!
右手に気を集中、大きく振りかぶったテレフォンパンチ、そして真っ正面から…
C R A S H !!
大きく放物線を描き、偶々後ろへ、つまるとこ大きな気のかたまりの方へ飛んでいってしまう。
さてさてさ~て、ここのポイント全部貰うことにしますかね。
気のせいで大きなアドバンテージがあると思っていた、けれども逆に気を把握してしまったせいで、把握してそれに頼りっきりになってしまっていたからこそ、このあと苦戦を強いられること、俺はをまだ知らない。
やはりどうしてもこの作品にあの電撃娘を出したい訳です…名前何にしよう。