THE・HERO!!!!   作:奇述師

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「覚悟はしていたのに、自分がどれだけ、あの子の無邪気さに救われてきたなんて。もう、あんな風に口喧嘩することも出来ないんだなって…」

「後悔、しているのかい?」

「いいえ、でも…失くしてから、はじめてわかることってあるんですね」




第一歩

 1

 

  この景色をみるのは何度目だろうか?鈍い痛みと自分への不甲斐なさ、悔しさを感じ青い空を見させられながら思った。

 

  自信はあった、状況把握能力、戦闘力、機動力、どれもそこら辺のやつでは俺に敵うはずがない、生命体であれば、の話だ。

 

  生命エネルギーを感じ操作する特性をもった個性、今のところ本質は分からず個性の更新もしていないけれど、並みのやつらに負けるはずはない、しかし、現状俺が不利なのは明らかだ。

 

  衝撃をなるべく殺しながら砂煙や金属片の転がった舗装道路をゴロゴロ転がり追撃を避ける、目の前にいる3Pの敵ロボットは優しいことに追撃をしてくることはなかった、恐らく射程から外れたからだろうけど。

 

  生命、生き物、それらのエネルギー、転じて"気"を感じることが大きなアドバンテージだと考えていたあのときの自分を一回でいいから張ってやりたい、そう考え最初はほんの2・3発殴ったり蹴ったりすれば壊れたロボットに20発以上打ち込み崩れたことを確認して一息ついた。

 

  まずこの場での弱点、集中しすぎると音が聞こえなくなり、視野は狭くなる、その分狭まった視野の情報処理能力は著しく上がり、感覚は更に鋭く、狭まった視野を完全にカバーしきれるほどになる、しかし、ロボット相手ではその事は全くの逆効果だ。

 

  生命エネルギー"気"がないので集中するわけにはいかず、攻撃に集中していると遮断した聴覚の隙をついて『標的補足、ブッ殺ス!』と素敵な言葉を発しながら突撃してくる敵の鏡、1Pロボットが横やりを入れてくる。

 

  それゆえに中くらいのダメージの蓄積、気のコントロールミスのせいで傷付いた拳や脚、ガードし損ねた衝撃は確かに、確実に俺の動きを蝕んで、現状少しばかり休まなければ途中でぶっ倒れるかもしれない。

 

 

  だからこそ、俺は決して歩むのを、ポイントを取りに行くのをやめてはいけないと思った、この試験がヒーローになるための判断要素をどれだけ持っていたとしても結果が全て、受かるためにはポイントをとらなければ、筆記テストでやらかしたぶんを取り戻さなければそこで俺の道は途絶えてしまう。

 

「これでっ!潰れろ!」

 

 密集してきたすばしっこい仮想敵の足元を崩し怯んだところにかかと落としを決める、実戦では隙が多いが威力は絶大、手の何倍もの筋力を備えている足での攻撃は非常に有効だ。

 

 砂煙が上がり、飛び散ったアスファルトの破片が尽く仮想敵へぶつかる。

 

 それと同時に少し気が抜けてしまった、後ろへ見える残骸の量がそうさせたのか知らず知らずのうちに個性を解いていた、鍛練と実戦ではここまで違うとは思いもよらなかった。

 

 ふー、いったん休憩するか、この個性使うと気性が荒くなるのがネックなんだよな…それに

 

「・・・ハァッ・・・ハァッ、ったく不便だな」

 

 体力、気力、精神力をごっそり持っていかれる。

 

 一度、稽古ですべて出し切ってしまったとき地面に頭部約8kg分で重力加速度加速度による強烈な頭突きをかましてしまったことがある、まじで5日くらい日常生活をするのがやっとだった。

 

 いや、あと姉さんに朝教えてもらった超ハイリスクハイリターンの技術を使ったときか、あれがなければ電車内で眠ることはなかったのに・・・

 

 それよりも、まだまだポイント稼がねぇと・・・俺の学力じゃ相当ポイント稼がないと受かんねぇ。

 

「はぁぁぁあああああ」

 

 再び湧き上がる力を拳、足に集中させる、ここまで来るのにだいぶかかってしまった、なんせ一回一回力を攻撃箇所へ集めなければならない、それだとどうしても時間がたつにつれ、力のコントロールが難しくなる。

 

「そんじゃぁ、さっさと俺の糧となれや」

 

 誰に言うのでもなく自然と口に出てしまう、気を集中させたことにより迸るスパーク、地面を穿ち、その勢いで違う場所にある仮想敵密集所へ跳ぶ

 

『あと6分20秒~』

 

 そんなアナウンスが聞こえたような気もしなくはないが俺は本能のままに拳をふるった。

 

 この入試は詳しい敵の総数も、詳しい配置も伝えられていない、限られた時間、広大な敷地・・・そこからあぶりだされるのは…

 

 状況をいち早く把握するための【情報力】

 

 遅れて登場じゃ話にならない【機動力】

 

 どんな状況でも冷静でいられる【判断力】

 

 そして・・・純然たる【戦闘力】

 

 市井の平和を守るための基礎能力がポイントという形で表れる。

 

『今年はなかなか豊作じゃない?』

 

『いやーまだわからんよ』

 

『真価が問われるのは・・・ここからさ!!』

 

 どこから現れたのか、巨大なギミックが所狭しと大暴れし始める

 

『圧倒的脅威』

 

『それを目の当たりにした人間の行動は一択さ・・・』

 

 圧倒的脅威、目の前に現れた時、人間は恐怖に陥り選択は逃げの一択となる。

 

『メリットは一切ない』

 

『だからこそ色濃く、浮かび上がることがある』

 

『ヒーローの大前提、自己犠牲の精神ってやつが!!』

 

 ─圧倒的脅威を目の前にして逃げるほかの受験生、他の仮想敵が近くにいるのに逃げてくれるなんて、俺にとっちゃあ、ありがたい。

 

  正直なぜ逃げ惑う必要があるのかわからない、まだでかいのはここまで距離があるところまでいるし、地響きも酷いだけで脅威という脅威になっていない。

 

  流石に近すぎるところでポイント稼ぎはやりやたくねぇ、もう少し稼がしてもらってまた別のとこへ逃げよう、運良くあの巨大ロボの周りを沢山のポイントが彷徨いているから。

 

 

 次の一歩を踏み出そうとしたとき、確かな違和感が全身を包んだ、まるでどこかに引き寄せられるかのように風が顔を撫でる。

 

 

 ─なんだこの景色は?何で地面目の前に見える?いや、いやいやいや…まさか…ここにきてエネルギー切れ!?

 

 ガクンと大きく視界がぶれる、ぶれるではなく揺れている、か。

 

  ギリギリで何とか踏みとどまるも体は言うことを聞いてくれなかった。

 

 ─何で、何で?何故動かない!何で敵ロボットの姿が見えない!?…バカ野郎、自分でも解ってるくせに言い訳かよ…畜生っ

 

  耐え難い衝撃に備えてある程度覚悟して待つが、変わりに青い閃光が目に飛び込む、それと同時に…飛んだ。

 

  ものの見事に飛ばされた、直接的にではなく、感じたことのない衝撃痛みが体を駆け巡る、前にトラックに撥ね飛ばされたことを思い出した。

 

  …電気か何かか?

 

『げっ、あんた大丈夫?』

 

  消え行く意識のなかで俺は確かに聞いた。

 

 その凛と澄んだ声は消え行く意識の最中しっかりと俺の耳にまで届き、中に浮いた俺が地面とぶつかるまでに細く華奢な体で受け止めて、適切な処置を施してくれていた。

 

 《あと5分~》

 

 確かに見た、圧倒的驚異が粉々にされている姿を。

 

 そしてこの場面をもって、俺は試験を終えた。

 

 

 

 

  2

 

『私、天才ですから』

 

『天才もねぇ、たまには間違うことがあるんですよ』

 

『言い訳じゃないですけど、黒板って広くて集中すると細かいとこ見えなくなるんですよ』

 

『ちなみに紙に書いて間違えたことはないですよ、私、天才ですから』

 

「燈夜!?大丈夫?柄にもなく"高校科学講座"なんて番組みて…あんた理科苦手じゃなかったっけ?あ、その先生面白いよね~私も本持ってるよ《私の瞳は深青色》」

 

「あぁ、悪い、大丈夫…」

 

 自己管理不足というのか、あの時脳内麻薬…エンドルフィンが大量に出ていたため自分の正確な状況を把握できなかったのが痛い。

 

  筆記の方は自己採点をするまでもなくヤバイことがわかっている、けどそれを帳消しにするために期待していた実技試験での事実上の途中退場、そして入試以降、麗日と顔を会わせていない。

 

 

 

  会わせていないって言うか、俺が学校にいっていないんだけど。

 

  出席日数は今まで無遅刻無欠席の輝かしい成績を残しているから1ヶ月ぐらい多分大丈夫、そしてその期間俺は現実から逃れるように趣味へ没頭した。

 

「通知…今日明日くらいかぁ」

 

「ん」

 

「姉ちゃんは受けることすらできなかったんだから、頭悪かったせいで…受けれることだけでもすごいよ」

 

  その事は嘘だと俺は知っている、成績は抜群によく、個性も応用できる分野が広く人を助けることができる個性、行った高校は知らないが、"○●高校から初の仮免取得!美しいヒーローここに見参"という身内が見たら恥ずかしいものが学校で出回ってしまっていたので取り敢えず凄いことは確かだ。

 

「そこでサプラ~イズ!こんなものが今朝ポストに入っていました!」

 

  サプライズじゃなくない?

 

 だが姉ちゃんは言葉の軽さとは裏腹に、きっと大丈夫だよとでも言いたげに栗色の瞳をスッと細めた。

 

 まるで、何かを知っているかのように

 

  気が重い、どうしても悪い方向に考えてしまう…

 

  よし!先ずは破ってみるか。

 

  一思いに封筒を破きトントンと破いていない方を叩く、カシャンと機械音が聞こえると同時に…

 

『私が投影された!!』

 

 オール…マイト?カメラと結構近い、立体映像には見間違える筈もない、筋骨隆々のNO.1ヒーロー、オールマイトが投影されていた

 

 これは雄英からで合っているのか?

 

『HAHAHA!私が投影されたのは他でもない、雄英に私が勤めることになったからなんだ、つーまーり、君たちを教え導く立場ってことさ!嬉しいだろう?(たかつき)少年

 …ええ何だって…潰す?何を?象徴を!?

 調子乗んなって?オーケーオーケー、うんわかったから、その手のワキワキやめてくんない?』

 

  あれ、何かおかしいぞ。

 

『ウオッホン、さあ本題に入ろう。

 筆記は…うんすごく極端だね、主にできる教科とできない教科の差が、でも大丈夫!多少なら実技でカバーできるのさ!

  君の実技試験の時の顔だと今一結果に不服のようだが、前半の超荒稼ぎ、あれでもう充分!下手すれば歴代一位のスコアだっただろうね、何が足りないかは自分の胸に聞いてみな?

 前半の皆が出遅れたときにかっさらっていった膨大なポイント、試験時間5分残して何と75ポイント!

  私的に言えばもう少し思いやりの気持ちが欲しかったが…合格だってさ

 ようこそ鐙少年!雄英(ここ)が君のヒーローアカデミアだ!!』

 

 ゾワリと嫌ではない感覚が体を駆け巡り、毛が一気に逆立つような感覚が全身に広がる、それは徐々に結果を意識させ、受かったと、先ず高い壁をひとつ越えたと、体が知らせてくる。

 

 雄英高校、ヒーロー科無事合格、その事実は俺に充足感を与えてくれた。

 

 そして、滑り込み?かどうかは知らないけど多分ギリギリのラインで雄英高校に進学が決まった俺は今まで住んでいた我が家を離れ、駅前、近くにスーパーがある中々立地条件のいいとあるマンションに居すわることとなった。

 

 姉ちゃんは今日は、というより春の短期休暇なので俺の引っ越しの手伝いをするためにわざわざ来てくれたので色々と(特に片付けや部屋のレイアウトに関したは)大変助かった。

 

 若干女子力高めの部屋になってしまったが…

 

 まあ遊び心満載の部屋としてよしとしよう、学生の一人暮らしの部屋としては些か豪華なものだけど

 

 加えていつも通りでない環境で、いつも通り姉ちゃんと朝を過ごせたのはよかった。

 

 昔、理由は未だに定かでないけれど転校して慣れない環境に身を投じるのは辛いものだと知っていた、それを知ってのことか、偶然か、家族がいるだけでこんなにも落ち着くなんて…

 

 我ながら案外脆い神経なんだな、不甲斐ないけれど見つけていなかった自分を見つけて姉ちゃんとの談笑を心から楽しむ、もう暫くはこんなことはないのかもしれない、そう思うとこの時間がもう少し長く続けばなと思った。

 

 けれどもテレビを見るともう部屋をでなければ危うい時間に、胡散臭い占いの結果をあきれながら確認して、飛び込むように玄関へ向かう、かかとを踏んでしまおうかと思うがさすがに新品を踏むのは気が引け、一旦座ってから丁寧に靴を履いて直ぐ様立ち上がる。

 

「燈夜、いってらっしゃい!」

 

「いってきます!」

 

 ─そう言えば、俺を倒し助けてくれた子はどうなったんだろう?

 

  そんな疑問もすぐ解消されるのだが、自分よりも格上の人たちがまだまだいて、そいつらと一緒に高校生活を送れるのは単純に嬉しかった。

 

 

 

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