第5話
大洗女学園の生徒会室は、ちょっとした会社の事務所よりも大きなフロアで、何人もの生徒が事務仕事に追われている。
そして、その生徒会室に持ち込まれた書類は尋常な量ではなく、それは廃校騒動の後に残された事務処理と比例していて、尋常ではないほどの量だった。
山積したそれらを処理するために生徒より有志を募り、臨時役員を集めたほどだ。そうやって集めた生徒会役員達は特別に授業を免除され、かわりに書類整理を行っている。
そんな中、あんこうチームの砲手である五十鈴華が生徒会室へとやってきていた。
「というわけなんです、小山先輩」
華は、何度か華道の展覧会で顔を合わせたことのある哘雅楽乃からされた〈お願い〉をかいつまんで柚子に話す。この手の業務は広報の桃が行うはずなのだが、今彼女は別件でほかの生徒の対応を行っていたため、手が空いていた彼女が応対している。
「なるほど。あんこうチームのみんなにはこのことは話したの?」
念のため、華からもたらされた話がどこまで広がっているのか確認するつもりで尋ねた。
「はい。あんこうチームの皆さんには伝えています」
「そっか、じゃあ会長に聞いてみるね。会長~」
「ちょっと待っててくれ。どうしたー、小山ー」
予算関連の話を役員と詰めていた会長が、話を中断して答える。
「五十鈴さんに、他校から戦車道の練習試合がしたいという連絡があったみたいです」
「練習試合? んー、流石に予算がねぇ……夏休みの選抜との試合で、壊れた戦車の修理をやるだけで手一杯だし。五十鈴ちゃーん、ちなみにその学校ってどこ?」
「聖應女学院というところです」
華が答えた。
「聖應。聖應、聖應……かーしまー、確か聖應って鏑木財閥が私財を投じて作った学園艦だっけ?」
「はい。イギリス系カトリックの、幼年部から大学まで一貫教育がモットーの学院です。戦車道は、講座としてはあるものの、いままで対外試合をあまり組んでいない学院ですね」
資料棚からなにやらファイルを取り出している最中の桃に尋ねると、桃は思い出す必要もなくすらすらと答える。
「小山、聖應の戦車の構成はわかる?」
「ちょっと待ってください……」手にしていたタブレットを操作して情報を検索、出てきて情報を読み上げた。「センチュリオン一輌、ファイアフライ二輌、コメット十輌、クルセイダー五輌、トータス重駆逐戦車二輌のようです」
「おーおー、流石鏑木財閥、お金かけてるねぇ……五十鈴ちゃーん」
「はい、なんでしょう」
「五十鈴ちゃんに連絡してきたのは生徒会長?」
「いえ、五十鈴流と合流のある華道の家元の娘さんです。あちらの生徒会の了解は取れているそうです」
「なるほどぉ。それなら、やりようはあるかもねぇ。返答はちょっと待っててねぇ。むこうの生徒会長とちょっと相談してみるわ」