第6話
「ということで、しばらく待ってくれということでした」
華は、杏子から言われたことをそのままあんこうチーム全員に伝えた。
「そうでしたかぁ。先立つものがないとはいえ残念です。確か聖應ってトータスを二輌も持ってて、それ以外は足の早い巡航戦車でかためてるんですよね。見たかったなぁ~、ね、西住殿」
優花里が、暗記していた情報をいつものようにつらつらと言葉にしていく。一体どこにそれだけの知識を詰め込む時間があるのかと尋ねたくなるほどだ。
「あはは……」
尋ねられたみほはどう答えればいいのかわからず、いつものように乾いた笑いでごまかす。
「聖應って、超がつくぐらいのお嬢様学校なんでしょ? そこと友達ができたら、上流階級の仲間入りして、上流階級の殿方と知り合いになって、庶民の魅力に溢れた私がモテモテになっちゃうかも~~」
などと、沙織がいつものように脳内での妄想たくましく、身をよじりながら欲望を吐露した。
「沙織さん、それはないと思いますよ」
沙織のいつもの妄想トークを、華がきっぱりと否定するまでがいつもの流れだったが、今回は、
「そうだな」
麻子もそれに同意する。
「二人ともひどーい! どうしてそんなこと言うの?」
沙織は、自分の願いに賛同してくれるのが友達ではないか、と思うのだが、この二人はそのあたり実に冷淡だ。
「そもそも、社交界がどんな場所かも知らないだろう」
「それはそうだけど……」
「それより、聖應だったか」
ふむ、とうつむいて何かを思い出すようにうなる。
「どうしたんですか? 冷泉殿」
「確か、遠縁の親戚が、一人通っていた気がする」
随分昔、物心もまだついていないような頃の記憶を引き戻した。
「そんなのいたっけ」
「たぶん、おばぁなら知ってると思う。でも、親等でいえば10以上離れてる赤の他人だ。親戚というのもおこがましい」
「でも、どうしてそんなところがこの時期に練習試合を申し込んできたんでしょうね。大きな大会も終わって、あとは秋季の小さな大会しかないのに」
優花里は、天井を見上げつつこれからの高校戦車道の公式試合スケジュールを思い出しながら言った。あとは、地方別の小規模なリーグ戦や来年度春季の新人戦予選があるぐらいだ。
「公式大会には出られない事情があるんだろう」
と、麻子が答える。
「それはそうなんですけど、気になるじゃないですか。戦車とか、どんな作戦でくるのかとか、どんな流派なのか、とか」
「優花里さん、ひょっとして」
みほは、いやな予感がして尋ねる。
「はい! いってみようと思います!」
力強く答える優花里だった。