大和がまだ誰とも恋仲になっていない未来
Side ユーゴ
今しがた学長への挨拶を済ませこれから卒業まで学ぶ事になる教室へと担任の梅子先生と共に向かっている。
異国への転校というのは2度目なので特に緊張などはしていない。
それ以上にこの学び舎のどこかに「武神」川神百代がいるんだと思うとそちらの方が緊張する。
目の前で良い感じに大人の魅力を振りまいてる先生の腰には鞭。プレイなのだろうか。
その鞭を一緒に使う機会があればその歩くたびに左右に揺れる形の良い尻を是非とも後ろから突いて揺らして差し上げたい。
むしろその尻で俺を圧死に追い込んで頂きたいと思う。
アホ丸出しの事を考えていると梅子先生の足が止まる。達人は気を感じ取るという。俺の邪な気を鋭敏な嗅覚で感じ取ったのだろうか。
しかしそれも次の瞬間杞憂であったと判明した。先生が止まったそこは『2-F』と掲げられた教室。つまりはここが俺の教室になるという訳だ。
「では私が入ってこいというまでここで待機しておくように」
そういうと彼女は教室の中へ一人入室していく。転校自体はこれで3度目となるがこの微妙な間に関しては慣れないものだ。
それはそうとあの先生随分とエr…もとい美人だったな。
年上であることがそこまで好みという訳ではないが機会があれば是非ともお相手願いたいものだ。
っといかんいかん。気を緩めるとすぐにあっち方面に妄想が膨らんでしまう。全く困ったクセだ。
気を引き締め直し教室の中の様子に聞き耳を立てる。教室内は幾ばくかの盛り上がりを見せている。
そりゃあ高校生にもなると転校生などなかなかに珍しいと思う。
野太い声で転校生は女ですか?という質問が聞こえてくるがそれは残念だったな。俺は正真正銘の男である。お前がゲイでもない限り俺との恋は芽生えない。というか俺はストレートだ。お前がゲイでも俺との恋は芽生えない。
気色の悪い妄想はここまでにしておこう。再度頭を切り替えるとちょうど良いタイミングで先生から声がかかる。
「では紹介する。入ってこい。」
教室の扉を開け壇上に上がるまでの微妙な間が何とも居心地が悪い。
「
「
一瞬の沈黙の後、それを破るべく一人の少女が立ち上がった。
これはまた…随分と美しいお嬢さんである。まるでフランス人形のようだ。
「
まさかドイツ語が堪能な方がいらっしゃるとは。
でも何故だ。
明らかに白人然とした彼女がごく簡単な挨拶をしただけで周りの生徒たちはこんなにどよめくんだろう。
とにかくご丁寧にこちらに合わせてご挨拶してくれたお嬢さんには丁重にお礼せんといかん。そう思い俺は未だ流暢にドイツ語で話続ける彼女に告げた。
「あ、今の冗談なんで。すいません日本語でお願いしてもいいですかね?」
またしても一瞬の沈黙。それを破ったのはフリードリヒに対する嘲笑だった。
「プッ!ハハハハーッ!やーいクリスの奴騙されてやがんの」
「ガクト笑いすぎ!あれは騙されちゃうよ」
「だってモロも見ただろあのクリスのドヤ顔!」
「そ…それは、まぁ…見たけど…」
「しょーもない」
どうやらそれなりには受けたようだな。顔を真っ赤にして俯いているクリスティアーネには申し訳ないがあの様はそれはそれで随分と可愛いらしい。
「改めて。ユーゴ=ヴァイツゼッカーです。よろしくお願いします。」
自己紹介を終えると皆から拍手を受けた。どうやら受け入れて貰えたようだな。
…ただ一人除いては。
Side クリス
なんなんだ!なんなんだ!!なんなんだ!!!あの男は!
せっかく私と同じドイツから来たと言うから私が橋渡しをして皆に馴染めるようにと思って声をかけたのに~~~~見事に掌を返された!!
騎士としてこれほどまでの屈辱ははじめてだ!
おのれユーゴ=ヴァイツゼッカー!あの男は絶対に許さん!
いいだろう。騎士を愚弄した罪はその体であがなって貰う。
そういえばあの時は犬にこの話を持ちかけられたな。
「先生。せっかく同郷から転校して来たのですからヴァイツゼッカーを川神学園のルールで歓迎してやりたいと思います。」
周囲から期待の篭ったどよめきが聞こえる。ふふん!騎士クリスは例え愚弄されてもすぐに汚名を注ぐんだ。
「ふむ…いいだろう。ヴァイツゼッカー。この学園には決闘という独自のシステムがある。」
先生がアイツに向かって説明をしている。騎士同士の決闘の手袋よろしく説明が終わり次第ワッペンをアイツの前に叩きつけてやるんだ。
「どうだ?受けるか?」
どうやら先生の説明が終わったみたいだな。私は先程考えていた通りにアイツの前に無言でワッペンを差し出した。
ふふん。どうやら!私の気迫に気圧されいるようだな。固まっているじゃないか。
この川神に来て勝負に臆するなど騎士の風上にも置けんやつめ。
そして長かったような短かったような沈黙が破られた
「あ、お断りします」
Side ユーゴ
決闘か。
聞いてはいたが随分と血気盛んな学園だ。
梅子先生は懇切丁寧に説明してくれている。だが決闘なんて面倒な単語を聞いた時点で俺の心はNoに決まっているのだ。
俺は面倒事とニンジンは嫌いなのだ。
先生の説明聴く限り決闘というのは別に単語のイメージ通りに武力で決闘する必要はない。
武力であろうが知力であろうが、スポーツでも料理でも良い。
双方が納得する方法で優劣を競えという事だ。
だがしかし「川神学園のルールで」とのたまっていた以上決闘の内容は文字通りのものなのだろう。
フリードリヒは決闘の合図という事で俺の前にワッペンを差し出してきた。
俺は決闘の事よりも白魚のような美しい手に惹かれた。まるで芸術である。
っといかんまたしても思考があっちの方向に流れてしまった。
とりあえず俺が言える事は一つだけだ。
「あ、お断りします」
周囲からは落胆の声が聞こえる。まるで娯楽を奪われた子供のようだ。
それを聞いた瞬間、フリードリヒの方をちらっと見た訳だが。梅子先生の説明の間それなりに取り繕っていた顔がまたしても赤くなっていく。
会って間もないというのになぜこいつはこんなに嗜虐心をそそるのだろうか。可愛い。
「へいへーい転校生!ビビってんのかーい」
「やめなよガクト」
「このハーフ系割とイケメン系のクセにチキン系かよ~アタイにゃ無理系」
随分と外野が好き勝手言ってくれる。まぁ俺はそんな安い挑発に乗る程ガキじゃないがな。
「やるんだやるんだやるんだー!なんで拒否するんだ!」
フリードリヒはフリードリヒで子供のような癇癪起こしている。俺は理解した。あくまで推測ではあるが理解した。彼女は絶対に所謂お嬢様育ちなのだ。それも筋金入りの。
仕方が無いのでフリードリヒに俺がいかに決闘などしたくないのかを優しく説く。
「朝っぱらから汗なんてかきたくない。それに決闘を受ける事で俺に何のメリットがある?」
勿論彼女のような美少女となら朝からであっても違う汗を二人で流したいが。
「メリットだと?私の事を愚弄しておいてそのような事をっ!」
「ドイツ語で挨拶してくれたのはありがたいが、その後随分とドヤった顔をしていたのが皆の笑いのツボだった訳だろう。愚弄もなにもそれってただの自業自得じゃないか?」
「なっなんだとっ!?」
フリードリヒが皆を見渡すと皆はサッと目線を逸らす。
フリードリヒはその白く美しい顔を三度真っ赤に染めていく。
「いいから決闘するんだ!」
心持ち涙目になった気がする。
一つ言える事はかつて俺の人生でここまでいじり甲斐のあるやつが居ただろうか。いや、いなかった。という事だ。
しかしここまで懇願されたのなら仕方ない。
散々いじくり倒したのだ。決闘を受けてやらんと流石に可哀想である。
「分かった。そこまで言うなら受けよう。」
その瞬間フリードリヒの目がパァッと明るくなる。
「ふふん。分かればいいんだ。」
「うむ。ではこれより決闘を執り行う。時間はHRいっぱいまでだ。武器はレプリカを使用すること。全員グラウンドに集合」
転校直後から随分とめんどくさい事になったものだ。俺はただ一つの事柄を除いては平穏無事に過ごしたいのだが。
決闘とやらはHR時間いっぱい使うまでもない。さっさと終わらせて俺は自分の席で授業が始まるまでゆっくりさせてもらうつもりだ。
次回決闘で見せる主人公の実力は?