Side ユーゴ
フリードリヒと決闘すべくグラウンドに来た訳だが、2-Fの生徒だけではなくグラウンド側にある教室の窓には大量のギャラリーが集まっているようだ。
それにしても、だ。決闘を挑まれたのもそうだし受けたのもそうだが、そもそもにして俺が武術に長けているかどうかなど一言も言ってないと思うんだがね。
まぁそれなりに心得はあるのから良いものの。全くもって物騒な所だな川神学園。確認作業を怠るとは騎士の風上にも置けんやつだ。
しかし虎穴に入らずんば虎子を得ず。とも言う訳だ。可愛い女の子達と仲良くなるにはこの学園で生き残らねばならない。
そうこうしているうちに見届け人となるべく梅子先生とは打って変わって、これでもかって位に武人のオーラを纏った先生がやってくる
「二人とも、準備はいいネ?どちらかガ戦闘不能になるカ、ギブアップしたら終了だヨ。」
「危険だと判断したラすぐに止めル。いいネ?」
俺とフリードリヒに確認を取ってきたのでうなずく。ここまでくればうなずく以外の選択肢はそもそも無い。
フリードリヒの方に目をやるとどうやら武器を携えているようだ。あれは、レイピアか。
構えからしてもうなんていうか、騎士だな。うん、騎士だ。もうアレ絶対始まった途端に一直線に突撃して来てそのレイピアで突きを見舞ってくるんだろうな。
全く、お前を後ろから突いてやりたいのは俺の方だというのに。
「それじゃあ…はじめ!」
「はあっ!!!」
先生の掛け声があがる、と同時にフリードリヒから裂帛の気合の篭った声が聞こえた。その声に弾かれるようにフリードリヒが目の前に飛び込んで来る。
予想をつけた通りの展開にはなりはしたものの予想を上回る速度での吶喊でもあった。
だがまぁ避けられない事はない。避けられる。避けられるのだが…
せっかく美少女から歓迎の挨拶だと言われればそれがいかなるものであっても受け取るのが粋じゃないかと思う訳だ。
意識の外からの攻撃ならまだしもこれほどまでに真っ直ぐで良く見えている攻撃。当たった所で大事ない。
彼女の剣が吶喊の勢いそのままを乗せて俺の左肩に向かって一直線に剣が伸びあ、痛っ。
Side クリス
「はあっ!!!」
決闘を受けたからには容赦はしない。全力で討ち雪辱を晴らしてやるんだ!
あいつの動きは教室に入った時からよーく見てたからな。間違いない。武術の心得がある。
ならば遠慮はいらない。
一撃で仕留めてみせる。
気合を乗せてあいつの元へ吶喊する
よし。一撃で仕留められなかったものの十分な手ごたえを感じた。いける。このままラッシュに移行するぞ。
アイツは一撃喰らった後両腕でガートを固めているが関係ない。一気にいく。
ガートをこじ開けんとする猛烈な勢いで突きを連打する。彼は最初の一撃が余程効いたのだろうか。その場で両腕ですっぽりと上半身をガードし動けないでいる。
故にその悉くが彼の腕に突き刺さる。
一歩も動く事無く彼はその場でじっと亀のように体を丸めたままである。時折ガードを崩すためにフェイントなどを織り交ぜてみるが反応はない。
ならばこのまま腕が上がらなくなるまで攻め続けその防御を崩してみせるのみ。
暴風のような攻めを続ける。一向にむこうから動く気配、反撃の気配が無い。
───おかしい。
最初のうちは勢いに乗って攻め続けていたものの、ある疑念が頭をよぎる。
もしかすると…もしかすると自分は熱くなり過ぎてとんでもない誤解をしていたのではないだろうか。
確かに堅牢な守備をしているが、これでは向こうも反撃など出来やしない。
もし仮に自分が無手での闘いに挑む事になったとしてもこれほどまでに守りを厚くするだろうか。
過剰とまで言える今のこの守りが意味する事はつまり…
───彼はもしかして素人なのでは。
そんな考えが頭をよぎる。そんなはずはない。入室して時の所作、自己紹介をしている時の佇まい、グラウンドまでの道のりで見た一本芯が通ったぶれない動作…
騎士として鍛錬を積んだ自分が見たあれは間違いなく武術を嗜んでいる人間のそれだったはず。
だがもし…もしも彼が本当は素人だったのなら…
その場の怒りに身を任せて喧嘩をふっかけたに過ぎない…それは自分の掲げる義に反する行為ではないのか。
一度沸いた疑念は晴れない。無心ではなくなれば剣の鋭さは鈍る一方である。だがそれでもなお彼は防御をとかない。動けないでいる。
ええい!いずれにせよ決闘を受けたからにはアイツもその覚悟があったということだ。
ならば自分の剣でこの決闘にケリをつける。長引かせずとも今すぐに!
ついにはクリスの瀑布のような猛攻に耐え切れなかっのか彼はたたらを踏んだ。
その瞬間を見逃す事なくクリスはとどめの一撃を繰り出すために一瞬のバックステップから溜めをつくり、強烈な一撃を放った。
Side 京
クリスは本当に単純だね。
決闘で歓迎とかしょーもない。他人なんて放っておけばいいのに。
でもまぁせっかくのクリスの戦いなんだから愛しの大和の隣で見守る事にするよ。
転校してきた人は武術の心得があるみたいだけど、どうやらクリス相手には防戦一方みたいだね。攻撃を避けられていない。
大和は興味を失ったのか隣で携帯をいじり出したし、ガクト達も野次を飛ばし始めている。
携帯をいじる大和もかっこいい。付き合って。
戦いが膠着状態に陥った時後ろから私たちが良く知る声がした。
今朝の登校時に見かけなかったキャップがそこに居た。
キャップが外国からの転校生が来るなんていうイベントに居ないのなんて珍しいね。
キャップは大和と今のこの状況について話を聞いた後、大和と肩を組んで一緒に観戦し始めた。
この状況…すごく見逃せないんだっ!!!
和とキャップの絡みに10点をあげた瞬間、その場にいたギャラリー達からどよめきが上がる。
クリス達の方に視線を戻すと、クリスはとどめの一撃を見舞うためにバックステップを踏んでいた。
これで朝のHRは終わりだね。
その瞬間私は見てしまった。
硬いガードのせいでクリスからは見えないだろうその顔は恐怖におののいている訳でもなく、戦力差に絶望している訳でもなく、かと言って勝利を見据える目でもなく。
そこにどういった思惑があるのかは分からないが、ただニヤリと。
口元を歪ませていた。
Side ユーゴ
最初の一撃は少し痛かったが、まぁ問題は無い。
せっかくの美少女からの歓迎の贈り物なんだ。受け取らずしては男ではない。
後はきっちりと防御して倒れずにしてみせれば色々な方面で大事ないだろう。フリードリヒも一撃入れられれば面子は保てたはずだ。
このまま亀のように丸まっていればあわよくば審判がとめてくれるかもしれんしな。
それはそうとフリードリヒ。俺の母と同じドイツ人という事だが本当に美少女だ。
自分で言うのもやや気色の悪い気もするが俺の母もそれはそれは美人である。日本人であった父と結婚した訳だが客観的に見てみれば父が羨ましい。
───そう、美しいと思う心に国境はないのだ。
その美少女からの連打の贈り物を引き続き頂いている訳だが、見た目とは違って驚異的なスタミナをしているのだがフリードリヒは。
俺自身の嗜好としては確かにややソフトMのきらいがあるのだが、それはあくまでプレイの話であっていつまでも殴られ続ける現状は全くもって面白くない。
話は変わるが生真面目そうなフリードリヒを相手にする時は逆にこちらがSっ気を出して責めてやるのが良さそうだ。目隠しプレイ辺りからはじめるのがいい。いや、しかしその綺麗な顔を拝みながらとなるとそれよりも拘束プレイで正面から…そしてこなれて来た頃には伝説の「捕らえられた騎士ごっこ」だ。これに尽きる。
おっといかんいかん。また妄想がはかどってしまったようだ。知らぬ間に口角がつりあがってしまった。まぁこんな状況では誰も見ていないだろう。
さて痺れを切らしたかフリードリヒのやつも誘いに乗ってとどめの一撃を放つつもりのようだな。
このまま腕でガートしつつも吹き飛んで見せれば審判は止めに入るだろう。
タイミングはばっちりだ。インパクトの瞬間だけは踏ん張ってみせたのでフリードリヒにも手ごたえは伝わっただろう。
次の瞬間一瞬の間があったのが少し気になったが審判の先生から「それまで」の掛け声か聞こえた。
フリードリヒはそのまま俺の元へと歩を進め、右手を差し出した。
「ヴァイツゼッカーの守備はなかなか堅牢だったぞ。これからは同じクラスとしてよろしく頼む。」
「ありがとうフリードリヒ。とても良い一撃だった。それから俺の事はユーゴで構わない。こちらこそよろしく。」
「そうか。ではユーゴ、自分の事もクリスで構わない。皆もそう呼んでいる。」
「ああ分かったよクリス。」
「それはそうと、その…だな。教室で初めて目にしたときから見たお前の立ち居振る舞いで、お前がそれなりの実力者と踏んでいたのだがもしかしてお前は…」
「いや、決闘を受けたのは俺自身だ。それに、それなりの嗜みもあるんでね。クリスは気に病むことはないよ。」
「そうか。ではそういう事にしておこう。」
クリスと硬い握手を交わした訳だが、ああ柔らかいなぁ。全く何食って大きくなったらこんなきめ細かい肌の手になる事やら。
こうして決闘はクリスの勝利で幕を閉じた
鋭い方はご理解いただいたかと思いますが主人公は変態親父です。
京楽春水みたいなカッコいい親父風キャラにしたかったのですがどうしてこうなった