Side クリス
放課後
帰り道で島津寮の皆を自分が紹介してやろうと思っていたのだが…
京は部活に顔出し。キャップはアルバイト。ガクトとモロはクラスメイトと出かけるという。
こういう対人関係では頼りになる肝心の大和も何か知らないがちょっと用事があるそうだ。
仕方ない。自分がしっかりとユーゴを道案内してやって、まゆっちだけでも先に紹介してやろう。
途中で金柳街や仲見世通り、川神院を案内してやるのもいいな。
まだ転校してきて初日、自分がしっかりと面倒を見てやらないとな。
そういえば
気になっていた事を質問をしてみた。
今朝の自己紹介を思い出す。
Hugo Fürst von Weizsacker
Fürstとはつまり侯爵位の事
聞くに彼の母方の実家が侯爵家であり、日本にくる前に爵位を継承したとの事。侯爵とはいうものの彼の家には私的財産はあっても公の権力などは無いと注釈が付け加えられた。
確かにドイツでは歴史上、現代まで残っている由緒正しき貴族というのは少ない。
その流れから彼に今度は自分の家の事を聞かれた。
自分の父様はドイツ軍の中将フランク=フリードリヒである事。その直属の特殊任務部隊である『猟犬部隊』の事。『猟犬部隊』の隊長のマルさんがこの学校に居る事を話した。
父様の名前を出した直後から彼の表情が変わったのが自分には分かった。
父様は軍の中将なのだからな。ユーゴが知っていても当然だ。やはり父様はすごい方なんだな。
自分と決闘を経て友諠を交わした仲だ。マルさんにも今度紹介してやろう。
Side ユーゴ
これは参った。参ったと言わざるを得ない。
まさかクリスがあのフランク中将のご息女だったとはな。道理でお嬢なはずだ。
だがしかしそんな事は些細な事だ。
問題は俺がクリスと決闘をしたという事実。
その決闘をした等という事実のみが中将の耳に入りでもすれば。俺は猟犬部隊に消されるんじゃあないだろうか。
面倒だという事もあったが俺は防御に専念し、手を出していない。なので問題は無いはずだ。無いと思う。
だが聞き及んだ噂によるとあながち大丈夫と言い切れるものでもない。
もっとも、俺自身中将などという軍において遥か雲の上の人物である彼と知己が得ている訳ではない。
だが俺は知っているのだ。猟犬部隊の恐ろしさを。フランク中将の一人娘への過剰なまでの愛情を。
俺のドイツの家の親戚筋にコールシュライバー家がある。母の姉妹は全て女性であり、そのうちの一人、母の姉が嫁いだのがコールシュライバー家だ。
当時は身分の差だ何だのと周囲が煩かったらしく、平民の家へ嫁ぐ事に叔母は随分と人々の悪意ある態度に晒されたそうだ。
以前何の集まりかは知らないが父との死別の傷が癒え始めた頃、一族とその関係者が集う晩餐会があった。そこで出会った一人の少女。名をジークルーンと言った。
ドイツへ来て間もない時期だったのでその頃は同世代の知り合いは少なかった。随分と俺を警戒していたようだったが、俺は大人ばかりの集まりに辟易していたし、初めて出会った従姉妹にテンションが上がっていた。二人で庭で遊ばないかと誘ってみた。
最初は警戒心に満ちた猫さながらの様子だったのだが、話をしていくうちに俺に害意が無い事が伝わったのか、彼女には治癒という不思議な力があるという事。
そしてその力が原因となって周囲から不気味がられ忌み嫌われている事を話してくれた。
年上とはいえ、苛められている女の子目の前にいて手を差し伸べない訳にはいかない。ならば俺と友達になろうと手を差し伸べた。
彼女は満面の笑みで俺の手を握り返してくれた。
それからというものジークは事ある毎に俺の所へ顔を出した。
ジークはデカかった。当時は俺よりも遥かにデカかった。今となっては俺の方がデカいが並び立っても大差ない。数字でいうと183cm。女性としてはかなりデカい。
当然乳も尻もデカいのは言わずもがなである。
だがしかし
────ここからが本当の地獄だ
朝学校へ行けば弁当を持ってくるジーク。学校が終われば一緒に遊ぼうというジーク。
夜の鍛錬が終われば治療をするというジーク。風呂に入れば背中を流そうとするジーク。
寝る前には添い寝をしようとするジーク。添い寝を断ったはずなのに朝起きると布団にいるジーク。
俺のドイツでの一日はジークに始まり、ジークに終っていた。
いじめられていたからなのかそれともずっと一人ぼっちだった事の反動なのか。とにかくジークは俺にべったりだった。
最初のうちは良かったのだが、俺の二次性徴がはじまった後もその行為はエスカレートするばかりだったのだ。
つまり、俺はジークの乳と尻と太ももによって引き起こされた性衝動を解消する事をジークによって阻まれていたのだ。
まさに無限獄。
そんな無限獄に終わりを告げたのがジークの猟犬部隊への入隊だった。
治癒という異能を活かすために軍に志願したのだという。
こうしてジークに付きまとわれる日々は終わりを告げた。尤も定期的に電話はメールでのやり取りはあるのだが。
軍の機密性や部隊の性質上会う回数は激減したのだ。
そうして手に入れた平穏の中でジークルーン=コールシュライバーという年上の美少女の柔らかさを思い出しては、部屋に雷を発生させる程の速さで右手を上下運動させたのは言うまでもない。
おっと毎度の事で申し訳ないが随分と話が逸れてしまったな。
つまり俺は知っていたのだ。猟犬部隊の隊長の事や、その元締めの事も。
俺は軍の関係者ではない。当然の事ながらその人達の名前や素性などは知らされていない。
だがクリスの発言で全ては繋がった。ジークとの会話の中に出てくるお嬢様とそれを溺愛する隊長とお父上が誰なのかという事が。
しかし冷静に考えてみると溺愛している割りには留学させ寮に放り込んで一人暮らしさせる辺りジークの表現を俺が大げさに受け取りすぎていただけなのかも知れない。
どこの親が自分の娘のために一国の軍を動かすと言うんだ。そんな訳は無いだろう。杞憂だ杞憂。
とにかく今は冷静になれ。色々と考える前にまずはこのままクリスと共に島津寮へ向かおう。そして荷解きをしながらこれからの事をじっくり考えればいい。
「ここを曲がれば後は真っ直ぐだ」
ここへ来るまでの間に色々と案内してくれた事に感謝しつつ前方に意識をやる。
そこで俺の視界に飛び込んで来たのは軍服を纏った赤い髪。そしてその横に立つ同級生の姿だった。
Side 大和
どうやら帰って来たみたいだな。
放課後マルさんに話を聞いてみた所、ユーゴは猟犬部隊の隊員の一人と親戚関係にあるらしい。
その隊員の人は随分とユーゴの事を可愛がっているらしいけど、それ以外にこれといった情報はないという。
ようするにたまたまマルさんの部隊の人の親戚が川神学園に転校してきたって事だ。
特殊任務をこなし、クリスの護衛も務める猟犬部隊にも情報が無いという事は本当に俺たちファミリーに害がある人物じゃなさそうだ。
相談の後、マルさんは隊員が世話になっているというのなら挨拶をしたいと島津寮について来る事になった。
なんだかんだ言いながらマルさんは優しい。
お願いすれば帰りは一緒に車に乗せて貰えた。
寄り道でもしていたのだろうかこちらが思っていたよりはゆっくりした到着だった。
この様子だとクリス達には何も問題は無いだろう。
後の問題は姉さんだ。
最近の姉さんは以前よりも戦闘衝動が増している気がする。
欲求不満とでも言えばいいのだろうか。とにかく無性にイライラしている事が多い。
そのせいで俺にまで理不尽な暴力が襲いかかってくる。
クリスとの決闘の結果を見る分には姉さんの敵じゃない。
ユーゴさえ大人しくしていてくれさえすれば彼の転校イベントは何事もなく収束するはずだ。
猟犬部隊いいですね。
テルさんが一番好きです。
もっとハードボイルド調に書きたいのに書けないもどかしさ。
ご意見ご感想などあればお手数ですがよろしくお願いします。