~ 冒険者たちの酒場 ~
自分の腕に自信のあるもの、新たな冒険へと踏み出したいもの、一攫千金を夢見るもの……
各々が目標を満たすため人々はこの酒場に集まる。
中には魔王討伐を目標に掲げるものもいて勇者の誘いを待つものも……
広い酒場の片隅では屈強な戦士が武器を磨き鋭い眼光を放っている……
彼は名のあるハンターだ。
ハンターとはモンスターや洞窟などにある宝を生業として稼ぐものたちである。
そんな名のあるハンターである彼も緊張に震えていた……なぜなら今日は勇者が旅立つ日、勇者パーティとなれば自分の株もあがる……
酒場の外がガヤガヤと騒がしくなってきている……勇者がどうやら酒場に仲間を探しに来たようだ。
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「何度か来たことはあるけど……」
勇者はソワソワしながら酒場の扉に手をかける……いつの間にか彼の周りには人だかりができていた。 街の人々は勇者がどんな仲間を選ぶのか興味津々のようである。
「勇者としてくるとなると……緊張するな……」
扉を開くとカウンターにいる20代後半ほどの女性が勇者に気付き微笑みかけた。
真っ赤なドレスを身にまとっており彼女が持つ色気に何人もの冒険者達が騙されたものだ。
勇者が軽く会釈をすると女性は腰まである長い髪をかきあげると近くにくるように手招きをする。
彼女のいる奥のカウンターにたどり着くまでに何人もの冒険者たちと目が合う。
冒険者達の瞳は爛々と光……自分を連れて行けと意思表示しているようにも見えた……
目を伏せ静かに勇者はカウンターに備え付けられたイスへと座る。
「ショウちゃん大きくなったわね」
席についてすぐに女性はにっこりと微笑み声をかけると……勇者の頭へと手を伸ばしわしゃわしゃと撫でた。
「お久しぶり、レイラ姉さん」
満面の笑みで勇者は女性の名前を呼ぶ。
彼女とは顔見知りである……昔父に連れられよく酒場には遊びに来たことがあった。
そのころはまだ自分も小さくよくレイラに遊んでもらった記憶がある。
「今日は仲間を探しに来たのよね?」
勇者の頭から手を離すとレイラが尋ねた。
大きくうなずくとレイラはカウンターの脇にある本棚へ手をかけ、一冊の本をカウンターへと置く。
ペラペラとめくるとたくさんの冒険者達の名前、職業が書き記されている。
「どんな仲間をお探しかしら?」
大きな胸を寄せカウンターへ両肘をつくと勇者の顔を覗き込む。
目を伏せ勇者は僧侶の職業のページを開く……
「えっと……あ、この人は? どんな人?」
レイラは奥の席に座る男を指差す。
黒い髪の青年がこちらを見てニッコリと微笑む。
気の弱い勇者には彼がとても優しくいい人というように移ったようで……
「あの人にします!」
「ええ、わかったわ。 トーマさん」
青年は勇者のいるカウンターへと歩み寄ると手を出し握手を求める。
ガッシリと手を掴み勇者は頭を下げる……僧侶はクスクスと笑うと口を開く
「よろしくお願いします。 勇者様」
「はい! よろしくお願いします!」
後は魔法使いさんがいいな……勇者は魔法使いのページをめくり指差す
ニコリと微笑むとレイラが声を上げる
「ゲンジさん、出番ですよ」
酒場の2階から老人が現れる……勇者は少し不安そうな顔をするが……
断って……怒られたら嫌だな……
苦笑いをしながら勇者はレイラを見つめ
「はい……これで大丈夫です」
勇者の異変に気付いたレイラが声をかける
「本当にいいの? 戦士さんとかは?」
大きくうなずくと勇者は声を上げた。
「うん! これで大丈夫だよ!」
その一言に酒場がざわつき始める……
【おいおい……マジかよ……】
【せっかく鍛錬してきたのによ……】
【なんだか勇者様は前衛は自分ひとりでよろしいようだぜ】
至る所で批判の声が聞こえてくる……だが自分には当てがあった。
戦士のページも武闘家のページにも
ここにいないということはきっとまだ
「いきましょう! 二人とも!」
「はい、勇者様」
「いくかいのう」
勇者達は酒場を飛び出しある場所へと向かう……
その後ろ姿を鋭い眼光で見つめる男がいた……歯をくいしばりその男も勇者達の後を追う……
向かう先は……どこなのか……?