ターゲットの暗殺教室 作:クローバー
俺は貧乏だ。
お金がないし家族は夜逃げしてしまった。
家は売ったしお金は今通帳にあるお金とこの山しかない。
「……やっぱりいいなぁこの山。」
俺は自分で作った家に寝転ぶ俺。
洞窟の中にただ立て札を建てただけの家。
その中にあるのは学校からもらってきた壊れた椅子と机を修理して使ったものと最低限度のものだけ。
後は支給されている学校の教科書だ。
「はぁ、今日の食料でもとってくるか。」
俺はため息をつく。
俺はある条件を元に中学校、高校と行けることになっている。
その先は全く未定だった。
いつまでこの生活が続くかもわからない。
今日で512日間ずっとここで暮らしてきた。この生活にもやっと慣れてきたところで食料の調達、水の確保ができるようになった。
今日は近くの沢の水を昨日貯めておいたので魚だな。うまくいけばクマが動きはじめて罠にかかっているかもしれない。
俺はそう思って歩き出した。
……腹へった。
ため息をつく。少し前までは干し肉と魚の燻製だけで過ごしてきたから腹が減っていた。
最近やっと山菜が手に入るようになったので少しはましになってる。
帰り道に積んだ野いちごやタンポポもあるから餓死はしないとおもうけどやっぱり肉や魚はご馳走だ。
俺は野いちごをつまみ、家を出る。
もう夕方でまわりは少しだけ暗くなりはじめている。
とりあえず罠を家の近くから回る。
すると家の近くの罠を見ようとすると
ガサガサ
と揺れる音がする。
かかっているか?
俺は自分で見よう見まねで作った竹槍を構える。
そして、なるべく音を立てずにゆっくりと近づく。
狩りの基本でぎりぎりまで近づき草陰から覗き込む。
すると
「にゅや、なんでここに罠が?」
人の声らしき音がする。
俺は、ガッガリしてしまう。久しぶりに肉を食べられるかもしれないと思ったのに。
しかし外してやらないとずっと一生このままだろうし助けるか。
「……大丈夫ですか?助けるんでちょっとうごか。」
といったところで俺は目の前にいる生物を見る。
黄色い顔に黒い服を着込んで足は触手が多く生え、2メートルありそうな大きさの黄色いタコがいた。
……なんだこの生物
俺はそいつを見ると少し考える。
なにか言っているが俺は少し考え
「タコだったら食えるよな。」
「にゅや?」
竹槍を構える。黄色いし毒もあるかもしれないが、一応捉えるだけ捉えよう。
「いや、食わないでテレビ局や国に売った方がいいのか。そっちの方がお金もらえるし。」
「ひぃ。やめてください。私美味しくないですし珍しくもないですよ。」
「嘘つけ。それだったら一丁死んでくれないか?いい加減タンパク質と脂質とらないと栄養失調で死ぬんだよ。」
俺はもう限界だった。殺してから考えた方がいいだろう。
もう燻製も干し肉も切れて二〜三日たっていた。草ばっかり食べていたので腹も限界だった。
「ちょ、ちょっと待ってください。お、お腹が減ってるのだったらな、なんでも奢りますんで。」
「……」
俺は少し考える。
学校の春休みが終わるまであと一週間。
それまでは空腹が続くだろう。
そしてこの生物何か隠している。
多分国か何かの秘匿生物が逃げ出したのであろう。
ってことは
「……一週間の間奢ってくれるのだったら。この場は放すけど。」
お金の匂いがするから捕まえておいて損はないだろう。
「は、はい。お、奢りますのでお、おろして。」
「嘘ついたらわかるよね?」
有利な条件を押し付けるのが交渉の最低条件だ。
その生物は頷くしかなかった。
「うめ〜やっぱり焼肉さいこーだわ。」
「……」
俺たちは近所の焼肉食べ放題の店に来ていた。
今日で七日目。明日からは学校が始まる。
目の前にはたくさん積み上げられた皿、
目の前にいる生物が3、俺が7の割合で食べていた。
「にゅや。計算外です。まさかあんな山に君がいるとは。」
「まぁ、仕方ないさ。普通はあんなとこに罠を張ってる男子中学生がいるなんて思いもしないよな。」
俺は笑い目の前のタコを励ます。
「そういえば気になっていたのですが、羽川くんはどうしてあの山にいたんですか?」
「そりゃ。住んでいるからに決まってるだろ。」
「にゅや?一人でですか?」
「あぁ。母さんと父さんが妹連れて夜逃げしたからな。もともと地主だったから地価が暴落したのか知らないけどこの山の権利書と俺の通帳以外は全部持っていきあがった。たぶん俺も売られる対象だったんだけどなんとか裏道を通って逃げ出して来た。」
俺は苦笑してしまう。
「……もしかして君はあの」
「あぁ。元羽川建設の5代目だよ。」
俺は苦笑してしまう。するとその生物は下を見てしまう。
羽川建設。数年前までは大型企業だったがとある事故のおかげで借金ができてしまいそのまま社長夫妻と子供が夜逃げしたというニュースは日本中の騒ぎになっていた。
「多分うちの学校でも噂になってる。俺に直接言いにはこないけどな。ってかマスコミにバレても借金取りが追いに来る可能性があるからな。あの山を残してくれたのは唯一の温情だったんだろうよ。」
俺はギリギリまで逃げ続けた結果こうなっている。
「だから、あんたと同じ俺も逃亡者って訳だ。まぁ、成績が良かったから椚ヶ丘中学校の理事長に誘われて俺の安全を保障してもらいまた、学費と勉強道具を補助してもらい中学校に入学することになったんだよ。」
俺は苦笑してしまう。ある条件を守るかわりにずっと授業を受けさせてもらってる。
「まぁ、結果的に超貧乏な暮らしで原始時代みたいな生活をしてるんだよ。風呂も週に一回の銭湯以外は川で水浴びだしな。」
「……」
タコが不思議そうな顔をしている。
「それは秘密事項じゃないのですか?」
「ん?秘密事項だけど?」
「それならなんで私に?」
「まぁ、真っ白だからな。」
「はい?」
タコが不思議そうな顔をしてる。俺は苦笑してしまう。
「なんかわからないけど俺そういうのわかるんだよね。見捨てられたからか、何度も死にかけたせいか知らないけど信頼できる人は白く、逆に危ない人は真っ黒に見えるんだ。だから俺を狙っている殺し屋から逃げることができるって訳。あんたは真っ白だからな。安心していれるわけ。それに、」
俺は指差して
「ずっと監視している国の奴らに守ってもらおうかと思ってな。」
「にゅや?」
「さっきから私服に紛れた奴が何人か潜んでいるんだよ。視線がちょろちょろこっち見てるしうざったるいしな。」
俺が指差した先に数人の男と一人の女が座って何かを話していた。
「多分盗聴器か何かつけられてるんだろ。俺がさっき通ったらかすかにあんたの声が聞こえたしな。一応ここは要望があれば防音にできるんだよ。それなのにあんたの声を聞こえるのはおかしい。」
盗聴器もかなりの高性能のものだろう。俺も最初は付いていることを全くわからなかった。
「それに、なんとなくだけどあんたは俺のことを知っていたんだろ。多分名前が羽川康太って聞いた時には気がついていた。だからあんたはわざと盗聴器をつけられた。ちがうか?」
「……」
そのタコは何も言えずたじろぐ。沈黙は肯定と見よう
「たぶん、あの事件の真相を全部知っているんだろ。俺たちの家族は国家に騙され、借金地獄に陥った。そのことを知ってる俺たち家族を抹消しようとした国家は世界最強の殺し屋、つまりあんたを送り出したが他の家族は知らないけど俺の暗殺に失敗。そして何度も殺し屋を送り込むがことごとく失敗。違うか?初代死神。」
するとタコはギョッとしていた。
「……いつから気づいて。」
「ん?最初からかな?まずお前みたいな生物いないし。2代目だと思う死神なんかお前より爪甘かったし。」
最初の死神が現れた時は本気で死にかけた。三年前急に現れ黒だと気づいた体を逸らした時には殺されかけていた。しかし去年現れた死神は簡単に逃げられた。
「なんであんな甘いのかなぁって思っていたらお前が現れたってわけ。だから何か任務でヘマしたか2代目死神に騙されたのか知らないけどな何か原因で捕まりあの計画がまだ続いているのか知らないが実験のモルモットにされその姿になったのかな?そこはわからないけどまぁその触手のエネルギーを使って研究室から逃亡。違うか?」
「だいたい合ってますが。」
俺の顔を見る死神。黄色い丸っこい顔をしながら野菜を取り皿に入れてくる。
「肉ばっかり食べてたら健康に悪いですよ!!もっと野菜も食べてください。」
「お前は母さんかよ。」
はぁとため息をつく。
「まぁ、いい。んで俺を殺しに来たのか?正直俺はその触手から逃げることは無理だから殺されるしかないんだけど。」
俺は笑う。すると死神は首を振る。
「いや。実はですね。私はあなたに依頼しに来たのですよ。」
「依頼?」
「はい。実はですね、私来年の3月に地球と共に死にます。」
「まぁ、理論的にはそうだな。」
「にゅや?驚かないんですか?」
「まぁ、別に。月破壊された時点で可能性はあると考えてたからな。」
去年の3月に月破壊された時ついにやっちゃったかということさえ思った。
「それでですね。私はある人との約束を守るために椚ヶ丘中学3-Eの担任をやることになったのですが」
「はぁ?」
俺は訳がわからなかった。
「にゅや。そこには驚くんですね。」
「まぁな。ってかあんたが約束して先生になるってどんな人だよ。」
「雪村ってきけばわかりますか?」
その一言に俺はびっくりする。
「雪村製薬の長女か。なるほど、あの天然か。」
「はい。」
「死んだのか?」
すると死神が今まで見たことがない表情をしていた。
「……悪い。不謹慎だった。」
「別にいいですよ。それで」
「好きな人と同じ教師になったか。」
「にゅや。な、何をい、言って。」
「あんた。そんな悲しそうな顔してなにいってんだ。後悔してるって丸分かりだぞ。」
俺は死神の顔を見る。
「あの人は可愛いし、いい人だからな。どうせあんたをかばって死んだんだろ。」
「……」
「無言は肯定と見るぞ。そっか。」
俺は少し下を向く。
「俺もあの人は好きだったよ。俺もこの学校に来て教師やってるって聞いてたからな。正直教わって見たかったよ。俺も今年からE組だったから。」
「にゅや?」
「俺が椚ヶ丘に入った条件の一つには卒業後ここの先生になるため、E組に二年生時はいるってことだったんだよ。雪村先生の監視も兼ねて。あの人のこと理事長も買ってたからさ、壊れてもらったら困るってことで。」
俺はピーマンを食って箸を置く。
「多分あの理事長も誰か自分のやり方を否定してほしいんだよ。あんたもE組がどういうとこか知っているんだろ。」
「えぇ。本校舎と隔離されて設備も最悪と聞いてますが。」
「そのほかにも完全に差別されてるんだよ。なんか上司が部下をいじめてるって感じで。」
俺は少し考え
「だけど、なぜか内心後悔してるようにE組を見る時があるんだよ。多分無自覚だけど。過去に何かあるんじゃないのか。あの人も。」
俺はコーラを飲み息を吐く。
「そう言えば依頼ってなんだ?」
「にゅや?」
「いや、なんか暗い雰囲気なったから話戻そうと思ってな。」
「えっと、いや、わたしのキャラはこんなシリアスじゃ。」
「キャラつけてるんかよ。まぁいいけどさっさとしてくれないか?」
「私を殺しに私のクラスに来ませんか?」
「……」
俺は声を失ってしまう。
しばらく無言のまま時を過ごす。
「そっか。あんたはそういう人か。」
俺はやっと重い口を開いた。
「分かったと言いたいとこだけども俺はまだEクラスに入れるか分からない。順当にいけばAクラスだからな。」
「それはこっちの条件に加えましょう。銃の扱いもでき、戦闘経験もあるので暗殺者としては育てるには十分でしょう。」
「確かにな。でもE組の命はどうするんだ?俺もあの教室に関わったら危険が増すぞ。」
「私が生徒たちを守ります。あなたもいることですし30人くらいなら余裕でしょう。なにせ私の唯一の暗殺失敗した人ですから。」
緑のシマシマが見られる。油断だろうか?まぁどうでもいいが
「はぁ。なら勝手にしろ。ご馳走様。」
俺は席を立つ。
「おや、賞金とか対先生用の武器はどうするんですか?」
「……そこはE組のクラスメイトとして聞くさ。まぁ俺も受け入れられるかは微妙だけど。それに辺りに3〜5人いるのに持って逃げられねぇよ。」
「……私が送りましょうか?」
「いや、大丈夫。このくらいなら油断しなければ撒けるさ。それにそのうち一人は白でかなり強い。多分俺の実力を探りに来たんだろう。」
俺は手を振る。
「じゃあ先生また明日な。」