ターゲットの暗殺教室   作:クローバー

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両親

修学旅行当日

「おはよう。」

「おはよう。康太くん。」

「矢田先輩おはようございます。」

「おはよう。羽川。」

「……なんか。もうイリーナがうちに来るのが当たり前になって来てるな。」

俺がため息をつく。

「まぁ、保護者みたいなものだからいいじゃない。」

「まぁそうですけど。」

実際監視役を任されてるのだろう。烏間先生にも一応メールで用件を送って事情を伝えたら、やっぱり死神がかなり送られていた。

「でも実際こんなマンションよく用意してくれたわね。」

「まぁ山一つあげたんでそりゃこのマンションは安いでしょうけど。」

「……えっ?」

「元々俺が暮らしてた山、家のものだったんですよ。でも安全性を考えると山をあげるしか方法はなかった。……自分の土地じゃなければ罠なんか仕掛けませんよ普通。まぁこれで本当に一文無しになったんで結構まずいですが。」

「あんた。すごいわね。」

「そんなことないですけど。…そういえばあんたその服で行くつもりですか?」

「何が?」

「いや、それどう見たってハリウッドスターみたいなカッコでしょ。普通の先生みたいなカッコじゃないですって。」

「まぁそうだね。」

確かに綺麗なんだけど

「でもバカンスとか誘われた時とか。」

「……それは大金持ち限定です。知ってますか?100人以上の殺し屋はほとんど安物の服を着てるんですよ。」

「……そうなの?」

「はい。何故ならばターゲットに近寄りやすくなるんです。」

矢田先輩の方を向く。

「例えば矢田先輩。こんな人が歩いてきたら羨ましいとか綺麗だとか思うけど。話掛けようとは思わないだろ。」

「……まぁ。遠目で見るくらいかな?」

「まぁ、そうですね。それに庶民は基本露出した服装は正直言って引きます。」

「えっ?」

「正直言って自意識過剰気味に見られることが多いんですよ。痴女とかビッチだと思われても文句はいけません。」

「じゃあどうするのよ。」

「だからここで安物の出番なんですよ。正直な話イリーナの武器はその胸ですよね。だから正直露出が低くてガードが固そうな女子を演じて、少し仲良くなって気を許したようになったら家やホテルにでも呼んで少し露出度が高めな服で誘う。それが本当にすごい暗殺者です。」

「……」

「まぁそれに関したらうちにプロがいますんで、今度一緒に買い物にでもいってください。伊達に女優やってきたわけじゃないですよ。あかりねぇは。」

暇さえあれば演劇の稽古やファッション雑誌を読んでいたしな。今でも時々読んでいるのを見ることがあるし、なじみやすさに関しては一番すごいと言える。

「そういえば、なんて名前の女優さんだったの?」

「あぁ、知らなかったか?磨瀬榛名だよ。」

「えっ?」

「……だって俺が最近借りてきたDVD全部あかりねぇの作品だぞ。元々映画なんか興味ないし」

少し見たかったからこっそり見てたけど。あかりねぇにバレた時、ちょっと恥ずかしそうにしてたけど嬉しそうだったしな。

「……あれ?」

「おはよう。みんな。」

「ちょっとカエデちゃんが磨瀬榛名って本当なの?」

「……あれ?言ってなかった?」

「らしいな。言わなかったほうがよかったか?」

「ううん。大丈夫。いつかはわかることだし。」

「「……」」

二人は固まる。

「…それでなんだけど、イリーナってどうやったら服装を日本人らしくできるか?」

「……えっ?」

「こいつ流石に修学旅行に行く服装じゃないだろ。烏間先生にイリーナのこと頼まれてるんだよ。」

「でも今からじゃあ遅いんじゃ。」

「だよなぁ。烏間先生なんで昨日言って来るかなぁ?」

昨日は用事があって結構帰りも遅かったのだ。

「……そういえばなんで昨日遅かったの?」

「ん?浅野理事長と飯食ってた。次の球技大会は俺をどうするのか話し合うために」

「…ちょっと待って。理事長先生と?」

「まぁ色々な。俺も案外大変なんだぞ。烏間先生から今回の暗殺計画の案をもらっては訂正しては、浅野理事長と会食にいったり、それに次の暗殺者も調べたりな。」

まぁこっそり実銃の訓練をしたりしてるんだけど、こいつらには見せられないしなぁ。

「修学旅行が終わったらここに一人の暗殺者生徒が送り込まれるはずなんだけど……ちょっと烏間先生がさすがにかわいそうになってきた。」

「……何があったの?」

「人工知能の教室参加。」

「えっ?」

「つまりはロボットの暗殺教室参加だな。」

自律思考固定砲台

どう見たって人工知能のロボットだ。

「……なんか烏間先生も大変だね。」

「そうだな。ってか飯食ってさっさと行こうぜ。矢田先輩、イリーナ飯食ったら行くぞ。準備しろ。」

「あっ。うん。」

「わ、わかったわ。」

「……なんか、楽しみのことが絡んだこうちゃん怖いね。」

「そうか?普通だろ?」

するとあかりねぇがくすりと笑う

「なんだよ。」

「ううん。なんでもないよ。」

「はぁ。まぁいいけど。。」

すると家がばたつき始める。

俺は先に着替えておかないと皿洗いした後大変だし、少しだけしおりをまとめておくか。

 

「それで、羽川はこっちの班になったんだ?」

「そうですね。」

俺は溜息をつく。新幹線に乗ってから俺たちは結構まずい空気になっていた。

「本当に羨ましいなぁ。なんで羽川ばかり。」

「……あはは。しょうがないよ杉野。」

「……」

結局俺はあかりねぇの班に入った。

なので今男子陣で集まっているのだが

すげぇ気まずい

ってか特に潮田先輩とやっぱり少しだけ距離があり、杉野先輩もそれに伴っている感じだ。

やっぱり軽い恐怖はあるよなぁ

俺は少しだけ反省する

元々はクラスメイトと距離を離そうとしていたので尚更である。

しかも一番の厄介な点は謝罪の意思があることだ。

なにかに怯えるような。ただ自分を隠しているような。

……あれ?

やばい。この人俺に本当に似ている。

「あの潮田先輩失礼ですが、家族や誰かの機嫌を失わないようにしていることがありますか?」

「……えっ?」

なぜ言葉にしたのかわからない。

でもこの先輩が抱えているものはそれだと思った。

「なんでそんなことを?」

潮田先輩は俺を見てくる。不思議そうにただ純粋に

……これは結構まずい

直感がささやいていた

「……先輩が昔の俺を見ているようで。」

だから素直に言った。

「えっ?」

「多分ですが感情を色で判断してるんじゃないでしょうか?明るい時なら機嫌がいいとか暗い時は危ない時とか。」

「……」

すると潮田先輩は黙り込む

「……うん。」

そして小さくながら頷いた。

だから分かる。なんで潮田先輩をこんなにも警戒していたのか

あぁこの人は俺と同じタイプの人間だ。

「……そうですか。」

「…どうしてわかったの?」

「だから俺と似てるんですよ。自暴自棄だった子供の時の俺に。」

「……えっ?」

「俺、最近はまぁ彼女がいるので克服してますが、結構自己犠牲にすることが多かったんですよ。自分の考えを隠し相手に合わせる。自分を否定的に見て自分の命を軽く見ていたんですよ。……たぶんだからこそこんなにイラついたんだと思います。あなたが自爆テロを起こしそうになったときは。でも多分昔の俺も同じ状況だったら同じことを起こしています」

「……」

「修学旅行に言うべきじゃなかったですね。すいません重い空気にしてしまって。」

「……ううん。いいんだけど…でも羽川くんもなにかあったの?」

すると意外にも深く切り込んできた

「まぁDVですかね。家庭内暴力をうけていました。今でも痣や火傷痕が残るくらいに……でもやっぱり先輩もなにかあったんですね。」

「うんちょっと母さんがヒステリック気味で僕を理想の子供にしようとしてるんだ。」

「親の鎖は怖いですしね。もしかして髪型とかから思っていたんですが、潮田先輩を自分の人生の二周目だと思ってませんか?」

「うん。なんで分かるの?」

「だから自分と似てるんですって。家の場合父さんでしたが。」

「そうなんだ。」

「はい。なんでも自分が大切だったそうで世間帯とかすごく気にしてきたんですよ。例えば俺が幼稚園児の時に高校までの勉強を終わらせていたのも、自分の家は優秀じゃないとダメとか色々言ってきたり、小学校に行こうもんなら煙草を押し付けられたり殴られたりして」

「……さすがにそこまでは酷くないけど。」

「まぁうちは一流企業の社長でしたしね。今は何してるか知らないけど俺を見捨て、妹連れて逃げていったくらいですから。」

……でも

「慣れていくんですよ。そういう扱いに。だから親相手にご機嫌取らないといけなくなる。」

「…そうだね。」

俺も潮田先輩もその経験があるのか少し気分が悪くなる

「でも痛いなら痛いって言わないといけなかったんですよ。慣れないうちに。大事なものを失わないように。」

「……」

「潮田先輩はどうですか?今大事なものは今ありますか?」

俺は潮田先輩に聞いてみる。

「俺は一度は見失いましたがまた見つけました。自分が何をしたいのか。多分それを両親に伝えておけばよかったと今となっては思います。……まぁ俺は気づかせてくれたっていう方がいいですかね?」

あかりねぇから、矢田先輩から死神から多くのことを教わり多くのことを学んだ。

「……俺は最低でもこの一年間はこの学校にいます。だから潮田先輩の選択をいつか聞かせてください。自分がなりたいものを考えて、もしちゃんと意思を伝えたいと思ったときは俺も手伝わせて下さい。もう俺みたいに後悔ばかり残る人を見て行くのは結構辛いので。」

だから今度は助けたい。俺みたいな人間を救いたい。それが俺の夢だ。

「……すごいね。羽川くんは」

「すごくないですよ。まぁ精神的に強くなっただけです。」

「……渚くん、羽川、俺らのこと忘れてない?」

「「あっ!!」」

完全忘れてたな

「ご、ごめんカルマくん。」

「すみません。ちょっと暗いことで盛り上がっちゃって。」

「いいんだけど…渚くんあんま家のこと話してくれないからちょっと意外だった。」

「羽川も色々あったんだなぁ。」

「結構どころじゃないですよ!!実際自殺未遂とかしたこととかあるんですよ。家が辛すぎて。」

「……それは笑って言えることなの?結構深刻だと思うけど?」

「過去は笑ってすごせばいいんですよ。どんなに辛いことがあっても今が大切ですから。生きてたらいつかはいいことありますって。」

「……なんだろう。羽川が言うとすごく説得力があるよな。」

「うん。」

すると苦笑してしまう

「あの、一応俺一個年下ですからね。」

「……」

「杉野先輩驚かないでください。はぁ俺のこと一体どう思ってるんですか?」

「女たらし」

「ひどくね?否定できないけど。」

「自覚はあるんだね。」

すると一気に空気が変わる。まぁこれでこの先輩たちとはちゃんと話せるようになったかな。

 

ホテルのロビーにみんながもう集まっている頃。

「……はぁ。」

「なんで君が教員室にいるんだ?」

烏間先生から聞かれる。

「まぁなんか嫌な情報を手にしたので報告をと思いまして。」

「嫌な情報?」

「はい。」

俺は少し息を吐き

「今日一緒に乗ってた高校生が、神崎さんのしおりをパクってました。」

「……何?」

「どうやら女子目当てなんですが、窓越しに京都で勉強を教えるとか言ってたんで、多分さらうのが目的かと。」

すると烏間先生は悩む

「なんで俺に報告した?」

「死神に報告したら絶対に出てはいけませんとかそんな風に言いだすと思いまして。スケジュール変更をすればなんとかなると思いますが。」

「……そうだな。しかし暗殺の計画は。」

「中止しかないでしょう。それよりも生徒の安全が大事だと判断するべきですが。」

「……そうだな。上層部に掛け合ってみおう。」

するとどこかに電話し始める。

さすがに地球の危機とはいえ生徒の安全は確保するだろうと思っていた。

しかし予想は大きく裏切られた。

「ちょっと待って下さい。それじゃあ生徒が。」

「……」

……こりゃ本当にひどいな

俺は溜息をつく

国家ってどうやったらここまでひどくなるんだろう

自分の保安がどうして大事なんだろうか

そんなに公開したくないのだろうか

多分死神をこのクラスの誰かが殺せた場合、この情報を世界各国の政府は隠蔽するだろう。

そして逆に死神を殺せなかった場合、死神が悪く言われるだけで政府は何も文句は言われないだろう

すると烏間先生が帰ってくる。

「……すまない。」

「……」

「……羽川くん。一つ依頼がある。」

「分かってます。」

俺は少し怒りを抑える。

この人はやっぱりいい人だ。

少しホッとする

生徒の安全も考え、熱心に指導してくれる。

この先生なら力になれる

「イリーナ、死神をよんできて下さい。作戦会議を始めます。」


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