ターゲットの暗殺教室   作:クローバー

31 / 41
この回から主人公の会話には『』をつけます


人生

もしも人生がやり直せたら

俺はいつからやり直すのだろうか

生まれた時から?

いや違う

五年前から?

これも違う

この教室を始めた時?

多分全部違う

人生は一度きりなんだから

やり直したら意味がなくなる

だからどれだけやり直せるとしても

誰も今よりも幸せになることはないのだろう

 

目の前にあるのは温かいご飯

「康太くんおいしい?」

桃花の声が聞こえる。

俺は頷く。本当に美味しい。

言いたいけどいえない。

「こうちゃん?」

『ううん。なんでもないよ』

「そう?困ったことがあったならいってね?」

『そうさせてもらうな。』

「康太くん。後からFPSしないかな?」

『もちろん。でもみんなであそびたいかなぁ』

「……じゃあ人生ゲームでもしよっか。」

うん。

普通なら声に出して話すことなのに

もういえない

話せない

たったそれだけ

でもいつもよりもしっかりみえる

「……羽川」

するともううちの家族みたいなイリーナがこっちを見る

「悪かったわ。私も先生でありながら羽川のことを見てあげれてなかった。」

『違います。本当は俺が言わないといけなかったことです。俺がただ』

「……あんたね。本当に優しすぎるわよ。他人に気を使いすぎて何か気持ち悪い。」

『酷くないですか?』

「……もしかしたら私たちが間違えてたのかもしれないわね。今日は帰るわ。お休みガキども。」

『あ、おやすみなさい。イリーナ。』

すると玄関のほうに向かっていくイリーナ

さて俺も食べ終わったし皿洗いでもしようかな

キッチンに向かい水を流す。すると水の流れや冷たさが手に伝わってくる。

今までは感じたことのない冷たさ、感覚に少しだけ驚く

なんでこんなことでさえ忘れていたのだろう

人と触れ合う楽しさ

悪口を言われた痛み

すべてが初めてのように感じてくる

あそぶことも

全てが新鮮に感じる

本当になんで気づかなかったんだろう

俺はペンを走らせる

『ありがとう』

ただ一言だけ書く

「ううん。礼を言われることじゃないよ。私たちがやりたくてやってるんだから。」

桃花の言葉に首を横にふる

そうじゃなくて言葉を付け足す

 

こんな俺のことを好きになってくれてありがとう

 

俺がノートを見せるとみんなが笑う

そしてまたノートに想いを書いていく

 

本当に迷惑をかけたけど

 

本当は謝りたいけど

 

ただ一言だけ伝えたかった

そう

 

 

『俺は三人のことを愛しています』

 

 

口だったら恥ずかしくて言えないけど

紙に書くことくらいならできる

 

 

『大好き』

 

ただそれだけ

それだけなんだ

 

これからも迷惑や心配させることもあると思う

泣き虫で臆病で強がって

時には傷つけちゃうかもしれない

でも

 

『これから先も一緒にいてくれませんか?』

 

 

すると全員がノートから俺の方を見る

「えっとそれは」

「プロポーズだよね。」

俺は頷く。

『まだ早いけどダメかな?』

「ううん。ダメじゃないんだけど。」

「ちょっと急だから。」

俺はペンを取る

本当はちゃんとしたいんだけど

『ごめんな、でも怖いんだ』

「……怖い?」

俺は頷く。

『うん。なんか怖い。いつかみんなが離れてしまいそうで』

「……えっと。」

「こうちゃん。私はいいけど…どうするの?」

『どうするって?』

「だって結婚するには一人しかできないんだよ?」

……そうだけどその前に

『俺戸籍消されてるから今俺生きていないことになってるんだけど』

「あ、そっか。事故で死んだことになってたんだったよね。」

俺は頷く

だからそこからどうにかしないといけない

「それに殺せんせーを殺さないと来年の三月で地球が滅びちゃうわけだし。」

全員が黙り込む

「こうちゃん。神崎さんに話してないの?」

「えっ?」

『俺たちの過去にどうしても触れることになるから話してないんだよ。』

「……えっとね。みんなには内緒にしてるんだけど…もうほとんど地球がなくならないの。」

「えっ?」

「奥田さんの作った液体化する薬なんだけど…あれはこうちゃんが研究してたもので。」

「……もう1%も爆発することはないって。」

すると有希子が絶句している

『ついでに話していない理由は先生が望んでいないからであぐりさんと先生との約束が関係してるんだよ。』

「ちょっと待ってみんな。ごめん。理解が追いついてない。」

それもそうか

『みんなには内緒で来年三月になっても地球がなくならないってことだけ理解してたらいいよ。」

「う、うん。」

『できれば先生にも内緒にしてほしい。それが先生も望んでると思うから。』

すると頷く有希子

『ありがとう』

「じゃあ遊ぼうか?」

『でもそれより宿題しなくていいのか?』

「「あっ!」」

すると二人は思い出したようにしてる。

『勉強するぞ。英語のプリントと数学のワークやってからな。』

「宿題かぁ〜。」

「こんな時くらい殺せんせー宿題ださなくても。」

『ぐずぐず言わないでやるぞ』

「「はーい」」

「わたしは終わらせてあるからお茶入れるね。」

……きっちりしてるな有希子は

少しだけ苦笑してしまう

まぁ色んな苦労があったのだろうけど

これも人生だし仕方ないだろう

でも今だけはこの三人に伝えたかった

助けてくれてありがとう


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。