ターゲットの暗殺教室 作:クローバー
「い〜ち、に〜、さ〜ん、し〜」
「うわぁ〜。絶対普通の中学生じゃ見られない光景だな。」
「……羽川は見てるだけだろ。」
俺が苦笑すると前原先輩が言う。
「だって俺はどちらかというと殺される方だからな。それに半分は俺が受け持ちだし。」
「……確かにそうだけどよ。」
「まぁ、ナイフがうまく使えるようになったら二刀流とか使えるようになるので結構オススメですよ。それに前原先輩は4股している最低野郎ですけど、運動神経はありますし銃が壊滅的に下手なんでナイフだけに専念した方がいいですよ。」
すると前原先輩が固まる。
「……」
「えっと、羽川?なんでそれを?」
磯貝先輩が聞いてくると
「えっと銃は見てたらわかりますし、女性関係については岡島先輩と磯貝先輩、片岡先輩に話している彼女さんの学校名が違ったので。後もう一人は3年C組の土屋先輩ですので合計4人です。」
「……」
「ついでに本命は磯貝先輩に話していた人だと。」
「…スゲェ。あってる。」
前原先輩が驚くけど女子からの最低みたいな視線は無視なんだろうか。
あれから、俺に話しかけてくる先輩は増えていった。
一応磯貝先輩などのグループに入ることが多くなった。
だけど昔のことは何も聞いてはこない。
聞くのが怖いのか気遣ってくれているのかその両方か。
でもありがたかった。
「……まぁ俺も何もしないって訳にも行かないしちょっとしたゲームでもしようかな。」
「えっ?」
「えっと、確か今は先生だから烏間先生。模擬戦しませんか?」
するとクラス中が騒ぎ出す。
「……なんでだ?」
「いや、なんか俺だけ見てるって言うのもおかしいしその武器だったら怪我もしない。それに実力を見せるのはうってつけの機会ですし、あんたの実力を少し見せてほしいかなぁって。」
「……わかった。君の実力も見てみたいしいいだろう。」
すると歓声があがる。
「にゅや!じゃあルールはこのインク付きの武器を使って一撃当てられたら勝利。」
「先生ノリノリじゃねーか。まぁ、いいけど先生何割の力出していい?」
するとみんなが凍りつく。
「……だって柔かったら殺す可能性があるし、強いのは知ってるけど…」
「……本気でやっても構いませんよ。伊達に先生の観察役を勤めてませんので。」
「……へぇ〜」
俺は少し息を吐く。烏間先生を見る。
手元にはナイフを握りしめている。
……かなり強いな。
見た目以上の腕前だと俺は判断する。
暗殺には向いてないが銃、体術、ナイフ全てにおいてレベルが高い。
俺は今まで狙われた中で三番目に強いと判断する。
油断はできない。
一気に決める。
「暗殺始め。」
俺は素早く近づき牽制のナイフを一回振る。すると烏間はそれをギリギリで避けナイフを振利かかろうとするのでバックステップで避けながら一撃目の射程外から外れる。その瞬間振りかかろうとしたナイフを諦め防御に回る烏間。その初動の速さに少し驚く
……なんで普通の人間がナイフを1秒間で5回切りかかれるんだよ。
舌打ちをしてしまう。こいつも化け物すぎるだろ。俺も得意な防御に回るしかない
「……」
「……」
足や腕、目線の向きを見て立ち位置を変え次の攻撃を備えると烏間先生3秒ほどで手を挙げた。
「……降参だ。」
「……賢明です。烏間先生。」
烏間先生の降参宣言に少し苦笑してしまう
「えっ?どういうこと?」
みんながポカーンとしていると。
「一切の隙が見当たらないんだ。どこから攻撃してもカウンターでナイフで刺されてしまう。」
「……えぇ、羽川くんは防御に優れています。烏間先生の強さを見て攻撃から防御に回ったのでしょう。目線や少しの変化で体制を変えていました。」
「多分ナイフを振る速さは1秒に10回は振れる。どうやっても勝てる見込みがない。」
「……最初の一発かなり手加減したのになんで本当の振る回数わかるんだよ。」
1秒に5回切る速さで切りつけたのにな。
「……でもそんなに手強いのか?100億円の懸賞金をかけられるようでは。」
「えぇ。ナイフ術、体術、銃でもそのレベルの人は何人もいますが、本当の凄さは気づかれないことです。」
「……どういうこと?」
「殺し屋のほとんどは居場所がわかっているのに羽川くんを見つけられないまま暗殺に失敗しています。」
「ステルス能力な。実質は、最初俺が入ってきた時先生も気づかないで教室に入って授業しただろ。自然にいてターゲットだと思わせない。それが種明かし。まぁ殺気や匂いに敏感だからすぐに逃げるっていうのもそのひとつだけどな。」
すると全員がはっとする。
「他にもトラップが俺の管轄かな?睡眠取るときには必ず仕掛けるしそれに薬品や医学も詳しい方だな。」
「……烏間先生、羽川くんを舐めない方がいいですよ。単純にあなたよりもいや昔の私よりも強い。頭の良さも知恵も多分私より優れてる。それに羽川くんは実力のまだ3割程度しか出してませんよ。」
「……悪いけど。先生。人との勝負にこれ以上力出すつもりはないぞ。ってかあまり使いたくない。」
「知っていますよ。それが君のいいところですから。」
「……えっ?」
「ちょっと待ってよ先生。それって。」
「今の速さで半分も出してないって。」
クラスメイトが騒めく。烏間先生は少し考え事をしていた。
「……それに本来は自分のことを守るために使うものだしな。それに自分の大切な人を守るときだけだよ。」
「えっ?」
「……もういいだろ。烏間先生。後お願いします。」
「あぁ。」
俺はまた磯貝先輩たちのところに戻る。
もう二度と同じ間違いは繰り返さない。
それは俺と死神が誓い合ったことだった。
大切な人を守ることができなかった苦しみ。
それは俺たちにしか分からない。
「…先生。死ぬなよ。」
俺にとってあんたは大切な人の一人なんだから。