メインキャラと同年代じゃないオリジナル主人公は間違っているだろうか?   作:反町龍騎

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九話

 ヴィヴィオちゃん達と別れて時間は過ぎ、現在は午後五時を回ったところ。俺は今、ヴィクターの家に来ている。理由は昨日明日も来ると言ったからだ。この約束を破れば俺は死ぬのだ。一度殺されかけたからな、もう次は無いだろう。

 震える手でインターホンを鳴らすと、エドガーがでた。

 

『少々お待ち下さい』

 

 門が開くと、いつもの如くドタドタと足音が聞こえる。だがいつもと違うのは、足音が二つあるという事だ。二つ?

 

「「宗二ーーーッ!」」

 

 一人は勿論ヴィクターである。いつものように大きな胸を揺らしながら俺へダイビングハグを繰り出す。ああいい匂い。ああ柔らかい。

 もう一人はジークだった。ジークはインターミドルでチャンピオンになれる程の実力者。無論タックルだって、レスリングの霊長類最強より上のはず。その彼女のタックルを腹部目掛けてされたのだ。

 

「グハァ」

 

 胃液を吐き出す。が、俺は足と腹に力を入れ、後ろに下がらないようにする。久しぶりに飼い主が帰ってきた飼い犬のように俺の頬と腹部に頬ずりをする二人。あかん、可愛い。何この二人。

 

「⋯⋯とりあえず離れてくれ。俺死ぬ」

 

 ダイビングハグを二人にされてから、一瞬たりとも腕の力を緩められていないのだ。首を締め付けられ腹部を締め付けられ⋯⋯。俺を殺す気ですか?

 

「はっ!も、申し訳ありません!私とした事が、つい」

 

 そう言ってヴィクターは離れてくれたのだが、

 

「おいこらジーク。早く離れろ」

 

「嫌や!離れて欲しいならウチを貰って!」

 

 何この子!?この子こんな強引な子だったっけ?

 

「うるせぇ!いいからさっさと退きやがれ!俺のエクスカリバーが暴発寸前なんだよ!」

 

「ならもっと刺激してあげる!」

 

「いい加減になさい」

 

 言ってヴィクターがジークの襟首を掴み持ち上げる。ありがとうヴィクター、助かったよ。あのままじゃ本当に危なかった。

 

「ちょっ!なんで止めるんヴィクター」

 

「貴方が見境ないからじゃありませんの」

 

「見境なくないもん!こんなん宗二にしかせんもん!」

 

 そう言ってくれるのは嬉しいんだが、時と場所と雰囲気とその他もろもろを考えて行動してくれ。

 さて、今もまだ言い合いをしている二人。二人を止めるべく声を掛けようとすると、

 

「「宗二はどっちの方がええん!?」どちらの方がいいんですの!?」

 

 あれれぇ?おっかしいぞぉ⋯⋯。ジークの行動云々はどこへやら。なんだか別の話になっている。――いつからそんな話になったの?

 

「おい待て話が変わってるぞ。俺は二人とも好きだからな」

 

「「はっきりして!」下さい!」

 

「そんなことより中に入れてくれ」

 

「お嬢様方。その辺で」

 

 と、いつの間にか背後に立っていたエドガーが二人を諌めてくれた。ありがとう、我が救世主。エドガーに目礼し、中に入る。

 その間も二人はギャーギャー言っていたが、宗二さんの耳はオンとオフを使い分ける事が出来るのだよ?そんな声は聞こえないな。おいジーク、今変態とか言ったな。自分の事を棚に上げてこの野郎。

 

 

 

「さて、今日はゆっっっっっ⋯⋯くりしていって下さいな」

 

 エドガーにお紅茶を出してもらい、ヴィクターが最初に言ったのがそれだ。凄い溜めるね。

 

「そんな言い方しなくてもゆっくりさせてもらうよ」

 

「なら今夜ここに泊まろ!」

 

「なんでそうなる」

 

「ゆっくりするんやろ?」

 

「いやそうは言ったけどね?俺は夜にはお家に帰るよ、あったかハイムが待ってるんだから」

 

「何処があったかいんよ。一人暮らしに温もりなんかないやん」

 

 やめて!寂しい一人暮らしの悲しいところを言うのはやめて!

 

「それくらいになさい」

 

 ジークを止めたのはヴィクターだった。

 

「それよりも宗二」

 

 と、俺の方に画面を向け、

 

「貴方が写っているのですがこれは?」

 

 それを見ると、昼間ヴィヴィオちゃんと手合わせをした写真がネット上に上がっていた。

 

「ああ、局の先輩の娘さんと練習試合してたんだよ」

 

 俺の言葉に、二人――特にジークが目を見開き、

 

「なんで!?なんで他の子とはするのにウチとはせんの!?」

 

「そうですわ!練習なら私達が手伝います!他の子とやる前にまず私達に言ってくれれば」

 

「違うんだよ。先輩に相手になってあげてって頼まれたんだよ」

 

 と言ったのだが、二人はまだ納得いかない表情でいる。

 

「その人にお世話になってるから断れないし断りたくないから」

 

 と言うと、ならしょうがないという感情にでもなったのか、二人は落ち着いた雰囲気になる。

 

「それで?どうだったのかしら?」

 

「筋は悪くない。フォームは綺麗だし戦い方も綺麗だと思う。そこら辺は師匠のお陰なんじゃない?――ただね、これはあくまで個人的な意見だけど、彼女は泥臭い戦い方は出来ないな」

 

「ふむ。綺麗すぎる戦い方のせいか性格のせいか、ね」

 

「で、宗二的にはその子はどこまで行くと思うん?」

 

「まぁ、まだ時間はあるからどうとも言えんが⋯⋯。俺の予想が正しければいいとこスーパーノービスに入れて、くじ運良ければ本戦まで行けるよ」

 

 俺の言葉を聞いた二人は驚いた顔をする。

 

「貴方がそこまで言うとは⋯⋯」

 

「てことは、期待してええっちゅう事やね」

 

「あくまで個人的な意見だし、知り合いの娘っていう事での贔屓目とその人の娘ならって期待込みの、だからな」

 

「ええ。勿論理解しているわ」

 

「いつか戦いたいもんやね」

 

 それで?とジークが続け、

 

「宗二はどうなん?」

 

「インターミドルの練習なら順調だぞ。お前らと当たった時のためにとっておきを用意している」

 

「なら、それを楽しみにしておきましょうか」

 

「はっはっはっ。楽しみにしてると瞬殺だぞ?」

 

「あら?それ程の技なのかしら?」

 

「モチのロンでございます」

 

 俺がサムズアップすると、二人は面白いと笑む。

 

「なら、ウチはそれの出鼻を挫くの楽しみにしとくわ」

 

「言ってろ」

 

 そんな会話を夜まで三人でしていた。

 

 

 

 

 

 

 ヴィクター家からの帰り。夜道を歩いていると突然、

 

「このバカったれがッッ!!!」

 

 という咆哮が聞こえた。なに!?何事!?

 一心不乱に声が聞こえた方に走っていくと、赤髪短髪の女性――ノーヴェさんが、もう一人のツインテールの女性と戦っていた。

 ツインテールの女性は、ノーヴェさんの攻撃に対し防御を捨ててバインドを発動させる。あのノーヴェさんの攻撃を受け切るとは⋯⋯。出来る。

 そしてツインテールの女性は腕を掲げると、勢いよく振り下ろそうとする。

 はっ!何を呑気に実況しているんだ俺は!

 

「今行きますよノーヴェさん!」

 

 叫び俺はセットアップを済ませ、ツインテールの女性へと走っていく。

 

「――ッ!?」

 

 間一髪、ノーヴェさんへの攻撃を防ぐことが出来た。

 

「なっ!宗二!?」

 

「大丈夫ですか?ノーヴェさん」

 

「貴方は――」

 

「やいやいやいやい!テメェ俺の大事なノーヴェさんによくも乱暴しやがったな。ぶっ飛ばしてやる!」

 

 言いながら、抜刀し斬り掛かる。何度か斬り掛かるが、どれも紙一重のところで避けられる。

 

「はあぁぁぁぁっ!」

 

 女性が気合いとともに掌底を放つが、それを鞘で軌道を逸らす。そして女性の腹部目掛けて白虎を横に一閃。

 

「ストップだバカ」

 

 一閃しようとしたら、ノーヴェさんに受け止められる。ノーヴェさんはもう片方の手で女性の襟首を掴んでいた。

 

「なんで止めるんです」

 

「止めるわ!こんなところで流血沙汰なんかされてたまるか」

 

 一理ある。しかしね?この人はノーヴェさんを襲ったのよ。乱暴したのよ。酷いことしたのよ。ちょっとぐらい痛い目に合わせてもバチは当たらないかと⋯⋯。

 そんな目で見つめるも、ノーヴェさんは知らん顔で女性の方へ向く。

 

「おいお前。諦めて私と一緒に来い」

 

「遠慮しておきます」

 

 と言うと女性は、体の回転を利用してノーヴェさんの襟首掴み攻撃から逃れる。なんという身軽な。

 む?女性が俺の方を向いている。

 

「――貴方はもしや、小鳥遊宗二さん、ではありませんか?」

 

 え?誰?俺こんな人と知り合いになった覚え無いのに。いや待てよ。これがヴィヴィオちゃん方式なら、俺のインターミドルの活躍を知っている人ということになる。つまり、この女性もインターミドルを目指している人、という事か?だとしたらこんなストリートファイトはしないよな。――ああ、格ゲーしたい。KOFとかしたい。

 

「そうだけど⋯⋯。あんたは?」

 

「失礼致しました。私はハイディ・E・S・イングヴァルト、覇王を名乗らせて頂いています」

 

「確保ーッ!」

 

「ええっ!?」

 

 自称覇王がいたから捕まえてやったぜ。これでギンガさんに褒めてもらえる。

 

「おい宗二」

 

「なんです?ノーヴェさん」

 

「お前そいつをどこへ連れて行こうとしてるんだ?」

 

「そんなの決まってるじゃないですか。俺の家に連れてひとつ屋根の下で――」

 

「リボルバースパイクッ!」

 

「フクヤママサハルッ!」

 

 

 

 

 

 

 

「さて、邪魔者は消えたな」

 

 ノーヴェは女性を見ると、

 

「一緒に来てもらうぞ」

 

「警察になら行きませんよ」

 

「そうじゃねぇ。私の姉の家だ」

 

 満面の笑みでサムズアップし、女性に告げる。

 

「なら、いいのですが⋯⋯」

 

 女性は突然言い淀む。何故かはノーヴェには予想がつく。

 

「この方はどうするのですか?」

 

「引きずって連れてく」

 

 可哀想に。宗二は起きた途端、不自然な下半身の痛みに悶えることになるだろう。


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