帝国内に配置した部下を経由することでどうにかコスミナと合流して一息ついた後、錬金術師も混ぜて三人で今後の計画を協議した。しなければよかった。でも知るべきだった。コスミナはいつもの如く役に立たなかったが、錬金術師は流石に頭が回る。副官とはやはりこうでなくてはならない。足りないところや想定外を対応してくれてこそ副官だ。それができなきゃ副官の意義はない。ただの補助ならコスミナにもできる。自覚はあるのかコスミナよ。
さて、かの御高名な錬金術師殿は調子に乗っていた俺の頭も胆も冷やすことを言ってくれた。
――国に、より有力な将が攻め寄せる。
それを聞いた瞬間まずエスデスが浮かんだ。ヌマなら、エスデス以外はどうにかなるだろう。俺でさえシュラに勝てた。イゾウに勝てた。こんな俺でも原作に食い下がれる程度の実力はあるらしい。ならヌマは大丈夫。そこまで圧倒的な力を示していたのなんて、エスデスくらいなものだ。ヌマの実力は高くてブラートと考えていたが、もう少し上までありえる。嬉しい誤算。
とにかく、ヌマが帝具使い三人を含んだ軍を破った以上、帝国の手は二つ。優先して潰しに来るか、あるいは捨て置かれるか。もう一つ停戦協定を結ぶなんて可能性もあるが、連中のプライドを考えればまずない。同じ理由で捨て置かれる可能性も低い。最強の札が破られれば苦渋の選択でありえるかもしれないがそうではない以上、潰しに来る。時期はある程度前後するだろうが、一年以内。西に行っているエスデスが完全勝利するまで、あるいは引き戻されて、北に派兵されるまで。
そういえば原作はいつ始まるのだろうか。そう遠い未来ではないだろうが、確かめる意味でタツミを探すのもいいかもしれない。奴はエスデスを知らずヌマを知っていた。ならば帝国北側の集落に住んでいるはずだ。名目は、帝国内への侵攻の為の事前調査、とでもしておくか。帝具捜索部隊は既に、帝国内への工作部隊に存在理由が変化している。十分だ。
部下に指示を出す。
錬金術師には褒美を出す。俺の血だ。他者から生命力を奪わないと化粧が剥げるようだから、相当喜んでいた。いくら帝国民とはいえ無辜の民を襲わせるわけにはいかない。周りがアレだっただけで意外と話が分かる。というよりも理解が広いと考えるべきか。亀の甲より年の劫だな。
首は流石に怖かったので指、というか手から吸わせたわけだが、生命力を吸い取られるというのは想像以上に疲れる。最悪吸い殺される。だが、それはコスミナも似たようなモノ。現状で、錬金術師には帝国とのコネはない以上、俺を殺すメリットは皆無。基本的には感情よりも理性を優先する人種。殺される可能性はまずない。であれば信頼を示す意味で今後は首から吸わせてもいいだろう。他者を信頼しないと、他者から信頼されないものだ。
そうはいっても毎度毎度こんな事してはいられないので、試しに危険種を生け捕って食わせてみたら、ひっくり返った。拒絶反応とかどうとか。良く分からん。だが苦しむ錬金術師は案外かわいかったのと、生命力の吸収自体はうまくいったようなので、効率を考慮してまたやらせることを決意。錬金術師は苦虫を噛み潰したような顔を浮かべて、命乞いの時と同じ様子で懇願してきたが説得の末条件付きで受け入れさせた。定期的に血液を失うことになったが些細なことだ。長命種も強い場合が多いので狩るのはいささか面倒だがしかたあるまい。帝具で危険種と混ざり強くなる例がある以上、やらせない選択肢はない。
拒絶反応を抑える薬を作りたい? 作ればいいだろう。そんなことまで却下はしない。材料は、まぁ、手伝おう。あぁ、そうだ。強くなれるようなら類似効果の薬を用意しろ。最悪その場しのぎのモノでも構わないから。手足が異形のそれになるくらいなら受け入れるよ。俺は。死にたくないのだ。
部下への指示出し、錬金術師との作戦会議が終わって、とうとう革命軍への交渉へ動き出す。
が、困ったことに連絡の取り方がわからない。帝都で貸本屋をやってるラバックは確実だが無意味に警戒される上に、帝具使いだ。最悪即時戦闘もあり得る。真っ先に却下だ。レオーネは帝具がない以上ナイトレイドではないだろうが、革命軍に所属している可能性は高く選択肢の一つ。とはいえやはり帝都入りは危険度が少し高い。地方で地道に聞き込みを重ねていれば向こうからの接触もあり得るが、同時に帝国に捕捉される危険性がある。不確定要素が大きい。部下に探させるのも悪手だ。ただでさえ最近は失踪者が増加しているのだ。拠点もいくつか潰された。より重要な仕事を任せにくい。接触できてもその後の展開で一網打尽とかはシャレにならない。今後に響く重要な仕事だ。主に逃げ道の確保的な意味合いで。俺自身がやり切るほかにないだろう。
総合して、まずレオーネに接触だ。次いで帝都内でナイトレイドへの接触を図る。一般人から依頼を受けている以上、接触難易度は高くない筈。……だというのに罠にかかってない時点で、情報の取捨選択能力において異常。とんでもない化け物が存在している可能性が高い。やはりナジェンダか? あるいは革命軍内の他の何者かか。戦闘力以上に警戒する必要があるな、ナイトレイドの情報処理担当。
他の暗殺集団は壊滅したという話もあるし、やはりナジェンダの可能性が高いな。腕と目を失い戦闘能力を喪失してもナイトレイドの最重要人物なのは間違いないだろう。
そんなことを考えつつ、俺とコスミナと錬金術師。三人の帝具使いは帝都に入った。
レオーネへの接触は容易だった。ちょいと貧民街に入れば有名人だ。まさか一人目で場所がわかるとは思わなかった。そして探し人の噂は流れて、酒場でレオーネが来るというのを待っている現状。少しでも心証をよくするべく、その場に居合わせた人間に酒をおごる。まだ夜は始まったばかり。もっと更けてからでなければ話はできない。だったらそれまでバカ騒ぎするのが賢いし、楽しそうなヤツを見るのもまた楽しい。
「おぉ、嬢ちゃん歌上手いな。もっと歌ってくれー」
「はーい。盛り上がってきましたね! それじゃーもう一曲いっちゃいます!」
やんややんや。
バカ騒ぎに呑まれてレオーネが来る前に理性を蒸発させた間抜けな歌姫を見て笑う。酒の肴にいい歌だ。もう少し落ち着いた曲なら言うことはないが、それでは場所に合わない。そういう曲は二人きり……ドロテアもいるから三人の時にでも歌ってもらおう。
なにより酒に呑まれて押し倒されるより万倍マシだ。旅の恥は掻き捨てというが、可能なら掻きたくないのが人情だ。そんな性癖は俺にはない。ないものはない。
酒場を盛り上げているし、最初より人もかなり増えている。明らかに一般人ではない身のこなしの人間も混ざっているが。さて、何者か。いきなり無関係な人間を襲ったりはしないだろう。そんなことを考えていると、錬金術師、ドロテアが飛びついてくる。
「カーマー! ヌフフフ」
「ぬお、ちょっと酒臭いぞドロテア」
首に手を回され間近に迫った口から洩れる酒の臭いに顔を顰める。その反応に微かにドロテアは見た目に相応しく、実年齢に相応しくなく、憤慨して見せる。
「なんじゃとー。こんな美少女が抱き着いているのじゃから喜ばんか。この甲斐性なしめ……こうしてやる――」
「年を考えろバビャわ!?」
――ハム。んむんむ。あまがみ。耳たぶを口で挟まれた状態で揉むように唇を左右に動かされる。背筋にぞくぞくとした快感が走る。同時にちくりと痛む。血を吸いだしたかコイツ。慌てて押しのけようとするが、そういえば今週分の血をやってないことを思い出した。我慢する。俺に対して、ドロテアは思いっきり抱き着くように見せて小声でささやいてくる。意識が逸れそうになるのを堪えながら、その言葉に対応する。
あむあむ。
「こんな目立つことして、どういうつもりじゃ」
チロチロ。
「こういう連中の横の繋がりは侮れない。金で転ぶ連中だからこそ心証を大事にするべきだろう?」
んみゅんみゅ。
「カモ認定される方が早くはないかの?」
ちうちう
「それならそれで構わない。なんにせよ口が軽くはなる。まぁ、ガセネタも増えるだろうが、情報なんて元からそういうものだ。気にしてられないさ」
んまんま。
「ぷは。なら、わしが言うことはない、か。ではそろそろ奥の方を――」
「――いい加減にしろぉ!」
それは吸血とは関係ないので却下だ。会話中もあまがみを続けるドロテアに対し流石に色々と限界が迫り突き飛ばす。耳に集中していたからか、あるいはそろそろやめるつもりだったのか、想定より容易く突き飛ばされたドロテアはそのまま出入り口の方に飛んでいく。流石に壊れはしないが、ぶつかるな。アレ。
弁償はいくらかかるか試算を重ねようとしたタイミングで、どこぞで見た金髪の女がただ酒がどうとか叫びながら酒場に姿を現し、間の抜けた声を上げてドロテアと衝突した。ふむ。レオーネか。アレ。
慌てて、衝突した二人の様子を見る。あぁ、駄目だ。二人して伸びている。どうしたものかと近づいて、気絶した二人を突いていると、ちょうど一曲終わったコスミナが人込みを飛び越えてこちらに駆けてくる。流石にこの状況を看過はできないのだろう。
コスミナはそのままの勢いで宙を舞い。片足をこちらに向けて突き進む。飛び蹴り。それを軽くいなして受け止める。どうやらひどく御冠らしい。先ほどまでは歌って調子がよさそうだったのだが、何故だ。
「どうした。コスミナ」
「どうしたじゃないですよ! コスミナが歌っている間にドロテアちゃんとイチャイチャして! ずるいです。コスミナも混ぜてください!」
「……? いや、なんのことだか。さっぱり」
コスミナも知っての通り、ただの吸血行為だ。そういえば普段は腕とか指とか首とかで耳は初めてだったか。しかしあれはイカンな。今後はやはり耳からはNGだ。
「ううー! 知らんぷりならぁ……こうです!」
「うっ!?」
もぐもぐ。んぐんぐ。ぴちゃぴちゃ。ぺちゃぺちゃ。ドロテアのそれより幾分と激しい耳への攻撃。付き合いが長いせいだろう。ドロテアのそれより幾分とツボを心得ている。ていうかこれは目的が違う。
「ぬ、うあっ。コスミナ、やめろっ!」
静止を呼び掛けてもコスミナは止まらず。周囲の注目が集まり、妙な空気になったところで気絶している二人共々、奥の部屋に案内されることになった。そういう店じゃないとか言われても、俺だってそんなつもりはなかったさ。だが仕方ないのだ。弱いところを攻められれば、その気にもなろう。男なら。
結局、諸事情で疲れ果てた俺が再び目を覚ましたころにはレオーネは復活し、思う存分ただ酒を煽っていた。まあ、構わない。
レオーネに事情を話すと警戒されたがこちらに敵意がない事と、自らの裁量できる話でないことを理解したようで、後日向こうから連絡が来ることになった。想定通り奴は革命軍と繋がっていたようだ。
ただ人の面前で致し始める高レベルな変態集団扱いされて、男連中からは尊敬の、女連中からはレオーネも含めて侮蔑の瞳で見られることになった。おかげで連絡が来るまでの数日間、ひどく過ごしづらい帝都暮らしとなった。もう来ない。
レオーネに案内されたのは帝都から離れた森の中。聞かれるわけにはいかない話ではあるし、秘密基地を教えるわけもないと理解はしていたが、長話をするには不向きにもほどがある場所。どうやらあまり歓迎されてはいないらしい。まぁ、敵国の人間、それも諜報員への扱いとしては妥当か。さて、周囲を見渡すのはやめて、待っていた人間を見る。
眼帯を身に付けた義腕のイケメン。もとい麗人。まぁナジェンダだろう。その後ろに控える愉快な髪形の筋骨隆々とした男。ブラートだ。互いに見定めるような視線が交錯する。
まずい。ナジェンダはどうにかなるがブラートが想定以上だ。この状況でいきなり襲われることはないと思うが戦闘になればまず勝てない。身体能力、同等かわずかに俺が上。技量、ブラートが上。イゾウと比較すれば迷うが、俺よりは明確に格上。帝具による戦闘力の向上は不明だが、タツミの事を考慮すれば相当な上昇率。流石は帝具使い三人を相手に、足手まとい抜きなら勝利を掴んでいた化け物の類。
結論。鎧を纏う帝具である以上相性は悪くないがそれでも薄い。ドロテアはあまり役に立たんだろうとはいえ、三人がかりで三割を割る勝率ってところか。周囲に他の連中が控えているだろうからさらに下がる。ガン不利。
とはいえ内心ビビっていることを悟られるわけにはいかない。向こうも自らの有利を考慮したうえで臨んでいるだろう。場所を選んだのが向こうである以上、覚悟の上で。ここで余裕を見せつけて、何かしらの手があると思わせねばならない。実際あるが。
「初めまして。セイカ国のカマ・セイカです」
「革命軍のナジェンダです。カマ・セイカというと、王族の?」
「えぇ。第二王子の。今回の交渉は私の責任の下に行われることになります」
「なるほど。それは失礼をしました。こんな場所ではなんですので場所を変えましょう。ちょうどこの先に座れる場所があります」
「それは有難い。長旅で疲れているのですよ。帝都では生憎とあまり落ち着けませんでしたので……」
噂を聞いていたのか、どこか納得したような表情を浮かべるナジェンダ。本格的な話をしていないのもあってまだ、表情は読める。王族であるということに驚いたようだが、俺も驚く。使者とか最悪殺されるような仕事だ。体面的には害されるはずはないが、帝国内で賊に襲われるなど最近は珍しくもない。それほど力を入れている、重要視しているということは理解してもらえたようで、場所が変わるようだ。拠点ではないだろうが、まずは交渉の席に就けたと考えていいだろう。
案内された先は森の一角を切り開いたような場所で、簡易的な椅子や机があった。焚火の跡も見え、キャンプ場のイメージが近い。此処にたどり着くまでに幸いな事もあった。移動に合わせて隠れていた連中も動いたのだろう。二人ほど、存在を感知できた。木の上に一人。地上に一人。誰かは分からないがナイトレイドだろう。レオーネは既に帝都に帰った。目の前にナジェンダとブラート。であれば、残りはアカメ、ラバック、シェーレ、マイン。時期を考えればスーさんとタツミ、チェルシーはいない。この中で一番隠密がうまいのはアカメだろう。マインはより遠くで狙撃担当。であれば感知できたのはラバックとシェーレ。帝具の性能を考慮すれば、木の上にいるのがラバック、地上がシェーレと考えて問題ない。戦闘にならないように動くのが最優先ではあるが、万一に備えて行動を予測しておく。
俺とナジェンダが向かい合うように席に着く。ブラートはナジェンダの側に、コスミナとドロテアは俺の側に立ったまま。俺は背負っているアースマイトを、すぐに掴めるよう机に立てかける。そしてお互いが手を机の上に置いたところで、交渉が始まる。
「この場所でも失礼とは思いますが、ご理解ください」
「よい場所ではないですか。北は雪ばかりで、こういう木々の香りのする場所は少ないので新鮮ですよ」
「そう仰っていただければ幸いです。……それで、今回はどういったご用向きでしょうか」
「そう、ですね……」
会話は続かない。相手も単刀直入な話を求めている。
「我が国は、革命軍との同盟を望んでいます」
ナジェンダの表情は微かに目を細めたのみ。にこやかなまま。こちらの想像以上に変化がない。予想していた? 否。本人の資質の問題だろう。この若さで将軍にまで成り上がっていたということは、当然軍事的な才能もあったのだろうが、それだけではないようだ。目と腕を失った今ならばむしろ大臣やら官吏向きの人材。あぁ、いいなぁ。北の国は無能な足手まといばかりで、政治ができる人間が少ない。そんなだから蛮族呼ばわりされるのだ。革命を成した後も重宝される事だろう。
「それだけではなんとも言えませんね。その条件と、利点を説明していただきたい」
「えぇ、もちろん――」
革命軍が北の異民族と同盟を結ぶ利点は三つ。
帝国の弱体化。現状北の国は戦力だけを考えれば、既に革命軍と協力関係にある西の異民族よりも強大。革命の成功率はぐっと上がることは確実だ。如何に帝国と言えど西と北の同時侵攻への対処は遅れる。……エスデスに蹂躙されて戦力の大部分を喪失するのだが。
情報網の拡張。帝国内部への情報網ならば革命軍のものの方が広範ではあるが、情報網は帝国側の罠ということもままある。その点俺が現在までに組み上げた諜報部隊は帝国側の思惑に左右されることは格段に少なく、確度が高い。さらに言えば戦場で対峙せねばわからぬような情報も革命軍に流すことができる。通常入手不可能な極秘のモノ、例えば帝具の奥の手、未来の情報さえ俺の原作知識から流すこともできる。無論、機は俺が判断する。……エスデスに壊滅させられれば俺の知識以外の情報網は崩壊するのだが。
帝具及び帝具使いの供給。おそらく最重要だろう。エスデスを倒すのに十万の兵力と十人の帝具使いとか言っていた。現在北の国が所有する帝具は七個。俺、コスミナ、ドロテア、そしてヌマの
自分で言ってあれだが、相当多いのではないか。これ。手を結ぶならば適合者が見つからぬ二つのうち一つを譲る用意がある。なんなら援軍として帝具使いを送ることも考慮可能。
無論。ただではない。帝具使いを見つけるのは帝具を見つけることに匹敵する難易度だ。実際兵士たちでは適合者は見つけられなかった。一人一人探すのは手間で、膨大な労力をかけた。だがそれにも関わらず、革命軍は新たな適合者を容易く見つけている様子だ。国を守るものである以上、基本的には帝国臣民の血を引かねば使用できないという可能性もある。だが俺やヌマが使えている以上その可能性は薄い。乱捕りした女をそのまま妻に迎えたりしている可能性はあるが、それはおいておく。混血なんぞ民草でもいくらでも起こりえる。
そこで、ある仮説が持ち上がった。つまり、適合者を見付けだす、あるいはその人間に適合する帝具がわかる帝具があるということ。帝具使いを探す手間を大幅に削減できる代物。それこそが原作においてたびたび存在を仄めかされていた占いの帝具なのではないかという予想。この帝具に占ってもらう事も目的の一つだ。この要求で俺の情報網が広大だと誤認してもらう目的もある。
味方するメリットを示すと同時に敵対するデメリットも示す。示威行為ではあるが、効果的なのは確かだ。
一通り話し終えてナジェンダの返答を待つ。順当に損得勘定ができるならば受ける筈。もちろんナジェンダがこの場で即断できる権限を持つとは思っていない。こんな大ごとを勝手に決めては味方内で顰蹙を買うというもの。それでも持ち帰り、首脳部で話を持つと考えられる。まず成功するはず。というか俺が向こうの立場ならば受ける。リターンが大きい。革命後の内政干渉の恐れもあるが、エスデスをぶつけてしまえばまずもってそんな余裕はないだろうという判断。実際西はそうなったようであるし。うむ。余裕を持って返答を待つ。
――だが断る。
エスデスに敗北後の逃げ場を全力で確保しようとしているだけ。