俺は、死に掛けていた。そして、後悔していた。こんなことならば、ドロテアに頼み化け物になんぞなるのではなかったと。十二分に予想できたことではないか。己の迂闊さを呪わずにはいられない。せめて、せめて、何故後二月待てなかったのかと。二月、正確に言えばアースマイトの改造が終わるまでの期間だ。
力無く体をコスミナに預ける。コスミナは俺を背負い、目的地に向かって走っている。朦朧とする意識の中で、コスミナに告げる。
「コスミナ。もういい。おれは、ここまでだ」
「そんなこと言わないでください! あなたがいないとコスミナ、コスミナ達はどうすればいいんですか」
「お前達ならできるさ。俺なんていなくても、きっと――」
コスミナを掴んでいた腕から力を抜けば、その背から振るい落とされる。脚は掴まれているので、上半身がぐるりと孤を描いて、地面に頭が激突する。痛みはない。むしろ激突した地面がわずかに抉れる。コスミナは慌てて脚から手を離し、倒れる俺を起こす。
「シャンバラを、とってくれないか……」
頼めばコスミナは俺の懐に手を入れ、そこからシャンバラを俺の掌に乗せる。最後の力を振りしぼって、この地獄から逃げるために、起動しようとし、失敗した。
「何しとるんじゃ主ら」
ドロテアによる妨害だ。ドロテアは自らも息を切らし、辛そうにしながらも俺の逃避を防ぐ。言い訳を紡ぐ元気すら出ない。コスミナが事情を説明すれば、ドロテアはただ一言。
「30分も経っとらんぞ」
そう言い、切って捨てた。
ここは、南方諸島。エンシンが海賊行為を行っている島の一つ。エンシンを狩るために訪れたそこは、灼熱の地獄だった。
そのままコスミナにおぶわれたまま、宿にたどり着きそこで床にのびる俺とドロテア。平常通りに活動できているのは、三人の中でコスミナだけだ。
取り込んでいた危険種が北の国近郊に住んでいる奴だけだったのが災いしたのか、俺とドロテアは暑さに致命的に弱かった。特に俺なぞ先日行った大改造によりもはや人間よりも危険種に近いほどで、定期的にドロテアの健診を受けねば見た目からして人でなくなる。コスミナ達には悟られぬように、という条件だったはずだったのだが、気が付けば完全に人型ではなくなっていた。健診の度にそんな俺の血を吸うドロテアもより危険種に近づいているということだろう。好みの味になるよう調整しているのは百歩譲って許そう。人型でなくなったのは既にお仕置き済みなので許そう。だが、この灼熱地獄を予期できなかったのは許さない。無論、八つ当たりである。
「北の国の人は暑さに弱いんですかねぇ」
床に貼り付く俺とドロテアをつついてくるコスミナに、抵抗すらできないのだから重傷だ。
そんな有様なのでこの島に着くのに予定以上に時間はかかった。満足に動けるのがコスミナしかいないのだ。仕方ない。暑いし時間は押しているしでエンシンをさくっと殺したいのだが、探す気力すらおきない。コスミナ一人に全てを投げ出して、俺とドロテアは室内待機だ。場所を発見次第、全力で、仕留める。一秒でも早く、暮らしやすい北に帰りたい。
地獄のような一週間が過ぎ、体がスライム様になるかと思う頃になってようやく、コスミナが海賊の居所をつかんだというので襲撃。海賊たちが住むという島に上陸。船乗りたちは渋ったが、札束で頬を叩けば心変わり。あとから思えば、もっと安くできた気しかしないが、暑さで茹だった頭では交渉どころではなかった。
堂々と正面から乗り込めば当然、隠れる場所もなくバレバレだったので迎え撃とうと海岸に集まっていた海賊たち。射程に入るや否や撃ってきた矢やら斬撃やらは全て叩き落とし、戦闘開始。
有象無象の中に混じる海賊を見つけて、コスミナが全力で帝具を発動。それに合わせて俺が吶喊。雑魚海賊共はヘヴィプレッシャーで倒れ伏し、邪魔するものはない。危険種化が進み更に上昇した俺の身体能力の前に、海賊は正面からくる俺を防御するのがやっとだった。
俺の振るうアースマイトとシャムシールが激突。シャムシールは砕け、そのまま海賊も弾けて死んだ。うむ。やらかした。
その場で膝をついてうなだれる俺を尻目に船員を守っていたドロテアが砕けたシャムシールの欠片をかき集め、コスミナが残党処理。船乗りたちに感謝をされ、宴を開くというのを無視してシャンバラで仲良く北に帰ってきた。
あぁ、北の国って素晴らしい。南方の地獄とは大違い。俺とドロテアがはしゃぎまわるのをよそに、急な気温変化で寒がるコスミナは早々に室内に逃げていった。しばし楽園で踊っていたが、沸いた頭が冷やされて、正気に戻ってどちらともなく咳払い。コスミナと同じように逃げるように室内に入った。
そして現在。俺はドロテアに睨まれていた。コスミナは炬燵でくつろぎ、ドロテアも炬燵に入る。俺はドロテアと炬燵机を挟んで床に座る。
「なんのために、南に行ったんじゃったか。覚えておるかの」
「帝具を手に入れるためだな。月光麗舞シャムシール。斬撃を飛ばす帝具、だったかな」
ドロテアは大仰にうなずいて、これ見よがしに袋を取り出す。そして机の上に中身をばら撒く。きらきらとした金属片が、山となる。
「で、これ。なんじゃ。これ」
「件のシャムシール」
「正確にはだったもの、じゃな。この有様ではもう機能するまい」
「……修理、できるか」
「無理じゃろ」
「そうか」
「そうじゃ」
そして、むやみやたらと沈黙が続く。予定以上の時間を掛けて、予定以上の苦労をして、収穫はゼロ。いや、現在の俺の弱点がわかったことで良しとするしかない。南方諸島にたどり着いてからドロテアを呼び出したので、ドロテアの取られた時間は一週間と少しだが、気持ちはわかる。一週間あの苦痛を味わわされて、徒労に終わるのでは、怒りたくもなるだろう。俺はいっそ泣きたい。
帝具目的ではなく革命軍との交渉の為に移動したと考えて自らを励ますほかにない。微かな失望と諦観。ロベスピエールからナポレオンに至るまでの動きを夢想して、ナジェンダには憐れみを覚えざるを得ない。無論、そうでなくては戦後のアカメの仕事などありはしなかったのだろうが、残念でならない。あぁ、駄目だ。何の励みにもなりはしない。
しばしの沈黙を経て、ドロテアは一つため息。
「どうにか活用法を探してみはするが、あまり期待はせぬように」
「あぁ。ありがとう。ごめんな」
ドロテアにしても無収穫は辛いのか、研究対象への未練か。あるいは俺を慮ってか……それはないか。それだけ言って机の上の金属片を閉まっていく。話が終わるのを待っていたように、コスミナが笑う。
「終わりました? それじゃあ一緒にのんびりしましょう」
「いや、お前は引き続き扇動な。シャンバラで送るから」
「そんなーせめて、一晩、一晩だけ。ね。ね?」
慌てて炬燵から出て縋りつくコスミナ。悪いが時間がないのだ。抱き着いてくるコスミナの体が、俺の体に当たる。胸のふくらみのほかに、今まではぶつかっていなかった部位がぶつかることに違和感を覚える。
「あれ? 太った?」
胸だけでなく、腹が出っ張っている。コスミナは動きを止めて、不満そうに笑う。何故笑うのか。一瞬、妙な予感が頭をよぎる。いや、まさか。一週間行動を共にして気づかぬものだろうか。
思えば珍しい程接触が少なかった気がする。求めても来なかったが、俺にそんな余裕がなかったからではなかったのか。体のラインがわからぬだぼだぼの服は暑いからではなかったのか。
にやけそうになるのを抑えていると、コスミナは立ち上がり、頬を軽く染めてこちらを見やる。そして自らの下腹部を撫で上げて、微笑む。
「できちゃいました」
本当は寝室で伝えたかったんですけど、などという続きの言葉は耳に入らず。思わず立ち上がり、頭の中でコスミナの声がリピートする。
――できちゃいました。
何が? いや、決まってる。あれだけすれば当然だ。
――できちゃいました。
誰の。俺のだろ。名前どうしよう。
――できちゃいました。
なんで今だよ。エスデスの襲撃と被るじゃないか。
戦闘予測程に思考が加速したが、何を言えばいいかわからず声を出すでもないというのに口だけが動く。自身がこうなると動けないモノなのだなと、他人事の様にさえ思えてくる。
「え、っと。産んでもいいですか……」
上目遣いで見つめるコスミナ。瞬間、何かが切れた。体は勝手に動き出し、コスミナを抱きしめ持ち上げる。勢いあまって床が砕けるが、空いている手をアースマイトに伸ばし、ハンマー部で衝撃を打ち消す。優しくコスミナを抱き寄せる。
「ありがとう! あぁ、名前はどうしようか! いやまてそもそも生まれるのはいつだ? ドロテアが調べられるか? それよりもコスミナを嫁に迎えないとだな。あぁ、老害どもうるさそうだな。最悪消すか? ヌマと母さんと国王にも報告しないと。 あぁ! エスデス! まずい、まずいまずい。戦線には出せないよな。仕方ない。下がっててもらおうか。あぁ、それより名前はどうしようか! 」
「落ち着かんか、阿呆」
色々考えて、考えるまま声に出していれば脚に衝撃。ドロテアの声がしたから聞こえる。ドロテアは頭を押さえて呆れている。同時にコスミナを見れば驚いたように固まっている。先ほどまでのかわいらしさが消えて、戸惑いと不安が同居しているのが見て取れる。
「カマちゃん。その体、どうしたんですか?」
冷たく震えた声のコスミナに、疑問に思って自らの肉体を見下げれば、人のソレではなかった。
ケンタウロスという神話上の生物がいる。馬の首から上が、人間の上半身になったような存在。手足が計六本とか、実は虫の親戚なのではと疑問に思ったこともあるが、それはどうでもいい。俺の場合は馬でなく鹿なのだが、まぁ、似たようなもの。一言で無理やり説明するならば、ちょっとパーツが多くて歪なケンタウロスということになる。
下半身というのが正しいかはわからないが、人間基準でいえば腰から下にあたる鹿の部分は硬質化している部位、透明感があり湿っている部位、毛皮に覆われた部位と、三種類の部位が斑に点在していてひどく見た目が悪い。その上足が三対六本ある。ドロテア曰く、取り込んだ危険種の種類が多すぎたせいとのこと。
鹿部と人間部の境目にはイカのような一対の触腕が生えている。というかイカだ。海にすむ巨大イカの危険種クラーケンの一種、凍土の下に広がる海に適応したクラーケン。凍土の中に閉じ込められた古代の危険種の回収作業をしていた時に、アースマイトの威力調整を間違えて出てきた怪物だ。軟体のせいかアースマイトも効果が薄く、慌ててシャンバラでヌマの所に持ち込んで、ヌマが倒した。まさかその一匹だけでこれほどはっきり形になるとは思わなかった。ドロテア曰く、唯一の超級危険種だからだろうとのこと。
人間部は白くくすんでいて肌色はほとんど見えない。頭はのっぺりとした人面鹿の様相を呈していて、シシガミのよう。頭頂部からは掌を広げたような形の巨大な角が二本。おそらく鹿型危険種キョロクのもの。
ドロテア曰く、美しくないから今後調整して見た目に統一感を持たせていくとのこと。見た目の美醜はどうでもいいのだが、興が乗らないとか言われてしまえば、俺に抵抗の余地はなかった。
しまった。見られてしまった。どう言い訳しようか。そんなことばかり考えて、いや、考える事すらできず黙りこくる俺を見て、コスミナが声を荒げる。
「どうしたのか聞いてるんです!」
怒声と呼ぶには弱弱しさが過ぎて、大声である筈なのに聞いている側が憐れみを覚えてしまうほどか細い。声に感情を乗せて心が揺さ振れる。これこそがコスミナの才能の一端、歌姫足る所以なのかもしれないなどと、現実逃避にも似たことを考えてしまう。だからさらに沈黙は続いて、コスミナの表情が歪んでいく。声が小さくなっていく。
「答えて。説明して下さい。……カマちゃん」
終わりの方なんて出しているかも危うい小声。距離が近い上にパラボラアンテナの役割も持つ角が音を拾ってようやく聞こえる程度の、声にもならない音。そんなコスミナの姿を見て、ようやく頭が働きだす。 どうか、そんな顔をしないでくれ。どうか、そんな声を出さないでくれ。
「見ての通り、俺は、もはや人間とは呼べない、化け物になってしまったよ」
「っ……」
コスミナは何かを言いたそうにしたが、俺が手で制すると、唇を噛んで黙る。その様子を確認して、ドロテアを見れば、ドロテアが小声でよいのかと囁く。コスミナに聞こえずとも俺には聞こえる程度の声量。俺は軽く頷いてから、六本の足を折り畳んで座る。触腕で持ち上げていたコスミナを降ろして、続きを話し始める。
「そうだなぁ。どこから説明したモノか。まず、目的だけ言うと、強くなりたかったんだ――」
何故、これほどあっさりと話すことにしたのか。バレた以上隠す利点がないとか、不信感を抱かせるだけだとか、そういった考えもあったのかもしれない。それでも自らの中にある諦観に気が付いた瞬間に理解した。あぁ、そうか。こんな怪物の姿を受け入れる筈がないという確信があるからだ。
同時に、自らの肉体ではなく、内面の醜さに怖気がする。自身のことであるのに侮蔑を覚えてしまう。そして戦力の低下に関わらず、コスミナの改造を拒絶した理由を知る。愛する人が化け物になってしまうのが嫌だったのだ。
だって、俺は、化け物になったコスミナを受け入れられないから。
その程度の感情を、執着を愛と呼べるのだろうか。結局のところ、俺がコスミナに抱いた感情は愛ではなく、愛着の類だったのかもしれない。コスミナという人間ではなく、カマ・セイカが救ったコスミナという登場人物への執着。
無様だとか、醜いだとか、思ってはいたが、これほどか。これほどだったかカマセイカ。あぁ、本当にどうしようもない。……まいったなぁ。
いつのまにやら力無く床に座るコスミナを炬燵に押し込んだり、ドロテアに説明を変わってもらったりして、全てを話し終えると部屋は沈黙に支配される。
自己嫌悪に苛まれながら、どれほど時が経ったのか。時計は壊れているし、慣れていないこの肉体の感覚は信用できるものではない。とにかく、最初に口を開いたのはやはりコスミナだった。
「カマちゃんは、最初に会った時からずっと、強かったです。なんで、こんなことする必要があったんですか」
「俺が強かったときなんてない。一度だってヌマに勝てたことなんてなかった。エスデスにだって、勝てる気がしない」
あの日、最初にして最大のチャンスを逃した瞬間に俺の運命は決定されたのかもしれない。戦いの中で成長するのも、重傷を負ってからパワーアップするのも、ひどく恐ろしい。帝具を得る前でさえあれほどなのだから、帝具を得た今はどれほどになっているというのだろうか。エスデスは。
自己への失望からか、思考がマイナス方向に偏っているのがわかる。コスミナへの返答ではなく、自嘲の言葉が口から溢れる。
「どうして何も言ってくれなかったんですか」
「言ったら止めただろう?」
戦うだけの強さを手に入れなければならない。エスデスを殺す為に。俺が生き残るために。そのために手段なんて選んでる余裕はなかった。俺は弱いから、きっと止められれば選択できなかったに違いない。
「当たり前です!」
「だったら、俺は正しいことをしたことになる」
コスミナに顔に感情が宿る。初めて見る表情。きっと怒りだ。こんな状況だというのに新鮮で、笑みが浮かんでしまう。
「……なんでも一人で決めて、なんでも一人でやって……馬鹿みたいじゃないですか!」
「邪魔されるなら余計な労力だ。むしろ賢いだろ。どうして馬鹿になる」
「いつか話してくれるって、信じて待ってたコスミナが! コスミナが馬鹿じゃないですか!」
……なんだと?
意味が分からなかった。コスミナが怒っているのは間違いないが、その怒りの方向性が理解できなかった。なんで、そんな怒り方になるのだろうか。矛先が俺を向いていない。無理やり聞き出そうとしなかった、コスミナ自身への怒りに近い。そう感じてしまう。いや、それどころか。俺に向けられた意志は変わらない。変化していない。
「カマちゃんがそういう人だってわかってたのに、なんで……なんで!」
心配されている。未だに、なお。異形と成り果てたこの姿を見てなお、コスミナは、この女は、俺を切り捨てていない。
「……お前は、この姿に、何も思わないのか?」
「思ってますよ! 思ってますから、こんなになってるんじゃないですか!」
コスミナの目にいつの間にか浮かんでいた涙を、ようやく認識する。憐れみでも、恐怖でもない。ありえない。
かつてない、エスデス以上の恐怖が、俺を襲う。あぁ、まて。待ってくれ。どうか、どうか、そんなわけはない。背筋が凍るような、全身が総毛立つような、あるいは、死を前にした以上のおそれ。信じたくなくて、確かめるように、やめておけばいいのに、口から核心が飛び出す。
「お前は、こんな姿になっても、俺を、受け入れられるのか?」
先ほどから、コスミナの態度と、言葉を聞けば、そうとしかとらえられない。やめてくれ、受け入れないでくれ、否定してくれ。拒絶してくれ。そうでなければ、俺は、耐えられない。
コスミナは、俺の言葉を聞いて、とうとう涙を溢れさせて、掌で顔を覆う。
そして、眼をこすって涙を拭うと、言った。
――当たり前じゃないですか。
気が付けば、俺は凍土に居た。凍土であるというのに、寒さは感じない。肉体的にこの環境に適応しているからか、精神的にそんなことを気にしている余裕がないからか。どうでもいいことだ。
コスミナに泣きつけば、あいつはきっと受け入れるだろう。まさに女に逃げるといわけだ。笑えない。ドロテアに泣きつけば、解決してくれるだろう。今度からドロえもんとでも呼ぼうかなんてことが頭をよぎる。同時に、意外と大丈夫なのではないかと、笑みがこぼれる。寒さで頭が冷えたのか、やけっぱちになったのか、区別がつかないが。
周囲を見渡せば、キョロクの群れが見える。手にもつアースマイトを見る。あぁ、ちょうどいい。ちょうど、力を振るってみたいと思っていたところだ。八つ当たりだってことは分かっている。意味なんてないということも理解している。振るえば振るうだけ、虚しくなるだけということも、分かり切っている。
無為の殺戮を終えても気は晴れない。それでも多少の余裕は生まれたようで、物事を考えられるだけの状態にはなっていた。落ち着けば、自分が情けなくて仕方がない。あれほど無垢に己を慕う人間が心底怖い。奴に害意はないが、善意が心を腐らせる。
コスミナはあれでも俺なんぞより、よほど上等な人間らしい。憎くて妬ましくて羨ましくて眩しいが、それでよかったのかもしれない。俺はコスミナが恐ろしい、コスミナの想いが恐ろしい。コスミナの美しさが恐ろしい、愛おしいことが恐ろしい。
だからこそ、よかった。今の俺はもはや
待っていろエスデス。かつてのように、その腕を切り落としてやる。今度は腕だけでなく、その首を切り落としてやる。アースマイトで、その肉体を砕いてやる。
――この
隔週……ではないけどもギリギリセーフということで。
主人公覚醒回という奴です。歪ですが。