君の瞳に   作:りりなの

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俺には分からない

「零、大会だけどバッタに出るか」

 

 勉強中に余裕のある雪にそんな事を言われた。

 

「考えてなかったな、雪はフリーだけか」

 

「俺はリレーとフリーを泳ぐつもりだ」

 

 リレーと言われた時にまだリレーが好きなんだと思った。

 

「雪は夢とリレーどっちが大切なんだ」

 

 俺は椅子を回転させて雪を見て聞く。

 

「いきなりどうしたんだ?」

 

「いいから答えろ」

 

 これは今出ないと聞けない。

 

「どっちも大切に決まってるだろ」

 

「世界に立ちたい夢があるなら仲間とかリレーに時間を使ってる時間はない」

 

「それは違う、今の俺があるのはその仲間の御蔭なんだよ」

 

「仲間?」

 

「そうだよ仲間だ、個人とは違う景色が見れるんだよ」

 

 昔もそう言っていた。

 

 俺には分からない。

 

「なら、その仲間に俺も入れてくれ」

 

「それってリレーで泳ぐってことだよな、でもお前は」

 

 そうだ、俺は否定した。

 

 昔にリレーは泳ぎたくないと言っている。

 

「今だから言える俺は雪と泳ぎたい、同じチームで泳ぎたい何か見つかるかも知れないんだ」

 

「それはできない」

 

 俺は立ち上がって言う。

 

「いうこと何でも聞くって約束したろ」

 

「約束でもそれはできない、タイムがすべてだ」

 

「だよな」

 

 冷静になれば分かっていたことだ。

 

「でもお前の気持ちは伝わった、前もいっただろバッタとフリーの記録は俺が持っている」

 

 それって。

 

「俺と本気の勝負で」

 

「勝って奪えってことだな」

 

 なら俺のやることは決まっている。

 

「なら今から勝負してくれ」

 

「望むところだ」

 

 それから俺たちは移動してスタート台の上に立つ。

 

「種目はバタフライ100」

 

 集中する。

 

 二人しかいないこの空間で泳ぐ。

 

 二人同時に飛び込む。

 

 スタートはほぼ同時、本気で泳がなければ雪には勝つことはでいない。

 

 少し前にいる雪には経験の差で負けているがそんな事を思っていても勝つことはできない。

 

 俺がこれまでしてきたことは意味がないわけではない。

 

 同じ舞台で泳げなくても、この年だけは泳ぎたい。

 

 泳がなけれあならない。

 

 折り返しに入ったが二人の距離は変わらない。

 

 ここで負けたら次はない。

 

 ゴールが近づいてくる。

 

 二人の手が壁に着いた。

 

「よっしゃー」

 

 雄たけびを上げたのは零だった。

 

「お前の本気の泳ぎ見せてもらったぜ」

 

 これで雪と同じ舞台に立てる。

 

「一緒に頑張ろうぜ」

 

 拳をこちらに向けて笑顔の雪に俺は応える。

 

「おう」

 

 拳をぶつけて笑う。

 

 昔の様に笑えたと思った。

 

 善子の誘いの為に待ち合わせの場所に向かった。

 

「なんでジャージなのよ」

 

 学校のジャージで来てはいけなかっただろうか。

 

「朝から泳いでたんだよ」

 

 部活終わりの後だからしょうがない。

 

「寒くないの」

 

 天気は雨だからな。

 

「眠気覚ましには丁度いい」

 

 泳いだ後は寝ることが多いから今も眠い。

 

「そう」

 

 善子はそう言ってバス停まで歩いていく。

 

「善子がライブを見に行きたいって珍しいな」

 

「気まぐれよ」

 

「気まぐれで行きたくない学校に行くか?」

 

「だから、ばれないようにしてるんでしょ」

 

 だからコートにサングラスにマスクか。

 

「一緒に居る俺のことを気遣ってくれるとありがたいな」

 

「我慢しなさいよ」

 

 俺はため息を付きながら丁度来たバスに乗り込み浦の星に向かう。

 

 内浦の方に行くのも久しぶりだろうか。

 

 去年は一度も行っていないからか少し懐かしい。

 

「付いたわよ」

 

 ぼっーとしていたら停留所についていたみたいだ。

 

「この坂か」

 

 目の前には階段、その奥には坂道が続いている。

 

「どうしたのよ」

 

「いや、毎日こんな坂を行き帰りしてるんだな」

 

「大変でしょ」

 

「初日しか行ってないのに偉そうだな」

 

「しょ、しょうがないでしょ」

 

 善子をおちょくりながらも体育館に到着した。

 

 人の数は少ない。

 

 まぁ、開演時間までまだあるのだからな。

 

 それでも解せないことがある。

 

「何で真ん中なんだよ」

 

「見やすいでしょ」

 

 見やすいことは見やすい。

 

 この場所に男が俺だけだってことを除けばな。

 

「俺は後ろの方で見ていいか」

 

 流石に恥ずかしい。

 

「数は少ないんだから我慢しなさいよ」

 

「酷くないか」

 

 俺がそんな事を呟いたら幕が開いた。

 

 開場時間なのに始めるのかと思っていたら歌が始まってしまった。

 

 善子を見て見ると興味ありげに見ている。

 

 すごいかどうかと言われれば普通だ。

 

 だけど、飽き症な千歌が率先してやっているのが意外だった。

 

 この場の人の数を見たら諦めてしまうだろう。

 

 それでも歌う姿勢は凄いと思う。

 

 でも、俺には分からないそこまでする意味が分からない。

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