最後の方は駆け足で書いてしまって抜けている個所もあるかと思いますがそれは全て梨子編で書くと最初から決めていました。
ではではー
学園に残っていた俺の荷物は京都にいる母方の祖父母の家に送られていた。
そして俺がここから居なくなることを伝えたのは水泳部の人たちだけだ。
雪だけは何かを言いたそうにしていたが何も言ってこなかった。
「本当に不思議だ」
あの日、俺を引き込んだ瞳は知っている瞳だった。
記憶の中にある僅かに憶えている瞳の色。
俺はこの街で過ごす最後の時にそんな事を呟いた。
「本当に不思議ね」
いつの間に俺の隣にはその大切に思っていた瞳を持った女性がいた。
「俺に会いに来ていいのか善子?」
「私はただ散歩に出ただけよ」
離れたと思ったのに俺たちの距離は最初から離れていなかった。
ぴったりとくっ付いていたんだ。
「まさかだったよ自分が惚れたのが腹違いの姉だったなんてな」
「私も驚いたわよ」
俺は母に似たこの瞳に惹かれて、善子は父に似た俺の瞳に惹かれただけだった。
「いつこの街をでるの?」
「明日の朝にな」
「そう、ごめんなさい私のせいで」
「あぁ、そうだなお互い不幸のどん底に落とされたな」
善子は俺の顔を見ながら何かを言いたそうにしていた。
「なんて顔してるんだよお前スクールアイドルだろ」
「分かってるわよ、分かっていてもこの気持ちが偽物だったと思ったら痛いのだって私は」
「分かっている、俺も善子を愛していたからその気持ちは知っている」
俺はそう言って善子を抱きしめる。
「本当は離れたくないずっと一緒に居たい、周りが否定しようと私はレイを愛してるの」
「でもそれは世界が赦さない、法律が赦さない、世間が赦さない、そして俺たちの親は黙っていないだろうな」
「それでも私はレイを愛し続けるわ」
「俺は分からない」
こう言わないといけないのだと自分に言い聞かせながら言う。
「俺は君の瞳に幻影を見ていたのかもしれない」
そう言うと善子は分かっている風に頷いた。
「分かっているのお互いが依存しあう可能性があるからレイはそんな事を言うんでしょ」
そう言って善子は俺の頬を触る。
「いいの、これは私の罪だから私がレイを籠の中に閉じ込めてしまったから」
善子はそっと俺の唇にキスをする。
「だからこれが私の最後の我儘」
「善子」
砕け散ったガラスを元に戻すことは出来なくても一から作り直すことはできる。
「前の関係には戻れないけど私はレイを想い続けるわ」
最後に静かにキスをして俺たちは別れた。
この先、もう出会うことはないのかもしれないがこの過ごしてきた時間は俺にとっての宝物だ。
翌日、静岡を出て祖父母の家に向かった。
一旦止まった俺の時間はここで動き始めるのだろうか、そう思いながら最初の一歩を踏み出した。