デスとハイエロファントの物語:REBOOT 外伝・番外編集   作:桁石スミオ

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おお、運命の女神よ ー Episode of Fortune ー 【第七話】

★ (過去・更に数時間後)マジカルランド中央・フォーチュンの住んでいた居城

 

 雲が幾分切れ掛かっている、空。

 天にそびえる尖塔を見上げて、石段の一番下に立ち止まるフォーチュン。

 

フォーチュン《わらわの、城・・・ここじゃ・・・わらわは、かつてここに住んでおった・・・》

 

 フォーチュン、疲れ果てたような表情と動きで、ゆっくりと階段を昇っていく。

 石段の最頂部まで数段のところで、城門の向こうに、煉瓦造りの巨大な人型を確認。

 ハッ!と思わず顔を上げ、残る段を駆け上がり、城門をくぐる。

 眼前に、片膝と両手を石畳にしっかりと据えた、タワーの姿。

 

フォーチュン《(愕然として)・・・タワー!》

 

 タワーに走り寄り、大きく深呼吸をして見上げるフォーチュン。

 光のない左眼を、じっ、と見詰める。

 フッ、と穏やかな微笑みを浮かべ、目を細める。

 

フォーチュン《ああ・・・懐かしいのう・・・そなたと過ごしていた日々が・・・》

 

 暫くの間、遠くを見るような視線を彼に送る。

 ふと、タワーの周囲に視界を巡らせる。

 城の玄関を密着して塞いでいる、背中。

 身体に無数に群生している、苔。

 風雨に晒され続けて、身体を構成する煉瓦のいくつかにヒビが見受けられる。

 

フォーチュン《苔むして尚、城を護ってくれとったのか・・・》

 

 タワーの爪先に歩み寄り、そっ、と右手を触れるフォーチュン。

 直後。

 ブイイイイイン・・・と、何かが起動するような音。

 タワーの体内から聞こえてくる。

 

フォーチュン「(ハッ!と、思わず見上げ)・・・まさか!」

 

 タワーの爪先に、緑色の光が煌く。

 それが煉瓦と煉瓦の隙間を縫い、一気に脚を駆け上り、全身を覆い尽くしていく。

 キュルルルルル・・・と、綺麗な緑の光で染まっていくタワー。

 それが頭部まで達し、瞬く間に光が左眼に集まる。

 キュイイ―――――ンッッ!!!と、高い周波の音が響く。

 左眼に宿った、緑色の煌き。

 目を丸く見開き、驚愕の表情を見せるフォーチュン。

 

タワー「(重厚な声で)ター・・・ワー・・・」

 

 ズウ・・・と顔を動かし、少し屈むタワー。

 タワーの左眼に、自分の姿が映るのを確認するフォーチュン。

 そのまま、暫く。

 更に、間。

 

タワー「(深く優しい声で)オカエリナサイ・・・フォーチュンサマ・・・」

フォーチュン「(息を飲み、一層驚き)わらわが判るのか!?」

タワー「(静かに頷き)オマチシテ、オリマシタ・・・」

 

 沈黙。

 沈黙。

 沈黙。

 長い、長い間。

 フォーチュンの両方の瞳から、ぽろ、と涙が頬を伝う。

 ぽろっ・・・ぽろっ・・・と、連続する透明な滴。

 

フォーチュン「(落涙しつつ)タワー・・・タワー・・・わらわを・・・待って・・・」

 

 ぽろろ・・・ぽろろろ・・・と、滝のように流れ出る涙。

 ぐうっ、と嗚咽が彼女の裡を突き上がり、喉元を一度引き締める。

 しかし堪え切れず、表情を一気に崩すフォーチュン。

 

フォーチュン「(空に届くほどの泣き声で)うわあああああぁぁぁぁん!!!」

 

 フォーチュン、天を仰ぎ、幼児のように泣き始める。

 腹の底からの、感情を一片残らず吐露させたような、感涙の絶叫。

 両方の瞼を強く閉じ、眉をこれ以上ないほど寄せ、大きく口を開けて泣く。

 ポトッ、ポトッ、と頬から顎先を伝って、彼女の足元に落下する涙。

 慌てて両掌を翳し、どうしていいか判らない様子のタワー。

 

タワー「(狼狽えた声で)フォーチュンサマ・・・ナカナイデ・・・ナキヤンデ・・・」

 

 尚も、フォーチュンは泣き止まない。

 おろおろ、と手を上げ下げして、フォーチュンを見詰め続けているタワー。

 

【回想シーン終了】

 

 

★ タワーの内部

 

 彼方を眺めるような目線から、天井に焦点を合わせるフォーチュン。

 頭の下に組んでいた両手を抜き、寝ている身体と垂直に、天井に向けて掌を翳す。

 

フォーチュン「(しみじみと)あの時の気持ちを、生涯忘れまい。いや、忘れまいと誓った・・・そなたが雨風に晒されながら城を護り、わらわを待っていてくれたことが、嬉しかったのじゃ・・・あの感激足るや、何物にも替え難い」

タワー(頭上から)[ワタシ・・・タダ・・・マッテイタ、ダケ・・・ナニモ、シテナイ・・・]

フォーチュン「待つのは大変なことじゃ。わらわには出来ん。1万年も生きとって、待つのは苦手でのう・・・(微笑んで)本当に、ありがたかったのじゃ、タワー」

 

 フォーチュン、すっ、と両腕を下ろし、体側に置く。

 

フォーチュン「そなたとは、どれくらいの付き合いになるかのう? 5千年くらいにはなるか?」

タワー「フォーチュンサマ、シロ、タテテ、カラ・・・]

フォーチュン「ではやはり、5千は超えるか・・・(申し訳なさそうに)タワー、そなたには一時、酷い扱いをしていたのう。下僕同様に接してた時期もあることを、ハッキリ覚えておる・・・(沈んだ声で)すまんかった。今更詫びを言っても、とは思うのじゃが、許してはくれまいか?」

タワー(頭上から)[アヤマルコト、ナイ・・・ワタシ・・・フォーチュンサマ、シタガウ・・・]

 

 急に、ガバッ、と起き上がり、天井を見上げるフォーチュン。

 

フォーチュン「(首を左右に振り)それでは駄目なのじゃ、タワー。最早“従う”とか“従わせる”ではなく・・・そなたには、わらわの下ではなく・・・(頬を染め)その、何じゃ・・・」

 

 俯くフォーチュン。

 頬に朱を帯びさせたまま、自分の足元に視線を投げ、口元を、キュッ、と結ぶ。

 少しの、間。

 右手で拳を作り、膝の上に置いて、グッ、と握る。

 意を決したように真上を向いて、僅かに瞳を潤ませる。

 

フォーチュン「タワー、一度外に出る。扉を開けよ」

タワー(頭上から)[ター・・・ワー・・・]

 

 フォーチュン、掛布を除け、両脚に力を込めて起立する。

 ガチャ・・・と自動で開く、目の前の扉。バルコニーが視界に入る。

 頷いて、歩を前に進めるフォーチュン。

 

 

★ フォーチュンの居城・中庭

 

 タワーの腹部バルコニーに足を踏み入れるフォーチュン。

 穏やかな夜風が、さわ、と彼女を頬を撫でる。

 

フォーチュン「そなたの顔の前に行く。よいな?」

タワー「ター・・・ワー・・・」

 

 ズゥ、と右の掌を持ち上げ、欄干に水平に添えるタワー。

 欄干に右足を掛け、スッ、と昇り、そのままタワーの掌に乗るフォーチュン。

 ズズズ・・・と自分の顔面に手を持ち上げ、五指を向こう側に位置させる。

 フォーチュンは、タワーに背を向けている。

 暫く、そのまま。

 尚も、間。

 フォーチュン、両手を後ろ手に組み、もじ・・・と指を絡めている。

 突然、くる、と振り向くフォーチュン。

 今までない程、両頬が赤く染まっている。

 艶やかな色彩に輝く、黄金色の瞳。

 数歩、タワーの顔に近寄り、彼の左眼を目の当たりにする。

 フォーチュン、和らいだ微笑みを浮かべる。

 

フォーチュン「そなたは、澄んだ目をしとるのう。綺麗な緑の色じゃ」

タワー「フォーチュンサマ、ノ・・・オカゲ・・・」

フォーチュン「話の続きじゃが・・・(真剣な表情で)今から、わらわの今の気持ちを言うぞよ。心して聞くがよい」

タワー「(落ち着いた声で)ワカッタ・・・」

 

 すう、はあっ・・・と大きな呼吸をするフォーチュン。

 ゴクリ、と唾を飲み込み、きり、と眼差しを向ける。

 

フォーチュン「そなたに再会した日に、決めたのじゃ、タワー・・・そなたには、わらわの傍にいてほしいのじゃ。下ではなく、わらわに従うでなく、隣に、横にいてほしいのじゃ。わらわの判る場所に、見える場所にいてほしいのじゃ。声が届くところに、いっつもいてほしいのじゃ。誰でもない、そなたに・・・(凛とした声で)タワーにいてほしいのじゃ! 主と従者の関わりよりも、わらわの連れ合いとして傍におってはくれぬか!?」

 

 沈黙。

 沈黙。

 タワーの眼の光が、キラ・・・と瞬間虹色に変わり、また元の緑色に戻る。

 フォーチュン、両手で拳を握り、身体の横に下ろす。

 

タワー「フォーチュンサマ・・・」

フォーチュン「(目を伏せ)そなたが主従の間柄を望むのなら、そうである方が負担にならぬのであれば、それでも良い。じゃが、わらわは・・・(顔を上げ、少し潤んだ瞳で)どんな関係でも、タワーと離れとうない・・・そなただけは、わらわのものじゃ。誰にも渡しとうない・・・そなたと一緒にいたい・・・わらわは・・・(きっぱりと)そなたと添い遂げたいのじゃ! この先、何百、何千、何万年と経とうとも! この身が滅びるまで! 朽ち果てるまで共にありたいのじゃ!」

 

 再び、左眼に虹の輝きを帯びさせるタワー。

 今度はやや長い時間。そして静かに、色を戻す。

 

タワー「(深遠の響きの声で)・・・ワタシ、デ・・・イイノカ?」

 

 コクン、コクン、と頭を上下に、明確な動作で振るフォーチュン。

 タワーの眼の光が、刹那、戸惑ったように鈍る。

 

タワー「ワタシ、ヌクモリ、ナイ・・・ニンギョウ・・・フォーチュンサマ、ヌクモリ、アル・・・」

フォーチュン「(張りのある声で)体温なんぞよりも! そなたは! わらわに心の温もりを教えてくれとる!」

 

 フォーチュン、両手を胸の前で重ね、ギュウッ、と握る。

 蕩けるような、何もかも許容したような、陽溜まりのような笑顔。

 うる・・・と、彼女の双方の瞳が潤いで煌く。

 

フォーチュン「(穏やかな声で)これ以上の温かいものなど、この世にあろうか・・・」

 

 絡む、ふたりの眼差し。

 そのまま、停止。

 暫くの、間。

 更に、間。

 キラッ、と今まで以上の虹色の輝きを放つ、タワーの左眼。

 

タワー「(優しい声で)フォーチュンサマ、ノゾミ・・・ワタシ、ウレシイ・・・」

フォーチュン「(声を昂らせ)真か! 真にそう思うか!」

タワー「(頷いて)ワタシ、フォーチュンサマ・・・ズット、イッショ・・・ワタシ、モ、フォーチュンサマ、トナリ、イタイ・・・ズット、ズット、ズット、イッショ・・・」

 

 フォーチュンの笑みが、弾ける。

 ズ・・・と顔を近付けていくタワー。

 手の届く距離まで来た時に、待ちきれなかったように、ガバッ!と両腕を広げて抱き着くフォーチュン。

 タワーの顔の下方、顎と思しき付近に頬を摺り寄せる。

 

フォーチュン「(歓喜に満ちた声で)タワー・・・もう離さんぞよ・・・」

タワー「(再度、キラ、と眼を煌かせ)フォーチュンサマ、ワタシ、ハナレナイ・・・」

 

 フォーチュン、撫でるようにタワーの顔に手を滑らせ、少し身体を起こす。

 つ・・・と右の人差し指を伝わせ、タワーの顎付近の上部で、ぴた、と止める。

 

フォーチュン「(艶やかな声で)そなたに口があれば、よかったのう・・・」

 

 指を立てた辺りに、左右の掌を、タワーの顔にしっかりと密着させるフォーチュン。

 瞼を閉じ、手と手の間に、躊躇なく顔を寄せる。

 唇を、押し当てる。

 そのまま、停止。

 タワーの左眼、鮮やかな朱色に染まっていく。

 ドクン、ドクン、と脈打つように点滅を始める。

 長い、長い時間の口付け。

 更に、続く。

 フォーチュン、そぉ・・・と身体を起こし、照れた顔で満面の笑みを浮かべる。

 一向に収まる気配のない、タワーの眼の点滅。

 それを嬉しそうに眺めているフォーチュン。

 

フォーチュン「今度は、そなたがしてみよ。ゆっくりで良いぞ」

 

 ビク、と動揺したように顔を動かすタワー。

 フォーチュン、両手を後ろ手に組み、顎を上げ、瞼を閉じて唇を結ぶ。

 タワー、余り間を置かず、ズウッ・・・と顔を接近させる。

 徐々に、極めて緩やかに、少しずつ、慎重に寄せる。

 ぴと・・・と、先ほどフォーチュンの唇が付いた場所を、寸分違わず、再び当てるタワー。

 ぐうっ、と一層強く自分の唇を密着させるフォーチュン。

 再開される、長い口付け。

 尚も、続く。

 タワーの眼の点滅は、いつの間にか治まっている。

 朱色から緑色に、落ち着いた色を取り戻す。

 そ・・・と惜しむように、唇を離すフォーチュン。

 両掌はタワーの顔に添えたまま、蕩けそうな表情を向ける。

 

フォーチュン「(甘い声色で)上手いのう・・・最高の接吻じゃった・・・」

タワー「(照れ臭そうに)ヨロコンデ、モラエテ・・・ウレシイ・・・」

 

 フォーチュン、目を細め、嬉しそうな微笑みを浮かべる。

 

 

★ (数週間後)フォーチュンの居城・自室

 

【N】「それから、数週間経ったある日の、宵」

 

 陽も沈み切り、とっぷりと暮れて闇が覆っている空。

 開かれた自室の窓、その窓枠に両肘を着き、右手に小壜を持って目の前に掲げているフォーチュン。

 小壜の中には、マジカルドロップが一粒だけ入っている。

 窓の外、フォーチュンの目の前にはタワーの顔。緑色の眼で、じっ、と彼女を見詰める。

 

【N】「フォーチュンの元にある、一粒のマジカルドロップ。これは、ワールドから手渡された物。“天空の女神”が言うのは、近い内にデスとハイエロファントが結婚式を挙げる可能性がある、その時に全員で集まって参列してほしい、とのことだった。ドロップを使って一堂に会する為に、ワールドが段取りをしていたのである」

 

 右手を軽く振り、中のドロップを転がすフォーチュン。

 コロン、と軽やかな音が耳に届く。

 フォーチュンとタワー、眼差しを絡める。

 

フォーチュン「まあ、あやつらがその内に結婚するじゃろうことは、随分前から見えていたことではあるがのう。じゃが、正確にどの日になるかは、今もよく見えん・・・『運命の輪』の力も、まだ戻り切っておらんのか、不安定なのかも知れん。(ふう、と息を継ぎ)折角、祝いの品も準備してるというのにのう」

タワー「ワタシ、ハヤク、オイワイ、シタイ・・・タノシミ・・・」

フォーチュン「(笑顔で)まったくじゃ。あやつらの驚く顔が目に浮かぶわ」

 

 タワー、顔を少し下に向けてから、ズ・・・と再度上げてフォーチュンに視線を結ぶ。

 

タワー「フォーチュンサマ、ヒトツ、キキタイ・・・」

フォーチュン「何じゃ? 申してみよ」

タワー「(少し籠った声で)・・・イエ、カエリタク、ナイノカ?」

 

 ピク、と眉を微かに跳ねさせ、目を伏せるフォーチュン。

 壜を持った右手を下げ、窓枠に両腕を重ねて置く。

 少し曇った表情。

 しかし、意を決した様子で顔を上げ、タワーの左眼に真っ直ぐ眼差しを注ぐ。

 

フォーチュン「そなたには、正直言っておこう・・・一度は顔を見せたい、と思っておる。じゃが・・・(切なそうに)帰ったら、父上と母上と暮らしたくなるじゃろう。この城にそなたを置いていくなど、出来ん・・・タワーと離れとうない・・・」

 

 途端。

 ズイ・・・と、タワーが顔を窓に接近させる。

 フォーチュン、目線を繋いだまま、窓枠に両手を着き、上半身を乗り出す。

 触れれば届く距離まで寄り、一度動きを停めるタワー。

 

タワー「(穏やかな声で)ワタシ・・・マツ・・・ダカラ・・・カオ、ミセテアゲテ・・・」

 

 緑色の眼が、キラリ、と輝きを放つ。

 至近距離で見詰め合う、ふたり。

 両瞼を閉じ、すっ・・・と顔を近付けるフォーチュン。

 タワーの口と思しき辺りに、唇を押し当てる。

 少しの間、そのまま。

 フォーチュン、静かに離れ、身体を部屋の中に戻し、艶やかな眼差しを向ける。

 

フォーチュン「もう暫し、考えておくぞよ」

 

 小首を傾け、可愛らしい微笑みを湛えるフォーチュン。

 頷く、タワー。

 直後。

 部屋中、そして城の周囲の空気が、一瞬、ブイン・・・と震える。

 思わず周囲を見渡し、それから夜空を見上げる、フォーチュンとタワー。

 フォーチュンの持つ小壜の中のドロップが、ポアァッ・・・と光を発する。

 続けて聞こえる、ワールドの声。

 ドロップに目線を繋げる、ふたり。

 

ワールド(声のみ)[聞こえますか・・・ドロップを持つ方々よ、聞こえますか・・・間もなく、デスとエロファントが神殿で挙式を行う模様です・・・取り急ぎ申し訳ありませんが・・・すぐに来られる方は・・・只今から神殿前庭に集合なさって下さい・・・天空の女神の名に於いて、ドロップの封印を解除します・・・では、後ほど・・・]

 

 見る見る明るい表情となるフォーチュン。

 

フォーチュン「(ニッ、と笑い)いきなりじゃのう! 読めんかったわ! じゃが、面白いことになりよった!」

 

 フォーチュン、窓枠から一歩後方に下がり、両脚を肩幅に広げて背筋を伸ばして立つ。

 

フォーチュン「タワー! 花火の筒を装填せよ! わらわも魔法弾を準備する! 整い次第、ドロップで神殿に飛ぶ! いよいよ祝いの品を披露する時が来よったのう!」

タワー「・・・ロウ、ノ、エンペラー、ドウスル?」

 

 あっ、と短く声を上げ、目を見開いて表情を停止させるフォーチュン。

 沈黙。

 沈黙。

 フォーチュン、ガク・・・と項垂れて、右手で顔の半分を覆って首を左右に振る。

 

フォーチュン「(はぁ、と溜め息をつき)あっちゃぁ・・・すっかり忘れとったわ・・・挙式までには“最教育”しておくつもりじゃったが、間に合わんかった・・・(顔を上げ)仕方ない、“奥の手”を使うとしよう。わらわの宝物庫に、人格や性格を一時的に自由に設定出来る『電池』があった筈じゃ。それを使うとする。もたもたしてると式が終わってしまうでな、止むを得まい」

 

 ズウ、と大きく頷くタワー。

 そして、バッ!と顔を上げてタワーに視線を結ぶフォーチュン。

 左掌を真っ直ぐ伸ばして掲げ、やる気満々という、凛として清々しい表情。

 

フォーチュン「そなたは筒の設定をしておけ! わらわは他の準備を急ぐ! (満面の笑みで)さあ、忙しくなるぞよ! タワー! 共に行こうぞ!」

タワー「(嬉しそうに)ター! ワー!」

 

【N】「この夜、遅れながらもデスとハイエロファントの結婚式に参列したフォーチュンは、マジシャン、ハイプリエステスと再会し、和解する。更に明くる日、エンプレスの城で行われた、デスとハイエロファントの披露宴に、タワーと揃って出席。その日の夕餉を、育ってきた家で取り・・・フォーチュンは母の手料理を堪能し、久し振りの家族団欒を味わうことになった」

 

 

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