デスとハイエロファントの物語:REBOOT 外伝・番外編集   作:桁石スミオ

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おお、運命の女神よ ー Episode of Fortune ー 【第八話】

★ (1ヶ月後)街の郊外・マジシャンとハイプリエステスの家

 

【N】「その後、フォーチュンは、週に1日、マジシャンとハイプリエステスの家で過ごすことにした。既に親子としての、家族としてのわだかまりはなくなったにせよ、タワーがいる居城になるべくいたい、というのが彼女の願いだったからである。マジシャンもハイプリエステスも、フォーチュンの望みを優先し、それを認めてくれた」

 

 麗らかな気温の、昼下がり。

 テーブルに向かい合って座り、茶と茶菓子を嗜んでいるマジシャンとハイプリエステス。

 香しいハーブティーの湯気が、卓上の空間を揺れている。

 菓子籠に盛り付けられたクッキー、ラスクなどの焼き菓子。

 ラスクを一片摘まみ、サク、と噛み締めるマジシャン。

 茶を少し啜り、ふう、と穏やかな表情になるハイプリエステス。

 

【N】「デスとハイエロファントの結婚式から1ヵ月ほど過ぎた日。フォーチュンがタワーと共に、マジシャンとハイプリエステスの元に戻っていた時に、ある賑やかな騒動が起こった」

 

 奥の部屋から、居間に入室してくるフォーチュン。

 テーブルの横に立ち、左右の椅子に座る両親に、一度ずつ顔を向ける。

 

フォーチュン「父上、母上、話があるんじゃが」

マジシャン「どうしたのだ? 改まって」

フォーチュン「重要な話じゃ。聞いてほしい」

ハイプリエステス「(頷いて)いいざますよ。お話しなさい」

 

 ハイプリエステス、カップを受け皿に、カチャリ、と置く。

 マジシャン、食べ掛けのラスクを、手元の小皿に乗せる。

 娘に目線を送る、ふたり。

 すうう・・・ふうう・・・と、一際大きな深呼吸をして、再度両親を見詰めるフォーチュン。

 僅かの、間。

 

フォーチュン「(真剣な表情で)タワーを婿に迎えたいのじゃ!」

 

 沈黙。

 沈黙。

 目を正円に見開き、茫然として動きを凍て付かせるマジシャン。

 対して、ほとんど表情を変えていないハイプリエステス。

 

マジシャン「(動揺した声で)・・・今・・・何と言ったのか?」

フォーチュン「(凛とした声で)わらわは! タワーの嫁になりたい! 結婚をしたいのじゃ!」

 

 パン!と、軽やかに音を立てて、胸の前で両掌を叩き合わせるハイプリエステス。

 

ハイプリエステス「(満面の笑みで)大賛成ざます!」

マジシャン「(思わずハイプリエステスを見て、声が裏返り)はあッ!?」

フォーチュン「(嬉しそうに)真か、母上? 賛成してくれるんじゃな?」

ハイプリエステス「(頷いて)ええ、もちろんざますよ! 大好きな殿方と結ばれる・・・最高の幸せざます!」

フォーチュン「(歓喜に震え)母上・・・」

ハイプリエステス「そうなると、わたくしは義理の息子を持つことになるざますねぇ・・・タワーなら、安心してあなたの未来を託せるざます。きっと良い家庭を築けると思うざます!」

フォーチュン「(言いにくそうに)そ、そこでじゃな、話ついでですまぬが、勝手な提案を言わせてもらいたいのじゃ・・・」

ハイプリエステス「何ざましょ?」

フォーチュン「タワーが住むには、わらわの城くらいの館が必要となる。新たに館を建てるのも考えたのじゃが・・・(顔色を窺うように)どうじゃろ? 全員でわらわの城に引っ越す、というのは・・・そうすれば、父上と母上と、わらわたち夫婦で揃って暮らせる、と思うてのう・・・」

 

 ニッコオッ、とはち切れそうな笑顔となるハイプリエステス。

 フォーチュンに身体を向け、両手を合わせて握り、瞳を煌かせる。

 

ハイプリエステス「(感嘆した声で)素晴しいざます! 完璧ざます! みんな揃ってまた暮らせるなんて、夢のようざます!」

フォーチュン「(パアアァ・・・と明るい笑顔になり)では! 良いのか!?」

ハイプリエステス「お城に、図書室はあるざますか?」

フォーチュン「あるぞよ! 蔵書を増やせるだけの部屋も、父上の魔術研究の部屋も用意出来るぞよ!」

ハイプリエステス「じゃ! 決まりざますねっ!」

マジシャン「(腹の底からの声で)ちょっと待ち給えぇぇぇッッッ!!!」

 

 バッ!と、右掌をハイプリエステスに突き出し、翳すマジシャン。

 ハイプリエステスとフォーチュンが、同時に彼を視界に映す。

 瞬時に怪訝そうな顔となり、眉を顰めるハイプリエステス。

 

ハイプリエステス「何ざます、そんな大声出して」

マジシャン「(再度大声で)話を勝手に進めるでない!」

ハイプリエステス「マジシャンさんは反対ざますか? フォーチュンの結婚」

マジシャン「(冷静になって、手を下ろし)いや、決して反対ではないのだが・・・」

ハイプリエステス「じゃあ、いいざましょ? 式の日取りも決めて、衣装も選んで・・・」

マジシャン「(再度声を高め)だーかーらー! 私にも意見を求めてはくれんのか!?」

ハイプリエステス「どうぞ、ざます」

マジシャン「あ、うむ。(ゴホン、と一度咳払いをして)フォーチュン、よく聞きなさい。私も、その、何だ、タワーは、良いと思っている」

フォーチュン「(再度笑顔になって)父上も賛成してくれるか! 嬉しいのう!」

マジシャン「ま、まあ、賛成は賛成なのだが・・・話が、いきなりだったもので、な、その・・・」

ハイプリエステス「(割り込み)神殿の予約もしておくざますね」

マジシャン「(またも大声で)私の話はまだ途中であーる!」

ハイプリエステス「もう、簡潔に言ってほしいざますよ。折角の娘の晴れ舞台ざますもの。いろいろ考えたいざます。フォーチュンだって、早く決めたい気持ちもあるざましょ?」

フォーチュン「そうじゃのう。やはり、決めるものを決めておきたいぞよ」

マジシャン「(言葉を選ぶように)だが、少し、急き過ぎ、ではないのか?」

ハイプリエステス「善は急げ、ざましょ?」

マジシャン「急がば回れ、とも言うであーる」

ハイプリエステス「(ムッ、として)思い立ったが吉日、とも言うざますよ?」

マジシャン「(ムッ、として)急いては事をし損ずる、とも言うであーるぞ?」

ハイプリエステス「(カチーン!ときて)・・・好機逸すべからず、とも言うざますよ!」

マジシャン「(カチーン!ときて)・・・待てば海路の日和あり、とも言うであーる!」

 

 ガタ、ガタ、と続け様に椅子から立ち上がるマジシャンとハイプリエステス。

 テーブルを挟んで、凄まじい眼光を飛ばして睨み合う。

 [効果映像]背後に、ゴオッ!と燃え上がる炎。

 

【N】「ラウンド1・・・(高らかに)ファイッ!!!」

 

 [効果音]カ―――ンッ!!!と、ゴングの音。

 

ハイプリエステス「あなたは娘の幸せを願ってないざますかっ!」

マジシャン「そんな訳がなかろう! フォーチュンが幸せになるのが至上の歓びであーる!」

ハイプリエステス「だったら希望を叶えてあげるのが! 親の役割ざましょ!?」

マジシャン「それは当然であーる! しかし物事には順序というものが・・・」

ハイプリエステス「だから順序よく打ち合わそうとしているざますよ! マジシャンさんが入ってくるのが遅いんざます!」

マジシャン「遅くはなーい! あなたが早過ぎるのだ! プリエステス!」

 

 喧々囂々と言い争いを始めたふたりを見詰め、肩をすぼめるフォーチュン。

 

フォーチュン「(はぁ、と溜め息を吐き)・・・まーた始まりおった・・・こうなると長いからのう・・・」

 

 フォーチュン、くる、と振り向き、部屋のチェストの引き出しから、紙と鉛筆を取り出す。

 棚の上で、数行の文章を書き、鉛筆を仕舞って引き出しを閉める。

 紙をテーブルの端に置くフォーチュン。

 言い合いをしているマジシャンとハイプリエステス、まったくそれに気が付いていない。

 再度、はあ、と吐息をつき、玄関の扉を開けて外に出るフォーチュン。

 部屋の中で途切れることなく続く、ふたりの言葉の応酬。

 フォーチュン、扉を閉めて、庭の片隅に陣取るタワーに近寄る。

 片膝を着いたタワー、右腕に止まる二羽の鳥を見詰めている。

 その鳥は仲睦まじい様子で、嘴をつつき合っている。

 歩み寄りながら、自然と微笑むフォーチュン。

 彼女が近付いてきたのを察知して、チチチ・・・と鳴き声を残して飛び立つ鳥たち。

 フォーチュンに、顔を向けるタワー。

 

フォーチュン「タワー、出掛けるぞよ」

タワー「(怪訝そうに)・・・ドウカ、シタ、ノカ?」

フォーチュン「父上と母上が始めよった。書き置きはしてきたんでな、神殿に行くとするぞよ」

タワー「(頷いて)ター・・・ワー・・・」

 

 

★ 神殿・ハイエロファントの居室

 

 ハイエロファント、執務机に向かって座り、両手を卓上で組んでいる。

 デス、机と直角の位置で椅子に腰を下ろし、足を組んでいる。

 机の向かい、ハイエロファントの正面に用意された椅子に、姿勢よく座しているフォーチュン。

 ハイエロファントとデスは、フォーチュンを見詰めている。

 

フォーチュン「・・・と、いう訳じゃ」

デス「(ふう、と息をつき)・・・相変わらずだな、あのふたりは」

ハイエロファント「(微笑んで)いつものことだけどね」

 

 腕組みをして、眼前のふたりを交互に見るフォーチュン。

 

フォーチュン「そなたたちは、喧嘩とか口論とか、しとらんのか?」

デス「(さも当然の表情で)したこともない。第一、ハイエロファントが諍いや争いを嫌ってるんだ。何を好き好んでする必要がある?」

フォーチュン「まあ、そなたはそうであろうな」

ハイエロファント「僕が時たま、大声を出しちゃったことはあるけどね」

デス「(ハイエロファントを見詰め)あれはあたしに言い聞かせる為だろ? 言って当然のことだ」

フォーチュン「聞くまでもなかったのう・・・(笑顔で)そなたたちらしいわ」

 

 眼差しを交わすデスとハイエロファント。微笑み合う。

 フォーチュン、はああ・・・と長い溜め息をついて、瞼を半分閉じる。

 

フォーチュン「それにしても、父上も母上も、何かにつけては熱くなりよる。わらわの幼少の時からああでな、一度始まったら早々には終わらん。困ったものじゃ・・・」

ハイエロファント「フォーチュンはそれを横で聞いてて、嫌な気分になった?」

フォーチュン「(首を左右に振り)いいや、あれだけ言い合ってるのを聞いとっても、不思議と嫌な気にならん」

ハイエロファント「だろうね。だってあれは、ふたりの“会話”だからね」

フォーチュン「“会話”などという、生やさしいものではなかろう? ほとんど闘いじゃ」

ハイエロファント「確かに、ね。でも、お互いの一番深い部分を、言葉に乗せて交流している気がするよ。楽しんでいるんだ。以前からああだったし、それがふたりの絆を育ててきたんだと思う。マジシャンとプリエステスだけの・・・ふたりにしか出来ない“会話”だと、僕は考えている」

 

 視線を伏せ、少し考えているフォーチュン。

 間を置かず目を前に向け、安堵したような顔となる。

 

フォーチュン「そうじゃな・・・そう思えるぞよ」

 

 フォーチュン、おもむろに右手の人差し指で、ぽり、と右頬を掻く。

 

フォーチュン「しっかし、せめて娘の前では少し控えてほしいものじゃ。式の最中にでもに始めおったら、恥ずかしゅうて堪らん」

デス「(呆れたように)流石にそこまではしないだろ?」

フォーチュン「いいや、判らんぞよ。ふたりともああなると、見事に周りが見えなくなるからのう」

デス「その時は、タワーの中に移動して続きをやってもらうといい」

フォーチュン「(苦笑いで)新婦の両親を中座させるつもりかえ。それにタワーは新郎じゃぞ。便利な防音室ではないわ」

ハイエロファント「大丈夫だと思うよ。ふたりとも君の両親だから、ね」

フォーチュン「今までが今までじゃから、一抹の不安はあるがのう・・・(思い出したように)ああ、それとじゃ、式の日取りとか、今ここで決めてもよいか?」

ハイエロファント「それは、家族全員で話し合ってから、だよ。みんなで納得して日程を決めてきてほしい」

フォーチュン「(頷いて)判ったぞよ。それとは別に、じゃが・・・頼みがある」

ハイエロファント「何?」

フォーチュン「エロファントは司祭として式を取り仕切ってもらうからよいとして・・・(デスを見て、真剣な表情で)デス、そなたにも参列してほしいのじゃ」

デス「(驚いて、息を飲み)あたし!? あたしに? 参列しろ、と言うのか!?」

フォーチュン「そうじゃ」

デス「(高めの声で)あたしは死神だぞ! 相応しくないだろ?」

フォーチュン「そうは思わんぞよ。それに、デス、既婚なのに何を今更なことを言うておる?」

デス「(頬を染め)・・・や、あれはあたし自身の式だったし、当初はハイエロファントとふたりだけで挙げる筈だったし、参列者が来ることは知らなかったし・・・」

フォーチュン「まあ、ワールドに一杯食わされた感がなきにしもあらず、じゃがのう・・・(引き締まった声色で)それとは別にじゃ、わらわとタワーで話しおうたんじゃ。そなたたちふたりには、是非とも、わらわたちの門出に立ち会うてもらいたい、のでな・・・」

 

 きっ、と真剣そのものの表情で背筋を伸ばし、両手を膝に着けて腕を張るフォーチュン。

 

フォーチュン「そなたとエロファントがおったからこそ・・・そなたたちふたりの繫がりがあってこそ、わらわはタワーと夫婦になれるのじゃし、父上と母上の元に帰れたのでな。じゃから・・・」

 

 ガバッ!と、膝に額が付きそうになるくらい、深々と頭を下げるフォーチュン。

 

フォーチュン「(切実な声で)この通りじゃ! 何卒参列してはくれまいか!?」

 

 デス、彼女とハイエロファントを交互に見て、戸惑いを露わにする。

 どう対応していいのか判らないような、答えに窮している表情。

 じっ、とデスを見詰めているハイエロファント。

 僅かの、後。

 ハイエロファント、にこ、と柔らかい微笑みををデスに送る。

 

ハイエロファント「それじゃあ、デスには、僕の式進行を手伝ってもらうことにしようか」

デス「(目を丸くして)えっ?」

ハイエロファント「本当は如何なる式典も、主司祭と副司祭がいた方がいいんだ。デスは死神として、日々忙しいのは重々承知しているんだけど、どうかな? 今回はフォーチュンとタワーの結婚式だからね、本人のたっての希望もあるし、一緒に式を進行してほしい」

デス「(一度口元を結び)・・・いいのか? 祝典など参列すらしたことがない。何も判らないぞ」

ハイエロファント「大丈夫、全部教えるから。それに、大体は僕たちで挙げた式次第と変わらないよ」

デス「ああ・・・あんな感じか」

 

 デス、口元に右手を当て、目線を少し伏せて自分の挙式を思い出している。

 暫くの、間。

 暫くの、間。

 未だに頭を垂れて身動ぎもしないフォーチュン。

 彼女の姿を目に焼き付けるように凝視し、フッ、と笑みを浮かべるデス。

 

デス「(大きく頷いて)・・・判った。ハイエロファントの補佐としてなら、式に立ち会おう」

フォーチュン「(バッ、と顔を上げ)真かっ! 引き受けてくれるか!?」

デス「ああ、二言はない」

フォーチュン「ありがたい! よろしく頼むぞよ!」

 

 フォーチュン、数回、繰り返し頭を上下させる。

 そして身体を起こし、椅子に座り直してデスに目線を繋げる。

 

フォーチュン「それにしても・・・デスにとって、エロファントの言葉は何よりも重いのう。金言であり、至言であり、絶対なのじゃな」

デス「(赤くなり)当たり前だ」

フォーチュン「そなたたちみたいな夫婦になりたいのう、わらわとタワーも。手本にしてもよいか?」

ハイエロファント「僕たちよりも、君のご両親が一番のお手本だと思うよ。ずっと育ててもらってふたりを見てきて、いいな、とか、嬉しいな、と思ったこと・・・君が受けてきた恩恵を、そのまま、君とタワーに反映すればいいんじゃないかな」

 

 両目を閉じるフォーチュン。

 何かを噛み締めるように、思いを巡らせている様子。

 ゆっくりと瞼を開き、静かな微笑みを浮かべる。

 

フォーチュン「そうじゃのう・・・その通りかも知れん・・・」

 

 

★ 神殿・前庭

 

 太陽が燦々と、前庭の芝と石畳に降り注いている。

 神殿建屋内から、歩み出てくるフォーチュン、ハイエロファントとデス。

 前庭の右手側に、片膝を着いて座っているタワー。

 そのすぐ手前に、タワーを見上げて、彼と何事かの会話をしているマジシャンとハイプリエステス。

 

デス「(フッ、と笑って)来てたな。いつもの遣り合いは終わってるようだ」

ハイエロファント「(笑顔で)そうだね。フォーチュンが心配で、ここまで来てくれたんだよ」

 

 フォーチュン、軽やかな足取りで石段を駆け下りる。

 マジシャンとハイプリエステス、それに気が付き、振り向いて、大急ぎで走り寄ってくる。

 

マジシャン・ハイプリエステス「「(心配げに)フォーチュン!」」

 

 立ち止まって、両手の甲を腰に当て、やや胸を張るフォーチュン。

 向かい合って立つ、親子。

 

フォーチュン「書き置きはしておった筈じゃぞ。すぐに戻るつもり、じゃとな」

ハイプリエステス「でも、待っていられなかったざますよ」

マジシャン「その通りであーる。話も途中のままであったので、な」

 

 フォーチュンの隣にデスが、デスの隣にハイエロファントが並ぶ。

 ふたりに身体を向けて、神妙な顔になるマジシャンとハイプリエステス。

 申し訳なさそうな視線で、ぺこり、と頭を伏せる。

 

マジシャン「いきなりで、騒がせてしまった。すまなかったであーる」

ハイプリエステス「ごめんなさいざますね、エロファントさん、デスさん。フォーチュンから事の次第はお耳にされてるとは思うざますが・・・」

デス「ああ、話は聞いた」

ハイエロファント「フォーチュンとタワーが結婚式を挙げたい、ってことでいいんだよね?」

デス「それよりまず、お前ら・・・フォーチュンに言うべきことがあるだろ?」

 

 思わず顔を見合わせて、バツが悪そうな表情で目線を絡めるマジシャンとハイプリエステス。

 すぐにフォーチュンに身体を向け、同時に頭を下げる。

 

マジシャン「フォーチュン、悪かった・・・言い合いを始めるつもりではなかったのであーるが・・・許しておくれ・・・」

ハイプリエステス「ごめんなさいざます・・・熱くなり過ぎたざます・・・」

フォーチュン「いいのじゃ、気にせんで。父上と母上が仲良いからああなるのは、解っておる。それに、わらわも急に話を振ったのも悪いんじゃ。青天の霹靂、だったのう」

マジシャン「(顔を上げ)確かにそうだが・・・(ハッ、として)いやいや、私も動揺し過ぎた。親として反省せねばいかんのであーる」

 

 ハイプリエステスも顔を戻し、マジシャンの横顔に視線を送る。

 マジシャンが眼差しを絡め、両手を後ろ手に組む。

 一度、コクリ、と頷き合うふたり。

 それから、揺るぎのない目線をフォーチュンに結ぶ。

 

マジシャン「フォーチュン、結論を言おう・・・(真摯な声で)お前の幸せが、何よりの望みだ。私とプリエステスの願いだ。だから・・・認めよう、タワーとの婚姻を」

ハイプリエステス「(優しく微笑んで)引っ越しの件は、今後じっくり話すざます。なるべく、あなたの望むようにしたいと思ってるざますよ。マジシャンさんもわたくしも、ね」

マジシャン「(優しい笑顔で)・・・誰よりも幸せに、おなり」

 

 両方の眼を、ゆっくりと正円に見開くフォーチュン。

 融けるような笑みを、徐々に浮かべ始める。

 瞳が、虹色の潤いで輝く。

 

フォーチュン「(歓喜に溢れ)父上・・・母上・・・」

 

 ぶるっ、と全身を震わせ、ぐっ、と口元を引き締めて口角を緩める。

 直後。

 タッ、ターンッ!と石畳を蹴って、両親の胸に飛び込むフォーチュン。

 右腕をハイプリエステス、左腕をマジシャンに回し、ふたりの間に顔を潜らせる。

 驚いて、娘を見詰めるマジシャンとハイプリエステス。

 フォーチュン、破顔一笑。

 

フォーチュン「(至上の歓びを込め)大っっっっっ好きじゃっ!!!」

 

 今まで想いを両腕に注ぎ、ギュウッ・・・とふたりを抱き締めるフォーチュン。

 同時に満面の笑みを浮かべる、マジシャンとハイプリエステス。

 そ・・・と、娘の背中に手を添え、抱き返す。

 暫く、そのまま。

 尚も、そのまま。

 3人を視界に映し、優しい微笑みを浮かべるハイエロファントとデス。

 静かに身体を戻す、フォーチュン、マジシャンとハイプリエステス。

 もう一度小さく頷いてから、タワーに駆け寄るフォーチュン。

 タワーの左眼が、キラ、と虹色の彩りを帯びる。

 ズゥ、と右掌を芝に着け、フォーチュンが跳び乗ったと同時に腕を上げていく。

 フォーチュン、タワーの眼前まで来た時に、ガバッ!と彼の顔に抱き着く。

 

フォーチュン「タワー! わらわたちは夫婦になるぞよ!」

タワー「(重厚だが、嬉しそうに)フォーチュンサマ・・・ワタシ・・・ウレシイ・・・」

フォーチュン「(満面の笑みで、愛しさを込め)最高の家庭を築くのじゃ! そして、父上と母上のような、最高の夫婦になろうぞ!」

タワー「(愛おし気に)ター・・・ワー・・・」

 

 至近距離で眼差しを絡め合っている、フォーチュンとタワー。

 肩を並べて、ふたりを見上げながら、柔和な笑顔を向けているマジシャンとハイプリエステス。

 その後方、4人を見詰めて、安堵したように顔を見合わせるデスとハイエロファント。

 

デス「フォーチュンとタワーは、数千年の同じ時を過ごして尚、共に生きる道を選んだんだな」

ハイエロファント「そうだね。僕たちとはまた違った、一緒に歩んでいく運命、なんだね」

 

 デスとハイエロファント、微笑みを交わしてから、フォーチュンとタワーを見詰める。

 

【N】「この世界は、マジカルランド。彼女は、マジカルランドに暮らす者の運命を司る女神。名は、フォーチュン。真の名を『ホイール・オブ・フォーチュン』、別名『運命の輪』という。見た目は幼い少女だが、齢1万と14歳。マジカルランド創生より永い時を生きている。この日より程なくして、フォーチュンとタワーは、ハイエロファントとデスを司祭として華燭の典を挙げ、永遠を誓うことになるのだが、それはまた後日の話である」

 

 

外伝【 おお、運命の女神よ Episode of Fortune : 了 】

 

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