デスとハイエロファントの物語:REBOOT 外伝・番外編集   作:桁石スミオ

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「マジカルドロップⅢ」「マジカルドロップポケット」「マジカルドロップV」より、ジャスティス、デスとハイエロファント主役。本編『しりぞけ、もの悲しき影』以降、及び外伝『おお、運命の女神よ』以後の外伝として執筆。2020年9月脱稿。ゲーム中に登場しないマジックアイテムが登場し、主軸となっております。
 登場人物:ジャスティス、デスとハイエロファント、エンペラー、ストレングス、及び隠しキャラ1名
注:小説ではなく、台本形式読み物です。

 同一内容を、pixivにも掲載してあります。
 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13753543


【挿絵表示】



正義の恋 ― Episode of Justice ー 【第一話】

デスとハイエロファントの物語:REBOOT

外伝【 正義の恋 Episode of Justice 】

 

 

★ (場所・時間不明)

 

 虹色に輝く空間。足元に靄が掛かっている。

 風景は何もない。ただ七色の輝きが満たされている。

 ぼんやり、と佇んでいるジャスティス。辺りを、ぐるり、と見渡す。

 ハッ、と誰かの気配。振り向くと、デスが立っている。

 穏やかで静かな雰囲気のデス、じっ、とこちらを見詰めている。

 身体を彼女に正対させるジャスティス。胸元に両掌を上げて組み、ぎゅっ、と握って見詰め返す。

 ジャスティス、やがて刹那そうな表情を湛える。

 暫くの、間。

 

ジャスティス「(潤んだ目で)デス・・・」

デス「(ふっ、と微笑んで)そんな悲しそうな顔するな」

 

 数歩ジャスティスに近付き、すっ、と右腕で彼女を引き寄せるデス。

 デスの肩口に頬が当たり、ポオッ、と上気していくジャスティス。

 

デス「今は・・・こうしていろ・・・」

 

 頷き、両瞼を閉じるジャスティス。穏やかで嬉しそうな微笑みを浮かべる。

 重なったままのふたりの影。虹色の輝きの中で反転し、やがて融けるように消えていく。

 空間全体が段々と照度を落としていき、暗転。

 暫くの、間。そして静寂。

 静寂。

 静寂。

 

 

★ 街中・ジャスティスの家

 

 コケコッコーッ!と、甲高い鶏の鳴き声。家の外から響く。

 半開きの瞼で、ボーッ・・・とベッドに上半身を起こしている、パジャマ姿のジャスティス。

 いつものポニーテイルの髪型は解かれ、肩付近まで髪が垂れている。

 暫く、そのまま。

 徐々に意識が明瞭になっていくジャスティス。瞳に光が宿っていく。

 そして、ふううう、と大きく長い溜め息を一度つく。

 

ジャスティス「(呼吸を整えながら)・・・何、今の?・・・夢?」

 

 スッ、と両掌を上にして胸元に掲げ、掌の中心辺りに目線を落とす。

 

ジャスティス《夢・・・夢だったんだ・・・》

 

 一瞬、夢の中でのデスの姿が、鮮やかにジャスティスの脳裏に蘇る。

 デスに触れたような感覚に襲われ、ビクッ、と指先が反応する。

 やがて、それが実際のものではないと自覚し、両腕をベッドにゆっくりと下げるジャスティス。

 

ジャスティス《だよね・・・デスがボクに、あんな・・・》

 

 ぎゅっ、とベッドのシーツを両手で握り込むジャスティス。

 唇を噛み締め、物憂げに前方の宙に視線を投げる。

 

ジャスティス「(抑揚のない声で)あんなに・・・優しい声・・・なんて・・・」

 

 ジャスティス、顔を伏せ、両目を閉じる。肩口から髪が前に揺らぐ。

 沈黙。

 沈黙。

 コッコーッ!と、勇ましい調子の、二度目の鶏の声が外から聞こえる。

 

 

★ 森の道

 

 太陽は天頂。厚めの白い雲が多数流れ、時折太陽を覆いながら移動している。

 いつもの平静さを保った様子のジャスティス、左右に樹々が繁る森の道を歩く。

 ふと、前方に人影。相手はこちらの方向に歩いて来る。

 段々と明確になってくる姿。泥鰌髭を軽やかに撫で、腰に手を当てて無暗に堂々とした歩きっぷり。

 ジャスティス、それに気付いて足を停める。

 

ジャスティス「あ! エンペラー!」

エンペラー「あら! ジャス子じゃないの。相変わらず巡回? ごくろーさま」

ジャスティス「(胡散臭そうに)何処に行くつもり?」

エンペラー「(フン、と鼻で嗤い)何処に行こうがアタシの勝手じゃない」

 

 ギロリ、と憤りを圧縮したような鋭利な目線を投げるジャスティス。

 

エンペラー「(不満気に)あ・の・ね! 毎回そんなに睨むの止めてくれない? アタシが何したってのよ?」

 

 突然。

 無言のまま、スラリ、と背中の大剣を抜き、剣先をエンペラーに向けるジャスティス。

 

エンペラー「(真剣に怯え)ヒィイイイ!!!」

ジャスティス「(怒気)・・・キミがデスに仕出かしたコト・・・もう忘れたとは言わせないよ?」

エンペラー「だからそれはアタシがコテンパンにやっつけられて・・・(大剣の刃が、ギラッ、と光り)ああもうっ! お願いだから剣を仕舞ってよっ!」

ジャスティス「デスに謝ったの?」

エンペラー「謝るワケないじゃない?」

 

 直後。

 ジャスティス、流れるような動作で大剣を真横に持ち替え、ダン!と一歩踏み込む。

 大剣の刃が、エンペラーの喉仏付近に直角に当てられる。

 爛々と怒りの炎を両の瞳に燃え上がらせ、奥歯を、ギリィッ、と噛み締めるジャスティス。

 

エンペラー「(絶叫)ヒィエエエッ!!! お助けェェェェ!!!」

ジャスティス「(腹の底から)エロファントは許したかも知れないけど! ボクは絶対に許さない!」

エンペラー「何でよォッ! 何であンたがそんなに死神に肩入れしてんのよォ! 大体あンたと死神はずっと闘ってたじゃないの! 死神は悪だ、死神は倒す、って散々言ってたのに! 何よ今更!」

ジャスティス「そんなの! デスを大好きになったからに決まってるじゃないかっ!」

 

 途端。

 ジャスティス、はっ、と自分の発言を認識する。

 エンペラー、凍て付いたように目線をジャスティスに繋げる。

 沈黙。

 沈黙。

 更に、沈黙。

 正円に近いくらい見開かれていく、ジャスティスの両眼。

 大剣が下ろされ、ジャスティスが左掌で口元を覆う。

 

ジャスティス「(茫然と)・・・あ・・・」

エンペラー「(呆気に取られ)ジャス子・・・あンた・・・今、何て・・・」

 

 ジャスティスの台詞に、信じ難いというような顔をしているエンペラー。

 一息の、後。

 今度はエンペラーの両目が、カッ、と大きく開かれる。

 

エンペラー「(心底驚き)ええええええっっっっ!!! あンた! 死神のコト! す・・・」

ジャスティス「(沸騰したように湯気を出し、赤面)わあああああっっっ!!! 言うな! 言うなぁっ!!!」

 

 エンペラーに対して半身の姿勢で、左手を、ブンブン、と左右に振りまくるジャスティス。

 その動作をひとしきり眺め、ニイッ、と笑い、目を細めるエンペラー。

 

エンペラー「なーるーほーどーねー! 惚れちゃったワケね! 死神に!」

 

 何やら勝ち誇ったように胸を張り、フンム!と鼻息をつくエンペラー。

 ジャスティス、いきなり、ドサ、と両膝を地に落として、両手も地に着けて、ガックリ・・・と項垂れる。

 彼女の頭部に、どよ~ん・・・と暗い影が降りてくる。

 

ジャスティス「(絶望的な声)終わりだ・・・よりによってエンペラーなんかに知られた・・・」

エンペラー「失礼ね。なんか、とは何よ。(腕組みをして、感心したように)しっかし、超絶生真面目でウブで色恋とは無縁かと思ってたケド、あンたも恋心なんてあったのねぇ」

 

 尚も同じ姿勢で、返す言葉も出ないジャスティス。

 ふう、と短い息を一度継ぐエンペラー。

 

エンペラー「ジャス子、ちょーっと時間あるかしらん?」

ジャスティス「(顔だけ上げ、据えた目で、上目遣いで)・・・何だよ、からかわれる時間まで付き合ってらんないよ」

エンペラー「からかうだなんて、心外ね。話くらい聞いたげるわよ」

 

 

★ マジカルランド上空

 

 緩やかに流れていく多くの白い雲。

 傾きかけた太陽を時折隠しながら流れていく。

 その太陽に、丸く黒い影が徐々に掛かっていき、やがて4分の1を覆うまでとなる。

 だが地上から見ると、雲に隠されてほとんど判らない。

 

 

★ 森の外れ・草原のほとり

 

 先程話をしていた森の道から、数分ほどにある開けた草原。

 森との境近くにある、腰ほどの高さの岩に腰を下ろしているジャスティス。

 目線を落とし気味にして、膝の上で両手を、ギュッ、と拳にして、淡々と話をしている模様。

 その真正面に立ち、エンペラーが腕組みをして、何度も頷きながらそれを聞いている。

 ジャスティス、一通り話を終えた様子で、ふううう、と長い溜め息をつく。

 

エンペラー「へぇー、そうだったのねぇ。何がキッカケになるか判らないものね」

ジャスティス「(ギッ、と睨み)絶対言わないでよね、誰にも」

エンペラー「さーてーねー・・・どーしましょうかねー」

ジャスティス「(怒声)エンペラー!」

エンペラー「(苦笑して)嘘、嘘、言わないどくわよ。取り敢えず」

ジャスティス「(一層の怒声)取り敢えずって何だよ! (頭を抱え込んで)もうっ! やっぱ話すんじゃなかったよ! デスに知られたらお終いだよ!」

エンペラー「別に知られてもいいんじゃないの? 何も悪いコトしてるワケじゃなし」

ジャスティス「(顔を上げて)いい訳ないじゃないか! エロファントに申し訳ないよ!」

エンペラー「(疑念混じりの声で)折角の恋心なのに、否定するワケ?」

ジャスティス「(消え入りそうに)いや・・・否定するとかしないとかじゃなくてさ・・・」

エンペラー「(誇らしげに)アタシはね、エロファントちゃんと死神が結婚しても、エロファントちゃんへの気持ちは変わらないわよ。(胸を張って)むしろ一層惚れ込んじゃったものねっ!」

ジャスティス「(ジト目で)・・・キミは少し遠慮しといた方がいいんだケド・・・」

 

 腕組みを解き、腰に手を当てて、グッ、と顔を近寄せるエンペラー。

 

エンペラー「でも・・・苦しくても(晴れやかな笑みで)恋はイイ物よ! ジャス子!」

ジャスティス「(唖然として)・・・は?」

 

 エンペラー、突然その場で、くるうり、と身体を翻して一回転する。

 そして、ビシィッ!と右手人差し指を垂直に立て、ジャスティスに向ける。

 

エンペラー「そう! 恋は自分を高めるの! カッコ良くありたい! キレイでありたい! 可愛くありたい! そして何より! (両腕を翼のように広げ、伸びのある声で)美しくありたーい! これがイイ物でない筈ないでしょ!」

 

 眼を大きく正円に近くして、ポカン、と唇を開けているジャスティス。

 暫くの、間。

 更に、間。

 

ジャスティス「(感心したように)驚いたなー・・・エンペラーが真面なコト言ってるよ」

エンペラー「(怒って)しっっっっつれいねぇッ!!! あンたどんだけアタシを下に見てンのよ!」」

ジャスティス「まあ・・・キミの言ってるコト・・・(小さく頷き)その通りだと思うよ。悪い物じゃないと、思ってる」

エンペラー「でしょー! だったら素直に認めて、死神に告白しちゃいなさいよ」

ジャスティス「(首を左右に振り)それはしないし、出来ないよ。(ハッ、として)まさか、ボクを煽って・・・(ジロ、と睨み)その隙にエロファントを自分のモノにしようってんじゃないだろうね?」

エンペラー「(ブンブン、と頭を横に振り)イヤイヤイヤ! そんなんやったら命がいくつあっても足りないわよッ! 流石にアタシも学習能力くらいあるわよん!」

ジャスティス「・・・まあ確かに、あれ以来余計なちょっかいは出してないみたいだケド」

謎の声[(遠くから)結局は失敗しよった。無能にも程がある、ゾ・・・]

エンペラー「無能とは失礼ね。アイテムだって使いこなしたし、そこそこ能力は・・・」

 

 はた、と何かに気が付くエンペラー。

 少し、沈黙。

 

エンペラー「(疑念溢れた声で)・・・ジャス子、あンた、無能とか言った?」

ジャスティス「(驚いて)え? 言ってないよ。自分で言ったんじゃない?」

謎の声[この男は言ってない。言ったのは我輩、ゾ]

 

 何処かから、誰のものとも知れない声がふたりに届く。

 ゾク、と例えようのない寒気が、一瞬ジャスティスの背後を駆け上る。

 エンペラー、ひたすらキョロキョロと周囲を見回す。

 

ジャスティス「・・・聞いたコトない声・・・誰?」

エンペラー「(サアッ、と血の気が引き)・・・まさか!・・・」

謎の声[ホォ、聞こえてるらしいな。まあそう怯えることはない、ゾ」

 

 地の底から響くように、あるいは天の片隅から落ちるように、声がする。

 岩から跳び退くように降り、ザシュッ!と背中の大剣を引き抜いて、正眼に構えるジャスティス。

 

ジャスティス「(ギン!と声のした方を睨み)誰だっ! 出て来いっ!」

謎の声「(嘲笑)ムシュシュシュ・・・血気に逸っているな、戦士よ。そこの男では失敗したが、貴様の能力・・・使えると見たゾ!」

ジャスティス「何を言っている! 姿を現せっ!」

 

 一方、蒼褪めた表情のエンペラー、拳を握り締めて虚空を見詰めるような目線を投げている。

 

エンペラー「(唇を震わせ)こ、この声・・・アタシが『小アルカナのカード』を渡された時の声!」

ジャスティス「(思わずエンペラーに目線を投げ)ええっ!」

謎の声[喰らえッ!]

 

 途端。

 中空に、怪しく紫色に鈍く光る火球が出現。

 ふたりが気付くより早く、ジャスティスに激突する。

 ズッドオオオオン!!!と、火柱が噴き上がり、バチバチバチッ!と雷撃に覆われるジャスティス。

 

ジャスティス「(絶叫)うあああああっっっ!!!」

エンペラー「(驚愕)ジャス子ッ!!!」

 

 一瞬、跳ね上がるように浮かぶジャスティス。苦痛に顔を歪める。

 そのまま彼女の身体が、大剣を正面で構えたまま宙で留まる。

 眼を丸くしているエンペラーの前で、火柱が鈍い光の帯へと変化していく。

 ジャスティスの表情が解ける。緩やかに素の顔へと戻っていく。

 しかし、感情がすべて欠落したような、能面の如き無表情。

 両目は大きく開けられたまま、瞬きひとつしていない。

 その瞳は、どす黒く濁った紫の光を放つ。

 更に、同色の光の帯がオーラ状となって全身を覆う。

 それはジャスティスから湯気のように、ゆらあ、と立ち上っている。

 

エンペラー「・・・ちょ、ちょっと・・・ジャス子・・・?」

 

 かつて見たことのない異様な状態に、思考が追い付いてこないエンペラー。

 

エンペラー「何? 何? どうしちゃったの?」

 

 エンペラーのこめかみに、つう、と汗が流れる。

 彼は、理解不能の状況に怖れを抱き、数歩後退り、更に距離を取ろうとする。

 途端。

 ジャスティス、視界をエンペラーに向け、すーっ、と漫然とした調子で身体を返してくる。

 表情は、まったくの、無。

 地面よりやや浮いていた足が、重力に従って土に着く。

 次の、瞬間。

 ダアアン!!!と、爆発的な勢いで地面を蹴って、エンペラーとの間合いを詰めるジャスティス。

 大剣を後方に振り被り、エンペラー目掛けて斬撃の弧を描く。 

 

エンペラー「(悲鳴)ああぁぁぁぁぁれぇぇぇぇッッッッ!!!!」

 

 

【 第二話へ続く 】

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