デスとハイエロファントの物語:REBOOT 外伝・番外編集   作:桁石スミオ

15 / 21
正義の恋 ― Episode of Justice ー 【第二話】

★ 街はずれ・森の入り口に近い橋のたもと

 

 街から森へと通ずる、小川に掛かる橋を渡っているデスとハイエロファント。

 デスは大鎌を左肩に掛け、右隣をハイエロファントが両手を後ろに組んで並んで歩いている。

 時折顔を合わせて、何事か会話をしている様子。

 ふと、デスが歩を停める。そして、すっ、と上空に眼差しを向ける。

 すぐに気付いて、隣でデスを見詰めるハイエロファント。

 

ハイエロファント「どうしたの? デス」

デス「(視線をハイエロファントに移し)いや、陽の光がいつもより弱いような気がしてな」

ハイエロファント「今日は雲が多いからね。雨雲じゃなさそうだけど」

デス「それもあるが・・・」

 

 再度、空を見上げようとするデス。

 直後。

 はっ、とデスが森の方向に目を向ける。瞼を半分閉じ、遥か彼方に届くような視線。

 彼女の様子の変化を捉え、ただデスを見詰めているハイエロファント。

 

デス「(眉を顰め)・・・悲鳴が聞こえた」

ハイエロファント「え? 何処から?」

デス「森の奥・・・道を、こっちに向かって来る」

 

 

★ 森の道

 

 バタバタッ! バタバタッ!とマントを猛烈に靡かせ、森の道を街に向けて駆けているエンペラー。

 時折背後を振り返り、また必死の形相で、左右の腕で前方から後方に、水を掻くように回して走っている。

 これ以上出来ないほどの、荒い呼吸。

 

エンペラー「誰かぁぁぁぁぁぁッッッ!!! お救けェェェェ!!!」

 

 

★ 街の端・森の入り口

 

 道の先から、悲鳴混じりの声を耳にするデスとハイエロファント。

 ふたり同時に、少し腰を落として身構え、発声方向を凝視する。

 

デス「(一度口元を引き締め)・・・来る!」

 

 大鎌を眼前に構えて持つデス。

 途端。

 一直線に伸びている道の奥から、一気にふたりの視界まで駆け込んでくるエンペラー。

 互いに姿を確認した距離、約20メートルほど。

 

ハイエロファント「エンペラー!」

エンペラー「(猛烈に息が上がり)たっ、たっ、救けてエロファントちゃん!」

 

 尚もエンペラー、凄まじい走りで向かってくる。

 瞬間の、後。

 ドバァァァンン!!!と、エンペラーが走る道の横の樹木が、爆破されたように破壊される。

 煽られて吹き飛び、地面に転がるエンペラー。

 宙に大量の木屑と葉が、朦々とした土煙を噴き上げて溢れる。

 その爆裂の煙の中から、フワァ、と飛び出してくるジャスティスの姿。

 虚ろな眼がエンペラーを補足し、大剣を大上段から一気に斬り付ける。

 

エンペラー「(大絶叫)ヒィエエエエ――――ッ!!!」

 

 エンペラー、思わず両眼を固く閉じ、身体を丸くして縮まる。

 直後。

 ガシィィィン!と、エンペラーの頭上で金属同士がぶつかる音。

 驚いて目を開け、すぐ傍らを見上げるエンペラー。

 そこには、剣撃の間合いに飛び込み、自分の眼前に大鎌の柄を横に掲げ、大剣を防いだデスの姿。

 キキキキ・・・と大剣の刃と大鎌の柄が擦れ合う高音が鳴る。

 ハイエロファント、息を飲んで、武器を合わせているふたりを目に映す。

 

ハイエロファント「(驚いて)ジャスティス!」

エンペラー「(半泣きで)もう嫌ァ!!!」

 

 エンペラー、跳ね返るような動きで即座に起き上がり、もう片側の大木の陰に隠れる。

 デス、武器越しのジャスティスの顔を凝視する。

 

デス「(目を凝らし)・・・様子がおかしい」

 

 濁った紫色の瞳、感情の欠片も存在しない表情、全身から立ち上る面妖な紫のオーラ。

 

デス《・・・ジャスティスの魂とは質が違う“何か”がいる・・・一体何だ?》

 

 ギギギギ!と、急激に金属音を高める大剣と大鎌。

 ジャスティスが凄まじい力を武器に掛け、デスを押し返そうとする。

 右足を、ズサァ!と後方に引いて、前方に体重を掛けて腕を伸ばすデス。

 尚も増していく加重に、両脚を、ぐうっ、と踏ん張る。

 

デス《何て力だ! これほど圧が強かったか?》

 

 強烈な加圧に、つぅ、と冷や汗が、デスの首筋を流れる。

 キン!と、小さな火花を散らし、ジャスティスの大剣が離れる。

 彼女は武器を後方に一度引き、水平に刃を構える。

 途端。

 間髪を入れず、大剣が真横の軌道を描き、デスに襲い掛かる。

 大鎌を構え直す間も与えられず、タン!と跳ねて後方に距離を取るデス。

 デスのいた空間を薙ぐ大剣。しかし次の瞬間、ヒュイッ!と剣先が翻り、再度デスを狙う。

 更に身体を躱すデス。しかしまた、大剣が空を裂き、デスを執拗に追う。

 切っ先が、ヒュンヒュンヒュン!と唸りを上げて、幾度もデスを斬らんとする。

 その度に、鮮やかな身体の動きで避け続けるデス。目にも留まらぬ速さ。

 ジャスティス、虚ろな目線でそれを追視している。無表情のまま。

 やがて、ブワッ、と大上段に大剣を構えるジャスティス。

 ピタ、と双方の動きが一度停止する。

 直後。

 ジャスティス、一気に大剣を叩き付けるように振り下ろす。

 ふっ、と残像を残して、真横に跳ねるデス。

 ゴッバアアアアアアンンン!!!と、大爆発を起こしたような剣撃。

 延長線上にある高い樹木が、内部から破裂して木っ端微塵に吹き飛ぶ。

 その周囲の樹々数本も、同様に根元から割れ、枝にも亀裂が一瞬で入り、繊維状になって宙を舞う。

 それは、エンペラーが陰に隠れている大木の側面を抉り、猛烈な突風をも起こす。

 ビクウッ!と、全身を硬直させて、白目を剥いて、あんぐり、と口を開けて凍て付くエンペラー。

 ハイエロファント、技を放ったジャスティスの背中を茫然と見詰める。

 デス、ジャスティスの斬撃が放たれた方向を見て、息を飲む。

 今いる付近から延長線上遥か先まで、あらゆる樹々が消滅し、地面が穿たれている。

 更にその奥、尚も奥、幅2メートルほど、約50メートル先の樹木に至るまで、跡形もなく破壊されている。

 

デス《粉々に・・・こんな剣技を繰り出すとは・・・いや、いつものジャスティスとは別だ。ここまでの破壊をする奴じゃない筈・・・》

 

 一瞬、ジャスティスの次の攻撃を伺うデス。

 ジャスティスは大剣を振り下ろした時の格好で、すうっ、と顔を上げてデスを見る。

 無言のまま、まったくの無表情のまま。

 すいっ、とデスが大鎌を一度正面に構えて持ち、軽やかに半身の状態で踵を返す。

 それから、エンペラーが逃げてきた道の奥へと、タン、タン、と跳ねるように距離を置く。

 ジャスティスの虚ろな視線が、デスに固定され続けている。

 

デス「追いて来い! ジャスティス!」

 

 ぶわっ、とマントの裾を、流れるような綺麗な軌跡を描かせ、デスが道を駆け出す。

 間髪入れず、大剣を脇構えにして持ち、ジャスティスがデスの背中を追う。

 タタタタタタタ・・・と、一気に森の深遠部方向に、ふたりの影が離れていく。

 すかさず、タッ、と地面を蹴るハイエロファント。

 

ハイエロファント「(きっ、と視線を前方に向け)行かなきゃ!」

 

 ハイエロファントも、ふたりが向かった森の道を走り始める。

 彼が通り過ぎた刹那、ハッ!と気が付いて大木の陰から顔を覗かせるエンペラー。

 小さくなっていくハイエロファントの背中。既にデスとジャスティスの姿は可視出来ない。

 エンペラー、仰天して、顔を引き攣らせる。

 

エンペラー「ちょ・・・ちょっとエロファントちゃぁん! 置いてかないでェ!」

 

 怯えを隠すことなく全身に漲らせ、自分が逃げてきた道を戻って疾走していくエンペラー。

 

 

★ 森の外れ・草原

 

 先程まで、ジャスティスとエンペラーが会話をしていた草原の入口。

 凄まじい速度で、デスが駆け込んでくる。そのまま一気に草を跳ね上げ、草原中央付近まで疾走する。

 一瞬、背後を見る。ハッ!と驚くデス。

 空中に、身体を大きく弓形に反らせ、大剣を背中辺りまで振り被らせるジャスティスの姿。

 気配も音もしない、超人的な跳躍。

 こちらの背丈より遥かに高い位置。紫色の濁った眼が、デスに繋がれている。

 判断する間もなく、ブオン!と裂空音がして、ジャスティスが大剣を叩き付ける。

 剣先を、真っ直ぐにデスに向けて突き立てようとする。

 攻撃が放たれたのを見極め、ザッ!と草叢を蹴るデス。そのまま横方向に側転。

 デスのいた空間を、ジャスティスの剣先が貫く。

 ズン!と大剣が地面に突き刺さる。

 次の、瞬間。

 ドゴオオオオオオオンンン!!!と大音響を放ち、草原が地中から突き上げられるように揺れる。

 まるで直下型地震の如く地面が跳ねて波打ち、ビリビリビリ・・・と空気が震動する。

 草叢の波紋が、一気に草原全面に拡散する。

 濃い土埃が、同時に湧き立つように漂う。

 足下の揺れに、一度、二度態勢を整え、着地するデス。

 改めてジャスティスを目視する。そして、思わず息を止める。

 そこには、ジャスティスの大剣を中心に、風景が一変している。

 蜘蛛の巣のような、地割れ。

 大剣は抜き身の半分ほど地面に刺さっており、そこから地割れが円周、放射線状に拡がっている。

 地表の草は反転したように捲れ、下の赤茶けた土が曝されている。

 場所によっては深さ1メートルほども抉られた、無残な光景。

 ごくり、と唾を飲み込むデス。

 

デス《(驚嘆)この威力!・・・まるで破壊の神のようだ!》

 

 だが、ジャスティスの動きが、そこで停まっている。

 地面に垂直に減り込んでいる剣を引き抜こうと、グッ、グッ、と力を入れている様子。

 デス、即座に大鎌を後方に翳し、ザシュッ!と草叢を蹴って跳び上がる。

 剣を凝視したまま屈んでいるジャスティスへ、一息のもとに刃を振り抜く。

 斬撃が半月の軌道を描き、彼女の肩口へと届く。

 しかし、大鎌は何物も斬ることなく、空のみを裂く。

 ジャスティスの姿が、残像となりそこに留まっている。

 武器を振り切ったままの姿勢で、白目を大きく開くデス。

 フッ、と背後に気配。

 デス、眼の端で補足する。大剣を脇構えにして向かってくるジャスティス。

 

デス「(驚愕)速い!」

 

 慌てて大鎌を構え直し、正対しようと身体を返すデス。

 直後。

 大剣の柄頭を、渾身の力で叩き込むジャスティス。

 ボグォ!と、デスの腹部に命中。デスの背中側の空気まで震動する威力。

 

デス「(両眼を、カッ、と見開き)がはっ!」

 

 デスの腹部からせり上がってくる、焼き付く痛み。

 ジャスティス、目にも留まらぬ動作で大剣を引き、再度デスの腹部目掛けて柄頭を撃つ。

 ボッゴォン!!!と、先程よりも格段に凄まじい打撲。

 今度はそれに合わせて、ジャスティスが跳躍し、デスの身体ごと宙へと浮かぶ。

 砲弾の軌跡のような放物線を描く、ふたり。

 デスが仰向け、ジャスティスが彼女に覆い被さるようになり、引力の法則に従って落下する。

 背中から地面に叩き付けられるデス。顔の前で構えたままの大鎌を持つ両手を、思い切り握る。

 

デス「(痛みで顔を顰め、一度瞼を固く閉じ)くっ!」

 

 再び目を開けるデス。

 そこには、自分に跨って起立し、大剣を天頂に向けて翳しているジャスティス。

 虚空の瞳が、何の感覚も存在しないかの如く、デスを見下ろす。

 大剣の刃がデスに向けて振り下ろされようとした、刹那。

 

ハイエロファント「(腹の底からの声)ミラクルビームっっっ!!!」

 

 ドン!と衝撃音を放ち、空間を劈く純白の光線。

 ジャスティスの背中側、森の入口の方面から一気に届く、直径50センチほどの光の直線。

 大剣の柄付近に激突し、一度球形を成してから、バン!と破裂する。

 ジャスティスの両手から弾かれ、数メートル飛んで草叢に落下する大剣。

 一瞬足元の方向に視線を移すデス。かなり離れた位置に、ハイエロファントの姿を確認。

 彼は両脚を肩幅に広げ、バクルス(司教杖)の端部、青い宝玉の付いている方をこちらに向けている。

 デス、安心したような、微かな笑みを浮かべる。

 改めてジャスティスに目線を戻し、はっ!と息を飲む。

 ジャスティスの上半身が、ハイエロファントの放った光線と同じ色に、ぼんやりと光る。

 先程まで彼女を覆っていた紫色のオーラが、人型を形成して、ジャスティスから離されようとしている。

 ジャスティスの両目は閉じられ、だら、と両腕は前方に垂らされる。

 機会を逃すことなく、スイッ、とジャスティスの足下から脱出するデス。

 スタン! タタッ!と軽やかに土を蹴り、ハイエロファントの元へ駆け寄る。

 ジャスティスの半身にあった白い光、雲散霧消。

 同時に、隔離されようとしていた紫の影、ヒュッ、と再び彼女の身体に吸い込まれる。

 再度立ち上り始める、同色のオーラ。

 緩やかにジャスティスの両眼が開き、再び暗く濁った紫の瞳が現れる。

 顔を上げ、大剣が草叢に落ちているのを目に留めると、ヒュイッ!と取りに走るジャスティス。

 ハイエロファントのすぐ傍らに到着し、短く笑顔を向けるデス。

 デスを見詰め、一旦バクルスを持った腕を下ろし、笑顔を返すハイエロファント。

 並んで立ち、草原の中央を向き、腰を少し落として得物を構える、ふたり。

 

デス「すまない! 救かった!」

ハイエロファント「大丈夫!? 怪我はない!?」

デス「問題ない! それより見たか!? 今の!」

ハイエロファント「うん!」

デス「ジャスティスの中に“何か”がいる・・・理由は解らんが、どうやらそいつは、お前の『聖なる力』でジャスティスから追い出せそうだ」

ハイエロファント「(頷いて)そうみたいだね」

デス「(一瞬、横のハイエロファントを見詰め)もう一度援護を頼む! お前の“間合い”で、だ!」

ハイエロファント「(デスを見詰め返し)判ったよ! 任せてっ!」

 

 間髪入れず、キッ、とジャスティスに視線を繋ぐデス。

 きりっ、とジャスティスに目線を向けるハイエロファント。

 無表情のジャスティス、大剣を拾い上げて、脇構えでこちらに駆けて来ている。

 デス、右足を大きく踏み出し、タッ、と草叢を蹴る。

 左手に持ったバクルスを横に翳して、右掌を広げて添えるハイエロファント。

 

ハイエロファント「聖なる力!」

 

 クワァッ!と純白の光が、ハイエロファントの掌から溢れ、バクルス全体を覆う。

 その間に、距離が詰まっていくデスとジャスティス。

 

デス「(堂々とした声で)来いっ! ジャスティスっ!」

 

 デスの脚が停まる。腰を、ぐっ、と落として、大鎌を正面で構えるデス。

 剣撃の届く位置に到達し、大剣を、ブアッ!と振り翳すジャスティス。

 途端。

 ターンッ!とデスが後方に跳ねる。身体をジャスティスに向けたまま。

 ブオン!と空振りをする大剣。しかしすぐに切っ先が返り、下方向からデスに襲い掛かる。

 再度、タンッ!と草叢から僅かに跳ぶデス。大剣の刃を躱そうとする。

 しかしジャスティス、今度は、振り抜く直前に、ズダンッ!と左足を大きく踏み出して斬り込む。

 デスの口元に、にっ、と小さく笑みが浮かぶ。

 直後。

 大鎌の柄を、ボスッ!と自分の足元左側方、踵の外側目掛けて、思い切り突き刺すデス。

 その反動を利用して地面を蹴り、両脚から全身を、ふわっ、と浮かせる。

 後方上空に全身を丸めるように、くるり、と宙返りして反転していくデス。

 デスの身体が、走り高跳びのような綺麗な跳躍を具現化させる。

 ジャスティスの大剣は完全に振り抜かれ、先端が天空に向けられる。

 開き切った態勢の真正面で、デスの姿がマントに包まれるように隠れていく。

 マントが、ぶわっ・・・と鮮やかに翻り、ジャスティスの視界いっぱいに広がる。

 後方へと流れていく、マントの端。

 カーテンのように捲れ上がっていく、その真下。

 陰から、しゃがんで片膝立ちでバクルスを構えたハイエロファントの姿が現れる。

 端部の青い宝玉が、眩い純白光を発し、バチッ、と電光を放つ。

 それは極めて近い距離で、身体の伸び切ったジャスティスの腹部に向けられている。

 眉を顰め、申し訳なさそうな切ない表情のハイエロファント。

 

ハイエロファント「(絞るような声で)ごめん・・・ジャスティス」

 

 デスがハイエロファントの背後に、スタン、と降り立った、瞬間。

 バクルスから、クワァァァァァッッ!!!と光球が膨れ上がり、バーンッッッ!!!と前方に破裂する。

 ジャスティスの身体が吹き飛ぶ。大剣は手から弾かれ、離れて落下していく。

 彼女は、全身を白色の光に覆われたまま、ドサッ・・・と背中から草叢に放り出される。

 純白光はそのまま滞留し、隙間なくジャスティスを包んでいる。

 両目は閉じられ、ジャスティスの表情が穏やかな、眠っているような顔に戻る。

 大の字に横たわる彼女から、急激な速度で紫色のオーラが湧き、瞬く間に人の形になっていく。

 そして明らかな人型を成し、ジャスティスから、ふわり、と離れる。

 表情はない、のっぺらぼうの顔。しかし、何気に狼狽えている様子。

 中空に浮かぶ人型の真横に、フッ、と瞬間移動したようにデスが現れる。

 既に大鎌を振り翳し、殺気を込めた視線で睨む。

 ビクッ!と気付いて、デスに対面する人型。

 

デス「(凍て付くような声色)・・・貰った・・・」

 

 デス、渾身の力を込めて、大鎌の刃を薙ぐ。

 ズッシャァァァァッ!!!と、紫の人型が、腹部付近で上下に両断される。

 スタッ、と草叢に着地するデス。

 少しの、間の後。

 鈍い切断面が蒼白い光を発し始め、それが一気に、浸食するように人型の表面を広がる。

 苦痛に喘ぐかの如く、もがいて暴れている人型。

 やがて。

 ヒィィィヤァァァァ!・・・と、断末魔の悲鳴のような音を放ち、人型が消滅する。

 静寂。

 静寂。

 びゅう・・・と一陣の風が、地割れが拡がる草原を駆ける。

 完全に人型の影が失せたのを確認し、ふう、と溜め息をつくデス。

 近くに横たわるジャスティスに近寄り、右の片膝を落として、右手を彼女の頭部に翳す。

 目を閉じ、暫く、そのまま。

 ハイエロファント、ふたりの元に走り寄ってくる。

 デス、立ち上がって、ハイエロファントに柔らかい微笑みを向ける。

 

ハイエロファント「デス!」

デス「世話を掛けたな。お前のお陰で救かった」

ハイエロファント「(微笑んで)ううん、大したことはしてないよ。(ジャスティスを見て、心配そうに)どう? ジャスティスの具合は・・・」

デス「魂は問題ない。生命力も障りがあるほどではない。少し眠れば回復する程度だ」

ハイエロファント「(ふうう、と安堵の息をつき)そう、良かった」

 

 そろうり、そろうり、と森の入口へと向かおうとする人影が、ふたりの眼の端に映る。

 バッ!と、デスとハイエロファントが同時にその方向に視線を投げる。

 いつも間にか近くまで来ていたエンペラーの後ろ姿。

 明らかに、この場から退散しようとしている。

 

ハイエロファント「エンペラー・・・何があったの?」

エンペラー「(ビクゥゥッ!と肩が大きく跳ね、振り返りながら)エッ! あのッ! アタシ! まさか、また、あの声がするなんて思って・・・」

ハイエロファント「あの声?」

エンペラー「(ドキーン!と心臓が飛び出しそうになって)イヤイヤイヤ! 何でもないのよ何でも!」

 

 口元を引き締め、圧さえ感じさせる目線を送るハイエロファント。

 対して視線を明後日の方向に反らして、顔からダラダラと汗を流し続けるエンペラー。

 

ハイエロファント「(深く、重みのある響き)・・・全部話してくれるかな?」

デス「待て、ハイエロファント。話の続きは、ここを移動してからにしないか。神殿に戻った方がいい。ジャスティスはあたしが背負っていく」

ハイエロファント「(振り向いて)・・・そうだね、じゃあ戻ろうか。僕も手を貸すよ」

デス「(首を左右に振り)いや、ハイエロファントはそいつを逃がさないように見張っててくれ。(エンペラーを睨み)悪いが、お前に選択権はない。洗いざらい喋ってもらう」

 

 糸がきれたように、ガクーリ・・・と項垂れるエンペラー。

 デス、ジャスティスを背負おうと屈む。

 その刹那、ふと、上空を見上げる。

 

デス《陽の光が、戻った気がする・・・》

 

 

【 第三話に続く 】

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。