デスとハイエロファントの物語:REBOOT 外伝・番外編集   作:桁石スミオ

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落語「改訂版・死神」【第四話】

 会長さんのご自宅は、とてつもない広さを誇ってらっしゃいまして、お城のような高い壁がどこまでもどこまでも伸びている、超の付く大邸宅。車で門から乗り入れ、いくつもの邸宅が並ぶ中をどんどん進み、会長さんのお住まいまで門から車で10分掛かるという凄さ。男性は後部座席で、ポカーン、と口を開けて、ただただ圧倒されてます。

 男性と頭取さんは、数十人の屈強な護衛の男性陣に前後左右を挟まれて、奥へ奥へと歩いていきました。そして、寝屋の中、大変に広い座敷に通され、そこの布団に横になるご老人を見て・・・そう、男性は見てしまったのです・・・枕元に、死神の姿を。

 「・・・やっぱ無理です! 帰らせておくんなまし!」

 「そんな! ここまで来られて何もやって頂けないのですか!?」

 「あのですね、あっしには判るんですよ! 会長さんはもうすぐ亡くなられる! 治せねぇんです!」

 「ご無体なコトおっしゃらずに! この通りです!」

 「何度頭下げられたって駄目なモンは駄目でさぁ!」

 「ではせめて! 寿命を延ばしては頂けませんか!? 1ヵ月でも!」

 「無茶言わんで下さいよ!」

 「1ヶ月延ばして頂けたら! 2000万お出しいたします!」

 「・・・今、何とおっしゃいました?」

 「1ヶ月寿命を延ばして頂けたら、その際に2000万円お支払いいたします」

 「・・・マジですかい?」

 「はい、誓約書もお書きいたします」

 「・・・やややや、でも、そんなコト出来んのかい?・・・待て・・・何とか出来ねぇかな・・・」

 「もし治療して下さって、回復すれば、ここで500万、前金としてお渡しいたします。残金は1ヵ月持った際に、お支払いいたします・・・如何でしょう?」

 「ごひゃ・・・や、嘘みてぇだが・・・」

 「更に・・・もし半年、寿命を延ばして頂けたのでしたら・・・1ヶ月毎に2000万追加でお支払いし、半年後には、総計で2億円お渡しいたしましょう。そこまで出すつもりでおります」

 「に! お! く!・・・あっしは夢でも見てるんですかい!?」

 「すべては、センセイのお力に懸かっております」

 「・・・少し、時間を下せぇ・・・」

 いきなり夢のような金額を提示され、男性は腕組みをして考えます。どうしたらそれだけの報酬を手に出来るか、あらん限りの知恵を絞って考えております。そして、一計を案じました。

 「頭取さん、ちょいと、別な部屋でお話がありやす」

 そう言いまして、頭取さんとふたり、別室で向かい合いました。

 「今からあっしの言うことを、よーく聞いておくんなまし。でねぇと、会長さんは救けられねぇですよ」

 「はい、お聞かせ下さい」

 「アンタらの、ほら、さっきいたガタイのいい、ボディーガードのお兄さん方を4人お借りしたい」

 「ええ、それは結構ですが・・・何をなさるんですか?」

 「そのお兄さん方を、会長さんが寝てる布団の四隅に座らせて下せぇ。そして、あっしが膝を、ポーン!と叩いたら、一斉に布団を持ち上げ、頭と足を逆にするように、水平にクルン!と回転させて頂きたい。その直後に、あっしが治療いたしやす」

 「・・・どういうことですか? まあ、布団を持ち上げて回すのは雑作もないことですが・・・」

 「言った通りにして下せぇ。いいですかい、膝ポーン!の合図ですぜ。遅れたら取り返しがつかなくなりやす」

 「判りました。では、4名の手配をいたします」

 頭取さんは男性の指示通り、4人の体格のいい護衛の方々を、会長さんが寝てらっしゃる布団の四隅に座らせました。

 そして男性は、布団の横に胡坐をかき、チラ、と死神を見ます。

 藍色のマントを着て、身体の前を覆っており、フードを目深に被り、顔は見えません。大鎌を肩に掛け、片膝を立てて、じっ、と微動だにしません。今まで“呪文”でお帰り願った死神とは、雰囲気が違います。

 さて、男性はある『策』を練っていたのですが、実行するには何かのきっかけが必要でした。それは、死神の気を逸らすこと。どうやって逸らせたらいいか、部屋中を、ぐるっ、と見回しました。すると、会長さんが寝てらっしゃる布団の向かい側、部屋の角に、大きな画面の機械が置いてありました。

 「頭取さん、すんませんが、そこのテレビを点けて下せぇ」

 「はい? テレビですか? こんな時に?」

 「いいから、点けておくんなまし」

 頭取さんは首を捻りながらも、言われた通りに、プチッ、と電源を入れます。すると突然、画面に映像が流れ、音声が大きな音量で流れ始めました。

 『・・・では、次のニュースです。ローマ法王が本日、政府専用機で来日され、歓迎の式典に臨まれました』

 その途端、バッ!と死神が画面に顔を向け、背中をこちらに見せて食い入るように、前屈みになって見詰めます。

 男性は、しめた!とばかりに・・・

 (ポーン!と、膝を叩く)

 すると4人の護衛の方々、一斉に会長さんが寝てらっしゃる布団を持ち上げ、くるりん!と水平に回し、布団を置きます。今まで足の向いていた方に頭が、頭の向いていた方に足があることになり、死神は足元に座っている状態となりました。

 間髪入れず、男性は印を組むように手を合わせ・・・

 「アジャラカモクレン、マージドロ、テケレツのパッ!」

 (パン! パン!と、2回手を叩く)

 驚いたように振り返る死神が、スーッ・・・と姿を消していきます。一瞬、口元が見えまして、若い死神であることが判りましたが、それを確認する前に、とうとう見えなくなってしまいました。

 その直後、それまで眠ったように反応がなかった会長さん、ガバッ!と起き上がり・・・

 「おはよう! 皆の衆!」

 「おおおおっ! 会長! お目覚めになられましたかっ!」

 こうして、男性は8人目の命を救けることが出来たのでした。頭取さんは何度も何度も御礼をおっしゃられ、500万の現金と、今後の支払いを約束する誓約書を用意して渡されまして、男性はホクホク顔で自宅に戻って来たのです。

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