デスとハイエロファントの物語:REBOOT 外伝・番外編集 作:桁石スミオ
登場人物:ヤング(リトル)・フォーチュンとタワー、デスとハイエロファント、マジシャンとハイプリエステス、ワールド
注:小説ではなく、台本形式読み物です。
同一内容を、pixivにも掲載してあります。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8945164
【挿絵表示】
デスとハイエロファントの物語:REBOOT
外伝【 おお、運命の女神よ Episode of Fortune 】
★ マジカルランド中央・フォーチュンの居城・フォーチュンの自室
厚い雲の隙間から、幾筋かの陽の光が降り注ぎ、城を照らす。
開かれた窓から差し込む陽の中、天蓋付きのベッドの縁に腰掛けている、ヤング(リトル)・フォーチュン。
膝上に革表紙の書物を開き、じっ、と目線を下ろしている。
【N(ナレーション)】「この世界は、マジカルランド。彼女は、マジカルランドに暮らす者の運命を司る女神。名は、フォーチュン。真の名を『ホイール・オブ・フォーチュン』、別名『運命の輪』という。見た目は幼い少女だが、齢1万と14歳。マジカルランド創生より永い時を生きている」
窓の外に、ズ・・・と大きな影が被さる。
顔を上げるフォーチュン。
窓枠の向こうに、タワーの、緑色に光る左眼がある。
フォーチュン、静かな微笑みを浮かべる。
タワー「(重厚な声で)・・・フォーチュンサマ・・・」
フォーチュン「どうしたのじゃ?」
タワー「イマ・・・エロファント、デス、キタ・・・」
フォーチュン「(更に笑顔で)真か? 何用か知らんが、いいぞよ、通せ」
タワー「(頷いて)ター・・・ワー・・・」
ズ・・・と、窓から離れていくタワー。
ベッドの縁から、ぴょんっ!と勢いよく飛び降り、書物を本棚に戻すフォーチュン。
そして、隣室に移動しようと扉を開く。
鼻歌混じりで、少し浮かれてる様子。
★ フォーチュンの居城・客間
【N】「エンペラーによるタワー強奪事件より一月ほど過ぎた、ある日。フォーチュンの元に、デスとハイエロファントが訪ねてきた時のことである」
年代物の骨董品や装飾品が、壁際にずらりと並ぶ客間。
絢爛豪華なシャンデリア。その下に、十数人が向かい合わせで座れる長テーブル。
廊下から客間に入ってきた辺りで、立っているデスとハイエロファント。
ふたり、部屋のあちこちに視線を投げては、珍しい物を見ている表情になっている。
カツ、カツ・・・とブーツの踵を響かせ、フォーチュンが入室してくる。
フォーチュン「よう来たのう、ふたりとも」
ハイエロファント「こんにちは、フォーチュン。連絡もなしに急に来て、申し訳ないけど」
フォーチュン「いいのじゃ。丁度退屈しておったところでな・・・まあ、その辺に座れ」
デス「ああ、邪魔するぞ」
ハイエロファント、長テーブルの扉側、下座の一番端から二番目の椅子の後ろに立つ。
デスが椅子の横に立った時、すぐさま椅子を引いて彼女を座らせる。
大鎌をもうひとつ隣の椅子に、斜めにして立て掛ける。
それを確認して、一番下座の椅子に腰を下ろすハイエロファント。
フォーチュン、食器棚からグラスを3個取り、トレーに乗せる。
フォーチュン「(振り返って)何か飲むであろう? 酒もあるが、どうじゃ?」
デス「昼間から酒はやらん。酔わなければ何でもいい」
フォーチュン「相変わらず堅苦しいのう、そなたは。下戸でもあるまいし」
ハイエロファント「僕もデスと同じで。お酒以外だったら大丈夫だよ」
食器棚に隣接しているワインセラーから、一本の黒色のボトルを取り出すフォーチュン。
コルク抜きもトレーに乗せてから、テーブルに歩み寄っていく。
デスとハイエロファントが座る向かい側にトレーを置き、ボトルとグラスを移す。
慣れた手付きで、ボトルから栓を、キュポッ!と抜き、グラスに傾ける。
トクトクトク・・・と注がれていく、赤紫の液体。芳醇な葡萄の香りが、辺りに広がる。
フォーチュン、各グラスに7割ほど満たしてから、ふたつをハイエロファントとデスの前に置く。
フォーチュン「最近仕入れたばかりの、葡萄果汁の飲み物じゃ。安心せい、酔う物ではないぞよ」
ハイエロファント「(微笑んで)ありがとう、頂きます」
デス「(微笑んで)馳走になる」
フォーチュン、ハイエロファントの向かい側の椅子に腰を下ろす。
そしてグラスを持ち上げ、ふたりに視線を向ける。
デスとハイエロファント、同時にグラスを持ち、スッ、とフォーチュンと同様に上げる。
少し掲げるような仕草をしてから、グラスに口を付ける3人。
飲み物を口腔内に流し込み、喉を鳴らし、ふう、と息をつくフォーチュン。
静かにグラスをテーブルに戻し、彼女に視線を投げるデスとハイエロファント。
デス「ここに来るのは、前回対戦して以来だな」
フォーチュン「そうじゃったな。あの時は謁見の間での対戦であったから、この客間に通すのは初めてかのう?」
デス「(頷いて)そうだな」
ハイエロファント「僕も、この部屋に入るのは初めてだよ」
フォーチュン「エロファントは随分と前に来たっきりじゃった、のう・・・(ピタ、とグラスを持った手を停め)はて?・・・いつじゃったか? 覚えておるか?」
途端。
口元を引き締め、少し目を伏せるハイエロファント。
その横顔に眼差しを向け、眉を寄せるデス。
ハイエロファント「(重めの声で)・・・覚えている、けど・・・」
ハイエロファント、徐々に眉を顰め、ぐっ、と奥歯を噛む。
デス、彼の横顔を見詰めたまま、瞼を半分閉じて切なげな表情を浮かべる。
フォーチュン、ただならぬ雰囲気を感じ、据えた目線を向ける。
フォーチュン「(怪訝そうに)どうした? ふたりとも、深刻な顔をしおって」
暫くの、間。
意を決したような、引き締まった表情で、顔を上げてフォーチュンを見るハイエロファント。
ハイエロファント「(深い響きの声で)・・・フォーチュン、改めて聞くけど・・・マジシャンとプリエステスのところには、戻らないの?」
直後。
一瞬で曇った顔になり、俯くフォーチュン。
トン、とグラスを卓上に置き、手を離して戻す。
デスとハイエロファント、彼女に視線を送る。
フォーチュン「(はあぁ、と息を吐き)また、その話か・・・」
ハイエロファント「しつこいとは思うけど、尋ねさせてもらうよ」
フォーチュン「(重苦しい声で)今は・・・戻らん・・・知ってるであろう? 何があったのか、わらわが何をしでかしたのか・・・全部、聞いてるであろう?・・・答えは同じじゃ・・・」
デス「戻る気はありそうだな。だが『今は』戻らない、ということか」
ギュッ、と唇を噛み、目を閉じて一層顔を伏せるフォーチュン。
沈黙。
少しの、間、
ふう、と息を継ぎ、腕組みをするデス。
デス「(尖った声で)図星、か・・・」
フォーチュン「何も言えん・・・(顔を上げ)もういいじゃろ? この話は終いじゃ」
ハイエロファント「すまないけど、フォーチュン、今日は、この件について話をしに来たんだ。マジシャンとプリエステスにも了解を取ってある・・・“全部”僕の方から話してもいい、と許可も貰った」
フォーチュン「(眉を顰め)許可?・・・何を言っておるのじゃ?」
デス「ハイエロファントとあたしで来たのは、理由がある。今からハイエロファントの話を、よく聞け。あたしは、その『立ち会い人』になる為に、来た。お前に間違いなく話がされたという、証人になりに来た。それだけ重要な話だ」
ハイエロファント「話し始めれば長くなりそうなんだ。時間、いいかな?」
ゴクリ、と唾を飲み込むフォーチュン。
フォーチュン「そこまで前振りされて帰したのでは、気になって眠れん。よいぞ、時間はある。話せ」
ハイエロファント「ありがとう、じゃあ、話すね」
すぅ、ふう、と一度深呼吸するハイエロファント。
それが合図のように居住まいを正す、3人。
僅かの、間。
ハイエロファント「まず、聞くけど・・・フォーチュン、君は以前の記憶は戻っているの?」
フォーチュン「以前、か・・・わらわがこの姿になる前、ということか?」
ハイエロファント「(頷いて)うん、そうだよ」
フォーチュン「覚えておるが・・・ある時期の記憶が、すっぽり抜けておる。まだ大人の姿じゃった頃と、今の女子の姿になってからの、間がのう」
デス「赤子の時の記憶はない、ということか?」
フォーチュン「(少し呆れたように)赤子の時の記憶は、誰しもないであろう? わらわが覚えとるのは、その・・・(頬を薄く染め)父上と母上と過ごしておった子供の頃から、じゃ」
ハイエロファント「(微笑んで)いい思い出が多いんだね」
フォーチュン「(赤くなり)・・・言わせんでよかろう・・・」
デス「今からハイエロファントが話すのは、その、記憶の抜け落ちた期間の話だ。ハイエロファントとあたしは・・・(真剣な声で)その期間に、お前に何があったかを知ってる」
フォーチュン「(驚いて)真か?」
デス「(頷いて)ああ。何故なら・・・あたしらは、お前が大きな変化を起こした時、一緒にいたんだから、な」
フォーチュン「変化?・・・わらわに何があったのじゃ?」
ハイエロファント「順を追って話すよ、よく聞いてて・・・(瞼を少し閉じ、再び開け)今からの話は、デスと僕がここで・・・この城で、君と対戦した時からの話だ」
すっ、と両手を卓上に置いて組むハイエロファント。
彼の仕草を見てから、フォーチュンに視界を移すデス。
沈黙。
沈黙。
フォーチュン、微かに不安げな表情になる。
ハイエロファント「フォーチュン、君を今の姿に変えてしまったのは・・・(真剣な表情で)僕なんだよ」
途端。
バン!と両掌をテーブルに叩き付け、両腕を突っ張らせて立ち上がるフォーチュン。
同時に、ガタン!と、勢いよく後ろに押し出される椅子。
フォーチュン、両眼を正円に近い程に見開き、口を半分開けている。
真っ直ぐに彼女の瞳を見詰めている、ハイエロファントとデス。
フォーチュン「(愕然として、声を震わせ)・・・何・・・じゃ・・・と?・・・」