デスとハイエロファントの物語:REBOOT 外伝・番外編集   作:桁石スミオ

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「マジカルドロップⅢ」「マジカルドロップポケット」「マジカルドロップV」より、ヤング(リトル)・フォーチュンとタワー、デスとハイエロファント、マジシャンとハイプリエステス主役。本編『恋せよ死神 ―コイセヨヲトメ―』から 『しりぞけ、もの悲しき影』 の時間軸の前・中・後の外伝として執筆。2017年11月脱稿。タイトルは、カール・オルフ作曲「カルミナ・ブラーナ」の合唱曲より。作中、稲垣足穂「星澄む郷」の一節を引用しております。
 登場人物:ヤング(リトル)・フォーチュンとタワー、デスとハイエロファント、マジシャンとハイプリエステス、ワールド
 注:小説ではなく、台本形式読み物です。

 同一内容を、pixivにも掲載してあります。
 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8945164


【挿絵表示】



おお、運命の女神よ ー Episode of Fortune ー 【第一話】

デスとハイエロファントの物語:REBOOT

外伝【 おお、運命の女神よ Episode of Fortune 】 

 

★ マジカルランド中央・フォーチュンの居城・フォーチュンの自室

 

 厚い雲の隙間から、幾筋かの陽の光が降り注ぎ、城を照らす。

 開かれた窓から差し込む陽の中、天蓋付きのベッドの縁に腰掛けている、ヤング(リトル)・フォーチュン。

 膝上に革表紙の書物を開き、じっ、と目線を下ろしている。

 

【N(ナレーション)】「この世界は、マジカルランド。彼女は、マジカルランドに暮らす者の運命を司る女神。名は、フォーチュン。真の名を『ホイール・オブ・フォーチュン』、別名『運命の輪』という。見た目は幼い少女だが、齢1万と14歳。マジカルランド創生より永い時を生きている」

 

 窓の外に、ズ・・・と大きな影が被さる。

 顔を上げるフォーチュン。

 窓枠の向こうに、タワーの、緑色に光る左眼がある。

 フォーチュン、静かな微笑みを浮かべる。

 

タワー「(重厚な声で)・・・フォーチュンサマ・・・」

フォーチュン「どうしたのじゃ?」

タワー「イマ・・・エロファント、デス、キタ・・・」

フォーチュン「(更に笑顔で)真か? 何用か知らんが、いいぞよ、通せ」

タワー「(頷いて)ター・・・ワー・・・」

 

 ズ・・・と、窓から離れていくタワー。

 ベッドの縁から、ぴょんっ!と勢いよく飛び降り、書物を本棚に戻すフォーチュン。

 そして、隣室に移動しようと扉を開く。

 鼻歌混じりで、少し浮かれてる様子。

 

 

★ フォーチュンの居城・客間

 

【N】「エンペラーによるタワー強奪事件より一月ほど過ぎた、ある日。フォーチュンの元に、デスとハイエロファントが訪ねてきた時のことである」

 

 年代物の骨董品や装飾品が、壁際にずらりと並ぶ客間。

 絢爛豪華なシャンデリア。その下に、十数人が向かい合わせで座れる長テーブル。

 廊下から客間に入ってきた辺りで、立っているデスとハイエロファント。

 ふたり、部屋のあちこちに視線を投げては、珍しい物を見ている表情になっている。

 カツ、カツ・・・とブーツの踵を響かせ、フォーチュンが入室してくる。

 

フォーチュン「よう来たのう、ふたりとも」

ハイエロファント「こんにちは、フォーチュン。連絡もなしに急に来て、申し訳ないけど」

フォーチュン「いいのじゃ。丁度退屈しておったところでな・・・まあ、その辺に座れ」

デス「ああ、邪魔するぞ」

 

 ハイエロファント、長テーブルの扉側、下座の一番端から二番目の椅子の後ろに立つ。

 デスが椅子の横に立った時、すぐさま椅子を引いて彼女を座らせる。

 大鎌をもうひとつ隣の椅子に、斜めにして立て掛ける。

 それを確認して、一番下座の椅子に腰を下ろすハイエロファント。

 フォーチュン、食器棚からグラスを3個取り、トレーに乗せる。

 

フォーチュン「(振り返って)何か飲むであろう? 酒もあるが、どうじゃ?」

デス「昼間から酒はやらん。酔わなければ何でもいい」

フォーチュン「相変わらず堅苦しいのう、そなたは。下戸でもあるまいし」

ハイエロファント「僕もデスと同じで。お酒以外だったら大丈夫だよ」

 

 食器棚に隣接しているワインセラーから、一本の黒色のボトルを取り出すフォーチュン。

 コルク抜きもトレーに乗せてから、テーブルに歩み寄っていく。

 デスとハイエロファントが座る向かい側にトレーを置き、ボトルとグラスを移す。

 慣れた手付きで、ボトルから栓を、キュポッ!と抜き、グラスに傾ける。

 トクトクトク・・・と注がれていく、赤紫の液体。芳醇な葡萄の香りが、辺りに広がる。

 フォーチュン、各グラスに7割ほど満たしてから、ふたつをハイエロファントとデスの前に置く。

 

フォーチュン「最近仕入れたばかりの、葡萄果汁の飲み物じゃ。安心せい、酔う物ではないぞよ」

ハイエロファント「(微笑んで)ありがとう、頂きます」

デス「(微笑んで)馳走になる」

 

 フォーチュン、ハイエロファントの向かい側の椅子に腰を下ろす。

 そしてグラスを持ち上げ、ふたりに視線を向ける。

 デスとハイエロファント、同時にグラスを持ち、スッ、とフォーチュンと同様に上げる。

 少し掲げるような仕草をしてから、グラスに口を付ける3人。

 飲み物を口腔内に流し込み、喉を鳴らし、ふう、と息をつくフォーチュン。

 静かにグラスをテーブルに戻し、彼女に視線を投げるデスとハイエロファント。

 

デス「ここに来るのは、前回対戦して以来だな」

フォーチュン「そうじゃったな。あの時は謁見の間での対戦であったから、この客間に通すのは初めてかのう?」

デス「(頷いて)そうだな」

ハイエロファント「僕も、この部屋に入るのは初めてだよ」

フォーチュン「エロファントは随分と前に来たっきりじゃった、のう・・・(ピタ、とグラスを持った手を停め)はて?・・・いつじゃったか? 覚えておるか?」

 

 途端。

 口元を引き締め、少し目を伏せるハイエロファント。

 その横顔に眼差しを向け、眉を寄せるデス。

 

ハイエロファント「(重めの声で)・・・覚えている、けど・・・」

 

 ハイエロファント、徐々に眉を顰め、ぐっ、と奥歯を噛む。

 デス、彼の横顔を見詰めたまま、瞼を半分閉じて切なげな表情を浮かべる。

 フォーチュン、ただならぬ雰囲気を感じ、据えた目線を向ける。

 

フォーチュン「(怪訝そうに)どうした? ふたりとも、深刻な顔をしおって」

 

 暫くの、間。

 意を決したような、引き締まった表情で、顔を上げてフォーチュンを見るハイエロファント。

 

ハイエロファント「(深い響きの声で)・・・フォーチュン、改めて聞くけど・・・マジシャンとプリエステスのところには、戻らないの?」

 

 直後。

 一瞬で曇った顔になり、俯くフォーチュン。

 トン、とグラスを卓上に置き、手を離して戻す。

 デスとハイエロファント、彼女に視線を送る。

 

フォーチュン「(はあぁ、と息を吐き)また、その話か・・・」

ハイエロファント「しつこいとは思うけど、尋ねさせてもらうよ」

フォーチュン「(重苦しい声で)今は・・・戻らん・・・知ってるであろう? 何があったのか、わらわが何をしでかしたのか・・・全部、聞いてるであろう?・・・答えは同じじゃ・・・」

デス「戻る気はありそうだな。だが『今は』戻らない、ということか」

 

 ギュッ、と唇を噛み、目を閉じて一層顔を伏せるフォーチュン。

 沈黙。

 少しの、間、

 ふう、と息を継ぎ、腕組みをするデス。

 

デス「(尖った声で)図星、か・・・」

フォーチュン「何も言えん・・・(顔を上げ)もういいじゃろ? この話は終いじゃ」

ハイエロファント「すまないけど、フォーチュン、今日は、この件について話をしに来たんだ。マジシャンとプリエステスにも了解を取ってある・・・“全部”僕の方から話してもいい、と許可も貰った」

フォーチュン「(眉を顰め)許可?・・・何を言っておるのじゃ?」

デス「ハイエロファントとあたしで来たのは、理由がある。今からハイエロファントの話を、よく聞け。あたしは、その『立ち会い人』になる為に、来た。お前に間違いなく話がされたという、証人になりに来た。それだけ重要な話だ」

ハイエロファント「話し始めれば長くなりそうなんだ。時間、いいかな?」

 

 ゴクリ、と唾を飲み込むフォーチュン。

 

フォーチュン「そこまで前振りされて帰したのでは、気になって眠れん。よいぞ、時間はある。話せ」

ハイエロファント「ありがとう、じゃあ、話すね」

 

 すぅ、ふう、と一度深呼吸するハイエロファント。

 それが合図のように居住まいを正す、3人。

 僅かの、間。

 

ハイエロファント「まず、聞くけど・・・フォーチュン、君は以前の記憶は戻っているの?」

フォーチュン「以前、か・・・わらわがこの姿になる前、ということか?」

ハイエロファント「(頷いて)うん、そうだよ」

フォーチュン「覚えておるが・・・ある時期の記憶が、すっぽり抜けておる。まだ大人の姿じゃった頃と、今の女子の姿になってからの、間がのう」

デス「赤子の時の記憶はない、ということか?」

フォーチュン「(少し呆れたように)赤子の時の記憶は、誰しもないであろう? わらわが覚えとるのは、その・・・(頬を薄く染め)父上と母上と過ごしておった子供の頃から、じゃ」

ハイエロファント「(微笑んで)いい思い出が多いんだね」

フォーチュン「(赤くなり)・・・言わせんでよかろう・・・」

デス「今からハイエロファントが話すのは、その、記憶の抜け落ちた期間の話だ。ハイエロファントとあたしは・・・(真剣な声で)その期間に、お前に何があったかを知ってる」

フォーチュン「(驚いて)真か?」

デス「(頷いて)ああ。何故なら・・・あたしらは、お前が大きな変化を起こした時、一緒にいたんだから、な」

フォーチュン「変化?・・・わらわに何があったのじゃ?」

ハイエロファント「順を追って話すよ、よく聞いてて・・・(瞼を少し閉じ、再び開け)今からの話は、デスと僕がここで・・・この城で、君と対戦した時からの話だ」

 

 すっ、と両手を卓上に置いて組むハイエロファント。

 彼の仕草を見てから、フォーチュンに視界を移すデス。

 沈黙。

 沈黙。

 フォーチュン、微かに不安げな表情になる。

 

ハイエロファント「フォーチュン、君を今の姿に変えてしまったのは・・・(真剣な表情で)僕なんだよ」

 

 途端。

 バン!と両掌をテーブルに叩き付け、両腕を突っ張らせて立ち上がるフォーチュン。

 同時に、ガタン!と、勢いよく後ろに押し出される椅子。

 フォーチュン、両眼を正円に近い程に見開き、口を半分開けている。

 真っ直ぐに彼女の瞳を見詰めている、ハイエロファントとデス。

 

フォーチュン「(愕然として、声を震わせ)・・・何・・・じゃ・・・と?・・・」

 

 

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