ZOIDS 紅の獅子   作:モルヤパ

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第9話 暗黒軍

ブルーユニコーン隊の救援に成功したアオイは

 

ニューヘリック湾に集まっている共和国軍と合流していた。

 

そこには既にバンとアーバインも戻ってきていた。

 

しかし、そこにムンベイとフィーネの姿はなかった。

 

すぐに先に戻ってきた二人を問い詰める。

 

「二人共!ムンベイとフィーネはどうしたの!?」

 

「まだマウントオッサ要塞の中だ」

 

「ちょっと待ってよ!あそこには帝国軍が!」

 

「俺もそう言ったんだけどよ、あの二人にはプテラスがあるし・・・」

 

「それに、クルーガーの旦那も一緒だ。無事だろうよ」

 

「そんな楽観的な!」

 

言い争っている三人にハーマンが走り寄ってくる。

 

「アオイ!お前達のところにクルーガー大佐はいなかったか!?」

 

「いないわよブルーユニコーン隊を助けるので精一杯で!」

 

「な、何故怒っている?」

 

突然怒鳴り出す彼女に戸惑いを見せるハーマン

 

「まあいいわ、戦況は?」

 

「プロイツェンが猶予を寄越した。」

 

プロイツェンは、共和国に対し

 

無条件降伏を迫ってきていた。

 

全軍の武装解除 共和国市民の資産没収に市民権剥奪

 

完全に共和国を植民地にしようとしていた。

 

「プロイツェンのやりそうな手口ね・・・」

 

「4時間後・・・正午に結論を出せとのことだ。」

 

「それで、結論が出なかったら・・・」

 

アオイは、前方で展開されている帝国軍の大部隊を見て呟く

 

「攻撃を開始してくるってわけね。」

 

「ああ、だがこちらにはゴジュラスがある。何の心配もない。」

 

フォードがそう言うものの

 

(さすがプロイツェンね・・・あれだけのゾイドを展開してくるなんて・・・恐らくまだ戦力を隠し持っている・・・)

 

彼女は不安を拭いきれなかった。

 

硬直状態が1時間経過する頃に

 

「よぉご苦労さん」

 

ドクター・ディが彼らの前に現れる。

 

「ドクター・ディ!?」

 

「何やら手をこまねいている様じゃな。」

 

「あれだけのゾイドを見せられてはそうもなります。」

 

「そうか・・・せっかく打開策があるというのに・・・」

 

その言葉に、その場にいた全員が驚く

 

「え!?」

 

「何か考えでもあんのかジジィ?」

 

「ああ、せっかく近くにデカイ爆弾があるというのにもったいないのぉ」

 

「爆弾??」

 

「マウントオッサじゃよ」

 

未だにピンと来ていない者達のために、ドクター・ディは地面にマウントオッサを描きながら説明を始める

 

「マウントオッサ要塞はマウントオッサ火山の洞窟を改造したものだ。そのエネルギー源は火山のマグマの地熱エネルギー」

 

「てことは・・・火山を爆発すれば要塞は跡形もなく吹き飛ぶということか。」

 

「そうじゃ、火山の爆発という突発的な自然現象を起こせばゾイドのコンバットシステムがフリーズし、帝国軍は撤退していく。」

 

ここで状況を飲み込み始めたハーマンやオコーネルは、希望を掴み取り笑顔になる。

 

「それならば、プテラスのミサイル攻撃で火山の爆発を誘発できれば!」

 

「恐らくクルーガー大佐も同じ事を考えているだろうが・・・プテラス1機じゃ不安だな。」

 

「そこにいる鼻たれ小僧とヘナチョコゾイドを護衛に連れて行く。」

 

ドクター・ディは親指を立てバン達を指差す

 

「バンとジークを?」

 

「俺は行くぜ、フィーネ達のこともあるし、これ以上ジッとしているのも性に合わねぇ!」

 

「グオ!」

 

バンとジークが快く引き受け、火山爆発に向け準備が開始された。

 

ふとアオイは、ハーマンに自分も護衛に行く事を伝えようと彼を探す。

 

「・・・・・・・後の交渉は全て大統領にお任せします。」

 

『・・・分かりました。火山の爆発と共に停戦を勧告します。』

 

誰かと通信をしているハーマンを見つけた。

 

「・・・ああ頼むぜ。お袋」

 

そう言い残しハーマンは通信を切る。

 

「あなたもそういう事言えるのね。」

 

通信が終わったのを見計らい、アオイは声を掛けた。

 

「君か。」

 

「いい母親よ、彼女は。大事にしてあげなさい。」

 

「君に母親は?」

 

「・・・いないわ。物心付く前には孤児施設にいたから・・・」

 

それを聞きバツが悪そうな表情でハーマンは謝る。

 

「すまん・・・」

 

「いいの。護衛、私も行かせてもらっていいかしら?」

 

「何故だ?」

 

「マウントオッサにいるのは、レッドリバーで戦った事もあるシュバルツ少佐の部隊よ。一筋縄ではいかないわ。それに私がこの場に残っても、接近戦しか出来ないゼロじゃ分が悪いし」

 

「・・・そうだな、わかった。バンのサポートを頼む」

 

「・・・了解」

 

アオイはバンと合流するために、ライガーゼロを走らせる。

 

「それじゃ、行ってくるぞ」

 

「ご武運をお祈りします!」

 

準備を整えたプテラスの部隊が空へと繰り出す。

 

「それじゃあなハーマン、あんたから絶対に勝てるぜ!」

 

「フッ、当然の事を言うな。」

 

「アーバイン、死ぬんじゃねーぞ?」

 

「ああ、お前もな。アオイ、バンが無茶やらかしそうになったら頼むぜ」

 

「ええ、分かってる。」

 

お互いに別れを済ませた後、シールドライガーとライガーゼロはマウントオッサへと向かっていった。

 

ふと、アオイはマウントオッサ要塞がある方角へ顔を向け

 

複雑な表情を浮かべる。

 

ゼロも気付いたらしく、心配そうに唸り声をあげる。

 

「ん、どうしたんだ?」

 

バンも気付いて声を掛けるが、返事をしないまま口を紡ぎ

 

僅かに操縦桿を握る手を震わせ

 

アオイは・・・意を決した。

 

「・・・バン、あなたはまっすぐマウントオッサに向かいなさい。」

 

そうバンに言うと、アオイはマウントオッサ要塞の方へ向かっていった。

 

「お、おいどこ行くんだよ!?」

 

「近くに敵がいないか探ってくる!もし追っ手がいたら後ろから撃たれてしまうわ!」

 

「でも一人じゃ!」

 

「大丈夫、必ず戻ってくるから」

 

バンの制止も聞かずに、アオイはマウントオッサへ向かっていく。

 

「・・・ごめんね、バン・・・みんな・・・」

 

その理由は・・・第一装甲師団、シュバルツへ火山が爆発する事を伝えるためである。

 

(今の私を共和国軍が見たら・・・スパイ行為にしか見えないわね。)

 

共和国に協力しながら、帝国軍であるシュバルツに共和国の作戦を伝える。

 

目的は帝国軍の殲滅ではなく、撤退

結果的にシュバルツが生き残っても何も支障はない

 

しかし、これは完全に共和国やバン達に対する裏切り行為である

 

それでも・・・

 

(勘のいい少佐なら気付いているはず・・・だけどもし気付いてなかったら・・・!)

 

第一装甲師団に所属していた頃、彼に何度も助けられた。

 

アオイは・・・そんな彼を、助けたい。

 

その一心でマウントオッサへ向かおうとしたのだ。

 

たとえそれが、仲間達を裏切る行為であろうと

 

これで万が一帝国軍が共和国を滅ぼす結果になろうと

 

「・・・見えた!」

 

アオイは、マウントオッサ要塞前にいるゾイド部隊を見つけた。

 

「マルクス!!戻れマルクス!!」

 

聞こえてきた声は、シュバルツだった。

 

「少佐!そのアイアンコングに乗ってるのは少佐ですか!?」

 

突然の通信に少し驚いたシュバルツだったが、すぐに声の主がアオイだと気づく。

 

「アオイ!?何故ここに来た!」

 

「少佐にお伝えしたい事があります!すぐにマウントオッサから退避してください!」

 

「・・・やはり何かあるのだな、念のため聞いておこう。」

 

アオイは、マウントオッサ火山を爆発させる作戦を実行している事をシュバルツに伝え

 

シュバルツは血相を変え通信を行う。

 

「マルクス!マウントオッサが自爆が確実になった!すぐに脱出しろ!!」

 

「え・・・マルクスって・・・!」

 

マルクスの名に聞き覚えがあり、アオイは通信回線を探る。

 

『どこに行く貴様ら!敵前逃亡は軍法会議ものだぞ!!』

 

『マルクス少佐!操縦不能です!コンバットシステムがフリーズしています!!』

 

「早く脱出してください!マルクス大尉!!」

 

『その声・・・アオイ准尉か!?この帝国軍の恥さらしめ!!』

 

「そんな事言ってる場合じゃないでしょう!!早く脱出しないと火山が・・・!!」

 

『そんな事はできん!!私はプロイツェン閣下から死守せよと命令を受けているのだ!!』

 

「マルクス大尉!!」

 

「アオイ」

 

助けに向かおうとしたゼロを、シュバルツのアイアンコングが腕で遮る。

 

「シュバルツ少佐!」

 

何故かと問い詰めようとしたが、無言で首を横に振るのを見て聞くのをやめた。

 

「私の事は放っておいてもらおう!この要塞は、私が陥落させたのだぁ!!!」

 

マルクスの叫びと共に、マウントオッサの火山爆発が激しくなり

 

「おあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

爆発がマルクスを飲み込み、通信が切れた。恐らく、いや確実に跡形も残っていないだろう。

 

「・・・馬鹿・・・!」

 

一時期ではあったが、同じ部隊の仲間の死に涙を流したアオイ

 

シュバルツは、弔いの敬礼をした。

 

「総員撤退!急げ!!」

 

帝国軍の兵士達がマウントオッサから退避していく中、アオイはそれを眺めているだけで動こうとしなかった。

 

「アオイ、君も早く行くんだ。」

 

「少佐・・・」

 

「レイヴンはマウントオッサの頂上にいる。」

 

「え・・・!」

 

「決着を付けるなら今しかないぞ、急げ。」

 

「は、はい!」

 

セイバータイガーが、マウントオッサの頂上にいる。

 

それをシュバルツから聞き、アオイはすぐに頂上へ向かった。

 

「・・・そう、決着を付けるんだ。過去の呪縛から」

 

シュバルツは、走り去っていくライガーゼロを敬礼で見送った。

 

「・・・よろしかったのですか、少佐。」

 

「何がだ?」

 

「リュウガ准尉の事です。彼女ほどの腕があれば我が軍に復軍することだって・・・」

 

「マルクスの穴埋めは彼女にはできない。」

 

「は?」

 

「ゾイド乗りとしての腕は確かだ。しかし、指揮官としては致命的でな。マルクスより酷いぞ。」

 

「そうなのですか?」

 

「私語はそこまでだ。撤退を急げ。」

 

「りょ、了解!」

 

シュバルツが部隊の撤退指示を出す中

 

その上空で何かがマウントオッサへ飛んでいき、それに気付く者はいなかった。

 

 

 

 

 

シュバルツと別れたアオイは、マウントオッサの頂上を目指し走っていた。

 

「今度こそ、今度こそセイバーをあの子から救ってあげないと・・・!」

 

既にバンが交戦しているだろうと思っていたが、決着は自分の手で付けたい。

 

そう思い急いでいたが

 

突然、ゼロの真上を何かが通り過ぎた。

 

「な、何!?」

 

その飛んできた黒い物体は、ゼロの前に立ちはだかる様に着地した。

 

「ドラゴン型ゾイド・・・!?でも、あんなの見たことない・・・!」

 

「初めまして、アオイ・リュウガよ。」

 

困惑する中、目の前のゾイドから通信が入ってきた。

 

声のトーンから、男だと推測できた。

 

「あなたは誰!?そのゾイドは一体・・・!」

 

「東洋の生き残りよ、今名乗る時ではないが・・・私のゾイドを紹介しよう。」

 

男の口上の後、ドラゴン型ゾイドが咆哮する。

 

「ガン・ギャラド、前大戦に猛威を振った暗黒のゾイド」

 

「ガン・ギャラド?それにあなた今私のこと東洋の生き残りって・・・どういうことよ!?」

 

「今は知る時ではない、今は・・・ね。」

 

もったいぶった態度に痺れを切らし、ゼロは走り出す。

 

「アンタの相手をしてる暇は・・・こっちにはないの!!」

 

「面白い、少し相手をしてあげよう。」

 

「一気に決めさせてもらうわ!ストライクレーザークロー!!」

 

ゼロの爪がガン・ギャラドに向かい、ガン・ギャラドも爪をぶつけにいく。

 

その場で硬直する2体、互いの爪がぶつかり火花を散らす。

 

「ライガーゼロ・・・その程度か?」

 

男がそう呟いた後、ゼロをもう片方の爪を使い弾き飛ばす。

 

「くっ・・・!ストライクレーザークローが効いてない・・・!」

 

態勢を立て直そうとするが、その隙にパルスキャノンがゼロを襲った。

 

「きゃああああ!!」

 

「暗黒ゾイドは並大抵の攻撃は通さんよ。」

 

男は余裕を見せていた

 

爆煙の中からゼロが飛び出してきてくる

 

「油断大敵って言葉、知らないのかしら!!」

 

「知っているさ、そしてそれは君に当てはまる。」

 

ガン・ギャラドは回転し、ゴッドテイルでゼロを再び弾き飛ばす。

 

「うわあああああああ!!」

 

「その程度では私の相手は務まらん。」

 

「くっ・・・ゼロ、大丈夫?」

 

唸り声を上げながらゼロはゆっくりと立ち上がる。

 

「ほう・・・」

 

「どう?私とゼロはまだやれるわ!」

 

臨戦態勢に入っているアオイに、男はニヤリと笑う。

 

「フッ・・・このガン・ギャラド相手にここまで持ちこたえるとは・・・称賛に値する。」

 

「そのもったいぶった態度・・・プロイツェンを思い出して腹が立つわ!!」

 

「面白くなった。君との勝負はここまでにしておこう。」

 

男がそう言うと、ガン・ギャラドは空中にゆっくりと浮き始める。

 

「逃げる気!?」

 

「私の相手をしてる暇はなかったのではないのかね?」

 

「え・・・」

 

「君の相棒は今、どうなっているかな?」

 

男が静かに笑うと、ガン・ギャラドは何処かに飛び去っていった。

 

「何なのあいつ・・・暗黒のゾイドって一体・・・」

 

去っていった男とゾイドの事を考えていたが

 

「・・・そうだ、セイバー!」

 

セイバータイガーのことを思い出し、すぐにマウントオッサの頂上へ向かった。

 

やっとの思いで頂上に辿りついたアオイ

 

その目に映ったのは・・・

 

「え・・・そんな・・・!」

 

セイバータイガーの残骸だった。

 

バンと戦ったのならば、ここまでひどくはならなかっただろう。

 

しかし、頭部と両前足の損傷から考えると

 

シールドを張ったシールドライガーに真正面からぶつかり

 

無理やり突破しようとして、機体が耐えられず残骸に成り果てたのだろう。

 

未だに現実を理解出来ず、アオイはゼロから飛び降りてセイバーに駆け寄る。

 

「セイバー・・・そんな・・・そんな・・・!!」

 

ゾイドコアは、既に停止している。

 

もう二度とセイバータイガーは生き返らない。

 

再び突き付けられた相棒の死に

 

「ああ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

アオイはただ、泣き続けた。

 

ゼロもアオイの悲しみを理解しているのか

 

セイバーを弔うかのように、吠えた。

 

そして

 

『本日午前11時、祖父ツェッペリン2世陛下が崩御あそばされました。そこで私ルドルフ・ゲアハルト・ツェッペリン3世は第1王子継承者として現在行われている共和国総攻撃の、即刻停止を命じます。』

 

帝国の王子、ルドルフの宣言により

 

戦争は終わった。

 

 

ニューヘリック湾では、帝国軍が撤退し

 

共和国軍は勝利に酔っていた。

 

「バーン!!」

 

「フィーネ!無事だったんだな!」

 

「さ~て、大統領からいくらもらおっかな~?」

 

それはバン達も一緒だった。互いに無事を喜んでいた。

 

しかし、彼女は違った。

 

「あ・・・」

 

「どうしたフィーネ?」

 

フィーネは虚ろな目でフラフラと歩いてくるアオイに気付いた。

 

心配になりバン達は駆け寄る。

 

「どうしたんだよアオイ!?何かあったのか!?」

 

「バン・・・セイバーは・・・」

 

「え?」

 

「セイバータイガーと戦ったんでしょ・・・何があったの・・・?」

 

声にもならない言葉で呟くアオイに、ムンベイとアーバインが何かに感づく。

 

「レイヴンが無理やりシールドを突破しようとして・・・セイバータイガーが死んじまうって言ってもレイヴンは退かなかった。“役立たず”“逃げることは許さない”って言いながら・・・」

 

バンの説明の途中で、アオイからボロボロと涙が溢れる。

 

「あのセイバータイガー、逃げ出したかった様子だった・・・だけどレイヴンが許さなかった・・・」

 

「!!」

 

それ以上聞きたくなかったのか、アオイはその場から走り去ってしまう。

 

「アオイ!?」

 

「どうしちゃったのさ、あいつ・・・」

 

「あの時もそうだったが、レイヴンの乗ってたセイバータイガーと関係がありそうだが・・・」

 

アオイの流した涙の訳を彼らが知るのは

 

まだ、しばらく先だった・・・

 




ニューヘリック戦終了です。
今回登場したガン・ギャラドと言うゾイドは実在します。
設定上は荷電粒子砲も撃てますが、今回のガン・ギャラドには装備されてません。現時点であったらチートですからね・・・しかもデスザウラーと同レベルの威力だとか

さーて次はどっちを更新しようかな・・・?
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