ZOIDS 紅の獅子   作:モルヤパ

12 / 34
第10話 旅立ち

ニューヘリックシティの戦いが終結したその晩

 

迎賓館では祝杯が行われていた。

 

共和国軍の兵士達がドンチャン騒ぎをしている傍ら

 

アオイは外で一人 テーブルにいた。

 

バン達も混ざってハーマン達と騒いでいたが

 

セイバーを失った悲しみに暮れ、混ざる気にもなれなかった。

 

そこに、数人の共和国兵士が歩み寄ってきた。

 

「よぉお嬢さん、一人?」

 

「帝国の奴らを追っ払ったってのに辛気臭い顔しちゃってさ」

 

ヘラヘラ話しかけてくる兵士を、アオイは俯いたまま無言で返した。

 

「ハーマン大尉が雇った傭兵って聞いていたが、こんな美人も紛れていたなんてな。」

 

「他はガキと盗賊紛いの奴だったもんな」

 

兵士達が笑いながら話している中、アオイだけは黙ったまま動かない

 

「どうだ?これから街に出て飲みなおしに行くんだけど、あんたもどうだい?」

 

兵士の一人がアオイの手を取ろうとする

 

握られる寸ででその手を弾いた

 

「アンタ達と付き合う気ないの、ほっといてくれる?」

 

「このアマ大人しくしてりゃ・・・!」

 

手を弾かれた兵士が怒り無理やりアオイの手を取ろうとしたが

 

「聞こえなかった?ほっといてって言ったのよ?」

 

殺意を込めて睨みつけられ、兵士達が怯んで後ろに下がってしまった。

 

「う・・・!」

 

「お、おい行こうぜ。関わるとロクなことにならねぇ。」

 

「ケッ、興ざめもいいとこだぜ・・・」

 

悪態を付きながら共和国兵士がその場から離れて行き、

 

アオイは静かに溜め息をついた

 

しばらくして、目の前にカクテルの入ったグラスが置かれた。

 

「一人でどうしたのかな、お嬢さん?」

 

向かいの椅子に座ったのは

 

「あ・・・」

 

「できれば、この老いぼれの話し相手になってもらえると嬉しいのだが。」

 

共和国軍の名将、クルーガーだった。

 

「すまないな、血の気の多い連中ばかりでな。」

 

「ホント、バンに喧嘩吹っかけた兵士もそうだけど・・・まともなのはあなたとハーマン大尉達くらいですかね。」

 

「耳が痛いな。」

 

他愛もない話をする中、クルーガーの表情が少し険しくなる。

 

「君は何故、彼らから離れていたんだ?」

 

「・・・何のことでしょうか?」

 

「ワシとお前さんの仲間二人を救出しに行った時だよ。あの小僧が言うには敵を探りに行ったらしいが?」

 

「そうですよ、見たこともないゾイドと戦うことになったけど。」

 

「確かに、帝国領に飛び去っていく飛行型ゾイドの姿は確認している。帝国軍の部隊の方角から君が走っていく姿もな。」

 

クルーガーのその発言に、アオイは身体を震わせた。

 

シュバルツと接触していたことがバレた

 

その結果は、ただ一つだけ

 

「私を逮捕しますか?」

 

帝国の内通者として捕らわれることだ。

 

しかし、クルーガーから返された言葉は意外だった

 

「そんなことはせんよ、ハーマン大尉を助けた君が帝国に内通するはずがない。」

 

「・・・随分簡単に信用するんですね」

 

「並々ならない事情があって別行動を取ったのだろう?」

 

「・・・その様子だと、私の事をご存知なのですね」

 

「ああよく知っているさ。君には随分苦労をさせられた・・・

帝国軍の若き戦乙女、アオイ・リュウガ准尉」

 

「え!?」

 

驚きの声を出したのは、アオイの後ろにいたバン達だった。

 

「バン!?」

 

「アオイって、帝国軍の兵士だったのかよ!?」

 

「なるほどね、どうりでレイヴンのセイバータイガーに拘っていたわけだよ。」

 

「てことは、あのセイバータイガーはアオイのゾイドだったのか?」

 

「あなた達、何でここに・・・!」

 

「あなたの事が心配で・・・」

 

フィーネ達の心配そうな表情を見て、アオイも複雑な表情を見せる。

 

「話してやりなさい、みんな君のことを心配していたのだからな。」

 

「・・・ええ」

 

アオイは立ち上がりバン達の方へ身体を向けた。

 

「私は・・・ガイロス帝国軍第一装甲師団の所属だった・・・階級は准尉、シュバルツ少佐の副官を務めていた。」

 

「シュバルツって、レッドリバーの時の!?」

 

「ええ。」

 

「なるほどな、君は元上官のシュバルツを助けるために別行動を取っていたんだな。」

 

「ちょっと待ってくれよ!てことは今まで仲間だった奴と戦ってたってことかよ!?」

 

未だに信じられないのか、バンは声を荒げてそう言った。

 

「そうよ。」

 

「そうって、アオイはそれでいいのかよ!?」

 

「組織を離れれば、今まで仲間だった者も敵と認識される。バンには難しいと思うけどそういうものよ。」

 

アオイの言葉に、まだ納得がいっていないのかバンは顔をしかめる。

 

「でもね、それでもシュバルツ少佐だけは助けたかった。今でも第一装甲師団の皆は大切な仲間、少なくとも私はそう思ってる。」

 

微笑みながらアオイはそう言い、バンもそれで納得がいったようだ。

 

そこにムンベイが口を開く

 

「できればさ、帝国軍にいたときの事を話してもらえる?」

 

「そうだな、帝国軍にいた時の話とか、どうやってライガーゼロと出会ったのか気になるしな。」

 

「・・・そうね、あなた達には知る権利がある・・・」

 

「まぁみんな座りなさい。」

 

バン達がテーブルの席に着くと、アオイは帝国軍にいた時のことを話す。

 

「バン、あなたのお父さんって共和国軍にいたでしょ?」

 

「え、何で知ってんだ?」

 

バンの疑問に答えたのは、クルーガーだった

 

「お前の父親・・・ダン・フライハイトはアオイと交戦経験がある。」

 

「父ちゃんと戦ったのか!?」

 

「ええ、さすが共和国の優秀なゾイド乗り・・・全然適わなかったわ。」

 

「なあなあ!父ちゃんとどんな戦いをしたんだ!?」

 

父親の話が出てからバンは興味津々で尋ねてくる

 

「今思えば彼との戦いが初めての敗北だったかな?」

 

「あの時お前さんはワシらの追撃部隊を足止めするために出てきたのだったな。」

 

 

 

それは、まだ帝国と共和国の戦争が本格的武力衝突をしていなかった時だった。

 

クルーガーは野営地で帝国軍の偵察部隊を追撃していたが

 

『こちら第3小隊!帝国軍の増援と交戦中!』

 

「敵の数は!?」

 

『1体のセイバータイガーです!』

 

「何だと!?たった1体のセイバータイガーに押されているのか!?」

 

帝国軍のたった1体の救援・・・アオイとセイバータイガーに苦戦を強いられていた。

 

『あいつ火器も使わないで次々と仲間を・・・うわぁぁぁ!!』

 

通信していた兵士の叫びと共に回線が切れた。

 

「くそ・・・たった1体のゾイドにここまで・・・!」

 

『クルーガー、俺が出るぜ。』

 

そこにダンから通信が入った。

 

「ダンか。」

 

『たった1体で追撃部隊を殲滅するとは、帝国軍にも骨のある奴がいるもんだ。』

 

「帝国軍の三銃士の一人・・・もしくはシュバルツ家の・・・」

 

『まさか、あのおっさん共は引退してるし、シュバルツのとこもまだガキだって話だぜ?』

 

「だとすると一体・・・?」

 

『確かめに行けば分かる。行くぜジーク!』

 

ダンは相棒のコマンドウルフ、ジークを駆り戦場へ急ぐ

 

「名将クルーガーの部隊ってこの程度?指揮官の頭がキレてても兵士個人の腕前がこれじゃね・・・」

 

アオイは共和国の追撃部隊を全滅させ、物足りなさそうな表情をしていた。

 

この時のアオイは第一装甲師団に配属される前・・・まだ一端の兵士だった時だ

 

「このまま帰るのも物足りないなぁ・・・」

 

「そうかい、そしたら俺と手合わせしてくれないか?」

 

アオイが呟いているその時、ダンのコマンドウルフが目の前に現れる。

 

「コマンドウルフ?しかもたった1体で向かってくるなんて・・・まあ人のことは言えないけど」

 

通信回線が開き、モニターが開く。

 

「クルーガーの部隊を全滅させるとはなかなかやるじゃないか。」

 

「まあね。」

 

「おいおいお前のような女の子がこれをやったっていうのか?」

 

アオイに向かってきたダンの態度は、かなりフランクでありとても今から戦闘が始まるとは思えないものだった。

 

「どうだ、俺の息子の嫁さんにならないか?強いゾイド乗りなら歓迎するぜ?」

 

「息子?」

 

「まだ10歳位だけどな」

 

「顔も見たこともない、しかもまだそんな子供と結婚?冗談じゃないわ」

 

「そうか?俺に似て強いゾイド乗りになると思うけどな。」

 

「そういう問題じゃないわ。」

 

次第に苛立ちを見せるアオイは、操縦桿を強く握り戦闘態勢に入る。

 

「後退している仲間のために何人たりとも通すわけにはいかない。」

 

セイバータイガーはコマンドウルフに向け駆け出した。

 

「お?なかなか踏み込みがいいな。けど!」

 

ダンのコマンドウルフは後ろに飛び、上から飛び込んでくるセイバータイガーを避けた。

 

「避けた!?」

 

今までの兵士相手に通用していた攻撃が容易く避けられた。

 

それに驚き僅かにできた隙を、ダンは見逃さなかった。

 

「そらよ!」

 

コマンドウルフの2連装ビーム砲がセイバータイガーに着弾した。

 

「きゃあああ!!」

 

「油断は禁物だぜ?」

 

「舐めるな!!」

 

セイバータイガーは再びコマンドウルフへと向かっていく。

 

「素直な動かし方だ」

 

コマンドウルフはセイバータイガーの手前の地面を撃ち、砂埃を立込ませ視界を奪う。

 

「煙幕なんて小細工通用するわけが!!」

 

怯まずそのまま突っ込み攻撃を仕掛けようとしたが

 

目の前にいたコマンドウルフが、いなかった。

 

「いない!?」

 

アオイが気付いた時には、既に勝負は決していた。

 

コマンドウルフは宙を飛び、真上からセイバータイガーを銃口で捉えていた。

 

「安心しろ、命まではとらないからよ。」

 

ビーム砲を数発撃ち、セイバータイガーを行動不能にする。

 

「くっ・・・!コンバットシステムフリーズ・・・ここまでね・・・」

 

倒れたセイバータイガーの目の前に、ダンのコマンドウルフが近づいてきた。

 

「捕虜にする気?言っとくけど私の情報は当てにならないわよ。」

 

「そんなことしねぇさ。お前は腕を磨けばもっと強くなれる。ここで才能を散らせるのはあまりにも惜しい。」

 

「え・・・?」

 

「行きな。強くなって、また俺と勝負してくれよな!」

 

ダンが言った言葉と、嬉しそうな表情にアオイは呆気に取られていた。

 

それは軍人でも何でもない

 

ただ一人のゾイド乗りのものだった。

 

共和国にも、こんなゾイド乗りがいたのかと

 

アオイは感動していた。

 

「・・・おかしな人。」

 

アオイはセイバータイガーを立ち上がらせる。

 

「退くわよ、セイバー」

 

セイバータイガーが反転し走り去ろうとするところで、ダンが話しかけてきた

 

「お前さん、いつか戦争が終わればウィンドコロニーに来てくれ。嫁さんにならなくてもいいが俺の息子を紹介してやる。ゾイド乗りとして色々話をしてくれ」

 

「・・・戦争が終われば、ね。」

 

それだけを言い残し、アオイは後方で待つ帝国軍部隊と合流した。

 

そして、ダン・フライハイトの戦死を知ったのは、それから間もなくだった。

 

「やっぱり父ちゃんはすげーゾイド乗りだったんだな!」

 

「アオイが一撃も与えられなかったってすごいわね。」

 

全員がダンの技量に感心をしていた。

 

「ところで、そこまで強かったお前さんが何故帝国軍を抜ける事になったのだ?」

 

クルーガーにそう尋ねられ、アオイの表情が暗くなった。

 

「アオイ、無理なら話さなくても」

 

ムンベイが気遣ったが、アオイは顔を横に振る。

 

「いいえ、話しておきたいの。もう過去に縛られたくないから・・・」

 

決意したようなその表情を見て、バン達は続けて話を聞く

 

それは、ダンと戦った数年後のことだ。

 

試作兵器を搭載したレッドホーンが暴走

 

セイバータイガーがアオイを試作兵器から庇い機能を停止した翌日に

 

アオイは兵舎からいなくなっていた。

 

セイバーを失った現実を受け入れられず、基地から出て行ったからだ。

 

虚ろな表情で、何も口にせず数週間、宛もなく砂漠を歩き続けた。

 

そして、力尽き熱せられた地面に倒れてしまう。

 

(このまま・・・死んでしまうのかな・・・私・・・)

 

照りつける太陽に焼かれ、肉体が干からびる事を想像し

 

彼女は、意識を手放した。

 

しかし、アオイは目を覚ました。

 

目に映ったのは、生い茂った草木と小さな湖

 

「え・・・」

 

いつの間にか、オアシスにたどり着いていたようだ。

 

「何で・・・」

 

自分が何故この場にいて、生きているのか疑問に思った直後

 

後ろから大きな足音が聞こえてきた。

 

何かと思い振り向いてみると

 

紅い装甲に身を包んだゾイドがいた。

 

「あなたが・・・助けてくれたの・・・?」

 

その問いに答えるかのように、そのゾイドは鼻先をアオイに擦り寄せる。

 

そして、コックピットハッチを開けた。

 

「乗れ・・・ってこと?」

 

乗ってくれと言っているかのように唸り声をあげる。

 

戸惑ってはいたが行き倒れた自分を助け、そして自分の乗り手になってくれと懇願してくるゾイドに

 

アオイは、どこか運命の様なモノを感じ

 

ゾイドのコックピットに乗った。

 

目の前にあるモニターに文字が表示された。

 

「ライガーゼロ・・・それがあなたの名前なのね・・・」

 

紅いゾイド・・・ライガーゼロがそれに応えるかのように咆哮した。

 

「共和国の新型ゾイドが逃げ出したのかしら・・・でも、他のゾイドと何処かが違う・・・」

 

どこで作られたのか、どこから来たのかわからなかったが

 

アオイは不思議に思っていたが、分からないことをいつまでも考えている時間が惜しく

 

「それじゃあ・・・ゼロ、あなたの走りを見せてちょうだい!」

 

生き生きとした表情でライガーゼロを動かすアオイ

 

それに応えるように、ライガーゼロも荒野を駆け出す。

 

 

 

「それが、ゼロと出会った話よ。」

 

その場にいた全員が聞き入り、言葉を失っていた。

 

「そうか・・・あのゾイド、ライガーゼロがお前さんを救ってくれたわけか。」

 

「ええ」

 

クルーガーのそこ言葉に、アオイは微笑んだ。

 

「そりゃ盗ろうとしてマジギレされるわけだ。」

 

「うっわヒデェなアーバイン」

 

「最低ねアンタ」

 

「ひどい・・・」

 

「グオイ!!」

 

「だー何でそうなるんだよ!?」

 

バン達のやり取りを見て、アオイは吹き出し大笑いをする。

 

「アハハハハハハ!!」

 

「おい笑うこたぁねえだろ!!」

 

「ゴメンゴメン、ホントあなた達と一緒だと退屈しないわ・・・!」

 

「それじゃあさ!」

 

バンは席を立ちアオイに向け手を差し伸べる。

 

「改めて、よろしくな!」

 

バンから差し伸べられた手に、アオイは目を丸くする。

 

「いいの?一緒に旅をしても・・・」

 

「何言ってんのさ。」

 

「私達、もう仲間でしょ?」

 

「グオ!」

 

「ま、ゾイド乗りが大いに越したこたぁねぇけどよ。」

 

理由はどうあれ、自分たちを騙し裏切ったアオイを

 

彼らは、仲間として迎い入れてくれる。

 

その温かい笑顔に、アオイも微笑む

 

「ありがとう、これからもよろしくね!」

 

 

 

バンとアオイ達の旅は・・・ここから始まった

 




あけましておめでとうございます
本当なら年末に上げる予定でしたが・・・仕事があってなかなか・・・

前もって宣言しますが、この次のガリル遺跡の話は捻りようがなかったのでパスします
その代わりといってはなんですが次はオリジナルの話になります。
書きたかったシナリオの一つなのでお楽しみに
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。