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「デスザウラー?」
「ああ、フィーネが遺跡で呟いたんだ。」
ガリル遺跡の調査をしていたバン達は
外で待機していたアオイに遺跡であった事を話した
「遺跡内部にスリーパーのレブラプターが・・・?」
「ああ、手がかりらしきモンは帝国軍が持って行っちまっただろうぜ?」
「そう・・・」
帝国に先回りされた事に、アオイは残念に思う。
結局得られたのは遺跡に何かがあった事
そしてフィーネが呟いた“デスザウラー”という単語だけ
「結局お宝なんてありゃしなかったさ。」
「せっかく長い時間を掛けてここまで来たのに・・・残念ね。」
落胆するムンベイとアオイだったが、バンは違った。
「けど、フィーネの記憶の手掛かりが見つかった。それだけでも収穫だと思うぜ?」
僅かな手掛かりでも大きな希望を見出し、喜んでいた。
それにアオイも釣られて喜び微笑む。
「そうね。」
安堵の空気が周りを満たす
それを、一つの砲撃が吹き飛ばした。
「きゃああ!!」
「何だ何だ!?」
全員がいきなりの攻撃に困惑する間も、彼らの周囲に攻撃が着弾する。
「スリーパーはバンが全部片付けたはずじゃ・・・!」
「違うわムンベイ!あれ!」
アオイが指を差した方向に、1体のゾイドが走ってきていた。
そのゾイドは赤く、2足歩行で走っていた。
「何だよあのゾイド!?」
「ゴドスか?」
「違う!あれはイグアンよ!」
「イグアンって何だよアオイ!?」
「イグアンは帝国がゴドスに対抗するために作られたゾイドよ!今じゃ使われなくなったけど・・・」
アオイがそう説明しながらライガーゼロに乗り込み向かってくるイグアンに向かって走る
イグアンは左腕にある4連グレートランチャーをゼロにむけ放つ
「そんなもの!」
ゼロは飛び上がり回避し、イグアンの目の前に着地する
「!?」
(この感じ・・・帝国軍兵士じゃない?)
疑問に思いつつ、イグアンを頭突きで弾き飛ばす
イグアンの動きが止まったことを確認し、アオイはゼロから降りてイグアンのコックピットに近づいていく。
「やめろアオイ!危険だ!」
アーバインの制止の言葉も聞かず、アオイは外からハッチを開けた
「あの馬鹿何して」
アーバインの言葉半ばに
イグアンのコックピットから銃声が響く
同時にアオイの右腕から鮮血が飛ぶ
「アオイ!!」
それを見て青ざめるバン達
アーバインはコマンドウルフに乗りアオイを助けに行く
「んの野郎!!」
アーバインが怒鳴りイグアンを攻撃しようとするが
「待って!!」
アオイが、攻撃の手を止めた。
「お前何して」
「撃ったらダメ・・・」
「何言ってやがんだ!!」
「いいから!!」
何故攻撃しないのか、アーバインはイグアンのコックピットを見ると
「な・・・!?」
そこにいたのは、少年と少女だった
その少年の震える手には銃が握り締められアオイに銃口を向けられていた。
アオイは、この二人が何かに怯えているのを悟り危害を加えさせないようにしたのだ
「大丈夫、私達は敵じゃないわ」
「じゃ、じゃあ何であの遺跡にいたんだ!」
少年が銃口を向けたまま怒鳴った。
「お前ら僕達があの遺跡の近くに住んでるからって村を焼き払いやがって!」
「おいおいお前さんら、何か勘違いしてねぇか?」
「あたしらは敵じゃないよ」
「グオ!」
アーバインとムンベイの言葉に、二人の緊張が少しづつ和らいでいく
「おねえちゃん達・・・帝国軍じゃないの?」
帝国軍 その単語に一同が驚く
「帝国軍だって!?」
「どういうこと?説明してもらえるかしら?」
「う、うん・・・」
「その前に名前・・・教えてくれる?」
「僕はムウ。こいつは僕の妹のサマリだよ。」
ムウの背中から顔を覗かせたサマリが、黙ったまま頭を下げる
ムウとサマリは、二人の村に向かう道中に自分達に起こったことを話す
二人の住んでいた村はガリル遺跡から近い位置にあり、代々遺跡と関係が深い場所でもあった。
帝国軍はガリル遺跡に調査に向かい、突然村を攻撃し焼き払ったそうだ。
「帝国軍が!?」
「ひどい・・・!」
バンとフィーネが憤りを感じている中、アオイの表情が暗くなる。
「アオイ・・・」
「複雑だよなぁ・・・元身内がそんなことしてたんだからよ。」
「え、お姉ちゃん帝国軍なの!?」
アーバインの言った事に、ムウが驚く
「元・・・ね。今は帝国軍じゃないわ。」
アオイの寂しげなその言葉に、ムウとサマリは黙ることしかできなかった。
村に辿りついたバン達は、言葉を失った。
辺り一面砲撃で焼け焦げた跡が目立ち、家屋も原型を留めていないものがほとんどだった。
アオイは・・・ただ拳を握り締めやり場のない怒りを抑えていた。
損傷の少ない建物に入り、サマリはアオイの撃たれた右腕の治療を施す
「手際がいいわね。」
「う、うん・・・」
サマリは静かに返事をし、包帯代わりの布を巻き処置を済ませた。
「これで大丈夫。」
「ありがと」
「あの・・・ごめんなさい。お兄ちゃんがあんなことを・・・」
「いいのよ。こんな酷い仕打ちを受けたもの、こうなっても仕方ないわ。それに掠り傷だったし」
アオイは笑顔でサマリを励ます
そこに周囲を探索していたバン達が戻ってきた。
「どう?」
そう尋ねても、バンとアーバインは首を横に振るだけだった。
「ダメだ、人っ子一人いやしねぇ。」
「そう・・・」
「何でだよ・・・」
バンがそう呟いた後、声量がだんだんと大きくなる
「この村の人達が何したってんだよ!帝国軍の奴ら、許せねぇ!!」
「バン・・・」
アオイは、自分の服を掴んで啜り泣いているサマリに気付いた。
アオイは、黙ってサマリの頭を撫でる
そこにムウが部屋に入ってくる
「僕、村長と帝国の兵士と話しているのを聞いたんだ。村長は帝国の奴らに出て行けって言った・・・その後、村長は撃たれて死んだんだ・・・」
話していく内、ムウから涙が零れ始める。
「父さんも母さんも・・・みんな、帝国軍に殺された・・・!」
「カルロもアリーナも・・・ロヴィーナもみんな・・・!」
サマリも泣き出し、部屋に二人の泣く声が響く
その光景を・・・一つの黒い影が覗いていた
「ターゲット確認」
『閣下の予想通りだな。作戦通り今夜決行する。』
「了解」
夜が更け、バン達が眠っている中
アオイは眠れないムウとサマリの話相手になっていた。
「ムウ、あのイグアンはどこから?」
「父さんが乗ってたゾイドだよ。」
「お父さん、賞金稼ぎだったの。」
「そう・・・」
「僕、父さんみたいに強いゾイド乗りになるのが夢なんだ!」
ムウは、アオイの前で始めて笑顔を見せた。
「サマリは医者になるのが夢なんだよな?」
「そうなの?」
「お兄ちゃんいつも怪我してるから、私がいつも診てあげてるの。」
サマリも、自然と笑顔になり始めていた。
「その内、村の人達も診てあげる様になって治してあげるのが楽しくなって・・・私、いつか病気や怪我で泣いている人達を笑顔にしてあげたいの。」
「二人共、素敵な夢を持っているのね。」
ムウとサマリ、アオイは今まであった悲しいことが嘘のように笑いあった
「あ、そうだアオイお姉ちゃん、これ見てよ。」
ムウがポケットから石版の様なものを取り出した。
「なにこれ?」
「帝国が遺跡に入る前に見つけたんだ。」
「遺跡ってガリル遺跡?」
「お兄ちゃんってばお母さん達に内緒でよく遺跡に行ってたの。」
「僕だってあまり奥に行かないようにしてたんだ。怖かったし・・・」
アオイはムウが取り出した石版を手に取り
「これは・・・!」
描いてあるものに驚く
それは、ニューヘリックシティの遺跡研究所で見た
ライガーゼロと恐竜型ゾイドが描かれていた
「お姉ちゃん知ってるの?」
「共和国の研究所で似たようなものを見たの。でもこれ・・・」
研究所で見たのは、恐竜型ゾイドと対峙しているものだったが
この石版に描かれていたのは
恐竜型ゾイドと並列し、何かに立ち向かっているかのように見える。
一体どうなっているのか 疑問に思っていたが
「どうしたのお姉ちゃん?難しい顔して」
「え?う、ううん・・・何でもない」
今は目の前の問題が第一だと考える
「二人共、私達と一緒に旅をしない?」
「え、いいの?」
「私の知ってるコロニー・・・風の都とも言われてるんだけど、そこなら二人の夢も叶えられるわ。」
「本当!?」
「ええ。バン達から私が話しておくわ。」
「ありがとうお姉ちゃん!」
ムウとサマリが、嬉しさのあまりアオイに抱きついた。
「ちょ、ちょっと一応私怪我人・・・」
撃たれた傷が痛んだが、それ以上に嬉しさの方が増していた。
「さ、もう寝なさい。明日は早くでるわよ。」
「「はーい!」」
二人が寝付いたことを確認すると、
「さ~て、バンとフィーネは簡単だけど、アーバインをどう言いくるめようか・・・」
アオイも寝るためにゼロのコックピットに入る。
「夢・・・か。」
二人の語ってくれた夢 その時の二人の笑顔がアオイの脳裏によぎる。
「絶対守らなくちゃ・・・あの子達を、絶対に・・・!」
アオイがそう決心した矢先
前方のモニターからアラームが鳴る。
「え、何?」
誰からの通信か、確認すると
「!!」
アオイは息を呑んだ。
「帝国軍の秘匿回線・・・!このコードを知ってるってことは・・・!」
間違いなく帝国軍上層部と通じている部隊
そして、この村の悲劇を起こした犯人
その犯人が送ったのは指定座標と暗号文
アオイリュウガ ヒトリデコイ
ただそれだけが書かれていた
これを送った部隊と通じているのは
「プロイツェン・・・!!」
そう確信し、ゼロの操縦桿を握る。
「ゼロ、付き合ってくれるかしら?」
ゼロは静かに唸り、指定されたポイントに向かった。
「う・・・お姉・・・ちゃん?」
眠りが浅かったのか、ムウが目を覚ました。
荒野の一角に、展開している部隊があった。
「プロイツェン閣下、ターゲットはこちらに確実に向かってきています。」
『そうか。何としても抹殺するのだぞ、そのために新型を回したのだからな。』
「はっ!」
プロイツェンが通信を切ったと同時に
アオイとライガーゼロも部隊の前に現れた。
「来たな、アオイ・リュウガ。帝国の裏切り者め。」
「何・・・こいつらのゾイド、正式配備がまだなやつばかりじゃない・・・!」
アオイの目の前にいたのは、表にはまだ出ていないゾイドだった。
最新のAT装備が施されたセイバータイガー
ガトリングキャノンを2門装備したダークホーンが2体
巨大なビームバズーカを担いだアイアンコング・・・否、アイアンドリル
そして、巨大な背びれを持った恐竜型ゾイドが中央にいた。
「何あのゾイド・・・いつの間にあんな新型が・・・」
「驚くのも無理はない。貴様が帝国軍を抜けてからそれだけ経ったと思う?」
声が聞こえてきたのは、中央の新型ゾイドからだ
「とは言っても正式配備はまだ先の話だ。」
「あんたらが・・・」
「うん?」
「あんたらがあの村を・・・!!」
愚行をした目の前の犯人に、アオイは顔を強ばらせる。
「我々の遺跡調査を、あの村の村長が拒否をしたのだ。」
「だから・・・何だって言うの・・・!!」
「我々はプロイツェン閣下から命令を受けて行動している・・・『遺跡調査の障害になるものは何者であろうと全て排除しろ』とな。」
「!! 貴様らぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
アオイは我慢の限界を超え、怒号を上げながらゼロを突貫させる。
「攻撃開始!裏切り者を抹殺せよ!!」
「了解!!」
帝国軍のゾイドが、ゼロに向け砲撃の雨を降らせる
「そんなもので!!」
ゼロは最小限の機動で回避し、速度を落とさないまま新型ゾイドに向かい駆ける。
「閣下の言った通り、厄介なゾイドのようだが・・・やれ。」
「はっ!」
アイアンドリルが吠え、ゼロに向かって走り出す。
「行くよゼロ!!」
ゼロが咆哮し、両前足の爪が輝き出す。
「ストライクレーザークロー!!!」
アイアンドリルに向けストライクレーザークローで攻撃を仕掛ける
しかし、アイアンドリルの豪腕に押され弾き返されてしまう。
「くっ・・・!!」
「舐めるな、こいつをアイアンコングと一緒にしてもらったら困る!」
「そろそろ終わりにしよう、我々には時間がないのでな。」
下がるアイアンドリルと代わり、新型ゾイドが前に出た
そして、背びれを前面に出し電気を帯びる。
「何・・・何をするつもりなの?」
「それは、貴様がよく知っている事だろう?」
隊長らしき男が唇を釣り上げ、引き金を引いた。
そして、背びれから雷撃が放たれライガーゼロを襲う
「きゃああああああ!!!」
機体全体に雷撃を浴び、ライガーゼロは地面に倒れる
「こ、この攻撃・・・まさか・・・!」
アオイは、この武装に覚えがあった。
それは、あの時レッドホーンに積まれていた試作兵器の雷撃だった
しかし直接的な雷撃ではなく、動きを封じられるだけだった。
「これは我が帝国で開発が進んでいたジャミングウェーブだ。そしてそれを可能にしたゾイド・・・ダークスパイナー、この力があれば反乱軍の雑兵など一網打尽よ。」
自慢げにダークスパイナーに乗っている隊長が語っている中
アオイはセイバータイガーを失った兵器を前に体を震わせていた。
「嫌・・・嫌・・・!」
あの時みたいに、ゼロが死ぬ
セイバーと同じようにアオイの目の前から消える
また同じ悲劇が繰り返されてしまうことに怯え、その場を動けずにいた。
「あの時のものとは違うが目的は同じだ。いくら貴様のゾイドでも・・・ん?」
隊長が話している中、アオイが震えて動けないところに気づき
両肩のマシンガンを容赦なくゼロに浴びせる
「人の話は最後まで聞き給え。アオイ・リュウガ准尉」
「う・・・何が・・・目的なの・・・」
「我々の目的は遺跡の調査だ、だがプロイツェン閣下から貴様の抹殺せよと命令された。」
「わ・・・かったわ・・・」
アオイは震える声で
「私・・・投降する・・・だから、ゼロを・・・あの子達に手は出さないと約束して・・・!」
自らが犠牲になりゼロを、仲間達を救う事を宣言した。
「・・・いいだろう。我々の任務は貴様の抹殺、それ以外は私の思考するところではない。」
ゼロはアオイを渡すまいと立ち上がろうとする
「ゼロ、ハッチを開けて。もう私は・・・大切な仲間を・・・相棒を失いたくないの。」
嫌がるゼロだったが、アオイは強制にハッチを開けようとスイッチを押そうとする
その時、砲撃が帝国軍のゾイドを襲った。
「な、何だ!?」
「奴の仲間か!?」
兵士達とアオイが砲撃のあった方向を見ると
「帝国軍め・・・お姉ちゃんをいじめるな!!」
ムウのイグアンが、そこにいた
「イグアン!?まさかムウ!?」
「イグアンだと?旧式が何故ここに・・・」
「隊長、奴はあの村のゾイドです!」
「何?ということは・・・生き残りがいたか。」
帝国軍の矛先が、アオイからムウとサマリに向けられた。
それを察知したアオイが叫ぶ
「やめて!!あの子達に手は出さないで!!」
「あの村の生き残りがいたとなれば放ってはおけん。消せ。」
隊長の命令を受け兵士達は銃口をイグアンに集中させる。
「サマリ・・・怖くない?」
「ううん・・・お兄ちゃんと一緒なら、アオイお姉ちゃんのためなら怖くない!」
「うん!僕達の夢を叶えてくれると言ってくれたアオイお姉ちゃんは、僕達が助けるんだ!」
「ガキ共がいきがりやがって・・・!!」
苛立ちを見せるように、ダークスパイナーの背びれがイグアンに向けられた。
それに怯まずイグアンはダークスパイナーに向け駆け出す。
「ダメ!!イグアンじゃそのゾイドに勝てない!!」
アオイの制止も聞かずイグアンは走り続ける。
「ジャミングウェーブ最大出力、これなら中の乗り手もただじゃすまない。」
「逃げてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
アオイの叫び、隊長は・・・引き金を引いた
強力な電磁波がイグアンを襲い
イグアンは機体から黒煙を上げて動きを止めた。
「あ・・・ああ・・・!!」
目を見開き固まるアオイに追い打ちをかけるように
セイバータイガーATとダークホーン、アイアンドリルが容赦なく集中砲火を浴びせた。
アオイはその光景を、ただ見ている事しかできなかった。
砲撃が止み舞い上がった塵が晴れると
そこにあったのは、イグアンだった鉄の残骸しかなかった。
原型を留めておらず、もげた頭部のコックピットハッチが開いていた
そこに・・・ムウとサマリの姿はなかった。
アオイの目の前で・・・守りたかった者は、無惨に消されてしまった。
「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
ただ、悲鳴しか上がらなかった。
目の前の現実を受け入れられずに
ただただアオイに涙が溢れる
(僕、父さんみたいに強いゾイド乗りになるのが夢なんだ!)
ムウとサマリの夢を笑顔で語ってくれた
(私、いつか病気や怪我で泣いている人達を笑顔にしてあげたいの。)
あの光景が、走馬灯の様に脳裏に過る
「何で・・・何でこんな酷いことができるの・・・!!どうして・・・!!」
そんなアオイを嘲笑うかのように
ダークスパイナーはイグアンの頭部を踏み潰す
「決まっている。このガキ共はあの村の生き残り、生かしておいては閣下の障害となる。だから排除したまでだ。」
隊長は、イグアンだった残骸を見下しながら嘲笑う
「プロイツェン閣下の理想を理解しない愚か者は、死んで当然だ。」
落ち着いたキャラを装っていたのか、隊長は高笑いをあげた。
同時に、アオイは泣くのを止めた。
「・・・そう」
アオイは操縦桿を握り締め、ゼロを立ち上がらせる。
「! あいつまだ動けたのか!?」
「臆するな、ジャミングウェーブを浴びたのだ、まともに動けるはずが」
「黙りなさい」
声量が小さくも、ドスのきいたアオイの呟きに兵士達が押し黙る。
「ゼロ、本気で行くわよ。いい?」
ゼロも帝国軍の残虐な行いを許せないのか、今まで以上に強く吠えた。
「いいわね?アーマー・・・強制排除」
操縦レバーを押し込んだと同時に
ライガーゼロが纏っていた紅いアーマーが次々と剥がれ落ち
黒いボディを露出させる。
その光景に、帝国兵士は目を丸くする。
「正気か?アーマーを外せばレドラーの機銃でもアウトだぞ?」
「必要ない。あんた達の攻撃なんて当たらないから。」
この期に及んでまだ反抗する態度を見せられ、隊長が顔を強ばらせる。
「愚か者め!!総員攻撃開始!殺せ!!!」
帝国軍のゾイドが一斉にゼロに向け攻撃を浴びせた。
つい先ほどイグアンに浴びせた攻撃と同じだ。
再び、周囲に塵が舞い上がった。
「どうだ、これならゴジュラスもひとたまりもないぞ!」
塵が徐々に晴れ、彼らの目に映ったのは
着弾の跡以外何もなかった。
「何!?消えただと!?」
「上か!」
「上にもいないぞ!?」
一体ライガーゼロはどこに消えたのか
彼らが周囲を見回すまもなく
「ぎゃああああああああああああ!!!」
衝撃音と兵士の断末魔が辺りに響く
その方向を見ると
四散したダークホーンと、その頭部を加えているライガーゼロがいた。
ゼロは容赦なくダークホーンの頭部を噛み砕いた。
「な、何だこいついつの間に!?」
「こ、攻撃しろ!早く!!」
セイバータイガーともう1体のダークホーンがゼロに向け発泡した。
全て回避されたが、彼らから見たら
まるでゼロが分身したかのように弾丸をすり抜けていった
「何だこいつ急に速く!?」
「ば、化け物か!?」
そう叫んだセイバータイガーの乗り手が
気付く間もなくゼロに爪で頭部を切り裂かれた。
「ヒィ!?」
怯えた兵士はガトリングキャノンを乱射するが
恐怖でぶれる照準でゼロに当てられなかった。
ゼロは砲撃を繰り返すダークホーンにゆっくりと近づき
「や、やめ」
ダークホーンの頭部を噛み砕いた
「こ、この野郎!!」
アイアンドリルがビームバズーカを放つ
寸前でゼロが通り過ぎ様にビームバズーカを抉りとり
アイアンドリルに向け投げつける
武器をぶつけられて怯むアイアンドリルに
ゼロの爪が頭部に叩きつけられた。
その時間・・・わずか数十秒 兵士達にとってあっという間の出来事にしか見えなかった。
その光景を見て、隊長が全身を震わせる。
「あのゾイドのアーマー・・・ただの防御機構ではない・・・!自分の力を抑える・・・ただの拘束具だったのか・・・!!」
そううろたえていると
ゼロの目が、次の獲物を見つけたと言わんばかりにダークスパイナーを捉えた。
「ヒ!?」
隊長はジャミングウェーブをゼロに向け放つ
だがそれは無駄な足掻き 今のゼロには、絶対に当てられない
「う、うわあああああああああ!!!」
すぐに間合いは詰められダークスパイナーは押し倒された。
左前脚でダークスパイナーを抑えたまま、ゼロは右前脚の爪を光らせ頭部に狙いを定める。
「ま、待ってくれ!!頼む!!」
自分も殺される そう察知した隊長は制止の言葉をかける
「わ、私も閣下に命令されて・・・仕方がなかったんだ!!」
先ほどと打って変わって、みっともなくアオイに命乞いをしていた。
アオイはただ黙っていた
「帝国でプロイツェン閣下に少しでも逆らえば命はなかった・・・!!」
「だから何?」
聞く耳も持たず、ゼロは右腕を振り上げる
「やめてくれ!!私には妻と子供がいる!!ここで私が死んだら家族が粛清にあってしまう!!」
「だから何?」
アオイは、震えた声でつぶやき出す
「ムウは、私よりも強いゾイド乗りになれるはずだった・・・!」
その声は、だんだんと震え
「サマリは、病気や怪我で泣いている人達を笑顔にできる医者になれるはずだった・・・!!」
だんだんと声量が増し
「あの二人の夢を・・・その可能性を奪ったアンタらが・・・みっともなく命乞い?
馬鹿にしてんじゃないわよ!!!!」
涙を流しながら力の限り叫んだ
「ヒィィ!?!?」
「アンタたちがあの子達の可能性を奪ったんだ!!アンタたちに自分の未来を得る権利なんてありはしない!!!」
「た、頼む・・・やめてくれ・・・やめてくれ・・・!!」
ゼロは、ダークスパイナーの頭部に狙いを定めた。
「あ、ああ・・・プロイツェン閣下ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「こっちから爆音が聞こえたぞ!」
「あの馬鹿、また一人で無茶して・・・!」
アオイとムウ、サマリがいなくなっている事に気付いたバン達は
豪雨が降り出した中、爆発が聞こえた場所へ急いでいた
「見て!」
フィーネが指を差す方を見ると
そこに、黒い機体を露わにしたライガーゼロがいた
「ライガーゼロよ!」
「何で黒いんだ?」
「んなこと気にしてる場合じゃないだろアーバイン!アオイ!無事か!!」
バンが駆けつけたと同時に
ゾイドの残骸がまず一番に見えた。
「これってまさか・・・!!」
「う、嘘・・・!!」
バンとフィーネが驚愕する中、アーバインは頭部がもがれたゾイドの残骸を観察する。
「これは帝国軍のゾイドか・・・」
「てことは、こいつらがあの村を・・・」
そして、彼らはすぐに気付いた
頭部が抉れたダークスパイナーの傍
ムウとサマリが乗っていたイグアンの残骸の前で
アオイが、泣き叫んでいたのを
事態に気付いたバンとアーバイン、ムンベイが言葉を失い、
フィーネがその場で泣き崩れた
しかし、それは全て豪雨の音でかき消された。
その上空で1体のゾイドが彼らを見ていた。
それは、マウントオッサでアオイと対峙したガン・ギャラドだった。
「フ・・・悲しみに暮れる戦乙女も、また美しい・・・」
静かに笑い、ガン・ジャラドは豪雨の中を飛び去っていった。
雨が上がり、夜が明け始める頃
「よし、アーマーの取り付け完了っと!」
ムンベイがグスタフのアンカーを使いライガーゼロの剥がれたアーマーを取り付けていた。
「ライガーゼロ、これでいいかい?」
ムンベイがそう尋ねると、ゼロは満足そうに唸り声を上げる。
しかし、すぐにイグアンの残骸の前にいたアオイを見る
彼女は、四散したイグアンの残骸を集め一まとめにした。
集めていくうち、遺体が発見されると思っていたが、腕の一本も見つからなかった。
それ以上に、自分の未熟さのせいでムウとサマリを死なせてしまった事が悔しくて
「ごめんね・・・ごめんね・・・!!」
イグアンの残骸の前で、懺悔の涙を流す。
そして、それはすぐに・・・
「プロイツェン・・・許さない・・・絶対に許さない・・・!!!」
プロイツェンの憎しみへと変わった。
「アオイ・・・」
「今はほっとけ、俺だって同じ事をしてただろうぜ。」
バン達は、ガリル高原の村を後にした。
そこに残されたのは、イグアンの残骸と
そこに、確かにいた少年と少女を弔う十字架と
ライガーゼロが刻まれた石版だけだった・・・
前書きにもあった通り、かなりダークな展開となりました。
ライガーゼロ素体状態の戦闘を出したいがための話でした。
この状態だとデススティンガーも圧倒できるそうです
やばい、次回のシナリオ構成がやりずらい・・・(自業自得)