ZOIDS 紅の獅子   作:モルヤパ

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第14話 進化の繭

レイヴンのジェノザウラーが立ち去った後、アオイはシールドライガーから脱出したジークの元に駆けつける。

 

そこにはフィーネとドクター・ディがいた。

 

「フィーネ!バンは!?」

 

フィーネにそう聞くが、首を横に振るだけだった。

 

バンの生存は絶望的・・・そう思った直後

 

ジークの腹部が開き、そこからバンが現れた。

 

「バンがジークの中に!?」

 

「バン、バンしっかりして!」

 

フィーネがバンに呼びかけ、アオイはバンの首筋に手を当てる。

 

「大丈夫、気絶してるだけみたい。」

 

それを聞きフィーネは胸をなでおろし安心する。

 

しばらくしてバンは意識を取り戻し、横たわるジークの顎を撫でる。

 

「お前が助けてくれたんだってな。」

 

「グオゥ・・・」

 

「ありがとよ。」

 

「心配はいらん。お前さんと脱出するのにちょいとばかり力を」

 

「俺が!俺がレイヴンの挑発に乗らなけりゃジークは・・・シールドライガーは!」

 

バンはレイヴンと戦いジークを傷付け、シールドライガーを死なせてしまった事を悔いて身体を震わせる。

 

そんなバンを見かねて頬を引っ張るドクター・ディ

 

「イダダダダ何すんだよ!!」

 

「しっかりせんか、過ぎたことを悔やんでどうする。お前さんにはやらなければいかんことがあるんじゃないのか?」

 

ドクター・ディにそう言われて何か感づいたのか、バンは微笑む。

 

その時、ライガーゼロの方から通信音が鳴り出す。

 

「何だ!?」

 

「まさかレイヴンから!?」

 

アオイはすぐにコクピットに入り通信回線を開く。

 

『・・・ンの荷物は預かっている。繰り返す、レイヴンの荷物は預かっている。』

 

レイヴンの荷物・・・ルドルフを攫った後、帝国軍に引き渡したのだろう。

 

「ルドルフ殿下は無事なんでしょうね・・・?」

 

『そう怒らなくても無事だ。弟の様に見てきた殿下がそんなに心配か?』

 

「傷一つでも付けてみなさい。絶対アンタ達を生かして帝国に帰さないから。」

 

無線越しで殺気を感じ、通信相手は少したじろぐ。

 

『だ、だがこのままでは帝国に帰っても意味がない。指輪がないんだからな。』

 

「指輪?」

 

通信相手が言うには、いつも首に下げているガイロスの指輪が見当たらないらしい。

 

それを差し出すことでルドルフを返すと交渉をしてきた。

 

「指輪?」

 

「殿下が首に下げていた指輪のことよ。」

 

「それしか思い当たらないけど・・・でも何であの指輪が?」

 

「あの指輪は彼が皇太子である証・・・そして皇帝になるために必要なもの」

 

アオイに続いてドクター・ディも言葉を続ける。

 

「プロイツェンはあの指輪を利用しようとしとるんじゃ、まったく・・・」

 

「でも指輪なんて何処に?」

 

「ここにあるぜ。」

 

声のする方へムンベイが体を向けると、バンの手元にガイロスの指輪があった。

 

「バン!あんたいつの間に・・・!」

 

「俺とルドルフが喧嘩してた時に拾ったんだ。」

 

「んじゃ、行くか」

 

「指輪を返せば本当にルドルフを返してくれるの?」

 

フィーネの疑問に、アオイが答えた。

 

「指輪を返せ・・・奴らが言ったのはそれだけ。」

 

「じゃあ指輪を渡した直後蜂の巣・・・ってわけね。」

 

「そんなドジは踏まないぜ!何としてもルドルフを助けるんだ!」

 

バンはリフボードを持ち帝国軍がいる場所へ向かう。

 

「待って私も!」

 

「お前はここに残れ」

 

アオイも行こうとしたが、アーバインが手をかざし止めた。

 

「何でよ!ルドルフ殿下の身が危ないっていうのに!」

 

「全員がここを出て、帝国軍に襲われたら誰が守るんだ?」

 

アーバインの最もな指摘にアオイは息を飲んだ。

 

それにムンベイが反論する。

 

「ちょっと、それはあたしが頼りないって言ってんのかいアーバイン?」

 

「そうじゃねえ、ロクな武装もしてねぇグスタフだけじゃすぐにやられちまう」

 

「おんなじじゃないかい!」

 

「とにかく、アオイはここに残ってフィーネ達を守れ。いいな?」

 

ルドルフを助けに行きたい思いが強いアオイだったが、渋々了承し首を縦に降る。

 

そして、バンとアーバインは砂漠を走っていった。

 

「さーてと、二人が戻ってくるまで一眠りするかのぅ。」

 

ドクター・ディは呑気に地面に横たわった。

 

「気楽なものね、やらなけりゃいけないことがあるとか言ってバンをけしかけといて」

 

「まぁ心配いらん。バンは歩き出した、つらいだろうがそのつらさに立ち向かおうと腹を決めた証拠だ。立ち止まっていては解決はせん。」

 

「だけど・・・」

 

「それにルドルフを預かっているという無線の内容からして、レイヴンという厄介な相手はおらんようだしの。」

 

「レイヴンがいないのは安心だけど・・・状況が厳しいのは変わらないわ。」

 

心配そうに顔をしかめるアオイを見かね、ムンベイがかの彼女の肩を叩く。

 

「大丈夫、きっと無事にルドルフを連れて帰ってくるさ。」

 

そう励まされ、アオイは少し不安が和らいだ。

 

「そうね。」

 

バン達がルドルフ救出に向かって数刻が経ち

 

「まったくあいつらいつまでかかってるのかしら?」

 

「相手は帝国軍、しかもプロイツェン選りすぐりの兵士だろ?苦戦してるんだろうさ。」

 

ムンベイがそう言った後、ため息をつくアオイ

 

その時、フィーネが突然立ち上がった。

 

「フィーネ?」

 

三人がフィーネの方を見ると、衰弱しているはずのジークまで立ち上がり

 

一瞬でフィーネを取り込んだ。

 

「フィーネ!」

 

「ジーク一体何を!?」

 

二人が止めに入る間もなく、ジークが光りだし

 

石化したシールドライガーと合体

 

その後、シールドライガーが光の繭に包まれる。

 

「な、何なのあれは・・・」

 

「フィーネ!」

 

ムンベイが光の繭に向かって走り出す。

 

「待ってムンベイ迂闊に近づいたら」

 

アオイの警告は遅く、ムンベイは光の繭に弾き飛ばされた。

 

「ムンベイ、大丈夫!?」

 

「気絶してるだけのようじゃな。アオイ、ムンベイをグスタフに」

 

「ドクター・ディは?」

 

「少し調べてみようと思う。後のことは任せたよ。」

 

そう言って何処から出したのか、奇天烈な人形の様な物を着てきた。

 

「・・・何そのカッコ」

 

「特殊防護服じゃよ。あの繭に近づくにはこれぐらいしなければな。」

 

ドクター・ディは光る繭の中に入り、すぐに見えなくなった。

 

「あの繭って、中に入れたんだ・・・」

 

あまりの出来事に呆気に取られていたアオイだが

 

気絶したムンベイを介抱するためグスタフへ担いで行く

 

「何で女の私がこんなことを・・・ていうかその前にムンベイ担いでいけっつの・・・!」

 

そそくさと繭の中に消えていったドクター・ディに毒つきながらムンベイをグスタフのコクピットに寝かせる。

 

「しばらく寝かせておけば大丈夫ね・・・」

 

そして

 

「だ~一体何だよこれ!!」

 

バンの叫ぶ声が聞こえてきた。

 

「戻ってきた!?」

 

アオイはすぐに声のする方へ駆け出す。

 

そこにはアーバインとルドルフ、繭から出てきたドクター・ディもいた。

 

「殿下!!」

 

アオイの叫びに気付き、三人が振り返る。

 

「アオイ姉さん!」

 

「殿下!」

 

アオイはバンとアーバインに目もくれずルドルフを抱きしめた。

 

「殿下・・・よくご無事で・・・!」

 

「バンとアーバインさんが救ってくれました。」

 

「オイオイ、俺らの心配はしてなかったのかよ?」

 

「あらアーバイン、いたの?」

 

「オイてめぇ!?」

 

「そんなことよりじいさん!俺の留守中に何があったんだ!どうして俺のライガーがこんなことになっちまったんだよ!」

 

「フィーネとジークのせいよ。」

 

その疑問に答えたのは、アオイだった。

 

「ジークがフィーネを取り込んで、シールドライガーと合体したらああなったの。」

 

「フィーネとジークがあの中に・・・?」

 

「つーかムンベイはどうした?まさか寝てんじゃねーだろうな?」

 

「いやあの姉ちゃんは迂闊にもあの繭に近づき過ぎてな。」

 

その後の説明をドクター・ディがする前に

 

「だぁぁぁぁぁ!?」

 

バンが繭に近づき弾き飛ばされる。

 

「バン!」

 

「つまりああなるわけだ。」

 

「なるほどな・・・」

 

「バン達が帰ってきたって・・・?」

 

ムンベイは気がついたのか、グスタフから降りてきた。

 

「おおやっと起きてきたか。」

 

「いきなり起きて大丈夫ムンベイ?」

 

「平気さアオイ、ありがとね。」

 

二人の会話の後、バンが起き上がりドクター・ディに掴みかかる。

 

「おいじいさん!そのへんてこな服俺に貸せ!俺があの中からフィーネとジークを連れ戻す!」

 

「無駄だ、この服を着たところで肝心の繭の本体には指一本触れることもできやせん。今は慌てず騒がず待つだけじゃ。」

 

推測ではあるが、ジークはシールドライガーを復活させているかもしれないとドクター・ディは語る。

 

「そしてフィーネは何らかの役割を」

 

と、ドクター・ディの説明の途中で

 

「どりゃああああ!!」

 

バンは近くにあった棒をバネにして繭へと飛び込んだ。

 

しかし先ほどと結果は同じく弾き飛ばされるだけ

 

「バン、大丈夫ですか!?」

 

「馬鹿ね何回飛ばされたら気が済むの!?」

 

「・・・何で・・・俺じゃないんだ・・・」

 

地面に頭からめり込んだ状態で、バンは呟いた。

 

「もしこれがライガーを復活させていることなら、何でジークは俺と一緒にやらねえんだよ!!何で俺じゃなくてフィーネなんだよ!!」

 

「それは・・・ジークにも色々都合が・・・」

 

「そんな都合があるか!勝手にこんなことしやがって・・・!!」

 

アオイが執り成そうとしたが、バンの苛立ちは強く

 

「俺だけ除け者にしやがってよ!!」

 

「みっともねえ」

 

それをアーバインがピシャリと切り捨てる。

 

「何いじけてやがるんだよ、みっともねえ!」

 

「俺がみっともねえだと!!」

 

「バン、オーガノイドはわしらの想像には及ばん不思議な力がある。時には人知を超えた力を引き出す特別なゾイドだ。」

 

ドクター・ディの後に、アオイも続けた。

 

「そうよバン、ジークも最初ゾイドコアが停止したシールドライガーを復活させたんでしょ?だから「そんなの関係ねえよ!!」

 

バンが叫んでアオイの言葉を遮った。

 

「そんなの・・・関係ねえよ・・・ジークは俺にとって最高の相棒なんだ!かけがえのない大切な仲間なんだ!それにフィーネだって・・・それだけじゃいけねぇのかよ!!」

 

バンは怒鳴りながら繭の方へ指を差す。

 

「こんな訳のわからねえ光の繭になっちまって・・・そんなの俺・・・納得できねえよ!!」

 

そう吐き捨てたバンは、ホバーボートに乗って何処かへと行ってしまった。

 

「バン!あんたどこに行くつもり」

 

アオイとルドルフは追いかけようとしたが、アーバインが止めた。

 

「よせ」

 

「どうしてです!?バンは僕にとって大切な友人です!」

 

「そう思うんだったら尚更だ。」

 

「まだ帝国の兵士がいるかもしれないのに危険すぎるわ!」

 

「今のあいつは自分自身の力で立ち直るしかない。もしそれができなかったらこれ以上旅を続ける意味などない。」

 

「一人にしろ・・・そういう意味?」

 

「下手に干渉すれば逆効果だ。」

 

アオイはアーバインをしばらく睨みつけ

 

「・・・わかったわ。」

 

渋々、アーバインの言葉を納得する。

 

ふとライガーゼロの方を見ると、あらぬ方向へ顔を向けていた。

 

「ゼロ、どうしたの?」

 

何かがあったと言いたげに唸り声を上げるライガーゼロだったが

 

この時、何も感じなかった。

 

そう・・・狡猾な蠍が見張っているにも気づかずに・・・

 

その毒牙に狙われているとも分からずに・・・

 




かなり悩んだ結果、二人の帰りを待つ役にしました。
一緒にルドルフ奪還にって言うのも考えたんですが、どうも行動が思いつかなかったもので・・・

次回はみんな大好き(?)あの人の登場です
冗談じゃないわよぅ!!
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