バン達はリヒトタウンに辿り着いていた。
顔が知れ渡っているアオイと、周辺の警戒のためにアーバインは留守番をしていた。
ガイガロスに連絡を入れるために立ち寄ったのだが、電話線が切れて通話ができない状態だった
しかも
「殿下の死亡記事・・・こんなものなんか信じて・・・!!」
新聞にルドルフが死亡した記事が出回っており、バンがルドルフのことを説明しても信じてもらえなかったそうだ。
そして、もう一つの記事
元帝国軍アオイ・リュウガ准尉が前皇帝を暗殺した容疑で指名手配がされたというものもあった。
アオイはその記事を思い切り握り潰し川に投げ捨てた。
「あの指輪を証拠にルドルフの死をでっち上げたんだ。」
「恐らくルドルフ暗殺もあんたがしたことになるかもしれないわね」
「そんなもの誰が信じるのよ!」
「だけど、お店の人笑ってた・・・」
フィーネのその一言にアオイは黙る事しかできなかった。
確かに彼女を信じている者ならデマだと分かる。
しかし、民衆の大半は彼女のことを“軍のエースパイロット”位の知識しか持っていない
前皇帝を暗殺したと報じられれば、誰もが信じる。
いくらバン達が身の潔白を訴えようが、通じることはない。
「こんな時にディ爺さんは雲隠れしちまうし・・・」
そう呟き、バンは立ち上がった。
「来いルドルフ!」
「え?」
「さっきの店だ!根性で話せばきっとわかってくれる!」
「・・・単細胞」
バンの言った事をアーバインが一蹴した。
「何!?」
「敵はルドルフを抹殺するために非常線まで張ってんだぞ、通報されたらおしまいだ」
「だから根性で!!」
根性論を掲げるバンにため息を漏らし、アーバインはルドルフにある事を尋ねる。
「ルドルフ、お前が連絡を取ろうとした人物は?」
「ホマレフ宰相です。」
「そいつはお前の力になってくれるんだな?」
「はい、信頼できる人物です。」
「宰相は信頼できる。私からも保障するわ」
「連絡が取れない以上、こちらからガイガロスに乗り込む以外にない」
他に方法が浮かばない以上、それしかないとルドルフとアオイが頷いた
「でも非常線は?」
「根性で強行突破だ!!」
「単細胞」
「グァンガィゴォ」
「あら???」
フィーネとジークにまで言われてしまいずっこけるバンだった
そして、夜が明けた
「フィーネ達、非常線を突破できたかな?」
「ムンベイのこった、危ない橋は渡り慣れてるさ。フィーネがうっかり漏らさなければな」
「大丈夫よ、絶対アレ以外は口にするなって言いつけておいたから」
アオイ達は山道から非常線を突破しようとしていた。
「だがライガーゼロが懐いてついてきてるって設定は無理があんじゃないのか?」
「それしかないんだから仕方ないでしょ?」
その頃
「このゾイドは?」
「ここに来る途中で懐かれちゃってね、大丈夫害はないから」
「お姉さん結婚式なんです」
「ったく、ヒデェ霧だな」
霧が辺りを覆う中、バン達は頂上を目指していた。
「殿下、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。」
「待て!」
「どうしたアーバイン?」
「シッ!静かに」
アオイがバンに注意した後、空から何かが飛んでいる音が聞こえてくる
「レドラーだ」
「何!?」
「2機・・・いや3機いるわね」
「どうやら俺達の山越えに気付いたようだ」
「へっ、でもこの霧じゃどうせ俺達を発見できねぇさ。ザマぁみろ!」
「うわぁぁぁぁ!!」
突然、ルドルフが足を滑らせ斜面を転げ落ちていく
「ルドルフ!!」
「殿下!!」
急いでルドルフを追いかけると、崖下の足場に倒れていた
「大変!!」
「待てアオイ!ここの岩は脆い、一番軽いバンに助けに行かせるぞ!」
ロープを伝いながらバンは崖下にいたルドルフの元に辿り着く
「よし、もう大丈夫だ」
と、安心していた矢先、乗っていた足場が崩れた
寸ででルドルフの手をバンが掴み事なきを得た
「もう・・・寿命が縮んじゃったじゃない!」
「何でお前の寿命なんだよ」
「大丈夫ですよアオイ姉さん、僕もバンも長生きできます」
「ルドルフ、そういうことじゃなくってさ・・・」
過剰に心配していたアオイと、ずれた事を言うルドルフ
おかしくなってお互いに笑いあった
「まあ何にせよ無事でよかった。さ、先を急ぐぞ」
アーバインが言い終えた後、ジークが草むらの奥に向かって吠えだした。
「グオ!!」
「どうしたジーク?」
バンがジークの視線の先を見ると
何かが草むらを掻き分けてくる音が聞こえてきた。
「何だ!?」
「!まずい早く逃げるわよ!!」
「え、何だよ!?」
アオイに言われるがままにバン達は走り出した
「おい何なんだよ一体!」
「迂闊だったわ!レドラーが出てきた時点で疑うべきだった!!」
「だから何なんだよ!!」
「今向かってきてるのはリルガよ!」
「「リルガ?」」
初めて聞く単語にバンとアーバインは首を傾げる
「モルガに似た対人用のゾイドよ!こういう人間が入りにくい場所に投下して使うゾイドなのよ!それに・・・」
「それに?」
「それに、見た目が気持ち悪いのよ~!私何度もアレのメンテやったんだけど身震いしちゃって・・・ゾイドの中でアレだけは好きになれないのよ~!!」
涙目になって叫ぶアオイに、バン達は呆れる事しかできなかった。
そして、そのリルガが彼らの視界に入るまで接近してきた。
「ほら来た!!」
「くそ!!」
アーバインがライフルを取り出しリルガに向けて放つ
アオイも拳銃を出してリルガに向かって引き金を引いたが、全て外した。
「お前軍人のくせに何で射撃下手くそなんだよ!!」
「仕方ないでしょゾイドにしか興味なかったんだから!!」
言い争いながらリルガを迎撃していくが、数が多く苦戦を強いられていた。
逃げるバン達の前にもリルガが現れ行く手を阻む
「こっちだ!」
別の道を選び逃げていったが
「しまった!」
崖に追い込まれ逃げ場を失った
「しつこいな!!」
アーバインがライフルを構え撃とうとしたが、弾切れを起こしてしまう
「何!?くそ!!」
「こっちも弾切れよ!」
攻撃手段を失くした二人の代わりにジークが前に出てリルガを尻尾で弾き飛ばす
投入してきた数が異常なのか、リルガが減る様子が全くなかった。
リルガは口から粘液を吐き出しジークの動きを封じた
「ジーク!!」
「私が行く!」
アオイはマチェットナイフを持ちジークを助けに行こうとする
しかしリルガに阻まれ、粘液でを浴びせられアオイも身動きができなくなる
「いや~気持ち悪い~!!」
リルガはバン達にジリジリと近づいていくが、一斉にリルガが活動を止めた。
「な、何だ?」
止まった理由はすぐに分かった
帝国軍の兵士が草むらから次々と現れこちらに銃口を向けてきた。
「ようやく見つけたぞ」
バン達は、帝国軍に捕まった。
「早くこれ外してよ~」
その頃
「冗談じゃないよ!こんな砂漠のど真ん中で立ち往生なんて!!」
目的地に向かっていたムンベイ達は
グスタフのタイヤが砂漠の砂にとられ進めなくなっていた。
「ああどうしよ・・・ライガーゼロ!何とかならない?」
ライガーゼロはグスタフのレーダーの支柱を咥え引っ張り出す
「あ、あんまり乱暴にしないでよね!慎重に丁寧に!!」
バン達は帝国軍の野営地へ連行され、簡易な牢に閉じ込められた。
しかし、アオイだけは別の場所に閉じ込められていた。
「何でこうなるかな・・・」
小さい野営テントの中央で、椅子に座らされ手足を縛られていた。
テントの入り口から帝国軍兵士が数人入ってきた。
「まさかな、帝国軍のエースが皇帝殺し、しかも殿下の偽物を語る賊に組していたとはな」
「あんなゴシップ以下の報道を信じているなんてね、ホントおめでたいわね今の帝国軍は」
「貴様!少尉になんて口を」
「まあ待て。」
アオイの態度が気に食わずいきり立つ部下を手で遮り制止した。
「貴様は明日の明朝に帝都へ移送される。」
「見え見えだけど、刑は何になるのかしら?」
「無論、死刑は確実だ。前皇帝を殺めたのだ、市中引き回しや拷問も覚悟しておけ」
「そんな不特定多数が喜びそうな事、やめて欲しいけど?」
「貴様に拒否権はない。貴様の愚行をそこで反省していろ」
帝国軍兵士がテントを出た後、アオイは舌を出した
「べ~だ!」
余裕の態度を見せてはいたが、どう脱出しようか悩んでいた。
(縄抜けなんてできないし・・・かと言ってこのままだと殿下達も危ないし・・・)
策が思い浮かばず時間だけが過ぎていき
(仕方ない)
とりあえず行動に移すことにした。
「ねえ、そろそろトイレ行きたいんだけど?」
「そんな見え見えの嘘に騙されんぞ」
テントの外で見張りをしている兵士がそう言い、アオイは顔を引きつらせイライラを募らせる。
「いや割とマジでしたいんだけど、女の子にこのまましろって言うつもり!?」
「皇帝殺しにゃちょうどいいんじゃねえの?」
「違いねぇ!!」
と、見張りの二人がゲラゲラと笑い出した。
「最低ね・・・ホント帝国軍の品って落ちたわね・・・」
呆れてものも言えずため息を付いていると
「ん?どうしたロカイ」
「あの女に何か用でも」
その時、殴る音がアオイの耳に入ってくる
「え?」
「な、貴様何の真似」
もう一度殴る音が聞こえた後
「・・・もう大丈夫だ」
見覚えのある帝国軍兵士がテントの入り口を開けてきた
それは共和国軍の捕虜で、バンに助けられた兵士だった。
「あ、あんたあの時の」
「静かに」
「あ、うん・・・」
ロカイは縛られているアオイの手足の縄をナイフで切った。
「ありがとう、助かったわ」
「まだだ、まだあの少年達を助けていない」
「バンと殿下の事ね」
「手伝ってくれ」
アオイとロカイは巡回する兵士の目をかいくぐり、バン達が捕えられている牢の後ろに着いた。
「おいアーバイン!よくジッとしてられるな!」
「ジタバタしたって何も変わりゃしない」
「静かにしていろ!」
「へいへい」
牢の上に静かに上った二人は、アイコンタクトした後
飛び降りて見張りの兵士を一人づつ気絶させた。
「な、何だ!?」
「静かに!」
「あ、お前はあの時の」
「積もる話は後、今出してあげるから」
「よかった、アオイ姉さんも無事だったんですね」
牢の鍵を開けバン達を出した後、野営地から離れた。
「お前だったのか」
「思い出したぞ、バンが助けたあの時の捕虜か」
「借りは返した」
そう言い残しロカイは野営地に戻ろうと振り返る
「待て!ジークは何処だ!?」
「オーガノイドは諦めろ」
「ダメだ!アーバイン、ルドルフを連れて先に行け」
「嫌です!僕もジークを助けます!」
「・・・だとさ」
「そう簡単に割り切れるものじゃないのよ。ジークはただのオーガノイドじゃない、私達の大切な仲間なの」
「・・・仕方ない、来い」
ロカイはジークが閉じ込められているテントへバン達を連れて行った
裏からナイフでテントの幕を切り開き、ロカイは一つのコンテナを開けた
「ジーク!」
「グオ」
リルガの糸に巻かれたジークが見つかった。
「ヘヘッ、ダイナマイトか。こいつは使えるぜ」
アーバインは見つけたダイナマイトに細工を施し、ジークに絡まった糸をすべて取り除いた
「ジークが無事でよかったです」
「殿下、そろそろ気付かれる頃です。すぐに脱出を」
「脱走だぁぁぁぁ!!」
兵士の叫び声が聞こえ、外が慌ただしくなってきた。
「まずい、早く逃げるぞ!」
すぐにテントから出て森の中に入ろうとしたが、軍用車のライトに照らされ見つかってしまう。
「しまった!?」
「き、貴様は!?」
仲間の裏切りに驚いていると、時限式のダイナマイトが爆発し全員がそちらに注意を逸らす
「今だ!」
「っ逃がすな!!」
帝国軍兵士がライフルを持ちバン達を追いかける。
森を突っ切る中、後方から帝国軍兵士がライフルを発砲しながら追いかけてくる。
「そっちじゃない!こっちだ」
ロカイの指示で別の道を行き、しばらく走ると開けた場所に出た。
「麓があんな近くに!」
そこはムンベイ達と合流する場所からそう離れていない場所だった。
「詳しいのね」
「俺の生まれ故郷だ。この山は庭の様なものさ」
「そういやお前、お袋さんには会えたのか?」
バンがそう尋ねた後、ロカイは顔を暗くする
「あんな思いまでして共和国から逃げ帰ったのに・・・俺が家に着いたときお袋はもう・・・」
「そんな・・・」
「これからどうする?」
「もう帝国には戻れない。俺は裏切者さ」
そう言いながらロカイは自分のドッグタグを引き千切り地面へ落とす。
「ねえ、私達と一緒に行きましょう!殿下が皇帝になれば貴方も真っ当に」
アオイの提案に、ロカイは首を振る
「もう戦いはゴメンだ」
後方から銃声が響いてきた。
「もうきやがった!」
「さあ、早く行け!」
そう言いながらロカイは発砲音が鳴る方向へ走り出した。
「おいお前の名前は!?」
バンの問いに応えずロカイは森の奥へ消えていった。
「バン行くぞ!!」
「殿下、急ぎましょう!」
ロカイの事が気にかかるバンだったが、ムンベイ達を合流するために麓目指して駈け出した。
(絶対・・・絶対生き延びて・・・私達が帝国を変えてみせる・・・だから・・・死なないで・・・!!)
アオイは涙を流しながら、ロカイの無事を祈り走り続けた。
日が昇り始めた頃、合流地点に辿り着いたが
「ありゃ!?グスタフが来てねえぞ!?」
ムンベイ達が何処にも見当たらない
「妙だな、昨日の内に到着してるはずなのに」
「合流場所を間違える・・・ムンベイがそんなドジ踏むはずないけど・・・」
「あ、あれは!?」
ルドルフが向いた方向を見ると、土煙を上げながら何かが向かってくるのが見えた。
「帝国軍だ!」
アーバインは眼帯のカメラを使いレブラプターが接近してきているのを見つけた。
「何ぃ!?やべぇ!!」
急いで近くの岩山に隠れた。その直後、レブラプターの砲撃がバン達を襲う。
「くそ!ブレードライガーさえあれば!!」
「グオ!!」
ジークが吠えた先を見ると、ムンベイのグスタフとライガーゼロがこちらに向かってくるのが見えた。
「花嫁さんの到着だよ!!」
「お姉さん結婚式なんです・・・」
「フィーネまだ言ってたの・・・」
言いつけを過剰に守ったフィーネに呆れるアオイだった
「行くぞジーク!!」
バンがジークの背中に乗り、グスタフの元まで飛んだ。
ライガーゼロはバンがブレードライガーに乗るまで前に出てレブラプターの前に出て盾になる
「頼むぜブレードライガー!行くぞジーク!!」
「グオオオオオ!!」
ジークはブレードライガーと合体し、レブラプターの群れに向かって走り出す。
「ゼロ!!」
ライガーゼロもアオイを乗せてレブラプターに向かって走る。
「今の私は気が立ってるの・・・容赦しないわよ!!」
「いけええええええ!!」
ブレードライガーはブレードを展開し、レブラプターを次々と斬り付け
「ストライクレーザークロー!!」
ライガーゼロは爪を振るいレブラプターを引き裂いていく
そして、並列したレブラプターをブレードライガーのブレードで切り裂き
帝国軍の部隊は全滅した。
「急ぐわよバン!」
「ああ!」
アーバインとルドルフがグスタフに乗り、追手を振り切るため山道を急ぐ。
「なんとか追手を振り切れたわね・・・」
夜が明け太陽が大半顔を出した頃、アオイ達は追跡を免れた。
しかし、素直に喜べずバンと同じく暗い顔をしていた。
脱出を手助けしてくれたロカイの安否が気がかりで
「・・・きっと、プロイツェンから帝国を救ってみせる・・・だから、それまでは・・・」
アオイは、ロカイのドッグタグを握りしめ
彼の無事を祈り、ルドルフを護り帝国を救う事を、静かに誓った。
ちょっとエロイ妄想した人、先生怒らないから正直に手を上げなさい
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(-ωー)ノ
まさかあの脱走兵士が再登場するとは思ってなかったですね
無事だといいんですけど・・・