ZOIDS 紅の獅子   作:モルヤパ

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第19話 走れウルフ

山を抜けたバン達は、石造りの建物が並ぶ街に辿り着いていた。

 

城を思わせる立ち並びな街だったが、出店はおろか通行人の影すら見当たらない。

 

「なんでぇ、見かけだけでさびれた街だな」

 

「廃棄された街・・・ってわけでもなさそうだけど」

 

「そうね」

 

補給のために立ち寄ったバン達が残念がっていた

 

「あの・・・」

 

顔を知られているルドルフは、正体が悟られないよう

 

「それより、本当に僕がこんな恰好をする必要があるんでしょうか?」

 

女装をし、見た目はどこからどう見ても女の子にしか見えなかった。

 

「大丈夫、とっても似合ってるわ」

 

「そういう問題じゃありません!」

 

「しょうがねえだろ、お前の正体がばれないようにするためなんだから」

 

バンがそう言っても腑に落ちない表情を見せるルドルフを見かねアオイも声をかけた。

 

「ご辛抱ください殿下、一時的にそうしてるだけですから・・・」

 

そして、何故か頬を赤らめ視線を逸らす

 

「それに・・・結構カワイイし・・・」

 

「え!?」

 

「アオイ?」

 

「お前何言ってんだよ」

 

アオイの口走ったことにルドルフは驚き、フィーネは首を傾げバンは呆れていた。

 

そして、思わず言ったことに今さら恥ずかしくなり顔を両手で隠し激しく振り乱す

 

「え、あ!も、申し訳ありません殿下!今言ったことは忘れてください!!」

 

やれやれと言いたげにバンは首を横に振った

 

その直後

 

「待てこのクソガキ!!」

 

男の叫び声が聞こえそちらの方を向くと、果物を抱えながら少年が走ってきた。

 

「泥棒だ!捕まえてくれ!」

 

「よ~し!!」

 

バンは向かってきた少年の身体を抱える

 

「離せ!離せよ!!」

 

「そうはいくか!何で泥棒なんかするんだ!欲しいものがあるなら働いてお金を稼いで」

 

「それじゃ間に合わないから!」

 

「え・・・」

 

アオイは何か事情があると思い聞こうとしたが

 

「すまねえな。こいつ警備隊に突き出してやる!」

 

男が少年の襟首を掴み街の警備隊に連行しようとする。

 

「ちょっと待って!その子何か事情がありそうよ」

 

「そうですよ、何もそこまでしなくても」

 

「そこまでしなくてもだと!?いいか、今この街は帝国の兵隊崩れの盗賊のおかげで物資が全く入って来ねぇんだ!」

 

男が声を荒げて言ったことに、ルドルフは驚きを隠せなかった。

 

「帝国の兵士が盗賊を!?」

 

「余所もんのあんた達にとっちゃたかが果物ひとつかもしれねぇがこっちにとっちゃ数少ない大事な商品なんだ!」

 

「バン」

 

「ああ。おじさん、その果物俺が買うからさ・・・そのこ許してやってくれないか?」

 

「まあそういうことなら・・・70ガロスだ」

 

「ええええええ70ガロス!?」

 

「普通の10倍の値段ね」

 

あまりの値段の高さにバンは思わず声を上げた。

 

「さっきも言ったろ、兵隊崩れの盗賊のおかげで品物が何も入ってこねぇんだ」

 

「それにしても高すぎない?」

 

「バン、贅沢言ってられないわ。」

 

アオイは袋からお金を出し、男の手に握らせた。

 

「私が払うわ、その子を許してあげて。」

 

「毎度・・・この人達に感謝するんだな!」

 

男は少年を離すと、その場を離れていった。

 

「あ、ありがとうお姉ちゃん」

 

「話してくれる?何で果物を?」

 

「妹が・・・熱を出してるんだ・・・」

 

「熱?」

 

少年から話を聞くと

 

彼は教会の孤児施設にいて、最近熱にうなされる子供が増えてきているそうだ。

 

「そうだったんですか・・・」

 

「ねえ、その教会まで案内してくれる?」

 

「う、うん」

 

少年の案内で街の教会まで足を運ぶ

 

「そうですか、ペーターを助けていただきありがとうございます」

 

教会の神父が礼を述べて頭を下げた。

 

「気にしないでください。成り行きみたいなものですから」

 

アオイはそう言うと、ペーターの傍まで行きしゃがみ目線を合わせた。

 

「これに懲りたらあの森には近づかないこと、いいわね?」

 

「う、うん。分かったよお姉ちゃん」

 

神父には盗みを働いたことを隠し、パチオの実を森の奥深くまで探しに行ったことにし誤魔化した。

 

「何もお礼はできませんか、旅の疲れをここで癒していってください。」

 

「ええ、でも気になることが」

 

「奪ったワクチンを返しなさい!!」

 

アオイの言葉半ばで誰かの怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「何だ何だ?」

 

「この声はシスター・エリーナ?」

 

「行ってみましょう」

 

声のする方へ行くと

 

銃を持ったシスターが、ムンベイとアーバインに突きつけている姿が見えた。

 

「シスター・エリーナ、何の騒ぎかね?そんな物騒な物を持ち出したりして。ところでその方たちは?」

 

「神父様、ワクチンを奪った憎き盗賊ですわ!」

 

「だからそれは誤解だって!」

 

「嘘おっしゃい!だったら何で自衛団の人に追われていたの?」

 

「だからそれはあいつらが勝手に兵隊崩れだの盗賊だのと決めつけて・・・アーバイン、あんたも何か言いなさいよ!元はと言えばあんたのその顔が盗賊まがいの顔をしてるから!」

 

「あんた達そこまでにしときなさい」

 

状況を見かねてアオイとバン達もその場に出てきた。

 

「バン、フィーネ?ルドルフにアオイまで?あんた達そこで何やってるの?」

 

「あなた達もこいつら盗賊の仲間だったのね!?」

 

エリーナはバン達に銃口突きつけ、アオイはバン達の前に出て庇う姿勢を取る。

 

「でぇぇちょっと待てよ!?」

 

「シスター・エリーナ!銃を下しなさい」

 

「しかし神父様・・・こいつらは大切なワクチンを奪った盗賊で」

 

「その方たちはペーターを助けていただいたこの少年達のお知り合いですよ」

 

「だから・・・あたし達はあんたが言ってる盗賊なんかじゃないんだってば~」

 

「あなたは黙ってて!」

 

エリーナの暴挙に見かねたアオイが

 

「いい加減落ち着きなさい」

 

エリーナの元まで歩き、銃身を掴み下へ下した。

 

「仮にも神聖な場の教会で銃を撃つものじゃないわ。それに何が起こってるのか説明してくれてもいいんじゃない?」

 

「その方の言う通りですシスター・エリーナ、事情を話してあげなさい」

 

「・・・はい、神父様」

 

エリーナは渋々、何が起こっているかを説明するためある一室へバン達を案内した。

 

そこには、顔を赤くし熱でうなされている子供が大勢いた。

 

「メアリー、お前の大好きなパチオの実だよ。早く良くなって一緒に食べよう」

 

「・・・ガフキーカハール熱か」

 

子供たちの症状を見てアーバインが呟いた。

 

「そうよ、その通りよ。」

 

「ガフキーカハ・・・何それ?」

 

「この辺りでよくある熱病だ。体力が弱ると突然発病してしまう。特に小さい子供がこれにかかると二、三日中にワクチンを打たなければ持たない。」

 

「私も知ってる・・・これにかかって死んだ子も何人か・・・」

 

「そうよ、そのワクチンが手に入らないのよ!あなた達が定期便を襲って補給が途絶えたせいよ!!」

 

まだ疑っているエリーナにムンベイは苦笑いで弁明する

 

「だ~からそれはあなたの勘違いで」

 

「あなたは黙ってて!」

 

「はい」

 

「バン、僕をその兵隊崩れの人達のところに連れてってください!」

 

「え?」

 

「だ・・・・・・・ダメよ、危険すぎる!」

 

思わず殿下と言いそうになり言葉を一瞬詰まらせるアオイだった。

 

「僕が説得して軍に投降させます。僕の言葉ならその人たちも」

 

「こらこら、あんたが出てったら余計ややこしくなるだろ?」

 

ムンベイがルドルフの襟首を掴んでいたその時

 

「神父様!メアリーの様子が!」

 

メアリーの容態が悪化し、呼吸が早くなる

 

「メアリーしっかりして!メアリー!!」

 

(このままじゃ・・・あの子の命は今日で・・・)

 

アオイはガフキーカハール熱で死んだ子供の症状を知っており、メアリーの状態を見て心の中で呟いた。

 

「・・・バン行くぞ」

 

突然アーバインが部屋を出ようと歩き出した。

 

「おいアーバイン?」

 

「待ちなさい!!」

 

エリーナは追いかけてアーバインに銃口を突きつけて止めた。

 

「ワクチンを返しなさい!ワクチンがなければあの子たちはもう・・・!」

 

アーバインは向けられた銃身を掴みエリーナを真っ直ぐ見据えた。

 

「ワクチンは絶対俺が持ってくる。それまで子供達の面倒をよく見てろ!」

 

「おい待てよアーバイン!」

 

外に行くバンとアーバインをアオイは追いかけた。

 

「待って!私も行くわ!」

 

呼び止められたアーバインは振り向かずに足を止めた。

 

「お前、ガフキーカハール熱をよく知ってんだな?」

 

「施設にいたときにね。だから一刻も早く「お前はここに残ってなるべく症状を抑えていろ」

 

ワクチンを取り返しに行かせまいと言うアーバインに、アオイは顔を強張らせる。

 

「何でよ!!盗賊を働いた帝国軍も許せないし早くしないとあの子達の命は」

 

「ワクチンを取り戻せても死んだら元も子もねぇだろうが!!!」

 

いつも以上に強く怒鳴るアーバインに、アオイは息を呑み驚く

 

「・・・ワクチンはなるべく早く取り戻す。だがそっちもできるだけ症状を遅らせてくれ、頼む。」

 

アーバインのいつも見ない態度に、アオイは黙って頷くことしかできなかった。

 

そして二人はゾイドに乗り込み、盗賊のアジトへ向かった。

 

「あんなアーバイン見た事なかったわね・・・」

 

アオイは静かに見送った後、熱にうなされる子供達を看病するために教会へ戻った。

 

「常に頭は冷やした状態にするのよ。濡れタオルは熱くなったらすぐに替えるのよ。」

 

「あいよ!」

 

ムンベイとフィーネ、ルドルフも手伝ってくれたこともあり症状はいくらか緩和していった。

 

「あなた達を盗賊と間違えたりして本当にすみませんでした。」

 

「いいってことさ、こんな事情なら片っ端から悪者扱いしたくもなるって」

 

エリーナはムンベイに謝罪し蟠りがなくなったようだ

 

「ほら、あなた達は別の部屋に。病気が移ったら大変だわ」

 

「でもこんなに苦しんでいる人達がいるのに何もしないわけにはいきません!」

 

「大人しそうな顔してるのに意外と強情な女の子ね」

 

「い、いや僕は」

 

ルドルフが男だと気付かないエリーナの言葉に彼は顔を赤くする。

 

「気が済むようにやらせてあげて、その子は割と丈夫だし」

 

「でもこの子達まで発病してしまったら・・・」

 

エリーナの心配をよそに、ルドルフとフィーネは自信ある表情を見せた。

 

「大丈夫、もし病気にかかってもバンが持ってきてくれるワクチンがあります!」

 

「バンはどんなことでも負けたりしないわ」

 

「こらこらあんた達、ちったアーバインのことも良く言ってやろうよ」

 

先頭に立って行ったアーバインを省くルドルフとフィーネにムンベイは苦笑いを浮かべた。

 

「あなた方はあの人達を心の底から信じているのですね」

 

エリーナがそう感心した後、アオイは手を叩き自分の方へ向かせた。

 

「ほらほら手が止まってるわよ。少しでも病気の進行抑えないといけないんだから」

 

「おっといけない」

 

「アオイさん、次は何をすればいいですか?」

 

「ええと次は・・・・・」

 

アオイの指示もあって子供達の病状はなんとか抑えることができたが

 

「まずいわ・・・これ以上は病気を抑えられないわ・・・!」

 

日が暮れ始めてきた頃、状況は最悪な方向へ向いていた。

 

「メアリー!メアリー!!」

 

「呼吸が浅くなってきている!?」

 

「何やってんだいバン達は!」

 

未だに戻らないバンとアーバインの帰りを祈っていたその時

 

ゾイドの走る足音が響いてきた

 

「バン!?」

 

「バンが戻ってきたんですね!」

 

バン達が帰ってきたと喜ぶフィーネとルドルフだったが

 

アオイは違った

 

「違う!足音が3つ聞こえる・・・それにこれはブレードライガーとコマンドウルフの足音じゃない!!」

 

「てことは兵隊崩れの盗賊共が!?」

 

「エリーナさんはフィーネ達とここにいて!」

 

アオイはすぐに外に出て向かってくるゾイドを確かめると

 

「黒いセイバータイガー!?」

 

そのゾイドが3体、街に向かって走ってきていた。

 

「兵隊崩れのくせにあんなゾイドまで・・・!」

 

すぐにライガーゼロに乗り、向かってくるセイバータイガーへ向かっていく

 

「紅いライガータイプのゾイドが来るぞ!」

 

「俺達のアジトに仕掛けてきた奴等の仲間か!」

 

「はっ、たった1体軽くひねってくれるわ!」

 

「こいつらを倒さないとワクチンが届いても邪魔される!手早く片付けるわよゼロ!!」

 

ライガーゼロは咆哮しセイバータイガーに向けて全速力で走る。

 

「来るか・・・必殺技で一気に決めるぞ!」

 

「「了解だぜ兄者!!」」

 

黒いセイバータイガーは並列に並びライガーゼロへと向かう。

 

「何のフォーメーションだか知らないけど!!」

 

アオイは構わず正面のセイバータイガーに爪を向けた。

 

「甘い!!」

 

先頭のセイバータイガーは横跳びで避けて

 

「いただき!!」

 

次に向かってきたセイバータイガーがビーム砲を撃ちライガーゼロに攻撃

 

「とどめ!!」

 

最後尾にいたセイバータイガーは仲間のセイバータイガーの上を飛び越えて

ライガーゼロを弾き飛ばす

 

「きゃああああああああ!!」

 

数十メートルを吹き飛ばされた後、ライガーゼロはゆっくりと起き上がる。

 

「なんて連携攻撃・・・!」

 

「これぞ俺達の必殺技!」

 

「タイガーストリームアタックだ!」

 

「これを食らえばたとえゴジュラスといえど耐えることはできない!」

 

3体のセイバータイガーは並列したまま旋回し再びライガーゼロに向かって駆けだす。

 

「まだまだいけるわ・・・私も、ゼロも!!」

 

ライガーゼロは力強く吠え、セイバータイガーへと走り出した。

 

「タイガーストリームアタックを食らって立ち上がれるとはな」

 

「だが次はない!」

 

「この技を見切ることは不可能!!」

 

「普通ならね」

 

ライガーゼロはイオンブースターを点火し先頭のセイバータイガーに向かって跳び上がる。

 

「な、速い!?」

 

先頭のセイバータイガーを踏みつけ後方にいたセイバータイガーに向け跳んだ

 

「俺を踏んずけた!?」

 

「まさか!?」

 

2体目のセイバータイガーのビーム砲を食いちぎり

 

「うわああああ!!」

 

すぐ後ろにいたセイバータイガーの右前脚を食いちぎった。

 

「な、タイガーストリームアタックがこうも容易く!?」

 

「こんなもんゼロと私にかかればどんな連携攻撃だって見切ってみせるわ」

 

自信満々に宣言するアオイと、まだ余裕があることを示すようにライガーゼロは吠える。

 

「に、逃げるぞお前ら!!」

 

「お、おう!」

 

「待ってくれよ~!!」

 

このコンビの気迫に威圧され、セイバータイガーは慌てて逃げていった

 

「何だったのかしらねあいつら・・・」

 

「お~い!!」

 

タイミングよくバンのブレードライガーが街に到着した。

 

「バン!?アーバインは!?」

 

「大丈夫、ちゃんと乗ってるよ。ワクチンと一緒にな。」

 

「コマンドウルフは?」

 

「今はそれよりワクチンを・・・!」

 

「アーバインあんたまさか怪我を」

 

「俺のことはいいって言ってんだろうが!」

 

無事にワクチンは届けられて、ガフキーカハール熱から子供達は救われた。

 

「ありがとう~!」

 

「さようなら~!」

 

「ほんじゃな~!」

 

「元気でね~!」

 

バン達は回復した子供達に見送られ街を後にした。

 

「アーバイン、手くらい振れば?」

 

「そんな必要はない。」

 

「あ~あやせ我慢しちゃって」

 

「バカな事言ってんじゃねーよ」

 

照れ隠しをしているアーバインを見て、あおいはクスリと笑った。

 

「でもアーバインが報酬なしで働くなんて、俺はお前をちょっと見直したぜ!」

 

「そうか俺を見直したか。だったらバン、そろそろジークを俺によこせ」

 

「ちぇ、せっかく人が褒めてんのにさ!そんな態度だから俺はいつまでたっても信用できねえんだよ!!」

 

相変わらずの態度が気に食わず不貞腐れるバンだったが

 

(でも、私はあなたの事を見直したわ・・・アーバイン)

 

アオイは心の中でアーバインの事を見直していた。

 

 

 

 




どうみても黒い三連星です、本当にありがとうございました。
サブタイトルの割にコマンドウルフが全然出てなかったですね・・・

さあ次回はいよいよあいつらの登場です!!
お楽しみに!!!
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