生い茂る森林
その大自然に、似つかわしくない爆音が響きわたる
それは、バン達が帝国軍のパトロール部隊に発見され追撃を受けていたからだ
「帝国軍のパトロールに出くわすなんてついてないぜ!」
「何言ってやがる、ここはガイロスだぜ?周りは敵だらけよ」
帝国軍からの攻撃を受ける中
「わたっし「わあああああ!!」」
「荒野「のおおおおお!!」」
「はっこび「「やああああああ!!!」」」
強がりなのかグスタフの中でムンベイ達が歌っていた
「このままじゃ追いつかれ・・・ん?」
アオイは進路上に誰かが立っているのを見つけた。
「え・・・ウソ」
ムンベイはその人物を見て驚く
「逃がさんぞ」
追撃していたレッドホーンに乗る兵士・・・シーパーズは、進路上に立っていた男に阻まれ停止する
「どけ邪魔だ!!」
「やれやれ、いつも言ってるだろ大尉。勝手に僕の土地に入ってもらっちゃ困るって」
「貴様の相手をしている暇はない。道を開けろ!ルドルフ殿下殺害の容疑者を追っているんだ!」
怒鳴られても、その男は動じずに小鳥を指に乗せる。
「大声を出さないでくれ、小鳥たちがビックリする。」
「貴様ぁ!!」
「さ、話は終わりだ。すぐに僕の土地から出て行ってくれ大尉。それともステンマルク将軍に君の不作法を報告した方がいいかな?」
将軍の名を出されたシーパーズは渋々来た道を引き返していく
「・・・もういいよ。」
男は茂みに向けてそう言うと
隠れていたバン達が出てきた。
「すげぇなどうやって追っ払ったんだ?」
「あのレッドホーンの男とは知り合いでね。といっても僕は帝国の人間じゃないから安心してくれ。」
男はムンベイの方を向いて微笑んだ。
「元気そうだねムンベイ。」
「久しぶりねマクマーン、助かったわ。」
「なに、愛する君の為さ」
マクマーンが歯を見せ微笑んだと同時に
「光ったわ」
「うん・・・」
何故か歯が光った
「ちょっと、私にはなにもなし?」
不満げな表情を浮かべるアオイに、マクマーンが気付く
「いやいや、ちゃんと気付いていたさ。無事で何よりだよ」
「アオイ、マクマーンと知り合い?」
「ゼロの2連ショックカノンをくれたのよ」
「それと行き倒れになっているところを助けもしたね」
微笑みながらマクマーンがそう言った後、アオイは顔を真っ赤にした
「そ、それは言わないでよ!?」
「んだよお前、前にもあったのか?」
アーバインにも言われてアオイは黙り込んでしまう
「まあ積もる話もあるだろう、僕の屋敷に招待するよ」
マクマーンの好意に甘え、バン達は彼の屋敷へ向かった。
日が落ち夕食を食べる中、マクマーンについて話が進む
「マクマーンは貿易をやっているの。食料品から武器弾薬の材料まで彼に頼めばなんだって手に入るわ。」
「なるほど、あんたを敵に回すと拳銃の弾を作るのにも苦労する。それで昼間の連中はあっさり引き返したってわけか」
この間に、フィーネは塩を満載したコーヒーを啜り、ルドルフを驚かしていた。
「ま、将軍たちの半分は知り合いかな」
「さっきアオイが2連ショックカノンをくれたって言ったな?」
「ああ、間違って届けられた物資だったんだが、タイミングよく彼女が行き倒れになっててね。彼女のゾイドに付けてあげたんだ」
「だからそれやめてって!!」
「全然役に立ってないけどな」
「あんたは黙ってなさいアーバイン!!」
「なあ、二人はどういう知り合いなんだ?」
バンがパンを頬張りながら二人に尋ねる
バンだけでなくその場にいる全員が気になっているのか二人に視線が集まる
「恋人だった。けど見事に振られたけどね。」
マクマーンが答えた後、ムンベイが静かに笑う
「それにしてもこんなところで君と再会するなんてね。」
「ホント偶然ね」
「偶然?これは運命さ」
と、マクマーンが微笑むと
「また光ったわ」
「うん・・・」
食事を終えたバン達はゲストルームで寛いでいた
「何でマクマーンみたいな金持ち振ったんだ?金持ちに目がないってのに」
「ホント、今にして思えばもったいない事したわね。でもまだチャンスはあるわ。マクマーンは今でも私にゾッコンみたいだし」
「ああ、あの様子からすると・・・お前がここにいたいって言えば飛び上がって喜ぶぞ」
「私もそう思うのよね!」
マクマーンの元に残る気満々に見えたのか、フィーネが寂しそうな表情を見せた。
「じゃあムンベイここに残るの?」
「え?あ・・・アハハハ、冗談よ冗談。私がマクマーンを振ったのはもっとすごいお金持ちを見つけるためよ。マクマーンなんて眼中にないわ」
「うっわヒデェ!?マクマーンもよりによってこんな奴を好きになるなんて可哀そうに」
「仕方ないわよこの美貌にかかれば男なんてイチコロ!ああ~美しいって罪ね」
「何言ってんだか・・・」
ポーズを決めるムンベイにアオイはため息をついて呆れた
しばらくして、マクマーンから地図を見せてもらい安全なルートを教えてもらった。
「ガイガロスに行くには少し遠回りになるが」
「誰もガイガロスに行くなんて言ってないぜ?」
「彼はルドルフ殿下だろ?驚いたよ生きていたなんて」
「殿下を知っていたのね」
「随分危ない橋を渡っているようだな」
「おかげでスリルには事欠かないよ」
笑いながら話すアーバインにアオイは顔をしかめる
「渡らなくていい橋もいくつかあったけどね」
「いずれにしてもムンベイに降りかかる危険を思うと眠れない夜が続きそうだ」
マクマーンがコーヒーを啜った後
外から自動車の音が聞こえてきた
「何?」
窓から覗くと、トラックから帝国軍の兵士が続々と降りてくるのが見えた。
「帝国軍!?」
「くそ!俺達の事がばれたのか!?」
アーバインとアオイは拳銃を取り出す
「しまっておけ、君達には指一本触れさせない・・・いや、ムンベイにはかな?」
「用心に越したことはないわよマクマーン」
「そうならないように祈っててくれ」
別荘の入り口に着くと、既に帝国軍の兵士達が集まってきていた。
「ヤバくなったら飛び出すぞジーク」
「グァガッガ「だぁ返事はいい!」
「やぁ大尉、こんな時間に何事かな?」
「ルドルフ殿下殺害犯たちを引き渡してもらおう」
「殺害犯?容疑者じゃなかったのか?」
「どっちでも同じ事だ!黙って協力した方が身のためだぞ!」
声を荒げるシーパーズに対し、マクマーンは冷静に言葉を交わす
「ほう、証拠でも掴んでいるような口ぶりだな」
「そんなもの屋敷を調べればいくらでも出てくる!連中がここにいなくてもな!」
「でっち上げか。君ならやりかねないな」
「貴様も終わりだ!捜索を始めろ!」
シーパーズが部下に指示を出した直後、マクマーンが鋭い口調で叫ぶ
「シーパーズ!勝手な真似は許さん!」
「て、抵抗する気か!?」
シーパーズは狼狽えながら拳銃をマクマーンに向けた
身を潜めているバン達にも緊張が走る
銃口を向けられながらもマクマーンはシーパーズを睨み続ける
「大尉!」
「引っ込んでろ!」
「お引き取り願おう」
シーパーズの銃を持つ手は震えていた。
そして、銃を下す
「どけ!」
部下を押しのけ、シーパーズは屋敷から出て行った。
帝国軍が出ていくのを確認すると一同はマクマーンの元へ歩いた。
そして
乾いた音が辺りに響く
「あ・・・」
ムンベイがマクマーンの頬を引っ叩いたからだ
「まいったな、ハハハ・・・」
「バカ!!」
笑うマクマーンに対し、ムンベイが怒鳴った
「笑いごとじゃないわ!もし撃たれてたら・・・!!」
その眼には、涙がこぼれていた
「ムンベイ・・・」
アオイは掛ける言葉が見つからず、去っていくムンベイの背を見るしかなかった
翌朝
「マクマーン、今夜出発するわ。これ以上迷惑かけられないからね。」
「ムンベイ、後で僕の部屋にきてくれないか?渡したいものがある。それじゃお先に失礼するよ。ごゆっくり」
先に朝食を終え、マクマーンは部屋を後にした
「いいのかムンベイ」
「何が?」
「このまま行っちゃってだよ!マクマーンのこと好きなんだろ!?」
バンの問い詰めにムンベイは呆れた表情をした。
「ばかばかしい・・・」
「あ~あつまらねぇ意地張りやがって」
ゲストルームで寛いでいたバン達はムンベイの事で話をしていた。
「意地?」
「マクマーンの事は好き、でもルドルフをガイガロスに届けるまでこの旅をやめるわけにはいかないの・・・・・・な~んてな。ま、あいつらしいといえばあいつらしいぜ」
「つまり全部ルドルフのせいね」
「ええ~・・・・・!!」
「嘘々」
フィーネの爆弾発言にルドルフがショックを受けた。
「フィーネちゃ~ん?殿下の心臓悪くなるから慎みましょうね~」
「ほ、ほれんらはい」
怒りマークを付けたアオイがフィーネの頬を餅の如く引っ張る
「まあ行くも残るも決めるのはムンベイだ。ただマクマーンに惚れてるならここに残るのが一番だ。」
「そうね。彼は頼りになる・・・旅を続けるよりはマシな生活ができるわ」
「俺は一緒に旅を続けたい・・・どうしたいのかムンベイに確かめる。このままじゃすっきりしねぇ」
バンがそう言った後、部屋を出ていった
その後を追うようにフィーネとルドルフも部屋を後にする
「ったく、お節介な野郎だよ」
「バンの言ってる事も一理あるわ。ムンベイの意志を確かめもせずに勝手な事なんてできないわ」
「まあそうだな」
「私も行くわ」
アオイもバンの後を追う
「待って、曲なんてなくても踊れるわ」
「君がそういうのなら」
「また光ったわ」
仲睦まじく踊る二人を見て、バンは微笑んだ
「確かめるまでもなかったか」
夜が更け、バン達はマクマーンにムンベイを託し出発する事にした
風呂に入っているところを見計らい、格納庫へ向かった
「寂しくなりますね。」
「何、物は考えようだぜ?足の遅いグスタフがいない分ガイガロスに速く着く」
「こうするのが一番なんだ」
「私のライガーゼロなら3日でなんとかなるんだけどね」
「おいおいここまで来てお前だけで行くつもりかよ?」
アーバインに言われた後、アオイが微笑む
「冗談よ、ここまで来ておいて抜け駆けなんてしないわよ」
「何こそこそやってんのよ」
「え!?」
後ろからムンベイの声が聞こえ、全員が振り向いた
そこにはムンベイとマクマーンが出入り口に立っていた
「全く何考えてんだか。私がいなきゃ明日の朝飯にも困る癖に・・・違う?」
「ムンベイ、どうして・・・?」
「どうも隠し事は苦手でね。それにこんな形でムンベイを手に入れてもあまり嬉しくない」
「全く変な気使うんじゃないの、似合わないわよ」
そう言いながらムンベイはバンの額を小突くと、思わず笑みがこぼれた
その直後、外から激しい光が発せられた
「照明弾!?」
照明弾を発する正体は、シーパーズ率いる帝国軍部隊だった
マクマーンがボロを出すのをじっと身を潜めて待っていたようだ
「なかなか派手な登場だね、シーパーズ大尉」
「やっぱりそいつらを匿っていたなマクマーン、これで貴様も破滅だ!」
「いやいや、金持ちを甘く見ない方がいいぞ」
「ちょっと何わけ分かんない事言ってんのよ!?早く乗って、逃げるのよ!」
ゾイドに乗り込んだムンベイ達が格納庫から出てきて、ムンベイはグスタフをマクマーンの横に付けた
「まあ見てろ。金持ちを甘く見るなとは、こういう事だ!!」
マクマーンは手に持った装置にスイッチを押すと
辺りにクラシック音楽が鳴り響いた
「な、何だ?」
全員が呆気にとられていると
レブラプターの足元が円盤の様に動きだし床が次々と競り上がる
そこからダークホーンが何体も現れ、2門搭載されたガトリング砲でレブラプターを撃墜していく
「は、ははは・・・」
余りの事にムンベイは苦笑いを浮かべた
バンとアーバインも攻撃を仕掛けていく中
空からブラックレドラーの編隊が現れ辺りを爆撃していく
「援軍か!?」
「ハハハ!!これで形勢逆転だな!」
勝ち誇るシーパーズだった
しかし、ブラックレドラーが墜落してきて表情が崩れた
「な、何事だ!?」
撃墜したのは、以前空軍基地でバン達を助けた飛行ゾイド、ストームソーダーだった
『天定まって亦能く人に克つ!我等プロイツェンの野望を打ち砕く、翼の男爵・・・アーラバローネ!!』
『誇り高き嵐の刃、ストームソーダーを恐れぬならば、かかってくるがよい!!』
再び現れたアーラバローネを名乗る二人組はブラックレドラーを次々と落としてく
後ろを取られるが、わざと減速し頭部のレーザーブレードでブラックレドラーを切り裂いた
「すごい腕ね・・・」
『Catch you later!』
空中の敵を全て撃破した後、ストームソーダーは闇夜へ消えていった
「誰だか知らないがこれでうるさいレドラーはいなくなった!一気に行くぜジーク!!」
「グオォォォォ!!」
勢いづいたバン達はレブラプターを撃破し数を減らしていく
そして、残ったのはシーパーズのレッドホーンだけ
「さあ、残ったのはあなただけよ。シーパーズ大尉?」
「動けるのはアンタだけだ、諦めろ」
「ぐ・・・おおぉぉぉぉぉぉ!!」
往生際が悪くシーパーズがレッドホーンで突撃してきた
「ちっ!」
「任せなさい!」
ライガーゼロはレッドホーンに向かって跳び上がる
「ストライクレーザークロー!!」
爪を光らせ、レッドホーンの背部の装備と装甲を抉り、システムをフリーズさせた
帝国軍を退けたものの、マクマーンは帝国領を離れることになった
ムンベイはマクマーンに別れを告げ、またバン達と旅を続けることになった
「「「音楽の趣味ぃ!?」」」
一番気になっていたマクマーンを振った理由を聞いたバン達は声をそろえて驚いた
「そう!全然違うのよね、あたしとマクマーンって」
「で、でもそんなんでマクマーンを振っちまうなんて!?」
「聞いたでしょさっきの曲、あんなの冗談じゃないわ!音楽といったらこれよ!あたっしは~荒野の~運び屋さ~!」
ムンベイはいつもの歌を歌い、バンとアーバインは呆れ果てていた
「あ~あ、俺にはわかんね~や」
「俺もだ」
「ウフフフフ」
それを見てアオイが思わず吹きだした
「でも私はあの音楽、好きだけどね」
「なるほど、シュバルツの野郎が好きそうだもんな」
「え!?」
アーバインが言った事にアオイは思わず顔を赤くする
「気付いていなかったと思ってたのか?」
「え、アオイってそうなの?」
「じゃあアンタにマクマーンあげるわ。」
「い、いやその、私のタイプじゃないから遠慮しとく」
「じゃあアオイのタイプって何?」
フィーネに尋ねられ、しばらく考えた後アオイは口を開く
「私よりも強いゾイド乗り!」
「あ~ダメだ、一生現れねぇや」
「だな」
「あんた達ねー!!!」
「アハハハハ!!」
こうして、ガイガロスへの旅は続いていく
第21話 完
約1年放置して申し訳ありませんでした。せめてフューザーズ発売までに終わらせたかったのですがリアルがゴタゴタしてたもので・・・言い訳をつらつら書いてても仕方ないのでここまでにします
次回は一番書きたかった話ですのでなるべく早く書けるようにしたいです