ZOIDS 紅の獅子   作:モルヤパ

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第28話 悪魔の囁き

ゼネバス再興を目論むヴェイアと対峙してからしばらく時が経ち、アオイはガーディアンフォース本部から指令を受けた。今度は古代遺跡の調査団の護衛で、既にバンとトーマが到着していると聞き、アオイは少しだけ表情を曇らせる。

 

「バンはいいけどトーマか・・・あいつ、なんか私にいい顔しないのよね」

 

邪険と言えば少し大袈裟だが、あまり友好的ではない態度を取られているため接しづらく感じていた。しかし重要な任務である事は間違いないため、渋々ながら調査団へ合流すべくライガーゼロを走らせる。

 

日が落ちて辺りが薄暗くなる頃、生い茂る木々に囲まれた、調査団の拠点に到着した。既にブレードライガーとディバイソンがおり、バン達も到着したのだと分かった。

 

「私が最後だったのね」

 

アオイはライガーゼロを降りて、設置されているテントの中に入る。そこにバンとフィーネ、トーマが図面が置かれたテーブルを囲んでいた。

 

「お?ようやく到着か」

 

「遅いぞ」

 

「こっちはこっちで一度、帝都に戻っていたのよ」

 

「では揃ったところで、会議を始めましょうか」

 

調査団のリーダーである白衣の男は、アオイ達に依頼の説明を始めた。

現在はウィンドコロニーで療養中のドクターディ指揮の元、遺跡調査を行っていた。しかし、最近になってヒルツと呼ばれる者が各地の遺跡を荒らし回っており、調査団が襲撃に遭うケースが相次いでいる。そこでガーディアンフォースに白羽の矢が刺さり、調査が終了するまで護衛をして欲しいとの事だ。

 

「ヒルツ・・・バンがウィンドコロニーで会ったって奴ね?」

 

「この間の洞窟の発掘現場でもヒルツがいた。何かを持ち出していったみたいなんだが・・・」

 

「何かって何よ?」

 

アオイがバンに尋ねているところで、トーマが不満そうな表情で横から入って来る。

 

「それは今議論する事ではない。この遺跡調査はドクターディが重要視している程だ、ヒルツや盗賊共に奪われる事は絶対に阻止しなくてはならない。」

 

「ちょっと、少しくらい聞かせてくれたっていいでしょ?」

 

「任務が最優先だ、それが終わったらいくらでもバンと話せ」

 

トーマのあまりにも邪険な扱いが癪に障ったのか、アオイは顔を顰めてトーマに詰め寄る。

 

「あんたさっきから何よ!最初の時もそうだったけど、私に何か恨みでもあるの!?」

 

「そうじゃない任務に集中しろと言ってるんだ!全く・・・誰だこんな物分かりの悪い奴をガーディアンフォースに推薦したのは」

 

「へぇ・・・それってワグナー叔父様達に対する宣戦布告と受け取っていいわけ?」

 

アオイは目を細め、声色を低くして言い放つと、トーマが驚いてアオイの方へ向いた

 

「何、かの伝説の三銃士が!?一体、貴様とどんな関係なんだ!?」

 

「さぁね?教えてあげない」

 

軽く手を振って、詰め寄るトーマをあしらってテントの出入り口へ向かう。

 

「じゃあ私、周辺の警戒入ってるから。」

 

「オイ待てまだ作戦会議は」

 

トーマの呼び止めも聞かず、アオイはテントを出て行ってしまう。それを見ていたバンは呆れて溜め息を吐いた。

 

「お前等さ、もうちょっと何とかなんねーの?」

 

「それは奴に言え!まったく・・・何であんな奴が・・・」

 

ブツブツと毒吐くトーマを見かねてか、フィーネが尋ねてくる。

 

「トーマさん、アオイと昔、何かあったの?」

 

そう言われてトーマは気まずそうな表情で、フィーネから目を逸らした。そこからトーマが、アオイに対して普通じゃない感情を抱いている事が手に取る様に分かる。

 

「い、いえ・・・そんな大したことでは・・・」

 

「とてもそうは見えなかったぜ?」

 

「お願いトーマさん、アオイと何があったのか教えて」

 

自分を見るバンとフィーネに耐えかねてか、トーマはバン達の方へ向いて頷く。

 

「分かりました・・・会議が終わったら話します」

 

調査団の説明を全て聞き終え、バン達はテントを出て、人気のない森の奥へと向かう

 

「彼女が帝国軍に入隊した頃、アカデミー内でも話題になっていた。天才が現れたと」

 

共和国との本格的な武力衝突がまだなかった頃、アオイの入隊と同時に軍内部に衝撃が走っていた。ゾイドの操縦技術がずば抜けて高く、訓練で新兵の最多撃墜数を更新した者が現れたと。

 

それから続々とアオイの事で話題は絶えなかった。

 

「大丈夫、怖くないわ。みんなあなたの事を傷つけたりしない」

 

「あ、あのセイバータイガーが嘘みたいに大人しくなった・・・!?」

 

気性の荒いセイバータイガーを簡単に手懐けて相棒にしたり、

 

「ここは私が食い止めます!早く退避を!!」

 

「すまない・・・!負傷者の搬送を最優先!」

 

「何だこのセイバータイガーは!?たった1体で1個大隊と渡り合うなんて!?」

 

追撃する共和国軍の部隊をたった一人で食い止めて負傷者を大勢救い表彰されたり、トーマが軍に入隊した後でも耳に入らない時がなかった。

 

「へぇ、そこまでスゴかったんだなあいつって」

 

「俺が入隊して間もなく、彼女は帝国軍第一装甲師団に配属となった。」

 

「シュバルツ大佐の部隊ね」

 

配属されてからも、シュバルツの指揮の元で活躍していく。その姿に憧れを抱く兵士達が後を絶たなかった。それに対して・・・トーマはあまり快くは思っていなかった。

 

「何でだよ?兄ちゃんの役に立ってたんだろ?」

 

「普通なら喜ぶべきだろう、だが彼女は他の事はからっきしで、報告書もまもとに書けないほど学がなかった。そんな奴が兄さん・・・シュバルツ大佐の元にいるなんてと、俺は思った。」

 

しかし、これは自分の方がシュバルツの役に立てるという、見苦しい嫉妬だ。自分よりも確実にシュバルツの期待に応えていたため、彼女を越えるしかないと、自分を納得させていた。

しかし・・・ある事件をきっかけに、トーマはアオイを見る目を変えることになる。

 

「アカデミーで開発が進められていた試作兵器を積んだレッドホーンが突如暴走した。」

 

「ああ、それは前にアオイから聞いたことがある。危うく自分が死にそうになったって」

 

「当時はプロイツェンに目の敵にされていた、あの時の事もプロイツェンが仕組んだ事だと言われている・・・しかし・・・」

 

トーマは拳を握りしめ、声を震わせて憤りを露にし始める。

 

「幾度もプロイツェンの目論見を跳ねのけていたにも関わらず、あの事だけで軍を脱走した・・・兄さんの期待を裏切って逃げたんだ!それなのに、ガーディアンフォースに入っておめおめと戻ってきた!どんな顔をして兄さんの元に戻ってきたのか、それがたまらなく許せない!」

 

トーマは顔を強張らせて、今まで溜め込んだものを吐き出していく。憎悪にも似た怒りを露にしていく様を見て、バンとフィーネは一瞬たじろくが、バンが反論する。

 

「トーマ、それは違う。あいつはシュバルツの事を裏切ってなんていない」

 

「何だと?」

 

「そうよトーマさん、その暴走事故でアオイは相棒のセイバータイガーを失ったの。その事がショックで、軍からいなくなったの」

 

初めて聞かされた事なのか、トーマは口をぽっかりと開けて驚く。

 

「そ、そうなのですか?俺は怖じ気ついて逃げ出したとばかり・・・」

 

「ああ、全部お前の勘違いだ。」

 

バンに短く指摘され、トーマは腑に落ちない表情を見せる。二人が嘘を吐くわけがないから、アオイが相棒を失って自棄になり、軍を出て行ったのは間違いなかった。しかし・・・それならば何故、シュバルツを頼らなかったのかと疑問が浮かんだ。

 

「兄さんなら奴の助けになっていたというのに・・・何故なんだ・・・」

 

「相棒を失った悲しみってのは、そんな簡単に片付けられるものじゃない。アオイはその悲しみに耐えられなくなって軍を脱走した・・・何もかも捨ててな」

 

バンが当時のアオイの感情を代弁すると、トーマは少しだけ納得した。自分の思っていた以上にアオイが傷付き苦しんでいた事を知って

 

「トーマさん、アオイはトーマさんが思っているような人ではないわ。わかってあげて」

 

「は、はい、フィーネさん」

 

「てことで、さっさと仲直りしろよ?マジで任務に支障が出ちまうぜ?」

 

「言われるまでもない」

 

トーマが抱いたアオイへの疑心は、バンとフィーネによって払拭された。しかし、話に夢中になり気付いていなかった・・・木の陰にいたアオイが、話の途中で走って行った事に

 

「あ、リュウガ中尉いいところに・・・発掘していたら興味深い石板が」

 

調査員の一人が走って来るアオイに気が付き、石板を手に声を掛けたが、下を俯いたまま走り去っていってしまう。

 

「・・・どうしたんだろ?」

 

そのままライガーゼロに居る方向へと向かうアオイの背中を見て、調査員は首を傾げる。

 

「ねぇゼロ・・・私、ここに戻ってきて良かったのかな?」

 

ライガーゼロのコクピットに飛び乗り、アオイはシートに身体を預けながら呟いた。その声は震え、ライガーゼロは不安げな唸り声を上げる。

 

「覚悟はしてた・・・何を言われても受け入れるつもりだった・・・けど、実際に耳にしたら、結構キツいね・・・」

 

アオイは次第に涙を流し、更に声を震わせていく。

 

「そんなつもりはなかったって言い訳、通用するはずないわよね・・・だって、あの人を裏切った事は本当だから・・・トーマが私に怒りをぶつけるのも当然・・・よね・・・」

 

咽び泣くアオイに、ライガーゼロは何をすればいいいのか分からず、小さく唸り声をあげるだけだった。

 

『いいのかい?ライガーゼロ・・・相棒をこんなに泣かせてしまってさ?』

 

突然、誰かの声が聞こえてきて、ライガーゼロは頭をあげて周囲を見渡す。しかし、周りには誰もいない・・・にも関わらず、声はライガーゼロの耳に届いてきた。

 

『こいつの気持ち、お前なら十分に理解しているだろ?それをあの男は土足で踏みにじってきた。許せるはずないよな?何も知らないくせに、知ったような口を利くんだってね』

 

だんだんとライガーゼロの挙動がおかしくなり、コクピット内のモニターが不自然に点滅し始めた。それに気付いたアオイは涙を拭いてライガーゼロにどうしたのかと尋ねるが、返事は返ってこなかった。

 

『さあ立て、神経を研ぎ澄ませろ。相棒を傷付けるあの男を・・・お前の相棒の敵をみんな殺せ』

 

ライガーゼロは低い唸り声をあげた後、眼が蒼く変色する。それに示し合わせたかのように、調査団の駐屯地に砲撃が着弾した。

 

「襲撃か!」

 

「やはり仕掛けてきたか!」

 

バンとフィーネ、トーマは急いでゾイドに乗り込み、襲いかかるレブラプターの群れへと向かうが、ライガーゼロがいない事に気がつく

 

「アオイの奴、何処に行ったんだ?」

 

「今は敵を片付ける事が最優先だ、奴の事は後回しだ」

 

ブレードライガーとディバイソンは射撃武器を使用し、向かってくるレブラプターを次々と撃ち落とす。戦闘力の差を感じたじろぐレブラプターを、ライガーゼロが側面から体当たりして吹き飛ばした

 

「アオイか!」

 

「遅かったな?粗方俺達が片付けてしまったぞ」

 

余裕な笑みを浮かべるトーマだったが、ライガーゼロが全速力でディバイソンに向かってくるのを見て目を見開く。

 

「なっ!?」

 

あまりの事に判断が遅れ、ディバイソンはライガーゼロの体当たりを受けて吹き飛ばされ地面を転がる

 

「どわぁぁぁぁぁ!?」

 

「トーマ!大丈夫か!?」

 

「ぐっ・・・き、貴様これは何の真似」

 

突然攻撃してきたアオイに怒鳴ろうとしたトーマだったが、追撃に入ったライガーゼロが視界に入り言葉を詰まらせる

 

「うわぁぁぁ!?」

 

「やめろぉ!!」

 

跳び上がって爪を突き立てるライガーゼロを、ブレードライガーがディバイソンの前に躍り出てシールドを展開、ライガーゼロを弾き飛ばす。その隙にフィーネが回線を繋げ、アオイと通信を試みる。

 

「どうしたんだアオイ!何でこんな事をする!」

 

「違うの!ゼロが・・・ゼロが私の操縦を受け付けないの!」

 

「何だって!?」

 

「ゼロどうしたの!?落ち着いて!」

 

アオイはパネルを弄る等で止めようとするが操作を受け付けず、ライガーゼロは再びディバイソンへと駆け出してくる。

 

「クソッ!何で俺ばっかり狙われる!?」

 

「トーマがアオイの悪口ばっかり言ってたからじゃねーのか!?」

 

「違うわ、今のライガーゼロはいつもと様子がおかしいわ。」

 

ブレードライガーは突っ込んでくるライガーゼロに組ついて、ディバイソンへの攻撃を阻止する。バンはライガーゼロの凄まじいパワーを目の当たりにして、汗を垂らす。

 

「やっぱりライガーゼロって強ぇんだな・・・少しでも気を緩めたら振りほどかれる」

 

「アオイ、パルスガードを作動してみて!もしかしたらレアヘルツで暴走しているのかも知れないわ」

 

「さっきから色々やってるんだけど止まらないのよ!ゼロ!お願い言うことを聞いて!一体どうしたのよ!?」

 

アオイは何度もライガーゼロに呼び掛けるが、一向に治まる気配がなかった。その光景を、蒼髪の少年が遺跡の崖上でほくそ笑みながら眺めていた。

 

「フフフフフッ、こうまで上手く行くとは思わなかったね。ライガーゼロ・・・その自我の強さが命取りだったな?おかげで容易く操る事ができた。お前は怒りのままに破壊を繰り返すんだ。僕たちのためにね」

 

少年の呟きに応えるかのように、ライガーゼロはブレードライガーを振りほどこうと暴れだす。

 

「このままじゃ・・・!アオイ!本当にどうにもならないのか!?何でもいい、ライガーゼロに異常はないのか!?」

 

「異常しか見当たらないわよ!」

 

アオイが叫んだ後、ライガーゼロはブレードライガーを振り解き、再びディバイソンへと駆け出して行く。

 

「マズイ!トーマ逃げろ!!」

 

「逃げろと言うが、ディバイソンではすぐに追いつかれてしまうぞ!」

 

トーマはディバイソンを立ち上がらせるが、全速力で向かってくるライガーゼロを見て、逃げると言う選択肢はないと悟る。そこにアオイから通信が入って来た。

 

「構わないわトーマ!ゼロを撃って!!」

 

「何だとっ!?」

 

「それくらいしないとゼロは止まらない!お願い、撃って!!」

 

「くぅ・・・!ビーク!ライガーゼロを照準!間違ってもコクピットに当てるなよ!」

 

意を決し、トーマはライガーゼロに照準を合わせ、17連突撃砲を一斉発射するが、砲弾の間を縫うように躱し、ディバイソンへと跳びかかる。

 

「何ィ!?あの距離で17連突撃砲を!?」

 

「やらせるか!!」

 

ディバイソンに攻撃が当たる前に、ブレードライガーはパルスレーザー砲を浴びせてライガーゼロの態勢を崩させ地面へと落とす。

 

「あの機動力も健在か!」

 

「おいアオイ!何とかしろ!」

 

「簡単に言わないでよトーマ!もうホント何よ!さっきから虫の羽音がうるさいし、どうすればいいのよ!!」

 

アオイが口にした“虫の羽音”という単語に、バンとフィーネは何かに感づきアオイに聞き返す。

 

「虫!?ホントか!?」

 

「本当に虫の羽音が聞こえるの!?」

 

「え?ええそうだけど・・・」

 

バンとフィーネに心当たりがあるようだが、何のことか分からないアオイは首を傾げた。フィーネはサブシートにある端末を弄り、トーマのディバイソンにデータを送る。

 

「トーマさん!今送った音響データを解析して、ライガーゼロをスキャンしてみて!」

 

「音響データ?フィーネさん一体何を」

 

「いいから言う通りにしろ!早く!」

 

バンとフィーネに言われた通り、トーマはビークを使い、送られた音響データを元にライガーゼロの周囲を探索する。そして、データに合致した何かを割り出し警告音を発し、その場所をモニターに拡大表示した。

 

「これは・・・!ライガーゼロの頭部左側面に小型の虫型端末が取りついている!」

 

トーマの報告を聞き、バンとフィーネは今回の犯人が誰か確信した。以前にも遭遇した、ヒルツとは違う異様な人物の事を思い出す。

 

「バン、これは・・・」

 

「ああ、間違いない。ライガーゼロはあいつに精神を乗っ取られているんだ。」

 

「何だと!?」

 

「ゼロが操られてるの!?」

 

「恐らくライガーゼロの、アオイを守りたいという意志が利用されてるのよ。その意志を精神波で捻じ曲げられて、目につく者をアオイの敵として認識させているんだわ」

 

フィーネの分析に、アオイとトーマは合点がいったのと同時に、置かれた状況の悪さを再認識し、顔を顰める。

 

「このままでは調査団にも被害が・・・!」

 

「・・・私のせいだ・・・私がゼロに愚痴ったせいで・・・!」

 

「アオイ、泣いてる暇はないぜ!ライガーゼロはお前の相棒だろ?ならお前が止めないでどうするんだ!」

 

震えた声で己を責めるアオイを、バンが叱責しつつも励ました。昔はバンが弱音を吐いたところをアオイが咎めつつも助言を与えていたが、逆の立場になっている事を感じ、思わず微笑んだ。

 

「ホント・・・強くなったわね、バン・・・分かったわ、私もそう簡単に諦められるほどお行儀は良くないからね!」

 

「しかし、あの端末を破壊しない事にはライガーゼロを正気に戻す事はできない・・・どうするつもりなんだ、バン?」

 

「どうするって、決まってるだろ?」

 

ブレードライガーがライガーゼロを方へ向き、背部にあるブレードを展開する。

 

「ブレードのエネルギーで端末を焼き切る!」

 

「バカな、正気かバン!?ほんの僅かでもズレればアオイごとライガーゼロは・・・!?」

 

あまりにも無謀な賭けにトーマが声を荒げるが、アオイは穏やかな表情を見せた。

 

「ありがとうトーマ、心配してくれて・・・大丈夫、私は・・・バンを信じてる」

 

アオイの身を案じたトーマは、手を震わせ目を細めながらもアオイが映るモニターを見つめる。万が一の時が起こっても悔いはないと思わせるアオイの覚悟に、トーマは頷いて肯定する。

 

「わかった、アオイ。だが必ず生きて戻れ、大佐・・・兄さんはお前の死を望んでいない!」

 

「ええ!」

 

「よ~し!ライガーゼロ、今助けてやる!あまり動くなよ!」

 

ブレードの先端にエネルギーを集中させ、ブレードライガーはライガーゼロに向かって走り出す。ライガーゼロも迎え撃つべく、爪を輝かせながら走った。

 

「バン、ブレードライガーでもストライクレーザークローの直撃を食らえば一たまりもないわ!」

 

「ああ、わかってるよフィーネ!」

 

ブレードライガーはブースターを展開し、ライガーゼロ目掛けて一直線に突っ込んでいく。

ライガーゼロは跳び上がり、爪をブレードライガーへと振るった。

 

「いっけええええええええええ!!!」

 

バンはブレードライガーのブースターの向きを変えて機体を傾け、ライガーゼロの爪を避けつつ、ブレードのエネルギー先端を頭部に掠めて通り過ぎて行く。ブレードで焼かれた箇所が焦げて装甲が黒んでいた。そして、ビークはライガーゼロに取りついていた虫型端末が消失した事をトーマに知らせる。

 

「ふい~っ危ねぇ危ねぇ」

 

「端末の消失を確認した!今だ、アオイ!」

 

端末が消失してもなお、臨戦態勢を解かないライガーゼロに、アオイは優しく語り掛ける。

 

「ゼロ、ごめんね心配をかけて・・・でも、もう大丈夫よ。一度は逃げた私でも、叔父様達や大佐は見捨てなかった・・・それに応えるために、私は帝国で戦い続ける。」

 

己の意志を、覚悟を示すと、ライガーゼロの動きが止まった。

 

「どれだけ蔑まれようと、疎まれようと・・・私は戦う!だからゼロ、あなたも負けないで!精神波を撥ねのけて私のところに戻ってきて!ゼロ!!」

 

アオイの想いが通じたのか、ライガーゼロの目が元の色に戻り、小さく唸り声をあげた。

 

「やった・・・のか?」

 

「ああ、ライガーゼロは奴に勝ったんだ」

 

「よかった・・・」

 

ようやくライガーゼロが止まり安堵しているのも束の間、空から虫の羽音が響き、巨大なダブルソーダが現れた。

 

「あのダブルソーダは!?」

 

「チッ、面白くない。まだまだ暴れてくれると思ってたのにさ」

 

「あんたがゼロを操ったのね!」

 

ダブルソーダに乗った少年がライガーゼロを操った犯人に、アオイは怒りを露にして睨みつける。

 

「まぁいいさ、目的は達成してる。今日はお開きだ」

 

少年が呟いた直後、遺跡が爆発し、跡形もなく吹き飛んだ。

 

「遺跡が!?」

 

全員が思わず爆発した遺跡の方へを向くと、その隙を狙ってダブルソーダが離脱を始めた。

 

「次に会う時を楽しみにしてるよ、ライガーゼロ」

 

「待ちなさいよコラァ!!」

 

「駄目だアオイ、追跡は不可能だ」

 

「ライガーゼロを操ったのは囮・・・遺跡の爆破が本命だったのか」

 

バン達は調査団のテントへと戻り、調査員たちの安否確認と事後処理に奔走、一通り終わった頃、アオイはトーマに頭を下げた。

 

「ごめんなさい、私のせいであなたにも、大佐にも迷惑を掛けた。この償いは戦う事で返していくわ」

 

「い、いや・・・俺の方こそ申し訳なかった。状況をロクに知ろうともせず、お前を傷付けてしまった・・・許してくれ」

 

「これからもよろしくね、トーマ」

 

「ああ、こちらこそ」

 

互いの非を認め謝罪し、アオイとトーマは握手を交わす。その光景を見て、バンとフィーネは一安心と胸をなでおろす。

 

「何はともあれ、仲直りは成功だな」

 

「うん、本当に良かった」

 

調査団のテント内に戻ると、発掘して無事だった石板を調査員達と確認し合う。

 

「無事なのはこれだけか」

 

「どれも有力な手掛かりとは言えないわね」

 

「奴の目的は何だ?なぜ遺跡の爆破などと・・・」

 

バン達がダブルソーダに乗った少年の行動に疑問に思っていると、調査員の一人が石板をアオイに手渡した。

 

「唯一有力そうな物はこれだけですが、これに描かれたモノに見覚えはありませんか?」

 

そう言われてアオイは目を凝らして石板を見る、そこに描かれたモノを見て目を見開く。

 

「これって・・・ゼロと一緒に描かれたゾイド!?」

 

「何だって?」

 

バン達もアオイが持った石板に視線を向ける。そこに描かれたのは、ニューヘリックシティの博物館と、プロイツェン派に滅ぼされた村のムウとサマリが持っていた石板にあった恐竜型ゾイドだった。そのゾイドは・・・口から何かの光を放っているように見えた。

 

「これってまさか!?」

 

「口から光・・・まさか、荷電粒子砲!?」

 

「どうして・・・荷電粒子砲を撃てるゾイドが他にもいたというの?」

 

フィーネの疑問の呟きを聞き、アオイは改めて石板に描かれた恐竜型ゾイドを見る。デスザウラーのように荷電粒子砲を放つソレは、ライガーゼロにとってどんな存在なのか・・・

遺跡が無くなった今では、何も分からなかった。

 

「いったい・・・このゾイドは何なの・・・?」

 

 

 




今更気付いたのですが、ライガーゼロの元の目の色の描写をし忘れていました
帝国仕様は緑ですが、本当は違います。ここまで来たらご想像にお任せする~で通すしか・・・
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