ZOIDS 紅の獅子   作:モルヤパ

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第29話 ゾイドハンター

壮大に広がる砂漠の一角に、帝国と共和国のゾイドが闊歩していた。

 

「まったく、まさか貴様と共同の任務に赴くことになるとはな」

 

「それはこっちの台詞だぜ」

 

帝国軍のロットティガーと共和国軍のブルーユニコーンだった。

彼らは戦争終結後から帝国と共和国が合同で進めているスリーパーゾイドの回収任務に駆り出されていた。戦争中に何度か衝突した同士であるためか、あまり和やかな雰囲気とは言えない・・・と言っても、それはザンとライナーだけの話なのだが

 

「フン、しくじって俺の足を引っ張るなよ?」

 

「負けまくってる癖に、何言ってんだよ」

 

「やめなさいよ二人共!今は任務中でしょ?」

 

ティータに咎められ、ザンは不貞腐れながら、ライナーは少し戸惑いながらも言い争いをやめた。

 

「ちぇ、わーってるよ」

 

「は、はい・・・」

 

「まったくウチの若い奴等は血気盛んで羨ましいね」

 

「ハハハ!言えてますな!」

 

「緊張感がないのも問題だろう・・・そろそろスリーパーの設置区域に到達する。各員識別信号の発信を忘れるな」

 

クローディアが両部隊に指示を出しつつ、今回の回収地点である、共和国の補給基地へとたどり着いた。

 

「今回はガイザックの1個中隊・・・でよろしいか?アルバーン少佐」

 

「ああ、普段は地中に潜っている。信号を出して地表に出させよう」

 

アルバーンはパネルを弄り、ガイザックを呼ぶための信号を発信させた。しかし、数分経ってもガイザックは出てこなかった。

 

「どうなっている?」

 

「妙だ・・・各員、周辺を探索しろ。些細な異常も見逃すな」

 

両部隊が基地周辺を回り、探索を試みると、ティータから報告が入った。

 

「隊長、G4地点にガイザックとは別のゾイドの足跡を発見しました。」

 

「別のゾイドだと?」

 

「映像送ります」

 

送られた映像を見ると、ガイザックとは違う足跡が複数映っていた。

照合してみると、該当するゾイドが一つ浮かび上がる。

 

「これは・・・ヘルディガンナーか?」

 

「もしかしたら・・・マックス、帝国軍本部に連絡し応援要請を出せ」

 

「ちなみにその要請先は?」

 

「ガーディアンフォースだ」

 

本部へ要請が出され、数時間で現場に到着する旨が伝えられた。程なくして現れたのは、よく見慣れた紅いゾイドだった。

 

「ザン、あれって・・・」

 

「ああ、マウントオッサの時のヤツだ」

 

「アオイ・リュウガ、紅き戦乙女とも呼ばれている帝国軍最強のゾイド乗りだ。」

 

ライナーがしたり顔をして語るところを見て、ザンはニヤニヤと笑う。

 

「何だお前、あいつの事好きなのか?」

 

「そ、そうじゃない!誤解を招く発言をするな!」

 

「はいはいあんた達そこまでにしてもらえない?」

 

いつの間にかライガーゼロから降りたアオイが、言い争う二人の前に出て遮る。

我に返って言葉を詰まらせる二人に、ティータは呆れて深いため息を吐く。

 

「いや~うちの若い衆が申し訳ない。ああ、俺は共和国軍ブルーユニコーン隊のアルバーン少佐だ」

 

「アオイ・リュウガ中尉です。ところで、スリーパーゾイドを盗んだ犯人というのは?」

 

「ヘルディガンナーの足跡が数体分、残されていた。恐らくは盗賊の類か、巷を騒がせているゾイドハンターの可能性がある。」

 

アルバーンに続いて、クローディアは困った表情をしながら口を開く。

 

「しかし、ヘルディガンナーは軍、民間問わず広く利用されているゾイドだ。足跡があった程度では確証に至らない」

 

「数体のヘルディガンナー・・・」

 

アオイがゾイドの足跡を眺めながら呟く。見ている内に何かを発見し、その場へと駆け寄る。

 

「これは・・・」

 

「何かわかったのか?」

 

クローディアの問いに、アオイは微笑んで返した。

 

「大丈夫、これで誰が犯人か分かったわ」

 

特定できた事実に、ザンとライナーが驚きの声をあげる。

 

「え、本当か!?」

 

「いったい誰が!?」

 

「よく見て、ヘルディガンナーの他にももう一体、ゾイドの足跡があるわ」

 

アオイが足跡の方を指差し、一同がそれに注目すると・・・納得の声が上がり始める。

 

「これは・・・」

 

「なるほど、こいつは・・・」

 

「ちょうどよかったわ、私の仲間もこいつを追ってるの。後は任せておいて」

 

アオイは早速と言わんばかりに駆け出してライガーゼロに乗り、その場を走り去って行った。その後ろ姿を、ザンとライナーが見送る。

 

「風のように去って行ったな・・・」

 

「けど、仲良くやっているみたいで何よりだぜ。」

 

ライガーゼロのコクピット内で、アオイは足跡の画像データを睨むように見ていた。

 

「ゾイドハンターと行動を共にしている腕利きの傭兵・・・そして黒いコマンドウルフ・・・いったいどういうつもりよ、アーバイン・・・!」

 

スリーパーゾイドを盗んで回っているゾイドハンターには、かつての仲間であるアーバインが関わっていた。傭兵も行う賞金稼ぎとはいえ、悪事に加担しているだろう仲間に対し、アオイは嫌悪感を覚えていた。

 

しかし、まだ疑惑の段階なので決めつけるわけにもいかず、アオイは気を引き締めて、バン達の合流ポイントへと向かった。

 

その頃・・・

 

「黙れ・・・お前に言われたくない」

 

「―――!」

 

「何だとぉこの野郎ぉ!!」

 

ゾイドハンターにやられたトーマが、咎めてきたビークを相手に、八つ当たりでディバイソンを蹴って自分の脚を痛めていた。

 

「くぅぅぅぅぅぅ!?」

 

「何やってんのよトーマ」

 

そこに、ライガーゼロから降りてきたアオイが、呆れた表情をしながら現れた。

 

「あ・・・」

 

不味いところを見られたトーマはディバイソンにぶつけた脚を引っ込め、平静を装うために姿勢を正して咳払いをする。

 

「随分遅かったじゃないか、ゾイドハンターならもういないぞ?」

 

「取り逃がしたの間違いでしょ」

 

「う・・・」

 

図星を突かれ、トーマは表情を歪ませた。それを余所に、アオイは空に浮かぶ巨大な影の方へ視線を移した。

 

「あれってホエールキングよね?」

 

「ああ、帝国軍で開発が進められていた超大型の輸送艦ゾイドだ。共和国軍にも何機か譲渡されている。」

 

「まさかね・・・ゾイドハンターがあんなものまで持っていたなんてね」

 

ホエールキングが実用化されたのはつい最近の話であり、民間はおろか、ゾイドハンター等のならず者が所有する事は不可能に近かった。彼らを支援する何者かがいる事は明らかだった。

 

このまま追跡をするにも、ディバイソンの損傷があるため、その場で一夜を過ごす事になった。夜明けが来て間もなく、接近するゾイドの反応をキャッチした。

 

「トーマ、ブレードライガーよ」

 

「バンか?」

 

崖の上から現れたブレードライガーのキャノピーが開くと、そこにいたのはフィーネとジークだった。

 

「フィーネさん!奇遇です!こんなところでお会いできるなんて!」

 

先ほどの苛立ちや暗さは何処へ行ったのかと思いたくなるほど、トーマが明るくなり、豹変とも言える変わり様に、アオイは溜め息を吐く。

 

「あれ?お一人ですか?」

 

「バンは一緒じゃないの?」

 

「バンの行方を追っているの」

 

「バンの?」

 

二人に合流したフィーネは、経緯を二人に説明をし始める。

バンやフィーネの方でもゾイドハンターの行方を追っており、スリーパーゾイドを使っての潜入作戦を決行していた。あらかじめスリーパーのレブラプターのコクピットに身を隠し、わざと捕獲される事で敵のアジトを探ろうとしていた。

 

「随分思い切った事をするものだ」

 

「バンにしては知恵が回るじゃない?」

 

「レブラプターのコクピットに発信機を取り付けてあるわ、これでゾイドハンターの位置が分かるわ」

 

「流石ですフィーネさん!」

 

「なら早速、行きましょうか」

 

発信機のデータをビークの方へ移し、アオイ達はゾイドを走らせ目的地へと急ぐ。その道中で、トーマが遭遇した黒いコマンドウルフについて話を始めた。

 

「あの黒いコマンドウルフのパイロット、只者ではなかった。こちらの攻撃を悉く躱し、的確な攻撃を浴びせてくる。あれは神業と言っても過言ではないだろう」

 

「黒いコマンドウルフ・・・アオイ、もしかして・・・」

 

「ええ、ゾイドハンターに雇われているか、別の目的があるのか分からないけど・・・最悪、敵に回ったと思うべきね」

 

ゾイドハンターの傭兵の事を知っている口振りをするアオイとフィーネに驚き、トーマは尋ねてくる。

 

「まさか、あのコマンドウルフのパイロットと知り合いなのか?」

 

「ええ、よく知っているわ」

 

「アーバイン・・・かつて私達と旅をしていた仲間なの。とても強くて・・・優しい人だったわ」

 

アーバインを褒めるフィーネだったが、アオイはそれに吹き出してしまう。

 

「優しいのは違うんじゃない?」

 

「あら、優しかったでしょ?私達、アーバインにたくさん助けられたじゃない」

 

「私は危うくゼロを盗まれそうになったけどね~」

 

二人の話が盛り上がっていく内、トーマは付け入る隙がないと感じ始めていた。

 

「俺達、完全に蚊帳の外だな、ビーク・・・」

 

溜め息混じりに愚痴を零すと、ビークがアラームを激しく鳴らしだす

 

「どうした?ビーク・・・救難信号だって?」

 

「―――!!」

 

「あれ見て!ホエールキングがいるわ!」

 

荒野にひと際大きな台地があり、そこからバンの救難信号が発信されていた。その上にホエールキングが停泊しているところを見ると、そこがゾイドハンターのアジトでもあり、バンの身に危機が迫っている事を知らせていた。

 

「バンに何かあったんだわ!」

 

「任せてくださいフィーネさん!こちらで攻撃を仕掛け、相手の注意を逸らします!バンならその隙に何とかします!」

 

トーマは台地の岩肌に照準を適当に合わせると、17連突撃砲を発射する。

 

「抜け駆けは許さんぞバン!ここ一番はやっぱり俺だ!」

 

「はしゃぎ過ぎないでよトーマ!あくまでバンが逃げるための陽動なんだから!」

 

「ジーク、信号を辿ってバンを助けに行って!」

 

「グオォォォォォ!!」

 

背部のブースターを吹かしてジークが跳び、ディバイソンの砲撃で穴が開いた台地へ向かう。すぐにブレードライガーの元に戻ってきて、バンを救助する。そこにはアーバインの姿もあった。

 

「やっぱりいたのねアーバイン」

 

ブレードライガーから跳び下りたフィーネが、バンに向かって走り抱きしめる。その現場を見てアオイは頬を僅かに赤らめる。

 

「えぇ・・・あの二人っていつの間にそこまで」

 

「おい何ボーッとしてんだよ」

 

アーバインが呆れた様に話しかけてきて、アオイはハッと正気に戻る。

 

「な、何よアーバイン!あんたしばらく見ないと思ったら・・・けど、元気そうで何よりだわ」

 

「フッ・・・キスなら後にしてくれ」

 

キザなセリフを吐くアーバインに対し、アオイは白い目を向ける。

 

「いやあんたとなんてゴメンだけど」

 

「そうじゃねー!!アレだアレ!!」

 

アーバインが喚きながらホエールキングの方を指差すと、口部からヘルディガンナーが数体現れる。

 

「出たわね・・・ゼロ、行くわよ!」

 

ヘルディガンナーの部隊が散り、各個撃破の形を取り出す。ライガーゼロの方にも向かってきた。

 

『マクネル!そっちの紅いのを任せたぞ!』

 

「チッ!いつまでも下っ端の身に甘んじる俺じゃねぇ!ガーディアンフォースだかなんだか知らないが、目に物見せてやるぜ!!」

 

「ゾイド泥棒の蛆虫が!徹底的に痛めつけてあげるわ!!」

 

アオイに呼応するようにライガーゼロが咆哮し、マクネルが操るヘルディガンナーへと突っ込んでいく。爪を振り下ろし攻撃するが躱されて、側面を晒す。

 

「ハッ!隙ありだぜ!!」

 

「どこがかしらね?」

 

ライガーゼロが横に跳び、ヘルディガンナーに体当たりをして吹き飛ばす。

 

「ストライクレーザークロー!!」

 

怯んだ隙にヘルディガンナーの砲塔を切り裂き、地面に伏させた。

 

「くっそぉ・・・大人しく暴走族のヘッドでいりゃぁよかったぁ・・・」

 

「どうしようもないわねアンタ・・・」

 

マクネルが涙目で嘆くが、懲りてるようには見えず、アオイは溜め息を吐きながらも、各自の戦況を確認する

 

「メガロマァァァァックス!!」

 

「あばよ!」

 

「おりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

何の心配もなく、バン達はゾイドハンターのヘルディガンナーを蹴散らしていった。

いつも通りの光景を見られ、アオイは安堵し微笑んだ。

そして、ゾイドハンターに捕らえられていたゾイドが次々と、ホエールキングから跳び出しているのが見えた。

 

「フィーネが上手くやってくれたようだな」

 

「迎えに行ってやれよ、バン」

 

「ん・・・?待って!ホエールキングが!」

 

フィーネが脱出しないまま、ホエールキングが空へと飛び立つため浮上し始める。

 

「フィーネぇぇぇ!!」

 

ブレードライガーが全力で走り出し、ホエールキングを追う。ジークと合体し出力を上げ、ブースターを併用して跳び上がりホエールキングのヒレに組み付く。

 

「相変わらず無茶するわね」

 

「あの根性は見習いたいね」

 

「だがあれではすぐに落ちるぞ!」

 

トーマの予想通り、ブレードライガーがホエールキングから離れてしまい、地面に着地する。

 

「バン!大丈夫か!」

 

乗っているバンに呼び掛けるが応答がなく、モニターに映ったコクピットには誰も乗っていなかった。

 

「バンがいないぞ!?」

 

「じゃあ今ブレードライガーを動かしてるのはジークなの?」

 

「まさかあいつ、ブレードライガーからホエールキングに飛び移ったってのか?ホント昔からむちゃくちゃな野郎だな」

 

相変わらずの大胆さにアーバインが鼻で笑う。その時だった、ホエールキングの各所に爆発が起こり、だんだんと降下し始めてた。

 

「ホエールキングが!」

 

「バンとフィーネさん諸共自爆する気か!」

 

「野郎・・・往生際の悪い事しやがって」

 

飛行ゾイドを持っていないアオイ達では早急な追跡は不可能だった。

何もできないもどかしさに苛まれていたその時、無人のプテラスがアオイ達のところに降り立つ。

 

「何だ?」

 

「プテラス?もしかして・・・バンとフィーネを助けに行ってくれるの?」

 

「俺が乗る、プテラスの扱いは俺の方が一番だ」

 

アーバインがコマンドウルフからプテラスに乗り換え、ホエールキングに向かって飛び立った。その光景を見て、コマンドウルフが複雑な思いを表すように唸り声をあげる。

 

「今回は仕方ないわよ、バン達を助けるためなんだから」

 

「どういう事だ?」

 

「このコマンドウルフ、アーバインが他のゾイドに乗ったらヘソ曲げるらしいのよ」

 

「なるほど、乗り手と同じで扱いが面倒なんだな」

 

プテラスがホエールキングから離れていき、地上へと降り立ち、バンとフィーネの救助に成功した。ホエールキングはハンターのアジトである台地に墜落、爆発を起こしアジトを破壊する。

 

一息吐いたところで、ゾイドハンターの事についてバンとアーバインの方から全容が明かされた。

 

スリーパーやゾイドコレクターからゾイドを盗んだのは、ゾイドコアが目的だった。

コアを人為的に突然変異を起こさせ、新しいゾイドを生み出そうとしていたが、成果は何一つ挙がらず、コアを抜かれたゾイドの亡骸を山のように散乱させるだけだったらしい。

 

そして・・・その裏にはヒルツが関わっていた事も判明した。

 

「ヒルツ・・・いったいどういうつもりよ・・・!!」

 

ゾイドも生きている・・・人間と同じく、この惑星Ziに存在する命だ。

その命を何とも思っていない所業に、アオイは怒りに身体を震わせる。

 

「懲りるまで何度でも邪魔をしてやるわ・・・それがガーディアンフォースの使命なんだから」

 

 

 




いかんいかんまた更新が止まるところだった・・・
先に悪魔の迷宮やろうかと思ったけど、連続で悪魔~ってサブタイトルになってちょっと違和感ばりばりだったし・・・

まあとにかく、皆さん今年もお疲れ様でした。
散々な年でしたが、来年は普通の生活に戻りたいですね。

では、よいお年を
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