ZOIDS 紅の獅子   作:モルヤパ

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第30話 シュバルツ家の挟持

帝国軍が建設した兵器処分場の要塞

そこがリーゼの手に落ち、帝国軍の兵士が洗脳させられていた。

 

「聞け、もうじきお前達の敵がやって来る。絶対に生きて帰すな」

 

「全ては新たなる時代のため、全力で撃破します」

 

虚ろな目でリーゼの命令を聞く帝国軍兵士達・・・しかし、その中に鋭い目つきをした女がいた。

 

「ようやくこの時が来た・・・プロイツェン閣下の仇、とらせてもらうよ・・・アオイ・リュウガ!」

 

殺意の籠った呟きを聞き、リーゼがほくそ笑む

 

「フフ、せいぜい頑張る事だね」

 

要塞の外では、臨時に設置された指揮所にライガーゼロが向かっていた。

 

「急いでゼロ!情報が本当なら大佐が!」

 

アオイは到着と同時にライガーゼロから跳び下りて指揮所に駆け込み、要塞内で起こっている事を知る。

 

件の要塞は、共和国との戦争中に作られた破壊兵器の処分場として稼動している。指揮所の帝国兵士の旧友ツバキが発信した通信から聞こえた虫の羽音から、要塞を占拠したのはリーゼである事も判明した。

 

トーマの分析によると、要塞の地下ブロックの温度が急激に上昇している事がわかった。

原因は動力炉の冷却バルブが閉じられ、臨界状態に近づいている事だった。そうなれば動力炉は爆発、要塞内部にある兵器が誘爆してしまう。

その兵器の火薬量は200メガトン・・・大陸の一部が消滅するほどの被害が出る事となる。

 

動力炉の爆発まで、今からおよそ2時間。その間に冷却バルブを開く必要があった。

 

しかし

 

「バン、お前は帰れ。これは帝国の問題だ、後は俺とアオイで何とかする。余計な手出しはするな」

 

トーマはバンの参加を拒みだした。当然のように、バンはこれに反発した。

 

「ふざけるな!たしかに俺は共和国、お前は帝国の人間だ。けど、俺達が守るのは互いの国の名誉とかそんなちっぽけなもんじゃないだろ!平和を望む全ての人達の笑顔だ!」

 

「・・・フン、付いてくるのは勝手だが、足を引っ張るなよ」

 

トーマの態度に腹が立ったのか、バンが食ってかかろうとして、それをフィーネに止められる。

 

「待ってバン!今日のトーマさん、変よ」

 

「あいつはいつだって変だよ!」

 

「そうじゃなくて、なにか思い詰めてる感じだするの」

 

「思い詰めてる?」

 

「バン・・・見て」

 

アオイが要塞の方に指を差す。バンがその方向を見ると、見覚えのある旗がはためいていた。

 

「帝国軍第一装甲師団・・・まさか!?」

 

「そうよ・・・あそこにシュバルツ大佐が捕らわれているの」

 

アオイが震えた声でバンに告げた。

 

「そうか、だからお前も浮かない顔をしていたのか」

 

「バン、トーマに協力してあげて。口ではああ言ってるけど、トーマは大佐を救うために色んな手段を考えてるの。だから・・・」

 

「ヘッ、言われるまでもねぇよ。」

 

当然と言わんばかりにバンは言ってのける。それを見たアオイは安堵の溜め息を漏らして微笑んだ。

 

指揮所に戻り、要塞攻略の話し合いが始まる。

要塞の動力炉へ向かうための地下通路は二つのみ、一方は大型ゾイドが通れるが、もう一方はジークでもやっと通れるかという広さだ。

 

「ならこっちの道で三人で行けばいいわね」

 

「無論、敵もこちらの行動を読んでいる。ここは二手に分かれる。」

 

大型ゾイドが通れる道にはトーマがディバイソンで向かい、もう一方の狭い道はバンとジークが向かう事となった。アオイは外からの妨害が仕掛けられた場合に残る事となった。

 

本当は自分も助けに行きたかったが、敵はヒルツの仲間であるリーゼ・・・どんな罠が仕掛けられているか分からなかった。

 

「頑張んなさいよ、二人共」

 

「おう、任せとけ!」

 

「こちらは任せたぞ」

 

指揮所のモニターで、バンとトーマの動向を見守るフィーネとアオイ。早速と言わんばかりに、トーマの方にスリーパーモルガ、バンの方にリルガと洗脳された帝国軍兵士と交戦に入った。

 

難なく退けるも、次から次へと増援が送られてくる。

 

『何のためにビークモバイルを貸したと思っている!状況を把握し、もっと効率的に戦え!』

 

『うるせぇ!人が必死にやってる時にごちゃごちゃ言うな!!』

 

そんな時でも二人の口喧嘩はいつも通り起こっていた。

 

「あの二人、大丈夫なのでしょうか」

 

「いつもの事ですから」

 

心配する兵士にフィーネがフォローを入れ、アオイは呆れかえって頭を抱える。

 

「ホンットにあいつらは・・・」

 

その時、外にいたライガーゼロが吠え出した。

 

「ゼロ?」

 

何事かと思った直後、指揮所が大きく揺れ、天井が破壊された。

 

「オーガノイド!?」

 

空いた天井から青いオーガノイド、スペキュラーが指揮所を強襲、長い尾で帝国軍兵士とアオイは弾き飛ばした。そしてスペキュラーはフィーネを咥えて空いた天井から飛び去って行った。

 

「フィーネ!!」

 

アオイはフィーネを追いかけるため、ライガーゼロに乗り込み要塞へと向かった。

フィーネを攫ったのは潜入したバンとトーマを止めるためだとすぐにわかった。

 

ライガーゼロの心を利用したリーゼが相手なら容易に想像できた。

 

「このままじゃ大佐だけじゃない!バンも、トーマも!」

 

急いで救援に向かおうとしたが、要塞の入り口に一体のゾイドが待ち構えていた。

 

「あれは!?」

 

アオイは、それに見覚えがあった

 

「ようやくお目見えか、待っていたよ」

 

板状の背びれを持つ緑色の恐竜型ゾイド

 

「プロイツェン様の仇!アオイ・リュウガ!!」

 

ダークスパイナーだった。

 

「あれはあの時の!?けど乗ってる奴は・・・女?」

 

「貴様の命でプロイツェン様の魂を浄化する!!」

 

ダークスパイナーの両肩に装備されたマシンガンが火を吹き、ライガーゼロに容赦なく弾丸を浴びせた。

 

「くぅ!プロイツェン様って・・・あんた何者よ!」

 

「あたしはハンナ・ハンナ!プロイツェン様の親衛隊にいた帝国軍兵士だ!」

 

ライガーゼロのコクピット内に展開されたモニターに、険しい表情をした褐色の女が映し出された。

 

「プロイツェンの親衛隊がまだいたなんて」

 

「プロイツェン様がいれば、今頃この惑星を手中に収めていたはずだった!貴様らのせいでお命までも!!」

 

ハンナの怒りを代弁するように、ダークスパイナーはライガーゼロに襲い掛かる。迫る爪の攻撃をライガーゼロは難なく回避する。

 

「ったく!いつまでもプロイツェンプロイツェンって!いい加減にしなさいよ!!」

 

「黙れぇ!!」

 

ダークスパイナーの背びれが展開され、電磁波が放たれる。以前は回避できなかったが、ライガーゼロは容易く攻撃を躱してみせた。

 

「くそっ、ちょこまかと!」

 

「一度見た攻撃は通用しないわよ!」

 

戦闘が繰り広げられる中、二体の間にリーゼのホログラムが現れた。その横にはフィーネもいた。

 

「フィーネ!?」

 

『これでもまだ暴れられるかな?』

 

『バン、私に構わず戦って!動力炉の爆発を食い止めて!』

 

リーゼはフィーネを人質に取り、アオイ達を止めようとする。それは逆にそれだけ追い詰めているという証拠でもあった。

 

「中でバン達が上手くやっているようね」

 

『随分と余裕だな、アオイ・リュウガ。これを見ても同じ態度がとれるかな?』

 

リーゼはアオイの目の前にモニターを展開させ、ディバイソンを殴り飛ばしているアイアンコングMk-Ⅱが映された。そのアイアンコングは紛れもなくシュバルツのゾイドだった。

 

「まさか大佐を操って!?」

 

「敵を目の前に気を逸らすとはな!!」

 

ダークスパイナーはライガーゼロを蹴り飛ばした。

 

「きゃあ!?」

 

「ハハハッ!おらどうした!!」

 

倒れるライガーゼロを、ダークスパイナーは容赦なく踏みつける。

 

「シュバルツ大佐が操られて気が動転したってかぁ!?ハハハッ!帝国最強のゾイド乗りが聞いて呆れるなぁ!!」

 

ハンナはアオイを罵倒しながら、ライガーゼロに追い打ちをかけ続ける。

 

「プロイツェン様の受けた屈辱はこの程度ではないぞ!まずはお前の命!次にバン・フライハイトの命を持ってプロイツェン様の無念を」

 

迫るダークスパイナーの脚を、ライガーゼロは噛みついて止め

 

「な!?」

 

要塞の方へ投げ飛ばす。

 

「な、なんてパワーだ」

 

「どきなさいよ」

 

ハンナは体勢を立て直そうとするが、目の前に牙を剥き出しにしたライガーゼロが現れ一瞬委縮した。

 

「ひっ!?」

 

その一瞬を突き、ライガーゼロは頭部に噛みつき、牙がキャノピーを突き抜けた。

ライガーゼロが顎の力を強め、牙を更に食い込ませてハンナに迫らせる。

 

「い、いや!やめてやめてやめてやめてえええええ!!」

 

間近に迫る死を感じ、ハンナは恐怖に怯える。

 

「助けて!助けてプロイツェン様!!プロイツェン様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ハンナは顔を涙でぐしゃぐしゃにして泣き叫ぶ。牙が目の鼻の先まで来た瞬間、ライガーゼロはダークスパイナーの頭部を引きちぎり、軽く放り投げる。

 

「いつまでも死んだ人間に縋ってる奴の相手してる暇なんて、これっぽっちもないんだから」

 

冷たく蔑んだ目でハンナを見ながら、低い声で言い放ち、アオイは要塞内部へ向かった。

 

トーマが進んだルートを使い、シュバルツとトーマの救助に向かった。展開されたモニターには未だにディバイソンを攻撃し続けるアイアンコングMk-Ⅱが映しだされていた。

 

「早くしないと、大佐がトーマを手にかけてしまう!」

 

最悪の事態を阻止しなければ・・・と思っている間に変化が起こった。アイアンコングMk-Ⅱが停止した。どういう訳か、リーゼの支配から脱したようだ。

 

しかし、安心したも束の間、アイアンコングMk-Ⅱが再び攻撃を開始した。

リーゼが何か細工をしたのか、制御不能に陥っているようだ。トーマが制御回路を撃とうとするが、攻撃は全く違う場所へ飛ぶ。度重なる戦闘でビークが機能停止している事が分かる。

 

『駄目だ、やはりビークなしでは』

 

『トーマ、コックピットを撃て』

 

シュバルツの言い放った事に、アオイは声を荒げる。

 

「駄目です大佐!私が今助けに」

 

『アオイか・・・無理だ、お前が到着する頃には私はトーマを殺している』

 

「しかし!」

 

『トーマ、迷わず撃て!そして、お前に課せられた任務を遂行しろ!それがシュバルツ家の軍人としての誇りある行動だ』

 

『兄さん・・・』

 

トーマが撃つことを躊躇っている間に、アオイは二人のいるフロアに辿り着き、拳を振り上げているアイアンコングMk-Ⅱへ駆ける。

 

『何をしている、トーマ!早く撃て!!』

 

『確かに俺はシュバルツ家の軍人です、ですがその前に・・・俺は!』

 

ディバイソンは、破損を免れた17連突撃砲の砲身をアイアンコングMk-Ⅱの頭部に向けた。

 

「・・・さらばだ」

 

「ダメええええええええええええ!!!」

 

何とかして止めようとするアオイだったが、どうやっても間に合う距離にいなかった。

ディバイソンの攻撃が放たれる・・・かと思いきや

 

ディバイソンの角がアイアンコングMk-Ⅱの胸部を貫き、制御回路を破壊し、停止させた。

 

「え・・・」

 

アオイは思わず、ライガーゼロの足を止め、その様を呆けて眺めてしまっていた。

 

『トーマ、何故、確実にコックピットを破壊しなかった?一歩間違えればお前は死んでいた』

 

『どんな状況でも冷静に、最後まで自分を信じて戦え・・・僕の尊敬する軍人が昔、そう教えてくれたのです』

 

トーマの言った言葉に、アオイはハッとする。それは、彼女も聞き覚えのある言葉だったからだ。

 

「それって・・・」

 

『トーマ、お前・・・』

 

モニターから見て取れる、トーマの凛々しい姿に、アオイはふと微笑んだ。

 

「(トーマ、あんたの事、ちょっと見直したわ)」

 

心の中でトーマを褒めていると、轟音と共に巨大なダブルソーダが要塞の壁を破り、脱出した。

 

「リーゼが!?」

 

「い、いかん・・・一刻も早く要塞の動力炉を」

 

「いや、待て。要塞内部の温度が急激に低下している。冷却バルブが開かれたようだ」

 

3人はゾイドを降りて動力炉の方へ向かうと、ジークが冷却バルブを開いている姿があった。

 

日が落ち始めた頃、応援の帝国軍が到着、救助作業が行われた。

 

「お前達には迷惑をかけたな。すまなかった」

 

「そんな、大佐が謝る事なんて」

 

「しかし、本当に無事でよかったです、兄さん」

 

アオイとシュバルツ、トーマが話しているところに、バンとフィーネ、ジークが現れると

 

「フィーネさん!」

 

トーマはいの一番に走り出し、盛大にずっこける。

 

「大丈夫?」

 

「はい!フィーネさんこそご無事で何よりです!」

 

相変わらずフィーネの前だと態度がコロッと変わるトーマに、呆れて笑うアオイ・・・だったが

 

「本来なら何を差し置いても救出に向かうべきだったのですが、つい野暮用に手間取りまして」

 

「は?」

 

不躾な発言を聞き、眉を潜めた。

 

「野暮用とか言われてるけど?」

 

「こんな奴など知らん」

 

「トーマ・・・見直した私がバカだったわ」

 

そう言った後、バン達に釣られてアオイは笑い出した。

 

「必ずあなたのために、どこからでも駆け付けて!参りたいと思って!」

 

土下座でペコペコしているトーマを見ながら・・・

 

 

 




いくら時間が掛かっても完結させてみせる

シュバルツ兄弟かっこよくていいですね
オリジナル回も交えて登場頻度をあげようと思います
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