ZOIDS 紅の獅子   作:モルヤパ

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短編
さすらいの賞金稼ぎ


雲が一つもない砂の大地に、太陽の光が浴びせられ、熱で視界を揺らがせる。

その一角に、オレンジのバンダナを頭に巻き、左目にカメラが備え付けられた眼帯を付けた男・・・アーバインが立っていた。

 

「あそこだな」

 

アーバインは眼帯のカメラを使い、砂漠にそびえ立つ渓谷を観察していた。

 

「奴らは谷に潜んで共和国軍の目を掻い潜っていたんだな、だが今日で年貢の納め時だ」

 

カメラの機能を元に戻しながらニヤリと笑った。アーバインは近隣の村を襲っている盗賊団の討伐を依頼されて、そのアジトへと乗り込もうとしていた。

 

「さて・・・今日も頼むぜ?相棒」

 

アーバインは、傍に居た黒いコマンドウルフに語り掛け、コクピットへと乗り込む。

行動を開始しようとしたが、突然、渓谷から爆発が起こり、煙が立ち上った。

 

「な、何だ!?」

 

何事かと思い、渓谷の方をズームして見ると、既に盗賊団のゾイドが何者かと交戦しているのが見えた。

 

「奴ら、何と戦っている?共和国軍か?」

 

周辺を隈なく探すと、盗賊団を襲っているゾイドが見えた。

 

「何だアレは!?紅いシールドライガー・・・じゃないな、全く見た事もないゾイドだ」

 

アーバインの瞳に映っている、紅い鎧を身に纏ったライガーは次々と盗賊団のゾイドを襲い、行動不能にしていく。その光景に見惚れていたが、本来の目的を思い出して、コマンドウルフの操縦桿を握る。

 

「こうしちゃいられねぇ!手柄をあいつに盗られちまう!」

 

アーバインはコマンドウルフを走らせ、渓谷へと急ぐ。しかし、到着する頃には盗賊団は全滅しており、無残な光景が広がっていた。しかも紅いライガーが伏せてアジトの出入り口に呑気に佇んでいた。完全に自分の獲物を根こそぎ奪われたあげく、おちょくっているとしか思えない事に、アーバインは顔を顰める。

 

「クソッ!一体どこのどいつだ!俺の獲物を!」

 

コマンドウルフから降りてアジト内に入り、紅いライガーの乗り手を探すと・・・

 

「お腹空いたぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

 

程なくして、紅い長髪をした女性・・・アオイが目を回して倒れていた。

 

「何だ・・・これは・・・」

 

もはや思考が追い付いておらず、アーバインはただただ戸惑う事しかできなかった。

 

日が落ちて辺りが暗くなり、アーバインは依頼された村に向かう途中で野営をする事になった。ガスコンロでコーヒーを沸かす中、アーバインはレーションにがっつくアオイを見て冷や汗を垂らす。

 

「いや~ごめんね?ご飯ご馳走になっちゃって!」

 

「何で俺がこんな事を・・・」

 

嘆いてはいるが、目の前で倒れているところを見捨てては寝覚めが悪いと思い、渋々ながらアオイを助け、食料を分け与えていた。しかし、ただ助けたわけではなく、自分が狙っていた盗賊団を何故襲っていたのかを聞くためでもあった。

 

「お前さん、何であの盗賊を襲ってたんだ?」

 

「ふぇ?ふぉれふぁ」

 

「オイ口のモン飲み込んでから喋ろ」

 

大量にレーションを掻き込み頬を膨らませながら喋ろうとするアオイを、アーバインは一旦止めて咎める。口の中のものを全て飲み込み、先ほどの質問に答える。

 

「あいつら襲ったのは食料目当てだったの」

 

「食料だぁ?」

 

「ええ、ここ3日何も食べてなくって・・・」

 

アオイはアーバインに会うまでの経緯を事細かく話し出す。

 

アオイの駆る紅いゾイド、ライガーゼロと砂漠を歩き、食料を求めて人の住む場所を探していたが、そこで偶然にも盗賊団のアジト周辺を通り過ぎていたところで、盗賊に発見された。

 

「見た事もねぇゾイドだ!」

 

「とっ捕まえて売れば遊んで暮らせるだけの金が手に入る!」

 

「しかもパイロットは女!こりゃ今夜が楽しみだぜ!」

 

いかにもならず者という体を成している盗賊達を意に返さず、アオイはライガーゼロを走らせる。

 

「お、おいこっち向かってくるぞ!?」

 

「ご飯寄越せええええええええ!!」

 

叫びながら最前列にいたモルガを体当たりで吹き飛ばし、次々と盗賊団のゾイドに襲い掛かった。

 

「ば、化け物だああああああああああ!?」

 

「ご飯!ご飯!ごはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

「こいつさっきから何言ってんだどふぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

盗賊を全員蹴散らしてアジトに入ったが、盗賊団の方も困窮してたのか、レーションすらなく、アオイは体力の限界が来て倒れ、今に至る。

 

一部始終を聞いたアーバインは、呆れた表情でアオイを見る。

 

「どっちが盗賊が分かりゃしねぇ・・・」

 

「仕方ないじゃない、お腹空いてたんだもの」

 

レーションを一通り食べ終わり、アオイは満足げな表情を浮かべる。

 

「あ、そう言えばあなたの名前、聞いてなかったわね。私はアオイ・リュウガ」

 

「アーバインだ・・・俺も一つ聞いても良いか?こいつは何処で手に入れた?」

 

アーバインはライガーゼロの方へ向いてアオイへ尋ねる。

 

「あまり覚えてないんだけど・・・砂漠を一人で歩いてて、死にそうになっていたところを助けてもらったの」

 

「お前、前にもこんな事あったのかよ」

 

「初めて会ったのに、どこか気が合ってね。すぐに打ち解けられたわ、私達」

 

「フ・・・そうか」

 

自分にも通ずるものがあったのか、アーバインは静かに笑う。

 

「さてどうすっかな・・・お前が奴らを倒したせいで報酬がパーだ」

 

「そうだったの?じゃああなたが倒した事にしていいから」

 

「は?お前それでいいのかよ?」

 

「別に構わないわよ?ああいう野蛮な連中は、昔から嫌いだったから」

 

アオイの目が少しだけ険しくなり、並々ならない事情があるとアーバインは察し、それ以上は何も聞く事はなかった。

 

「そうか、なら遠慮なく報酬はいただくぜ?にしても、いいゾイドだなこいつは、一度俺にも・・・ん?」

 

ふとアオイの方を見ると、よほど疲弊していたのか寝息を立てて眠っていた。あまりの無防備さに、アーバインは頭を掻く。

 

「ったく、どんな育ち方したら見ず知らずの男の前で寝られるんだよ・・・まぁ、そんな気は微塵もねぇけどな」

 

気持ちよさそうに眠るアオイを見て、アーバインも眠気に襲われ欠伸をする。

 

「俺も寝るか・・・色々あり過ぎて疲れちまった」

 

コマンドウルフのコクピットシートに身体を預け、アーバインは目を瞑る。

 

「んん・・・ふぁ~・・・よく寝た・・・」

 

日が昇り、空が明るくなり始める頃にアオイは目を覚ました。久しぶりに満腹の状態で熟睡できた事もあり、顔色が良かった。背伸びをして体をほぐしていると、ライガーゼロが何度も吠える声が聞こえてきた。

 

「どうしたの~ゼロ?」

 

眠気眼で声のする方向に身体を向けると、ライガーゼロが何かを振り払うかのように暴れているのが見えて、アオイは一気に覚醒した

 

「ゼロ!?どうしたのゼロ!?」

 

ライガーゼロは首が千切れるのではないかと思うくらい、激しく頭部を振り続けていた。一体何が起こっているのかと思っていた時、ライガーゼロのスピーカーから男の声が聞こえてきた。

 

『クソっ!なんてじゃじゃ馬だこいつは!オイ暴れんな!!』

 

「その声は、アーバイン!?」

 

自分を助けてくれた男がライガーゼロに乗っている事にアオイは驚くが、それは次第に、勝手にライガーゼロに乗った事に対する怒りへと変わり、顔を強張らせる。

そして、ライガーゼロはキャノピーを開き、アーバインをコクピットから強制排出した。

 

「おわぁ!?」

 

アーバインは宙を舞い、砂漠の大地を転がった。幸い砂がクッションになり怪我はせず、すぐに立ち上がった。

 

「あたたた・・・なんて乱暴なゾイドだ」

 

「あんた!私のゼロをどうするつもりだったの!!」

 

怨嗟が籠った怒鳴り声をあげるアオイに、アーバインは委縮する事なく笑ってみせた。

 

「どうするつもりだと?ハッ!俺は賞金稼ぎだぜ?珍しいゾイドを軍に売れば金になる!金の匂いがするモンをみすみす逃がすほど、俺は甘くねぇ!」

 

「そういうのは賞金稼ぎじゃなくて強盗って言うのよ!」

 

「食べ物目当てで盗賊襲った奴が言うセリフじゃねーな!」

 

アオイを言い争いながらも、アーバインはコマンドウルフに向かって走り、コクピットへと乗り込んだ

 

「ゼロ、あいつをぶっ飛ばすわよ!!」

 

アオイはライガーゼロのコクピットに飛び乗り、操縦桿を思いきり握りコマンドウルフへと向かう。ライガーゼロの力強い走りを目の当たりにし、アーバインは固唾を呑む。

 

「さて、あの化け物相手にコマンドウルフでどれだけ立ち回れるか」

 

アーバインはライガーゼロに照準を合わせ、二連装ビーム砲の引き金を引く。

ライガーゼロは飛んでくるビームを巧みに躱し、コマンドウルフへ肉薄する。

 

「チッ!やっぱり他のゾイドと比べ物にならないくらい運動性能が高い!ロクな武装を積んでないのが唯一の救いか!」

 

「舐めんじゃないわよ!!」

 

ライガーゼロはコマンドウルフへ爪を突き立て跳びかかる。

 

「おっと!」

 

後方へ跳んでライガーゼロの攻撃を回避したコマンドウルフは、返す刀でビーム砲を発射、今度は直撃するが、僅かに怯んだだけですぐに走り出す。

 

「そんな豆鉄砲効くもんか!!」

 

「クソッ!マジで反則だろそのゾイド!!」

 

アーバインはコマンドウルフを走らせて逃げ出すが、いつもより動きが鈍いと感じた。おかしいと思い、アーバインは問いかける

 

「おいどうした!?いつもの調子が出てねえぞ!」

 

するとコマンドウルフは不満そうな唸り声をあげた。何かが気に入らないと言いたげな声に、アーバインは舌打ちをして怒鳴りつける

 

「チッ!こんな時に駄々こねてんじゃねぇ!!やらなきゃやられるんだぞ!!」

 

「もらったぁぁぁぁ!!」

 

鈍った隙にライガーゼロがコマンドウルフの真上へ跳びかかってくる。

 

「しま・・・!?」

 

向かってくるライガーゼロを見上げ、倒される光景が頭によぎる。ぶつかる寸前でライガーゼロに砲撃が加えられて吹き飛ばされ、地面を転がる

 

「きゃあ!?」

 

「何だ!?何処からの攻撃だ!?」

 

アーバインは射線を辿り、砲撃の主を探すと、ビームランチャーを装備したダークホーンと、コマンドウルフとモルガが数体が隊列を組んでいた。

 

「オイオイ、ダークホーンなんて冗談じゃねーぞ!ここは共和国領内だぞ!?」

 

「多分、部隊が壊滅したか何かで帝国を抜けた兵士みたいね。」

 

「あいつらがアジトを襲撃してきたんだ!」

 

「俺の留守の間に好き勝手やってくれたようだな?」

 

ダークホーンの乗り手が通信を送り、それにアーバインが声を荒げて反論する。

 

「オイ襲ったのは紅い方だぞ!俺じゃねえ!」

 

「何よあんた元々こいつら襲うつもりだったでしょう!」

 

「余計な事言うなじゃじゃ馬女!!」

 

「人のゾイド盗もうとしたあんたが言うんじゃないわよ!!」

 

自分達をそっちのけでギャーギャーと言い争う様を見せられた盗賊のボスらしきダークホーンの乗り手は、眉を引く付かせて苛立ちを募らせる。

 

「貴様ら・・・いちゃつくなら余所でやってくれないかな?」

 

「誰もいちゃついてねぇ!!」

「誰もいちゃついていないわよ!!」

 

アオイとアーバインが同時に怒鳴ってきて、ボスは少しだけ委縮する。

 

「ぐぅ・・・こ、こちらも舐められっぱなしでは終われないのでな!ここで屍を晒せ!!」

 

盗賊団のゾイドが一斉に砲撃を開始し、コマンドウルフとライガーゼロに砲弾が降り注ぐ。

 

「あの数にダークホーン・・・分が悪すぎる」

 

「怖気付いたなら逃げなさいよ、私が倒すから」

 

ライガーゼロが盗賊団へと向かう姿を観て、アーバインが声を荒げる。

 

「本気か!?あの数を正面から挑む気かよ!」

 

「コマンドウルフじゃ確かに分が悪い相手よね、けど・・・あんたの相棒はこの程度で臆するほど臆病なの?」

 

アオイに指摘され、アーバインはハッとする。コマンドウルフが強く唸り声をあげる、自分はこれくらいやれる、あいつに負けないと言いたいように。

 

コマンドウルフの意志を感じ、アーバインは微笑んだ

 

「そうだな、これくらい何ともねぇよな?相棒・・・やろうぜ!」

 

コマンドウルフは強く吠えた後に走り出し、ライガーゼロと並ぶ。

 

「やる気になったようね?」

 

「お陰様でな。周りの雑魚は任せとけ、流石にダークホーン相手じゃ火力不足だ」

 

「OK、大物は貰ったわ!」

 

ライガーゼロとコマンドウルフが二手に分かれ、アーバインは前方にいるモルガへ狙いを絞る。

 

「おらおらぁ!!」

 

モルガの攻撃を回避しつつ、2連装ビーム砲を発射してモルガを一体撃破する。

 

「やらせるかぁ!!」

 

「邪魔よ!!」

 

ダークホーンの前に出てきたコマンドウルフを、ライガーゼロは突っ込みながら右前脚の拳で殴り飛ばす。

 

「ちぃ!何だこのゾイドは!?」

 

ダークホーンの乗り手は、目の前で仲間が乗ったコマンドウルフがライガーゼロに軽々と蹴散らされているのを目の当たりにし、顔を引きつらせる。

 

「さて、残ったのはあんただけね?」

 

「くそぉ!!」

 

ダークホーンの乗り手はビームキャノンをライガーゼロに向けて連射するが、どれも軽々と避けられて接近を許してしまう。ライガーゼロの鬣上のユニットが展開し、両前脚の爪が輝きだす。

 

「な、何だ・・・!何をする気だ!?」

 

「決まってるでしょ?あんたを今からぶっ飛ばすのよ!!」

 

ライガーゼロは飛び上がり、ダークホーンへ真っ直ぐ突っ込み

 

「ストライクレーザークロー!!」

 

輝く爪で切り裂き、ダークホーンは倒れる。

 

「ちぃ!よくもボスを!」

 

1機だけ残ったコマンドウルフが、ライガーゼロを背後から攻撃しようとするが、アーバインが撃墜する。

 

「お前、俺の事忘れてたろ?」

 

「くっそぉ・・・!!」

 

「ふぅ・・・サンキュー、助かったわ」

 

「へっ、避ける気満々だった癖によく言うぜ」

 

アオイとアーバインの笑いが砂漠に木霊した。

 

誰もいない荒野に、ライガーゼロとコマンドウルフが向かい合って並んでいた。

 

「さて、これでさよならね。」

 

「ああ、できる事なら二度と会いたくねぇな」

 

「それはこっちのセリフよ!私の相棒を盗もうとしたんだから!」

 

「わかった悪かったって、ちょっと乗ってみたかっただけだよ」

 

アーバインの軽い謝罪に憤りを覚えながらも、アオイは溜め息を吐く

 

「あんたも自分の相棒を大事にしなさいよ、コマンドウルフがへそ曲げてたの知ってるんだから」

 

「分かるのか?」

 

「小さい時からゾイドと一緒だったからね、何となく分かるのよ」

 

「ハハッ、そこまで看破されてたとはな?降参だ」

 

「それじゃあ私はこれで行くわ、共和国軍に見つかると色々厄介だからね」

 

アオイはライガーゼロと共に立ち去ろうと踵を返して走り出す。盗賊団の戦いでもそうだったが、息の合った動きを目の当たりにし、アーバインは微笑む。

 

「じゃじゃ馬同士お似合いってところか・・・」

 

そうつぶやいた後、アーバインはコマンドウルフを走らせる。

 

「さて・・・西か東か賞金次第・・・どこまでも行こうぜ?相棒」

 

アーバインの言葉に、コマンドウルフは嬉しそうに吠えた後、スピードをあげて地平線へと向かって行く。

 

その後、銀色のオーガノイドを引き連れた少年と会い、再びアオイとも再会を果たすが・・・それはまた、別の物語

 

END

 




ここで改めて、アーバインを演じた藤原啓治さんに哀悼の意を表し、ご冥福をお祈りします。

本当は連載して間もない時に考えた短編で、しっくり来ずに没にしてましたが、今回の出来事をきっかけに掲載する事にしました。
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