「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
辺りが黒い空間に包まれる中、アオイは何かに追われる様に走る
彼女の前に帝国軍兵士がライフルを向け包囲した
「!?」
兵士達の中央に、彼らを従えるプロイツェン
その後ろに、紅いセイバータイガーが砲塔をアオイに向けていた。
「くっ・・・!」
後ずさりをするアオイだが、逃げ場がない
プロイツェンは、無言で手を振り上げ
一斉にライフルの弾がアオイを襲う
「アアアァァァァァァ!!」
声にならない悲鳴をあげ、全身を弾に貫かれ崩れ落ちる
虫の息になりながら
「フフフフフ・・・フハハハハハハ!」
プロイツェンの高笑いを聞き、目を閉じた
「・・・っか・・・アオ・・・っかりして、アオイ!」
うなされる声を上げるアオイを、フィーネがゆさぶる
「あ・・・・・」
気が付くと、グスタフの後部座席で寝かされていた。
「よかった、気が付いた。」
「フィーネ・・・?ここは・・・」
「あたしのグスタフの中だよ」
そう答えたのは、外から顔を覗かせたムンベイだ
「私・・・一体どうして・・・」
「あんたレイヴンと戦った後、丸一日寝てたんだよ。」
「丸一日・・・」
何かを思い出したかのようにアオイは飛び起きる
「ゼロは!?ゼロはどこ!?」
急に起きたせいか、頭痛で頭を抑える。
「落ち着きなって、あんたの相棒なら・・・ホラ」
ムンベイが視線を向けた先には
心配そうにグスタフのコクピットを覗くライガーゼロがいた。
「ずっとあたしのグスタフに付き添ってたんだよ。よっぽど信頼してるのね、あんたのこと」
「よかったね、アオイ」
アオイの眼から、次第に涙が零れ落ちた。
「ごめんね・・・私があなたを止めさえしなければ・・・!」
「大丈夫、受けた傷はもう回復してるわ。でも驚きだね、並みのゾイドじゃないのはわかってたけど、あたしらの常識を超えてるよ。」
「今は何処にいるの?」
「前の村を離れて、別の町に来てるところさ。そこでジークを診てもらおうと思って」
「何があったの?」
ムンベイは、アオイにこれまでの事を掻い摘んで話した。
あれからバンはレイヴンにリベンジしようとして
ようやく見つけて勝負を挑んだが、シャドーと合体したセイバータイガーに敗北
シールドライガーもジークも再起不能になり
ゾイドの専門医がいる町に向かっていた
「なるほど・・・」
「今から町に行くとこだけど、歩けるかい?」
「ええ。」
アオイはグスタフから降りると、アーバインもそこに来ていた。
「よぉアオイ、頭に包帯巻いてる気分はどうだ?」
「最悪よ・・・それにあんた、また私のゼロを狙って・・・!」
「違う違う、今のターゲットはあれだ。」
アーバインが指を指す方を見ると
ボードの上に蹲っているジークと、それを複雑な表情で見ているバンの姿があった。
「バン・・・」
「今はそっとしておけ。専門医のとこに行くぞ。」
彼らはバンを残して、一足早く村へと向かった。
「まぁ予想はしてたけどな・・・」
しかし、町には専門医どころか人っ子一人見当たらなかった。
「ムンベイでも治せないの?」
「あんな症状のゾイドは見たことないからね・・・」
「誰もいないのか?」
そこにジークを引っ張ってバンが来た。
「うん、ここにはゾイドの専門医がいたはずなんだけど・・・」
「そうか・・・」
「諦めて共和国軍に助けてもらったらどうだ?」
「ダメだ!俺達はもうこれ以上戦争とは軍隊に関わりたくないんだ!!」
そう怒鳴ると、バンは建物の中へ走っていく
「いい心がけだ。」
「アーバイン、わざと言ったわね」
「あれで大人しく軍に助けを請うような奴なら、その程度ってこった。」
そういう会話を挟みつつもバンを追いかけ
薬品が入ったビンをかき集めているところを見つけた。
「バン・・・それ全部人間用よ。ジークには使えないよ」
「そんなのやってみなきゃわからないだろう!」
「バン、落ち着いて」
「ジークがあんな風になっているのに落ち着いていられるか!!」
声を荒げたと同時に、抱えていたビンが床に落ちて割れた。
自分ではどうしようもない状況に、バンは顔をしかめる。
「・・・ごめんなさい・・・」
謝るフィーネ その姿を見てバンは口を開く
「フィーネ・・・ジークが治ったらウィンドコロニーに帰るよ。」
「え?」
「ゾイドイヴの旅は終わりだ。これ以上ジークを危険なところに連れて行きたくないんだ。」
「そう・・・」
沈黙を貫く二人に、割ってはいるようにアーバインが口を開く
「だったら、あのままジークを死なせてやったらどうだ?」
「何だと!?」
「ゾイドは兵器なんだ!戦争をやるために存在しているんだよ!」
「違う!!」
「違わねえ!」
二人を見かねて、アオイもバンに話しかける。
「バン・・・アーバインの言ってることも一理あるわ。一人前のゾイド乗りになるってことは、一人前の兵士になるってことよ。私も最初は嫌だったけど・・・仕方ないと思ったわ。」
アオイの後にアーバインも続ける
「お前はそれが嫌だと言った!だったらジークは必要ねぇはずだ!」
「ジークは俺の相棒なんだ!!」
「ハッ、その大事な相棒があんな状態になったのはお前の腕が未熟だったせいじゃねえのか?戦争や軍隊が悪いんじゃねえ!」
だんだんと声量が増すアーバイン
「ましてフィーネは絶対に悪くねえ!お前自身が悪いんだ!!」
悔しかったが、アーバインの言っていることは正しくバンは押し黙ることしかできなかった。
「逃げるんならお前一人で逃げな!フィーネもジークも俺が引き受けてやる!」
「ふざけるな!!」
二人の争いを止めるかのように
建物内にハウリング音がけたたましく響き、全員は耳を塞ぐ。
「うっさい奴らじゃなぁ。」
カウンターから、サングラスを掛けた一人の老人が顔を出した。
「ジジィ!?」
「ドクター・ディ?」
「何、知り合い?」
「まぁ、そんなとこよ。」
「お前らは話しているのか喧嘩しているのか区別つかんぞ?」
「両方だ。」
「ディじいさん、こんなところで何をしているの?」
「日焼け止めを買いに来たんだ。
「日焼け止め?」
そういうと、ドクター・ディはサングラスを外す
サングラスの部分は日焼けをしていないため、目の周りだけが白い
そのおかしな光景に、一同は吹き出してしまう
「雪には照り返しがあるのをすっかり忘れておった。ここがヒリヒリしてな。」
「そうだじいさん!あんた昔は共和国の偉い科学者だったんだよな!?」
「そんなことを言った覚えはないが?」
「何でもいい!診てもらいたいんだ!」
そう言うと、バンは無理やりドクター・ディをカウンターから引っ張り出した。
「うわ待て!!」
その拍子に、包帯を巻いていた左足がカウンターにぶつかり
「ギャアアアアアアアア!!!」
ドクター・ディは悲鳴を上げる。
「脚を骨折してるんだもっと丁寧に扱え!」
日焼け止めよりすることあるだろ、とバン達はため息をついた。
ドクター・ディが、ジークを診ている最中
アオイは、ゼロの傍にいた。
「ゼロ、本当に大丈夫?」
ゼロは、心配ないと言いたげに唸り声を上げる。
「良かった・・・」
「お前さんとそのゾイドはかなり強い絆があるようじゃな。」
そこにドクター・ディが松葉杖を突きながら歩いてきた
「あなたは・・・ドクター・ディ?」
「よければ、ちょいと見せてもらえんかな?」
「ええ、別に構わないけど・・・ゼロ、いい?」
ゼロは嫌がっているのか軽く首を振った
「わがまま言わないで、せっかくまともに見てくれる人が見つかったんだから。」
「お前さん、このゾイドの言ってることがわかるんか?」
「いえ、何となくってだけ。」
嫌々ながらもコクピットにドクター・ディを乗せたライガーゼロ
パネルを操作する内、ドクター・ディから唸り声が上がる。
「うむ・・・この様なゾイドを見たのは初めてじゃ・・・完全な野生型ゾイド、外装アーマーや各種駆動系の高性能化・・・他のゾイドとは別の系統で進化をしたようじゃな。」
「そんなことまでわかるの?」
「わしは科学者だ、これくらいのことはわかるさ。じゃが、せっかくの学習機能が10%も活かされてない。」
「学習機能?」
「そうじゃ、ライガーゼロには高度な学習機能がついておる。」
ドクター・ディが得意げに、ゼロの学習機能の説明をしだした。
あまりにも専門的であったため、アオイは大まかな部分しか理解できなかったが
戦闘を重ねる内にゾイド自身が学習し、戦闘能力を向上させる
つまり、戦えば戦うほどライガーゼロは強くなるということだ
それを聞き、アオイは何かを思いつきドクター・ディに詰め寄る
「その学習機能って100%活かすことってできる!?」
「出来なくはないが・・・すぐ完全に機能を起こすのは不可能じゃ。徐々に眠っている機能を覚まさせるしか手はない。きっかけは与えてやったから、後は待つだけじゃ。」
「本当に!?ありがとうお爺さん!」
あまりの嬉しさにアオイはドクター・ディを抱きしめた。
「ハッハッハ!お安い御用じゃ!」
そう言い、ドクター・ディの手は下にいきかけ
ると同時にアオイは拳銃をドクター・ディの顎に突き付ける。
「私の尻を触るのなら命を掛ける事ね。」
「わ、分かったから銃を下ろしてくれ。まだワシは命が惜しい身じゃから」
一悶着あったが、これでライガーゼロの学習機能が目覚め始める。
バンはジークを助けるためにマウントオッサへゾイマグナイトの採取に
アーバインはレイヴンに借りを返すために多弾頭拡散ミサイルを取りに共和国基地へ
アオイもすぐにライガーゼロに乗りセイバータイガーを捜索しに行った。
そして
「フン、逃げ足だけは一流か」
アーバインとの戦闘に勝ったレイヴンを見つけた。
「やっと見つけた・・・!」
「ん?あの時の・・・」
レイヴンは平然としていたが、アオイは右前足が捥げてボロボロになったセイバータイガーを見て顔を強張らせる。
「あんた・・・私のセイバーを・・・!!」
「もうお前のじゃないって言ってるだろ?それにこの程度で動けなくなる様なゾイドじゃ僕にふさわしくない。」
「平然とゾイドを傷つけるアンタがほざいてんじゃないわよ!!」
前回と違う勇ましさに、レイヴンは若干圧倒される。
「ふーん、この前とは違うみたいだね。」
「あんたに使われる位なら・・・私とゼロがセイバーを倒す!!」
「フン。やれるものならやってみるんだね。」
「随分余裕ね、そんな状態で私達に勝てると思ってるの?」
そう 傍から見れば、満身創痍のセイバータイガーと全快状態のライガーゼロ
どちらが勝つかは誰が見ても分かる通りだ
「甘いな・・・シャドー!!」
「グオォォォォォ!!」
セイバータイガーと融合したシャドーは、ゾイドコアを活性化させ
捥げた右前足と、機体全体を完全に修復する。
「ウソ・・・!?いくらオーガノイドでもこんな・・・!」
「こちらから行くぞ!」
セイバータイガーが駆け出し、ライガーゼロに向け突進する。
「行くよ、ゼロ。私が・・・あいつらからセイバーを解放してやるんだ!!」
ゼロは咆え、セイバータイガーへ駆け出す。
両者は同時に飛び上がり、空中でぶつかり合う。
「やるね、プロイツェンの言う通り厄介なゾイドだよ。」
「今回はオーガノイド付き・・・普通にやれば勝ち目はない、けど・・・」
こちらはドクター・ディが目覚めさせてくれたゼロの学習機能がある。
上手く作動すれば、オーガノイドのバックアップがあっても勝機はある。
「奇跡が起きるのを・・・信じるしかない。」
「流石にやるね、でもこれならどうかな?」
レイヴンはセイバータイガーのビーム砲をゼロに向け放つ
「行くよ、ゼロ!!」
ゼロは咆哮し、ビーム砲を掻い潜りセイバータイガーへ駆け出す。
「なめるなぁぁぁ!!」
「いけぇぇぇぇぇ!!」
再び、両者はぶつかりあう。
「フン、結局さっきと同じか。」
しかし、着地してからレイヴンは気付いた。
セイバータイガーの左前足の肩の装甲が抉れていた事に
「何!?」
レイヴンはゼロの方を見ると、装甲を咥えているのが見えた。
「やった・・・!やっと一撃加えられた!」
「こいつ・・・いつの間に!?」
それにはレイヴンも驚いていた。
それは、ゼロの学習機能が働いた結果だ
レイヴンとセイバータイガーの動きを学習し
自分自身を強化したのだ。
「やったよゼロ!」
アオイと同じく喜びを表すゼロ
「この・・・いい気になるなぁぁぁぁ!!」
「今なら・・・いける!!」
三度、両者は駆け出し勝負に出る
「くらえええ!!」
レイヴンはビーム砲でゼロを狙い撃つ
しかし
ゼロは飛び上がり回避した
「しまった!?」
「ストライクレーザークロー!!」
ゼロの爪が、セイバータイガーの背部に直撃
ビーム砲を破壊した。
「くそ・・・!」
「いける・・・!これならいける・・・!」
完全に 勝機は見えた
しかし
突如、別方向からの砲撃がゼロを襲った
「な、何!?」
砲撃を辿ると
ヘルディガンナーとダークホーン、アイアンコングが姿を現した。
「子供のお守りとは・・・ロットティガーも地に落ちたもんだな。」
「無駄口を叩くな、これより紅いライガータイプを攻撃!レイヴンの離脱の援護を!」
「こちらライナー、了解!」
「あのマーク・・・帝国軍のロットティガー!?」
「チッ、邪魔が入ったか・・・」
帝国軍の特殊部隊 ロットティガーのゾイドはゼロに攻撃を加える。
「マズイ・・・ゼロ、悔しいけど撤退するわよ・・・!」
ゼロはその場から走り去る
「逃がさん!このヘルディガンナーなら!」
ヘルディガンナーのパイロット ライナーはゼロを追撃する。
ヘルディガンナーの追跡能力が高く、アオイは引き剥がせずにいた。
「このままじゃ追いつかれる・・・!ゼロ、イオンブースターを使うわ!」
アオイはゼロの背部にあるイオンブースターを展開
「イオンブースター、GO!!」
ブースターを点火し、一気に加速する。
「何だあの速度は!?」
「あれじゃレドラーでも追跡不可能・・・だな。」
アイアンコングに乗ったクローディア、そしてダークホーンに乗ったマックスは
ライガーゼロのブースター加速に驚きを隠さなかった
「くそ・・・逃がさん!」
「待てライナー、我々の任務はレイヴンの援護だ。深追いは禁物だ。」
「・・・了解」
レイヴンの援護に来たロットティガーだったが、当の本人は不貞腐れていた。
「フン、せっかく面白くなってきたところなのに邪魔しないでもらえるかな。」
「何だと貴様!」
「やめとけライナー、俺達の相手は共和国軍なんだぞ?」
レイヴンに取って掛かろうとするライナーを、マックスがなだめる。
「しかし・・・!」
「興ざめだよ・・・行くぞ、シャドー」
「グォォォォ!」
分離したシャドーは、レイヴンと共にその場から走り去った。
「隊長、何故あの様な子供が・・・」
「分からん、プロイツェン閣下の考えていることは私には理解し切れん。」
「早く戻ろうぜ、もうすぐクロノス砦の攻略が始まる。」
疑問に思うロットティガーであったが、すぐにクロノス砦の陥落作戦に参加するため
互いのゾイドを走らせた。
しかし、その前にクロノス砦は自爆により陥落
多数の帝国軍ゾイドが破壊され、コア回収作業に追われることになる
そして
「あとちょっと・・・あとちょっとだったのに・・・!」
アオイは悔しそうに歯を噛み締め、ゼロを走らせていた。
それを励ます様に、ゼロは大きく咆えた。
「・・・そうね、まだ次がある・・・次こそは必ず・・・セイバーを戦いから解放してあげなきゃ・・・!」
レイヴンにいい様に弄ばれているセイバーを、次こそは救ってみせる
そう心の中で誓い、バン達の待つ町へ向かっていった。
今回は、ゾイドバーサスに登場する帝国軍特殊部隊ロットティガーの3名を参加させてみました。このゲームをしていたのはかなり昔で、キャラの口調等は覚えていないので、若干違うと思いますがあしからず
今後も登場するかどうかは難しいので、今回で最後になるかも知れませんがご了承を