『何、ロットティガーが奴を取り逃がしただと?』
「は、クローディアの報告からはその様にと・・・」
帝国軍の野営キャンプで、マルクスはプロイツェンと交信していた。
『おのれ・・・逃げ足の速い奴だ』
「閣下、何故今更我が軍を脱走したアオイ・リュウガ准尉に拘るのですか?」
『彼女は帝国軍の機密を知る人間だ。万が一反乱軍に寝返りでもしたら、我が軍の損失は大きい。』
「それほどの情報・・・なのですか?」
マルクスがそう問うと、プロイツェンは僅かに表情を強張らせる。
『マルクス、私はあまり詮索する人間は好きではないのだが』
「も、申し訳ありません!」
『とにかくだ、アオイ・リュウガを生かしておいては帝国の沽券に関わる。即刻排除するのだ』
「はっ!」
マルクスが敬礼し、交信は終わる。
「第3強襲偵察部隊を指定ポイントに向かわせろ!裏切り者を排除するのだ!」
その頃
「あ~雨降ってきちゃったよ!ゼロ、雨宿りできないけどもう少し頑張って!」
雨が降り注ぐ中、バン達のいる町へアオイは向かっていた。
「バンは大丈夫かな・・・マウントオッサの火山ってまだ活火山だって聞いたし・・・」
そう心配しつつ、町へと到着した。
ゼロから飛び降りると、ムンベイとフィーネが走ってきた。
「アオイ!何処に行ってたのさ!」
「ごめん、ディ爺さんが調整してくれたものを試したくてね。」
「あんた一応怪我人なんだよ?もし何かあったらどうすんの!?」
「良いじゃないか、二人共バンと同じでジッとするのが嫌いなんじゃから。」
建物の中にいるドクター・ディがそう言った。
「ところで、バンは?」
「無事にゾイマグナイトを手に入れてジークも回復したけど、しばらく安静にしてないとダメでね。」
「バンは今、屋根の雨漏りを直してるとこ。」
屋根の上にはバンがいて、屋根に空いている穴を塞ぐ修理をしていた。
「そう・・・」
「アオイも中で休んでいきなよ。まだ病み上がりなんだから。」
「ええ。」
アオイが建物の中に入ると、藁の上で蹲っているジークがいた。
治ってきているのか、アオイの気配を感じると僅かに顔を上げた
「グゥ?」
「大丈夫よジーク。覚えてない?私よ、私」
「グゥ・・・」
「まだ元気がないみたいね。」
「けど前より良くなってるね。この調子だともうすぐ歩けるかもね。」
ムンベイがそう言うと、フィーネは嬉しそうに微笑む
「アオイ!戻ってたのか!」
バンが修理を終えて戻ってきた。
「ええ、ジークを無事治せたようね。」
「ああ!てか・・・」
突然バンの顔の力が抜け、腹の虫が鳴く音が響いた。
「安心したら腹減っちまったよ・・・」
「それなら・・・」
アオイはゼロの格納スペースに置いてあるパパオの実を取りにいき
「これしかないけど、食べる?」
パパオの実をバンにあげる
「うぉぉぉ!!パパオだぁぁぁ!!」
バンが急に元気になり、パパオにかぶりつく。
「アオイもパパオ好きだったのか!」
「ええ、旅をする時は必ず持ち歩いてるの。」
「実は俺もパパオが大好物でさ!」
「本当!?あの甘さったらないわよね!」
「俺達、案外気が合うんじゃねーか!」
「あ~あ、パパオ馬鹿が増えちゃったよ・・・」
アオイとバンが意気投合する中、ムンベイが呆れていた。
「そうだ、アオイは旅してるんだよな?」
「ええ」
「ゾイドイヴって知らないか?」
バンが思い出したかのようにアオイに尋ねるが
「あの時言ってた奴ね・・・心当たりがないわね。」
「そうか・・・」
聞いたことがないアオイから手掛かりになる答えは返って来ず、残念そうな顔をするバンとフィーネ
「バン達はゾイドイヴを探しているの?」
「ああ、フィーネの記憶のカギかもしれないんだ。」
「記憶って・・・フィーネ、あなた記憶が・・・?」
「ええ・・・」
フィーネが暗い顔を見せて、それを見かねたアオイはフィーネを抱きしめた。
「大丈夫、きっと記憶は取り戻せる。諦めちゃだめよ。」
「・・・うん。」
アオイはフィーネから離れると、何かを決心した。
「・・・決めた!私、あなた達についていくわ!」
アオイの言った事に全員は目を丸くする。
「いいのかアオイ?」
「だってアーバインやムンベイはともかく、子供二人を放っておくわけにもいかないでしょ?」
「ムンベイはともかくって何よ!?」
「それに、レッドリバーで別れた後だっていうのにまた出会えた。これも何かの縁よ。」
「確かに、偶然にしては出来すぎじゃな」
「てことで、よろしく!」
アオイは3人と握手を交わし、行動を共にする事にする。
「こちらこそよろしく」
「よろしくなアオイ!」
「あんたがいれば百人力ってとこだね。」
握手を交わした後、外から爆音が響いてきた。
共和国と帝国の戦闘が始まったのだ。
「また戦闘がおっ始まるのか・・・」
「ここもそろそろやばいかもね」
「そうね、巻き込まれない内にここから離れた方がいいわ。」
ふとバンはアーバインのことを思い出し、ムンベイに尋ねる。
「そういえばアーバインはまだ戻らないのか?」
「え?ああ・・・あいつなら心配ないさ」
ムンベイの返事は何処か歯切れが悪いが、バンは気付いてなかった。
「ジークの事で忘れてたけど、あいつ何処行ってたんだっけ?」
「バンが出て行った後、“俺も借りを返しにいく”って」
「フィーネ!?」
「アーバインも行ったんだな・・・レイヴンの奴と戦いに・・・」
ジト目になるバンに、顔を引きつらせてムンベイは頷いた。
バンには知られたくなかったのだろう
そんな話をする最中、ドクター・ディは雨の中何処かに行こうとしていた。
「あ、ディ何処いくの?」
「逃げるに決まっとる。ワシ危険なことは借金取りの次に嫌いなんだ。」
「ちょ待てよ爺さん!アーバインを置いて逃げ出すなんて俺にはできない!」
「それはお前達の勝手だ、ワシには関係ない」
「この薄情者」
ムンベイがドクター・ディに掴みかかろうとしたが、バンが止めた
「あいつは腹の立つ奴だけど、ジークも盗もうとしたし・・けどいざとなったら必ず俺達を助けてくれたんだ。」
(へぇ・・・あのアーバインがね・・・)
アオイは心の中で、少しはアーバインを見直した。
「もし知ってるなら教えてくれ!アーバインは今何処にいるんだよ!」
バンも真っ直ぐな目に、ドクター・ディは微笑んだ。
「おそらくマウントオッサ要塞だろう。」
「マウントオッサ・・・」
「火山帯に作った共和国の基地ね」
「奴を助けに行くのは勝手だ。だがオーガノイド抜きのお前に出来るかな?」
「それは・・・」
ドクター・ディがそう言うと、バンは顔を俯いてしまう。
「じゃあ皆の衆、縁があったらまた会おう」
そう言い残し、ドクター・ディは何処かへ歩いていった。
「バン、今までの戦いってもしかして・・・」
「ああ・・・俺はジークの力でここまで来れたようなもんさ・・・」
バンの言った事に、アオイは納得する。
やはりバンの様な子供がシールドライガーを動かせること事態が不思議だったからだ。
「確かに爺さんの言う通りさ、今戦いのど真ん中に行くなんて無茶さ。わざわざ死にに行くようなもんさ。」
ムンベイはそう言ったが、バンの意志は決まっていた。
「俺、行って来るぜ。」
「バン!でも今ジークは・・・」
「俺一人でもライガーを動かせる。フィーネは俺が戻ってくるまでジークをよろしく頼んだぜ。」
フィーネにそう言い残し、バンはシールドライガーへ走っていった。
「動かせるったって・・・あの馬鹿」
「大丈夫、バンはきっと帰ってくる。」
「フィーネ何処にそんな根拠が」
「根拠ならあるわ」
「アオイあんたまで・・・」
アオイは、シールドライガーが走っていく姿を見ながら話し始める。
「バンにはゾイド乗りとしての素質がある。きっと無事に帰ってくるわ。」
「はぁ・・・あんたがそう言うんじゃ、納得せざるをえないわね。」
「シールドライガーは行ったな。各機、ターゲットを抹殺せよ。」
「了解」
ふと、ライガーゼロは辺りを見渡し警戒し始めた。
「どうしたの、ゼロ?」
「!?」
フィーネも何かに感ずいてか、身体が震えだす。
「アオイ・・・嫌な予感がする・・・」
「嫌な予感?」
「フィーネの嫌な予感って、意外と当たるのよね・・・てことは」
ムンベイが何かに気付く間もなく
3人の周りに砲弾が着弾した。
「きゃああああ!!」
「何なの突然!」
ゼロが3人を庇う様に前に出て、飛来する砲撃を受ける。
「何なの一体!?」
「敵がいるんだわ・・・二人はグスタフに乗って!私がゼロで片付ける!」
「ホント、アオイがいてくれて助かったわ!」
フィーネとムンベイがグルタフへ走り、アオイはゼロに乗り込んだ。
「敵は?敵は何処にいるの!?」
砲撃がゼロを襲う中、アオイは敵を探すが何処にも見当たらない。
「一体何処から攻撃してきてるの・・・!?」
「奴は俺達の姿が見えていない!包囲して殲滅せよ!」
「了解!」
何処から来ている攻撃も分からず、ライガーゼロはただその場から動けないままでいた。
「この・・・調子に乗るんじゃないわよ!!」
アオイは2連ショックカノンを辺りに向けて撃つが、手ごたえがない。
「一体どうなってるの・・・!?遠方射撃にしては砲弾が真っ直ぐ飛んでくる、
なのに敵の姿が見えない・・・どうすれば・・・!」
手を拱いているアオイに、グスタフから通信が入る。
『アオイ!周りをよく見て!』
「フィーネ!?」
『何かがライガーゼロの周りにいるの!雨が不自然に落ちているものを見て!』
フィーネのアドバイス通り、前方をよく目を凝らしてみた。
すると
雨の雫が、不自然に空中で弾けていた。
「そこね!!」
その場所に何かがいる。
そう確信し、ゼロを突っ込ませる。
「何!?」
ゼロの爪が、何かを切り裂いた。
すると、突然目の前にゾイドが姿を現した。
「ヘルキャット!?」
アオイはそのゾイドを見てそう叫んだ
「何なのさこいつらは!?」
「ヘルキャットは光学迷彩を装備している隠密戦特化型ゾイドよ!姿も足音も消せる!」
「何その卑怯くさいゾイド!?」
「ムンベイは下がってて!グスタフじゃ的になるだけよ!」
ゼロは光学迷彩で隠れているヘルキャットを、雨を利用して探し出し次々と倒していく
「何だこいつ!?俺達が見えているのか!?」
「ダメだ・・・うわあああ!!」
そして、見えている中では残り1機だけになった。
「光学迷彩は役に立たん!」
ゼロの目の前に、黒いヘルキャットが光学迷彩を解除し姿を現す。
「諦めて光学迷彩を切ったわね・・・」
『何をしているコウキ!』
「隊長、こいつに小細工は通じません。だがこのヘルキャットノワールならば!」
黒いヘルキャット・・・ヘルキャットノワールのパイロット、コウキはライガーゼロに向け駆け出す。
「敵のエースね・・・沈める!」
「ただのヘルキャットだと思うな!」
ヘルキャットノワールは砲撃しながらライガーゼロへ接近する。
「そんなもんで私とゼロを倒せるもんか!」
ゼロはヘルキャットノワールに向け飛び上がる
「その手は食うか!」
ヘルキャットノワールのビーム砲が飛び上がったライガーゼロに浴びせられ
「きゃあああ!!」
空中でバランスを崩し倒れてしまう
「アオイ!!」
「貴様の攻撃パターンはお見通しだ!」
「まだまだ!!」
ライガーゼロはすぐに起き上がり、ヘルキャットノワールに再び突っ込む
「同じ手は通用しない!」
ゼロに向けられたビーム砲の砲撃
このままでは同じ鉄を踏む しかし
「イオンブースター!!」
空中でイオンブースターを噴射、加速し砲撃を回避した。
「何だと!?」
「ストライクレーザークロー!!」
ゼロの爪が、ヘルキャットノワールのビーム砲を破壊した。
「よっしゃあ!!」
「やったぁ!!」
アオイの代わりにムンベイ、フィーネが手を合わせて喜んだ
「くそっ!コンバットシステムフリーズだと・・・!!」
「コウキ!撤退するぞ!」
「・・・了解!」
コウキ達ヘルキャットの部隊は撤退し町から離れていく
「何とか勝ったみたいね・・・」
「お疲れ様アオイ!」
「ムンベイ、そっちは大丈夫だった?」
「おかげ様で。でもあいつら何のためにこっちに来たんだろ?」
「ジークを狙いに来たわけじゃなさそうだし・・・」
ムンベイとフィーネは疑問に思っていたが
アオイは感ずいていた。
(狙いはオーガノイドでも、バン達でもない・・・私だった様ね。プロイツェンの差し金だと思うのが妥当ね・・・)
そう思考を巡らせていると、次第に雨が止み始める
「バン達が戻ってくるまで休憩しましょう。」
「アオイ、あたしが見張りしとくから寝てなよ。」
「大丈夫、ゼロのコクピットで寝るから」
3人はバンとアーバインが戻るまで寝床につく。
さほど時間が経たない内に目が覚めたフィーネは、町の入り口で二人を待つ
そして、シールドライガーとコマンドウルフが来て
そこから降りてきたバンとアーバインの姿が見えた。
「全く、心配させるよ」
「行きましょうフィーネ、ムンベイ。ジークも回復したみたいだし。」
「グオ!」
「うん!」
ジークとアオイ達は二人の下へ走っていく。
「グァァァァ!!」
「ジーク!元気になったんだな、よかった!」
バンとジークがじゃれ合う中、アーバインは微笑む。
「こういう場面、前は苦手だったんだがな・・・」
「いいもんでしょ?」
「フッ、アオイに言われたんじゃ否定できねえな。」
無事に帰ってきた喜びで、一同は笑いあった。
共和国と帝国の戦闘は
共和国が最終兵器 ゴジュラスを投入し帝国軍の部隊を数個壊滅させ
帝国軍の撤退という形で共和国軍が勝利した。
バン達は、ゾイドイヴの手がかりを探すため
ニューヘリックシティへと足を運んでいく
今回からバン達と行動を共にします。
どうやってキャラを動かそうか、手探り状態ではありますが
一人のファンとして納得いく作品を創っていこうかと思います