ZOIDS 紅の獅子   作:モルヤパ

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第7話 報われぬ優しさ

共和国の首都 ニューヘリックシティでは大規模なパレードが行われていた。

先の戦闘で帝国軍に勝った祝杯であり、ゴジュラスの模型が道を往来していた。

 

その光景を、人ごみの間からアオイ達が見物をしていた。

 

「帝国軍を撃退して、まるでお祭り騒ぎね。」

 

「無理もねえ。このニューヘリックシティは首都陥落の危機を逃れたんだ。ゴジュラスのおかげでな。」

 

「ホント、ゴジュラス様々って奴?」

 

3人がそう話している中、フィーネがアーバインとムンベイの服を引っ張る。

 

「ねえ、バンとジークがいないの。」

 

「え?」

 

「あいつ何処行きやがったんだ?」

 

「初めての都会にはしゃいでるんでしょ?」

 

有り得そうな事にアーバインとムンベイは静かに笑う。

 

「奴ならやりかねねぇな。」

 

「ま、はぐれた時の待ち合わせ場所は決めといたし何とかなるでしょ」

 

一同は、バンが来るのを待ち合わせ場所で軽食を取りながら待っていると

 

「ホラ、噂をすれば何とやら」

 

予想通りバンとジークが来たが、何処か複雑な表情をしていた。

 

「どうした?元気がねぇな。」

 

「お腹空いたの?」

 

「いや・・・」

 

バんは、はぐれた後の事を話し始めた。

 

人ごみに潰されそうになり、路地裏に出た二人は

 

帝国軍の捕虜が、共和国の市民に暴行を加えられそうになったところを助けたそうだ。

 

「そりゃまた余計なことをしてくれたな・・・」

 

「何だってアーバイン!?」

 

「そんな奴に関わってなんか面倒が起こったらどうすんだよ?」

 

「放っておいたら連中何をしようとしたかわからなかったんだぞ!」

 

そう言って、バンは一枚の写真を出した。

 

「あいつだって、自分の国に帰りたいんだ・・・きっと、家族の下に」

 

その写真には、母親らしき女性と写っている男の姿があった。

 

「おやおやバン、あんたホームシックかい?」

 

「そ、そんなんじゃねえよ!」

 

「まあバンがお人好しなのは今に始まったことじゃねえしな。」

 

「何処行くの?」

 

「トイレだ。」

 

アーバインは立ち上がり、トイレへと向かう。

 

「いいなぁ・・・」

 

「アオイもホームシック?」

 

「ううん。私、物心ついた時には両親いなかったから。」

 

それを聞いたムンベイはにやけた表情をすぐに解いた

 

「ご、ごめん!変な事言っちゃって・・・」

 

「いいの。その代わりすごいゾイド乗りに出会えたんだから。」

 

そんな他愛のない話もする中、首都にある遺跡博物館に行く算段をした後

 

2台の車から共和国の兵士が降りてきた。

 

「バン、もしかしてアレ」

 

「ああ」

 

例の捕虜に暴行しようとした市民が、軍に告げ口したらしく

兵士が3人バン達の所まで来た。

 

「おい小僧、来い。聞きたいことがある。そこの女共、お前らもだ」

 

「やなこった、あたしらが何をしたって言うんだい?」

 

「私、あんたみたいな変な髭生やした男って嫌いなの。」

 

アオイのおちょくる態度に、少しイラつく共和国兵士だが何食わぬ表情で続けた。

 

「お前らには帝国のスパイの疑いが掛けられている。」

 

それにバンは立ち上がり反論する。

 

「冗談じゃねえ!俺達は怪しいもんじゃない!」

 

「仕方ない・・・バン、例のハーマンからもらった紹介状を見せておやりよ」

 

「ああ」

 

バンはハーマンからもらった紹介状を兵士に渡した。

 

「ふむ、確かにハーマン大尉のもの・・・小僧、これを何処で盗んだ?」

 

「盗んだぁ!?違う!ハーマンに聞いてみろ!!」

 

「うるさい!これ以上逆らう様ならこの場で射殺する!」

 

兵士3人が拳銃をバン達へと向けた。

 

(マズイわね・・・相手は相当の堅物、座った状態じゃ懐に突っ込んでミゾオチに1発お見舞いなんて出来ない・・・しようものならその前に撃たれる。)

 

アオイがそう思考を巡らせていたその時

 

兵士達の足元に何かが転がり込み、煙を吐いた。

 

「な、何だこれは!?」

 

兵士達が困惑している間に、アーバインが車を調達して戻ってきた。

 

「バン乗れ!」

 

すぐに車に乗りその場から逃げ出した。

 

「くそ、追え!!」

 

兵士達もすぐに車に乗りバン達を追いかける。

 

「タイヤを撃て!」

 

「はっ!」

 

バン達の乗っている車のタイヤが銃撃によって壊れ

 

横転し全員が車から投げ出された

 

「フィーネ大丈夫か!?」

 

「鼻打った~!」

 

「早く走るわよ!」

 

アオイがバンとフィーネを立たせ、兵士達から逃げ出す。

 

路地裏で巻こうとしたが

 

「行き止まりだ!」

 

逃げ道がなくなり足を止めてしまう。

 

どうするか手を拱いている間に

 

マンホールの蓋がカタカタ動き出し

 

そこからカエルの被り物をした人が顔を出す

 

「な、何だ?」

 

「カエル?」

 

そのカエルが導くままに下水道へ向かう一同

 

その上では、そのカエルが囮として気球を飛ばし

共和国兵士は気球で逃げたと錯覚し、気球に向け発砲している頃だ。

 

全員が気になっていたカエルの正体は、あの時別れたドクター・ディであった。

 

彼の案内で遺跡博物館まで向かうことになったが

 

「うわ~臭い!鼻がひん曲がるわ!」

 

下水道であったため、もちろん匂いは半端なくきつく、ムンベイとアオイは鼻を摘みながら歩く

 

「もう嫌だ匂いが染み付いちゃうじゃない!」

 

「文句があるならバンに言え」

 

「何でだよアーバイン!」

 

「お前が帝国の捕虜を逃がしたから俺達までお尋ね者になっちまったんだろうが」

 

「俺は後悔していない・・・奴を助けたこと・・・」

 

バンは、自分達が共和国兵士に追いかけられる事になっても

あの時に帝国の兵士を助けた自分は正しいと、自分に言い聞かせていた

 

「お尋ね者の諸君」

 

ドクター・ディが立ち止まり天井を指差す

 

「考古学研究所に到着じゃ」

 

「到着って・・・ディ爺さんもしかして・・・」

 

アオイは嫌な予感がし

止める間もなく天井が爆破され、研究所への入り口を開いた

 

「こんな風に勝手に忍び込んだらヤバイだろ爺さん!」

 

「遠慮は要らん、ワシが許す」

 

(許すって・・・何を根拠にそんな・・・)

 

アオイが心の中でツッコミをいれ

 

一同は研究所の中を散策する。

 

ふと、アオイの視界に

 

「え、何コレ?」

 

絵が描かれている石版を見て驚いた。

 

彼女が驚くのも無理はなく

 

「これって・・・ゼロ!?」

 

描かれていたのは、何かのゾイドと戦うライガーゼロだった

 

「ほぅ・・・お前さんのゾイドが古代から存在していたとはな。」

 

横からドクター・ディが話しかけてきた

 

「ディ爺さん・・・これって」

 

「ワシにも分からん、じゃが・・・」

 

ドクター・ディは石版に描かれているライガーゼロと戦っている相手をジッと見る

 

恐竜型のゾイドで、今にもライガーゼロを噛み殺しにいきそうな形相をしている。

 

「このゾイドは何じゃろうな?」

 

興味深い眼差しで石版を見ていると

 

「お~い、フィーネ!」

 

バンがフィーネを呼ぶ声がして、二人もそちらへ行く

 

バン達の目の前には、一際大きい石碑だった

 

「ゴルドスの砦で見た石碑と似てるぜ」

 

「フィーネがゾイドイヴって言う言葉を思い出すきっかけになった?」

 

二人が会話をする中、フィーネは頭を抑え苦しみだす

 

「フィーネ大丈夫かい!?」

 

「こいつはガリル遺跡で発掘された石碑だ」

 

「ガリル遺跡?」

 

「かつて栄えた古代文明だ。」

 

「古代文明・・・」

 

バンが呟き終わると同時に

 

一斉に研究所の明かりが灯りだした

 

一つ上の階から共和国兵士が大勢現れ

 

アオイ達に銃口を向ける

 

「大人しくしろ!今度逃げたら蜂の巣にしてやる!!」

 

追いかけていた兵士が怒鳴り、バン達は共和国軍に捕まった。

 

「ジークは!ジークはどうした!!」

 

牢屋に入れられ、バンは目の前にいる兵士に向かって怒鳴りだす。

 

「科学班に回した。」

 

「何だってそんなところに!」

 

「解剖し、分析するためにな」

 

「何・・・!この野郎!!ジークに指一本でも触れてみろ!絶対許さねえぞ!!」

 

「うるさいつべこべ言うな!帝国のスパイが!!」

 

「やめなさい!!」

 

バンの胸倉を掴む兵士を見かね、向かいの牢屋に入れられたアオイは制止の言葉を投げる

 

「子供相手に大人気ない・・・!これじゃあ共和国も帝国も変わらないわね・・・」

 

「貴様、まるで帝国軍内部も知っている様な口振りだな?」

 

兵士はバンから手を離しアオイの方へ向いた。

 

「共和国の人間も帝国の人間も考えている事が変わらないって言ってんの!」

 

「そうだ、貴様のゾイドだがな・・・ライガーゼロと言ったか?」

 

兵士がにやつきながらライガーゼロの名前を出した後、アオイの顔が強張る。

 

「貴様らのゾイドを研究施設の格納庫へ移送したのだがな、紅いライガーは今後の研究に役立つと分析が行われる。」

 

「アンタら・・・!!」

 

「今後のゾイド開発に非常に役に立つそうだ。貴様のお陰で帝国に対抗する手段が増えるというわけだ」

 

兵士の言葉が言い終わる前に、アオイは鉄格子から手を伸ばし兵士の胸倉を掴んだ。

 

「私のゼロを戦争の道具に利用するな!!」

 

激怒するアオイを見慣れていないバンやフィーネが、掴まれた兵士も驚き言葉を失う。

 

「私のゼロは絶対にアンタらには従わない!!アンタら戦争屋に、私とゼロを好き勝手できるものか!!」

 

「っ貴様捕虜の分際で・・・!!」

 

兵士が胸倉を掴んでいるアオイの手を解こうとして

 

「大変です!!」

 

一人の兵士が牢屋に駆け込んできた。

 

「何事だ?」

 

「紅いライガータイプのゾイドが暴れ、逃げ出しました!」

 

「何だと!?何故操縦者がここにいるのに勝手に動く!?」

 

「分かりません!今捕獲に部隊を向かわせています!」

 

「わかった・・・」

 

アオイの腕を掴んでいた手を離し、兵士達は牢屋から立ち去った。

 

アオイは歯を噛み締め去っていった兵士をにらみ付けていた。

 

「ディ爺さん、ゾイドってそんな簡単に勝手に動くもんなの?」

 

ライガーゼロが勝手に動き出した事に疑問を持ったムンベイがドクター・ディにそう尋ねた。

 

「野良ゾイドのこともあるから不思議ではないが、ライガーゼロの場合は不明な点が多すぎてな・・・」

 

流石のドクター・ディでも、ライガーゼロの事は理解仕切れていないようだ。

 

兵士達が出て行って間もなく二人の女性が入ってきた

 

初老の女性は、軍人とは遠くかけ離れた雰囲気を漂わせている。

 

「オイ!ハーマンだ!ロブ・ハーマンをここへ呼べ!!」

 

バンは格子を掴み女性二人の怒鳴る。

 

「あの野郎役に立たねぇ紹介状なんて寄越しやがって!!」

 

バンが声を荒げるが、初老の女性は一つも動じていない。

 

「大尉だとか言ってたけど怪しいもんだぜ全く!!」

 

「いい加減にしなさい!大統領の前ですよ!」

 

見かねて付き添いの女性がバンに向かって怒鳴った。

 

「大統領?ヘッ、それがどうした!ハーマンのイカサマ野朗を連れて来い!!」

 

「待ってバン!その人の言ってることは本当よ」

 

「え?」

 

アオイの指摘に、バンは言葉を詰まらせる。

 

「共和国レッドリバー戦線第一中隊隊長ロブ・ハーマンは・・・私の息子です。」

 

「息子・・・?」

 

バンが首をかしげていると、ドクター・ディが気さくに大統領に手を振る。

 

「よっ、大統領久しぶり」

 

「あなたはドクター・ディ!?何故こんなところに?」

 

「まあ色々あってな、それに積もる話も色々ある。お前さんの力でここから出してくれんかね?」

 

そう言われた大統領はすぐにバン達を牢屋から釈放し

 

大統領邸の来賓室へ招かれた

 

「ジーク~!」

 

「グォォォ!」

 

「ジーク、無事だったんだな!」

 

「グオグオ!」

 

「良かったねジーク、解剖されなくて」

 

バンはジークと再会し喜んでいた。

 

その傍ら、ムンベイとアーバイン、アオイはソファに座りそれぞれ寛いでいた。

 

「囚人から一転して、今度はVIP待遇か。あのジジィ一体何者なんだ?」

 

「ただのスケベジジィじゃないってことは確かだけどね。」

 

「いいじゃない何でも」

 

そう言うアオイはパパオの実で作ったタルトを頬張りながら目をウルウルさせて喜んでいる。

 

「う~ん流石大統領!使ってる素材も職人も一級品ね!」

 

「お前ライガーゼロが逃げ出したってのに随分余裕だな?」

 

「らいりょうふ、へろはへひっふひひぃほほほへはっへるはら」(大丈夫、ゼロはヘリックシティの外で待ってるから)

 

「何で分かるのさ?」

 

「つかタルト食いながら喋んな」

 

3人の談笑の途中で、大統領秘書がノックした後来賓室へ入ってきた。

 

「皆様、大統領がお呼びです」

 

秘書の案内で、バン達は大統領の執務室へ赴く。

 

「レッドリバー前線基地の報告書を読みました。レッドリバー戦線でのあなた方の活躍は素晴らしいものでした。」

 

「なぁに、私は金さえもらえばどんなことでも!」

 

「でも驚いたなぁ。あのハーマンが大統領の息子だなんて!」

 

レッドリバー戦線での感謝が終わり、大統領はアオイの方へ顔を向けた。

 

「それと軍の者の勝手であなたのゾイドを利用しようとしてしまったこと、本当に申し訳ありません。」

 

「いえ、ゼロが無事ならそれでいいですから」

 

申し訳なさそうな顔をしている大統領 それにアオイは笑顔でそれを許した。

 

アオイの言葉が終わると同時に

 

爆発の振動が執務室に響き渡る

 

「な、何!?」

 

何が起こったのか確かめるため、全員はバルコニーに出ると

 

無数の爆発が街の中で起こっていた。

 

「街が爆発してる!?」

 

「帝国が攻めてきたのか!?」

 

「大変です!逃走中の帝国兵士が我が軍のゾイド、最新鋭の強化型コマンドウルフを奪い現在追撃部隊と交戦中です!」

 

秘書が大統領に報告し、バンはあの時逃げ出した帝国兵士だと感ずく。

 

「まさか、あいつが・・・?」

 

考え込む内、街からの爆発は激しさを増し被害が拡大していく。

 

「まずい!このままじゃ街が壊滅するぞ!!」

 

「くっ!!」

 

アオイはバルコニーから飛び降り、街へと走っていく。

 

「何処行くんだよアオイ!!」

 

「あたしらも行くよ!」

 

バン達もアオイの後を追い大統領邸から外に出る。

 

アオイはゼロを探すため街中を走る

 

そこで見たのは、辺りが壊され無残な姿になっている街だった

 

「誰だが知らないけど・・・!帝国兵士がこんなことを・・・!!」

 

逃げ出した帝国兵士に怒りを覚える中

 

目の前に紅い巨体が姿を現した。

 

「ゼロ!!」

 

ライガーゼロも無差別に攻撃を繰り返すゾイドの存在を放っておけず、アオイを探していたようだ。

 

「行くよゼロ、元だけど身内の始末は身内がつけるわ!!」

 

アオイはライガーゼロに乗り込み、強化型コマンドウルフを探す

 

「うぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そこで、叫びながら多連装ロケットランチャーをゴルドスに向け乱射しているコマンドウルフを見つけた。

 

「待ちなさい!!」

 

撃墜されたゴルドスの前に飛び出すライガーゼロ

 

「!?」

 

それを見た帝国兵士は驚き攻撃の手を止めた。

 

アオイは辺りを見渡し

 

破壊されたビル 傷ついたゾイド

 

そして、向かう先で見つけた

 

親とはぐれて泣いている子供の顔を脳裏で思い浮かべ

 

コマンドウルフをにらみつけた。

 

「捕虜になってたとはいえ、街をめちゃくちゃにして・・・大勢の人を傷つけて・・・」

 

「ああ・・・あああ・・・・!!」

 

「それでもアンタ・・・誇りあるガイロス帝国の軍人か!!!」

 

「うあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

アオイが怒鳴ると同時に、コマンドウルフは反転し逃げ出した

 

「待て!!」

 

すぐにコマンドウルフを追いかけるため、ライガーゼロは駆け出す。

 

重武装を施したコマンドウルフでライガーゼロを振り切れるわけもなく

 

コマンドウルフの真上を飛び、前に回りこむ

 

「逃がさない!!」

 

アオイは攻撃するためライガーゼロで突撃する。

 

「うあぁぁぁぁぁ!!!」

 

帝国兵士は悪あがきをする様に多連装ロケットランチャーを乱射する。

 

「そんなもの・・・・・・!?」

 

飛んで避け様としたが

 

モニターに写った、ライガーゼロの後方で

 

瓦礫の下敷きになり身動きができなくなっている子供が見えた。

 

このまま避ければ子供が危ない

 

そう思い飛来するロケットランチャーを全て食らいコマンドウルフに接近する

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

「ストライクレーザークロー!!」

 

ライガーゼロの爪が、コマンドウルフに襲い掛かる。

 

しかし、右前足のチョバムアーマーが剥がれただけで

 

本体にはほとんどダメージが入っていなかった。

 

「くっ・・・さっきの砲撃でゼロの手元が狂ったか・・・!」

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

ライガーゼロが先ほどのダメージで動きが止まり、その隙にコマンドウルフが逃げ出した。

 

「逃がしたか・・・!でも、今は」

 

アオイは、下敷きになっている子供を助けるため

 

上にある瓦礫をライガーゼロが咥えて撤去した

 

「もう大丈夫よ」

 

子供は、お辞儀だけをしてその場から走り去った

 

無事に親と会えることを祈りながら子供を見送った。

 

アオイは一旦バン達と合流する。そこで、バンは街の惨状を目の当たりにし立ち尽くしていた。

 

「小僧、情けが仇になったな。」

 

そのバンの横に、先ほどの兵士がバンに話しかける。

 

「お前が帝国の人間を逃がすからだ、一体どれだけの被害を出したと思う?」

 

「くっ・・・!!」

 

『奪われた強化型コマンドウルフは、現在ソシエ方面を逃走中!』

 

通信を受け、共和国兵士は車を走らせた。

 

「許さねぇ・・・」

 

バンは、帝国の捕虜が持っていた写真を歪むほどに掴み

 

「絶対に許さねぇ!!」

 

地面に投げ捨てた。

 

「来いジーク!!」

 

「グオ!」

 

バンとジークはシールドライガーの方へ走っていった。

 

「バン!」

 

フィーネは、バンが投げ捨てた写真を拾い

 

アオイはフィーネの肩を叩く

 

「行きましょう。」

 

アオイ達も、バンを追いかけていった。

 

アオイ達が追いついた時には、強化型コマンドウルフは撃墜され

 

脱出した帝国兵士に、バンが掴みかかっているところだった。

 

「許して!許してくれ!!」

 

「許してくれだとぉ!!!」

 

「怖かった!捕まるのが怖かったんだ!!だから」

 

「この野朗ぉぉ!!!」

 

バンは怒りに任せ、帝国兵士を殴りかかる。

 

「バン!!」

 

しかし、バンは帝国兵士を殴ろうとせず

 

地面に拳を叩きつけた

 

そして・・・・・バンは泣いていた

 

「バン・・・」

 

アオイは、バンの涙の理由を察していた。

 

捕虜虐待をいけない事だと思い、捕虜を助けた

 

しかし、その結果が街の惨状を招いた

 

自分が起こした結果に戸惑い、その怒りを何処にぶつければわからない歯がゆさ

 

自分の優しさが否定され、何が正しいのか

 

バンには分からなくなっていた。

 

「これ」

 

フィーネは、彼の母親と写っている写真を帝国兵士に渡した。

 

「それを持って消えろ、でないとバンの代わりに俺が殴るぞ」

 

「あ・・・」

 

「とっとと消えろ!!!」

 

アーバインが怒鳴って初めて帝国兵士は逃げていった。

 

「あまり自分を責めるな、バン。」

 

泣いているバンに、ドクター・ディは励ます

 

「共和国だろうが帝国だろうが、一つの生命に変わりはない。捕虜を助けてやったお前を誰が責めることができる。奴も戦争さえなければ・・・」

 

ドクター・ディの後に、アオイも励ますため声を掛けた。

 

「大丈夫よバン。結果はどうあれ、あなたのした事は間違ってない。きっとあの兵士もわかってくれるわ・・・」

 

そして

 

「くっ・・・・・馬鹿野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・!!!!」

 

バンは、叫び全てを爆発させた。

 

「逃がしたか・・・!」

 

バン達の後ろに、先ほどの兵士が現れる。

 

「今更何の様だよ?」

 

「どこまでもお人好しだな小僧・・・そんな事ではいずれ生命を落とすことになるぞ?」

 

「何だとテメェ!!!」

 

バンの優しさをまた否定され、流石のアーバインも我慢の限界が来て

殴りかかろうとしたが

 

アオイが先に共和国兵士を引っ叩いた。

 

乾いた音が響き、辺りが静まりかえる

 

「アンタ達に・・・バンの優しさが分かってたまるもんですか!!」

 

突然の事に、共和国兵士が引っ叩かれた頬を抑え驚くことしかできなかった。

 

そして、アオイは懐から札束を取り出し共和国兵士に投げつけた。

 

「今日まで稼いだお金よ、それを怪我人の治療のために使いなさい!」

 

「な・・・!」

 

「バンには賠償は無理だから私が代わりにしてあげる!」

 

怒鳴り続けるアオイの目に、涙が流れ始めていた。

 

「だから・・・もう二度とバンの前に現れるな!!二度とバンの優しい心を傷つけるな!!!」

 

共和国兵士は、泡を食った表情でその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、帝国捕虜を巡っての騒動は終結した

 

しかし

 

帝国のニューヘリックシティ侵攻作戦が、今始まろうとしていた。

 




どうでもいい話ですが、今回登場した共和国兵士が
どうしてもグレンラガンのロージェノムに見えてしまう自分はもうダメかもしれない。

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