ウルトラマンカイナ   作:オリーブドラブ

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 本日7月10日はウルトラマンの日! そして今年はウルトラマン生誕60周年! ということで(?)、ちょっとした短編をお届け致します。時系列的には、特別編最終話(https://syosetu.org/novel/136080/19.html)及び外星編最終話(https://syosetu.org/novel/136080/45.html)から少しだけ後のお話。本作のラスボスであるテンペラー軍団との最終決戦が終わり、物語が女傑編(https://syosetu.org/novel/136080/21.html)に移る少し前の出来事になります(о´∀`о)



報告編 60年後の君へ

 

 この次元の宇宙、そして地球全土を脅かしていたテンペラー軍団。史上最大の侵略者である彼らの脅威に対し、地球防衛組織「BURK(バーク)」の隊員達は敢然と立ち向かっていた。

 そして「ウルトラマンカイナ」、「ウルトラアキレス」、「ウルトラマンザイン」、「ウルトラマンエナジー」、「ウルトラマンアーク」、「ウルトラマンジェム」の6人で構成された「新生ウルトラ6兄弟」の奮闘により、諸悪の根源であったテンペラー軍団はついに倒されたのである。

 

 約6年間に渡る怪獣災害は沈静化に向かい、怪獣や異星人による被害はその日を境に激減した。まだ完全なものとは言えないが、この青い地球は間違いなく、人類が追い求めた「平和」に近付きつつある。

 一度は侵略者達の攻撃によって破壊された各地の都市も、すでに9割以上が復興を果たしている。テンペラー軍団との決戦から4ヶ月が過ぎた今、地球の人々はかつての平穏な暮らしを取り戻せるところにまで辿り着いていた。

 

 ――そう。悲しみを生む侵略者達は消え去り、この宇宙は限りなく平和に近しい静寂を取り戻した。

 しかし、この日を迎えるまでに犠牲となって来た命が戻ることはない。時間を巻き戻す術など、ウルトラマンですら僅かな例外(・・・・・)を除けば持ち得ないのだ。

 

 それ故に。失われた命を忘れまいと、平和を迎えた宇宙を翔ぶ男達が居た。彼らが向かった先の星は今も、荒れ果てた死の大地となっている――。

 

 ◇

 

 かつては地球のように、生命力に溢れた緑豊かな星だったという大地。その全ては今、テンペラー軍団の侵攻によって無惨にも焼き払われている。海も湖も蒸発し、森は炭すら残さず焼失し、地上は赤く荒れ果てていた。

 

 そんな惑星の上空を飛行している、BURKの新型試作宇宙戦闘機「BURKプロトビートル」は、白銀のボディとメタリックイエローの翼を輝かせながらゆっくりと垂直に降下し始めている。ハイジェネレート・サブロケットエンジンを搭載した、最新鋭の宇宙戦闘機。その機体に搭乗している3人のBURK隊員は、久々(・・)に訪れたこの地を感慨深げに見つめていた。

 

「あの調査任務から、もうすぐ6年になるのか……。この星を滅ぼしたテンペラー軍団を相手にして、俺達が生き残れたのは……まさに奇跡としか言いようがないな」

「ふん……奇跡なものか、当然だ。如何なる相手だろうと、地球に牙を剥く侵略者であるならば容赦はしない。それが俺達……BURKの隊員なのだから」

「ま、そりゃそうだな。……しっかし、街の復興作業から俺達を外して何をさせる気なのかと思えば……。開発されたばかりの試作機をいきなりこんな長距離移動の任務に使うなんて、上も無茶言うよなァ。何かあったらどうすんだっての」

「俺達より一足先にクーカの奴が初期段階の試験飛行を済ませている。安全性ならアイツのお墨付きだ」

「それが1番不安なんだよなぁ……。機体の限界を見極めるとか言って、音速を超えたスピードで曲芸飛行し始めるような奴だぜ?」

 

 試作機の最終試験飛行も兼ねた調査任務を帯び、このBURKプロトビートルに搭乗していた男達。彼らはテンペラー軍団によって焼き尽くされたこの星の惨状を見つめ、神妙な表情を浮かべている。

 かつて同じチームに所属していた戦友――ラウラ・"クーカ"・ソウザ・サントスも搭乗していたというBURKプロトビートルに命運を委ね、彼らは死の星を見下ろしていた。

 

「先輩方、到着しました。……ホピス星です」

 

 そして。彼らをこの星に導く案内人(パイロット)として操縦桿を握っている椎名雄介(しいなゆうすけ)隊員が、厳かな声色で呟いた瞬間。3人の歩兵を乗せたBURKプロトビートルが、ホピス星への着陸を果たした。機体を中心に吹き荒れる砂塵が宙に舞い、死の大地に降り注ぐ。

 地球のような復興など望めそうにもない。この星はまさしく、テンペラー軍団が齎した怪獣災害の凄惨さを象徴する存在となっていた。6年ぶりに訪れたこの星の光景に、3人の男は眉を顰めている。

 

「椎名、留守を頼む。……行こう」

「……あぁ」

 

 赤と黒を基調とする隊員服と、白のヘルメットを着用している3人の美男子達。彼らは互いに頷き合うと、足早にコクピットを後にして行く。敢えて旧式の装備を纏っている彼らは、険しい面持ちで赤い大地に降り立っていた。

 

(……弓弦(ゆずる)さん。嵐真(らんま)先生。(たける)(かなめ)磨貴(みがき)。俺達ウルトラマンはやはり……神様にはなれなかったようだ)

 

 死の大地を踏み締め、ホピス星の調査を始める3人のBURK隊員。彼らの出発を操縦席から見送っている雄介は、独り物憂げな面持ちで荒れ果てた地表を見渡していた。

 かつて「ウルトラマンザイン」と一体化し、その依代として戦っていた彼は、「先輩」や「後輩」達の勇姿を思い浮かべている。しかし自分も、彼らも、この星を救うことは出来なかったのだ。その重い事実を真正面から受け止めるように、雄介は真摯な眼差しで赤い大地を見下ろしていた。

 

 ◇

 

 士道剣(しどうつるぎ)鶴千契(つるせけい)荒島真己(あらしまみこと)。今回の調査任務に選抜された彼ら3人は、過去にも惑星調査隊の一員としてこの星に訪れたことがあった。その当時も、このホピス星は赤々とした大地が広がる死の荒野となっていたのである。

 以前はこの惨状がテンペラー軍団の攻撃によるものだとは知る由もなかったが、今にして思えばホピス星の現状は、地球がこうなっていたかも知れないという「IF」を物語っていたのだろう。全てを知った今だからこそ見えて来る凄惨な景色に、男達は眉を顰めている。

 

 BURKプロトビートルの操縦士である雄介に機体の留守を任せ、士道達は赤き死の大地を歩む。ホピス星人が死に絶えた今、この地表には彼らの足跡しか残らない。

 

「……地球がこうなっててもおかしくなかったんだよなぁ。考えたくもないのに……考えずにはいられねぇ。この星にだってBURK(おれたち)に相当する防衛戦力くらいはあっただろう。けど……この星には、ウルトラマンが居なかったんだ」

 

 片膝を着き、赤く染め上げられた不毛の地に掌を添える荒島は、ホピス星と地球の「差」を痛感して物憂げな貌を見せていた。6年前に訪れた時と同じ、生命の息吹が感じられない死の大地。もし何かが違っていれば地球もこうなっていたという事実を重く受け止めている彼は、乾いた砂の感触に沈痛な表情を浮かべている。

 

「居たとすれば、この星に配備されていたというキングジョー1機くらい……か」

 

 荒島の前を歩いていた鶴千も、神妙な面持ちで辺りを見渡している。自分達の元に訪れた奇跡が、この星には起きなかった。その残酷な運命が齎した悲劇に、彼も思いを馳せている。本人達は覚えていないが、一度は「ウルトラマン」と一体化して共に戦った影響が、今の心境に現れているのかも知れない。彼らの手からベーターSフラッシャーが失われた今でも、その精神はウルトラマン達と共に在るのだろう。

 

「……」

 

 そんな中。慎重に先頭を歩いている士道は、懐から一輪の花を取り出していた。それは約6年前、彼がこの荒野で拾い上げたホピス星の花であった。

 

(……シャーロット博士)

 

 以前、惑星調査隊に同行する形でこの星に訪れていた、BURKオーストラリア支部出身の女性科学者――シャーロット博士。彼女は「悪魔の研究」に手を染めたことでBURKから追放され、行方を眩ましていた。

 数日前、そんな彼女からこの花が士道の元に届けられて来たのである。「もうこの花の研究は終わった。あなたの手で、あるべき場所に返して欲しい」という旨の手紙と共に。

 

(やはりあなたは……魂まで悪魔に売ったわけじゃなかったんだな)

 

 偽のウルトラサインを発信してウルトラマンを呼び出し、その力を兵器に転用するという発想に由来する人工ウルトラサイン発信装置「イカロスの太陽」。その開発を主導していたシャーロットの科学者としての名声は、まさに翼を焼かれたイカロスの如く地に堕ちた。

 それでも、彼女の人柄を知る一部の隊員達は、彼女が悪魔だとは思えなかったのである。士道もまた、その1人であった。非道に走ってでも地球を守ろうとした彼女の大願は、BURKと新生ウルトラ6兄弟の手によって果たされた。

 

 故にもう、悪に堕ちる必要などなくなったのだろう。手紙の文面から感じ取れるシャーロットの穏やかな心境が伝播したのか、花を見下ろす士道の表情も静穏なものとなっている。

 

(そうだよな。……もう、全て終わったんだから)

 

 いずれはこの花の命も尽きる。ならばせめて、あるべき場所で眠らせてあげたい。故郷の地に還してあげたい。そんなシャーロットの心根を汲み取り、士道は顔を上げる。すると、その時。

 

「お、おぉいおぉいおおぉおおいっ! 皆、こっち来てみろよ! こっちやべぇぞっ!」

「……!?」

 

 後ろを歩いていた荒島が近くの崖下で何かを見つけたらしい。慌てたような表情でこちらに駆け寄って来た彼は、派手な身振り手振りで崖下を見ろと促している。

 

「荒島先輩、どうしたんですか!?」

「あいつがあんなに盛り上がるなんて、ポテトが半額だった時以来だぞ」

 

 荒島のただならぬ様子に何事かと顔を見合わせた士道と鶴千は、有事(・・)を予想して腰のホルスターから光線拳銃「BURKガン」を引き抜き、荒島の後を追って走り出して行く。荒島の元に辿り着いた2人はそれぞれの愛銃を構えながら、崖下を見下ろした。

 

「……!」

「これは……」

 

 そして彼らは即座にBURKガンの銃口を下ろし、荒島が驚いた理由を察する。瞠目する男達の眼前には――今のこの星からは想像もつかない、瑞々しい緑野が広がっていたのだ。

 生きとし生けるもの全てが跡形もなく焼き尽くされ、不毛の地に成り果てたと思われていたこのホピス星はまだ、微かに命の灯火を残していたのである。

 

 緑野と言っても、それほど広範囲ではない。直径30m程度の僅かな草原だ。しかし、それは地球の環境を基準に見ればという話だろう。

 この星にとって、これだけの植物が残っていることがどれほど重大な事実であるか。それが分からない士道達ではない。彼らはBURKガンをホルスターに納めると、感嘆とした表情でその草花を見下ろしながら、崖を滑り降りて緑野に駆け寄って行く。

 

「信じられねぇ、まだこの星にこれだけの自然が残っていたなんて……! 星ごと焼き払っちまうような光波熱線(プラズマ)を喰らったってのに、なんでこの辺りだけ無事なのかは分からねぇが……こりゃあ、とんでもない大発見だぜ! この星はまだ、本当に死んだわけじゃなかったんだ!」

「……」

 

 荒島は目を輝かせて片膝を着き、興味津々と言った様子で異星の花々をまじまじと観察している。一方、鶴千は冷静な佇まいで緑野を含む辺り一帯を見渡し、鋭く目を細めていた。

 

(……そうか。例のキングジョーは死後に至るまで、この星の騎士で在り続けていたのだな)

 

 この狭い緑野を中心とするように、地上には巨大な人型の窪みが出来ていたのである。その僅かな痕跡に気付いた鶴千は、それがキングジョー・ホピスナイトカスタムが仰向けに倒れていた時のものであると推測していた。

 その姿勢でテンペラー星人の光波熱線(プラズマ)――「絶世哮(ぜっせいこう)」を受けたホピスナイトカスタムは、自身の装甲ごと地上の大部分を焼き払われながらも、その大きな背に隠していたこの一帯だけは守り抜いていたのだろう。機械仕掛けの騎士は、己の身体全てで「絶世哮」の灼熱を完全に受け止めていたのだ。

 

(キングジョーの形をした焼け跡を見るに……恐らくここが光波熱線(プラズマ)の着弾点だったはず。そんなところにあった草花が蒸し焼きにもならず、ここで生き延びていたとは……。ペダニウム宇宙合金の耐熱性は知っているつもりでいたが、これは想像以上だな)

 

 仰向けに倒れていたホピスナイトカスタムの背中に面していたと思われる部分は、大きな窪みになっている。恐らく、そこに隠された植物が僅かに残っていたのだろう。

 ホピス星の大部分が焼き尽くされた後にも微かに残されていたこの緑野の草花は、約6年間の中で少しずつ広がり、命を紡ぎ、今の範囲にまで「復興」していたのだ。その驚異的な生命力に、鶴千は静かに感嘆している。

 

(奴はここで草花を守り抜いた後、俺達が見つけたあの洞窟まで移動していたのか……。この草花に、陽の光が当たるように……)

 

 無論、このホピス星がここからかつての大自然を取り戻すまでには、途方もない年月を要することになるだろう。この辺り一帯に限定しても、60年は掛かる見通しだ。

 しかし。この緑野すら残っていなければ、そのための糸口さえも存在し得なかった。何一つ守れなかった「穀潰しの騎士」は、そのただ一つの「可能性」をこの星に残している。人知れず息を吹き返していたこの星は、機械仕掛けの騎士の献身によって、微かに命を繋いでいたのだ。

 

 例え星を焼かれても、この小さな命だけは奪わせない。そんなホピスナイトカスタムの矜持が、僅かな自然を残すという「奇跡」を起こしていたのである。キングジョーという一介のロボット兵器が、それほどまでに強固な「意志」を持っていた事実に辿り着き、鶴千は神妙な表情を浮かべていた。

 

「……」

 

 一方。その「奇跡」の緑地を前にした士道は、万感の思いを込めて一輪の花を取り出している。彼の様子を目にした鶴千は、シャーロットに渡っていたはずの花が士道の手にあることに気付きながらも、敢えて詮索せず静観していた。

 

「……君は、独りじゃなかったんだ」

 

 その一言と共に。片膝を着いた士道は「復興」の兆しを感じさせる緑の地に、一輪の花を還す。優しげな微笑を浮かべて立ち上がった彼は、その場で静かに敬礼していた。

 それはきっと、最期の瞬間まで運命に抗ったホピス星人達やホピスナイトカスタム、そしてこの星の自然全てに対する敬意を示したものだったのだろう。そんな彼の姿に続くように、鶴千と荒島も姿勢を正して敬礼していた。

 

「例え、どれだけ大地を焼かれても。何度、悲劇が繰り返されても。それでもきっと俺達がまた、花を届けに来るよ。もう一度、この星が緑を取り戻すまで……」

 

 ――この敬礼は、「報告」も兼ねている。

 もう戦いは、終わったのだと。この星の無念も、晴らされたのだと。そして一輪の花が今、この地に還って来たのだと――。

 






【挿絵表示】


 ウルトラマン生誕60周年おめでとうございますー! 最新作「ウルトラマンテオ」の今後にも期待大ですねー! ということで、今回は外星編最終話の後日談となりました。時系列的には今話よりも後のお話となる女傑編のエピソード(https://syosetu.org/novel/136080/23.html)に登場する「BURKビートル」のプロトタイプも出しつつ、外星編の物語にも一区切り付ける内容となっております。全方位からボコボコにされていたホピスナイトカスタムにも守れたものがあったようですね……(*´꒳`*)

 今話に登場した荒島真己隊員は、平均以下のクソザコ野郎先生の3次創作「荒島 真己のスキキライ(https://syosetu.org/novel/295056/)」で主人公を務めております。同作はBURK惑星調査隊に選ばれたエリート隊員達の普段の姿が描かれている、日常回メインの作品となっております!(*゚∀゚*)
 同作に関連したR-18枠の派生作品(https://syosetu.org/novel/301565/)も公開されておりますので、機会がありましたらこちらの作品群もお楽しみくださいませ! 派生作品の方につきましては前述の通りR-18となっておりますので、その点だけご注意ください(>人<;)

 また、荒島と同じく今話に登場した鶴千契隊員も、X2愛好家先生の3次創作「命を照らす者 ~ウルトラマンメディス~(https://syosetu.org/novel/298255/)」で主人公を務めております。こちらは外星編で描かれたホピス星調査任務の後のお話であり、重厚なエピソードが幾つも描かれている素晴らしい作品です。この作品ならではのカッコいい新ヒロインも登場しておりますし、必見ですぞ〜!(*´ω`*)

 そして、BURKプロトビートルのパイロットとして今話に登場した椎名雄介隊員も、魚介(改)貧弱卿先生の3次創作「ウルトラマンザイン(https://syosetu.org/novel/291806/)」で主人公を務めております。こちらの作品はサイボーグのウルトラ戦士・ザインの活躍を中心に展開されている物語であり、多種多様なメカを運用するBURKの奮闘もしっかりと描かれております。大変ボリュームたっぷりな内容となっておりますので、こちらの作品もぜひご一読ください〜!(*゚▽゚)ノ

 ではでは、機会がありましたらまたどこかでお会いしましょう。失礼しましたっ!٩( 'ω' )و


Ps
 行きつけのプラモ屋で宇宙ビートルのプラモを一目見た瞬間に衝動買い。もう飾る場所なんかどこにも無いというのにっ……!(ノД`)
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